【3252】地主株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。

地主株式会社は土地のみに投資するJINUSHIビジネスを展開し、地主リートの成長とともに「日本の大地主」を目指します。

代表取締役社長の西羅 弘文氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

地主株式会社を一言で言うと

建物を持たず土地のみに投資する不動産金融商品のメーカーです。 

地主の沿革

地主株式会社代表取締役社長 西羅 弘文氏

創業の経緯

創業前、創業者・現取締役の松岡と私は総合商社の兼松グループで不動産開発事業に従事していました。

しかし1999年頃、商社不要論が唱えられた時代に、兼松は事業領域を大幅に縮小し、不動産事業から撤退する方針を打ち出しました。

その際、創業者・松岡が独立し、当社(当時、日本商業開発)を創業し、私も参画したのです。

底地マーケットに注目

兼松グループでは、商業施設の開発・賃貸事業を行っていたこともあり、創業初期は、それらの不動産の運営・管理をそのまま業務委託という形で請け負っていました。

その中に、売上1兆円を超えるとある大手の総合スーパー(GMS)をテナントとする建物もありました。

しかし、そのテナントの経営破綻により新たなテナント誘致をする必要に迫られたのです。

立地が良かったため後継テナントは見つかりましたが、元のテナントに特化した建物の造りだったこともあり、建物を改修するための追加投資や、賃料の減額を余儀なくされました。

この苦い経験から「建物を持たず、土地だけを貸せば、失敗に至らなかったのでは」という発想を得て生まれたのが、JINUSHIビジネスです。

1992年に施行された地主の権利が強い定期借地権を活かして、土地のみに投資するJINUSHIビジネスを始めました。

しかし、土地だけに投資をするというのは、不動産業界ではこれまでにはなかった発想だったため、なかなか市場や銀行からの理解を得ることができませんでした。

リーマンショックを乗り越え事業成長

転機となったのが2008年のリーマンショックです。

独立系不動産会社が次々と倒産する中、当社はこのJINUSHIビジネスで生き残ることができました。

多くのデベロッパーは、建物を開発しテナントを誘致するまでに長い時間をかけており、収益が発生するまでに、高いリスクを負ってビジネスを行っています。

一方で当社のJINUSHIビジネスは、土地の仕入時にテナントと契約を結んでいるので、最初から金融商品として成り立っており、安定した借地料が見込めます。

金融商品としての長期安定性や、建物を持たないことで様々な手間やリスクを排除していることをご評価いただき、有名企業の創業家の資産管理会社などを中心に需要を得ることができました。

リーマンショックで光が当たった当社の商品は、その後も東日本大震災やコロナショック等を経て、その長期安定性に対する評価を確立してきました。

その後も事業を着実に伸ばし、2017年には日本唯一の底地特化型私募リート「地主リート」の運用を開始しました。

地主リートを得たことで、長期かつ安定した事業継続を望むテナントからは「安定地主」としての評価を確立。

JINUSHIビジネスのモデルが完成したのです。

地主リートは、機関投資家からの評価を得て運用開始から8年連続で増資を達成し、2024年1月時点で資産規模2,216億円にまで成長しています。

2024年6月現在、私募リート全58銘柄中第8位の規模です。

2023年には、一般の皆様にも投資機会を提供するために、不動産特定共同事業の仕組みに着目し一般投資家向け不動産金融商品「地主倶楽部」をスタートしました。

J-REITと同じように、一口10万円という少額から投資いただけるようにしていますが、JINUSHIビジネスの強みはそのままです。

長らく機関投資家から評価いただいてきた、このシンプルなJINUSHIビジネスの長期安定性は、個人の方にもご理解いただけると思います。

その良さは地主リート同様に「地主倶楽部」でも必ず伝わっていくものと考えています。

また同年には、独自性のある戦略によって高い収益性を実現している日本の企業・事業を表彰する「ポーター賞」を受賞することができました。

当社の事業拡大と地主リートの成長により、底地のマーケットは世間で認知・評価され始めています。

今後も成長性の高いマーケットとして注目されていくでしょう。

地主株式会社 より提供

地主の事業概要と特徴

概要

地主株式会社は、建物を持たず土地のみに投資する独自の不動産投資手法「JINUSHIビジネス」を展開する会社です。

取得した土地をテナントに貸し、テナントの皆様からいただく借地料を長期安定の不動産金融商品として投資家の皆様に提供しています。

土地をお貸しするテナントは、スーパーやホームセンター、老人ホーム、ホスピスなど多種多様です。2024年6月末までの開発実績は、累計で410案件、5,057億円に上ります。

当社が開発する不動産金融商品(底地)は、建物を保有しないことで、様々なリスクや手間を排除しています。

建物にかかる保守や修繕・改修などの追加投資も不要です。

テナントとは20年から50年の期間で契約を結んでいるため、キャッシュ・フローも長期に安定しています。

開発した商品の主な売却先は、当社グループで運用する底地特化型私募リート「地主プライベートリート投資法人(以下、地主リート)」です。

年金基金や生損保等の機関投資家の資金を運用しており、2017年の運用開始から8年連続の増資を達成し、資産規模は2200億円超。2024年6月現在、私募リート全58銘柄中第8位の規模となっています。

当社は地主リートの成長とともに「日本の大地主」を目指しています。 

事業における優位性

JINUSHIビジネス

JINUSHIビジネスについて、4つのSTEPで具体的にご説明します。

①土地を買う

まず、当社は転用性の高い土地を購入します。

人口動向や商圏規模などを検証し、万が一テナントが退去した場合でも他の用途に転用、または売却できる土地を選ぶことでリスクを最小限に抑えています。

②土地を貸す

次に土地をテナントに貸します。

スーパーやドラッグストア、ホスピスや老人ホームなど多様なテナントと、長期の定期借地権設定契約を締結し、借地料を得ます。

地主株式会社 より提供

③貸している土地を売る

そして、借地料が入り金融商品となった段階で、貸している土地を地主リートなどに売却します。

④投資家の資金を運用する

地主リートでは、年金基金や生損保等の機関投資家の資金を運用し、長期安定運用を実現しています。

地主株式会社 より提供

リスクを極小化

当社はあくまで土地を所有するのみで、建物の建設や所有、運営はテナント側が行っています。

また、土地を仕入れると同時に、テナントと20年から50年の期間で定期借地権設定契約を締結しているため、長期安定のキャッシュ・フローが見込めます。

当社グループの地主アセットマネジメントが運用する「地主リート」が、当社が開発する商品の優先交渉権を持っており、主な売却先となっています。

地主リートを成長させることで、運用報酬を継続的に獲得できる安定的な収益源を伸ばすことが可能です。

建物を持たないことで様々な手間とリスクを排除している上に、このビジネスモデルを確立させたことで、社員約100名という少人数で高収益を実現しています。

地主株式会社 より提供

JINUSHIビジネスが担う役割

なぜ私たちがテナントに選ばれるのか。それは「安定地主」として評価されているからです。

私たちは底地専業なので、不動産会社のように賃料の値上げや再開発、バリューアップを求めません。

一般的に地主とテナント間のトラブルで発生するのは、例えば20年前に借りた土地が知らないうちに他の事業者に貸し出されていたり、売却されてしまったりして、契約の更新ができずにそのエリアでの事業を撤退することになってしまった、というケースです。

一方、地主リートは土地を持ち続け、契約満了時にはテナントとの再契約をすることを前提としています。テナントは安心して事業を継続することが可能です。

これによって良好な関係を築き上げています。

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環境変化に強いJINUSHIビジネス

土地のみに投資するJINUSHIビジネスは、建物に由来する様々な変動要素を排除しています。

契約時にテナントと20年〜50年程度の長期の契約期間で借地料をいただくことをお約束していただいているため、長期安定収益を実現します。建物にかかる建築費や修繕費用等の負担もありません。

そして、テナント自らが建物に投資しているため、退去リスクが低いという特徴もあります。

さらに定期借地権の契約終了時には基本的に更地で返還されます。流動性の高い土地として返ってくるため、資産価値が下がりにくいのです。

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地主の成長戦略

JINUSHIビジネスの拡大と地主リートの成長

2026年12月までに、売上高1,000億円、純利益70億円、地主リートの資産規模を3,000億円にする中期経営計画を掲げており、現在、テナント業種の多様化、事業エリアの拡大、土地のオフバランス提案に注力しています。

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テナント業種の多様化

まず、テナント業種の多様化について説明します。

これまではスーパーやドラッグストアなど、商業中心のテナント展開でしたが、2022年1月に行った社名変更以後、商業に限らずあらゆるテナント業種との取引が増えています。

2024年12月期2Q時点で、取引実績のあるテナント数は134社(内 複数取引実績:58社)と社名変更以後で44%増加しました。

その中でも、足元では超高齢社会に対応する施設を展開する企業を中心に社会インフラを担うテナント業種を拡大させています。

ホスピス事業を拡大しているアンビスや、CUC、40年の老人ホーム開発実績を誇るアビタシオン、家族葬を提供する各社との取引実績を伸ばしています。

今後もテナントの事業計画を支える長期の安定地主としてのポジションを活かしながら、テナントとの取引を拡大し、持続可能なビジネスモデルを強化していきます。

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事業エリアの拡大

2022年12月には福岡に九州支店を設立し、現在は東京、大阪、名古屋とアメリカのロサンゼルスを合わせ5拠点となりました。

国内では、人口動向や足元商圏、道路付け、周辺環境などを検証しながら、全国を対象に、将来にわたり転用可能な土地を探し、投資しています。

土地のオフバランス提案

近年、ROE向上や財務体質の改善などの課題感から、企業の所有する不動産のオフバランスのニーズが高まっているなか、当社は、安定地主のポジションを活かし、土地のオフバランスを提案しています。

今後も、ニーズを見極めながら、土地のオフバランスの提案を積極的に行っていきます。

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注目していただきたいポイント

当社は、2000年の創業以来、これまでに無かった底地のマーケットを創出してきました。

2022年に約5.8兆円だったマーケットは、2026年には9.9兆円にまで成長すると見込まれています。マーケットの創出とともに、底地の評価も向上し、いまでは底地を保有するプレーヤーも増えつつあります。

底地の取引量が増え、マーケットがさらに拡大しようとする中、既に武器となる地主リートを大きく成長させてきた当社は、まさにこれから先行者利益を享受し、一層の成長を描けるステージへと移っています。

地主株式会社 より提供

投資家の皆様へメッセージ

まずは当社を知っていただき、当社の独自性と将来性に着目いただきたいと思います。

地主株式会社は独自のビジネスモデルと事業基盤を確立した、成長性の高い企業です。

ポーター賞も受賞し、経営学の観点からもそのようにご評価いただいています。

ぜひこの機会に当社を知っていただき、応援していただければと思います。

地主株式会社

本社所在地:〒100-6513 東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 新丸の内ビルディング 13F

設立:2000年4月7日

資本金:3,048百万円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2007年11月8日上場)

証券コード:3252

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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