【2440】株式会社ぐるなび 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ぐるなびは、「ITと人」2つの力を融合した独自のサポート力で飲食店経営を支援することで、外食産業の発展に貢献しています。

代表取締役社長の杉原 章郎氏に、これまでの変遷や今後の成長戦略について伺いました。

目次

株式会社ぐるなびを一言で言うと

「食でつなぐ。人を満たす。」とのパーパスのもと、飲食店経営者に寄り添う「飲食店のベストパートナー」です。 

ぐるなびの沿革

株式会社ぐるなび代表取締役社長 杉原 章郎氏

創業の経緯

飲食店情報サイトぐるなび(現 楽天ぐるなび)は、取締役会長の滝 久雄がコンピューターネットワークを活用した新たなメディアづくりに挑戦する中、広告代理店事業を営む㈱エヌケービーの新規事業として生まれました。

1995年にインターネットの力を目の当たりにした際、「情報系の産業革命」が起きると確信した滝は、一夜にして事業領域を外食産業と定め、翌1996年6月に「ぐるなび」を開設しました。

資本業務提携先である楽天グループ(以下、楽天)が「楽天市場」を立ち上げたのが、約1年後の1997年5月であることを踏まえると、ぐるなびは楽天よりさらに先見の明があったと考えられます。

日本の外食産業の特徴は、国内の飲食店数40~50万店の大部分を資本力や情報発信力が十分とは言い難い中小規模のお店が占めている点にあります。

こうした飲食店の収益力向上を支える上で、お店の魅力を伝える詳細な情報を安価に発信できるインターネットは効果的である点に着目し、ぐるなびは飲食店と消費者をITの力でつなぐメディアを生み出したのです。

さらにぐるなびは、創業以来飲食店経営者に寄り添い伴走する「人的サポート体制」の構築・強化に努めてきました。

ITツールは導入がゴールではなく、導入後いかに使いこなせるかが重要なところ、当社では各飲食店が抱える多様な課題を解決に導くカスタマーサクセス活動を徹底することで、独自のサポートシステムを形成してきました。

株式会社ぐるなび インベスターズガイド(2024年6月更新) より引用

事業拡大と競争激化

サービス開始当初に目標とした加盟店1万店が目前となった2000年2月に「株式会社ぐるなび」として分社化し、ブロードバンドの普及を追い風に飛躍期を迎えました。

そして、2005年4月に大証ヘラクレスに、また2008年12月に東証一部(現 東証プライム)に上場するに至りました。

その後も、2013年に実施した大幅なサイトリニューアルを機に、2016年にかけて力強い成長軌道を描いたのですが、 Google のマップ機能の向上やSNSの台頭、飲食店予約サービスにおけるポイントサービスの浸透といった事業環境の変化を背景に、ぐるなびサイトを通じた飲食店への送客力に変化が生じました。

楽天と資本業務提携を開始

そこで、ぐるなびサイトの送客力のさらなる拡大を目的に、1億以上の楽天会員という消費者ネットワークを持つ楽天と2018年7月に資本業務提携を締結し、同年10月より楽天会員IDとぐるなび会員IDの連携、ぐるなびネット予約サービスにおける楽天ポイント付与を開始しました。

この施策は狙い通りの成果をもたらし、ネット予約の拡大ペースが加速したことから、より一層協業を深めることを目的に、2019年6月に私が代表取締役社長に就任しました。

そして迎えた2020年。さらなる成果創出をと意気込んでいた矢先、新型コロナウイルスが発生したのです。

コロナ禍は外食産業にとりわけ甚大な影響を及ぼしたため、当社業績にとっても非常に苦しい時期でしたが、システムやデータベースの刷新などコロナ禍収束後の展開に向けた事業基盤の強化を図ることができたと考えています。

そして、新型コロナが5類に移行し外食産業が平常を取り戻し始めた2023年10月、「楽天ポイント」の貯まる飲食店予約サイトとしての認知を拡大しサイトの利用を促進することを目的に飲食店情報サイト「ぐるなび」の名称を「楽天ぐるなび」へ変更し、当社のユーザー基盤である楽天ID連携会員は1,000万人の大台が視野に入りました。

楽天の子会社ではない外部のサービスでありながら、1,000万人規模の楽天会員がクロスユースするものは非常に珍しく、改めて外食は楽天エコシステムにおいて非常に重要な存在であり、可能性溢れる領域であるとの認識を深めています。

株式会社ぐるなび インベスターズガイド(2024年6月更新) より引用

ぐるなびの事業概要と特徴

概要

皆さまが、日頃触れる当社サービスは飲食店情報サイトであることから、飲食店情報の掲載サービスが当社事業だという印象があるかも知れません。

もちろんそれは重要ですが、実は飲食店に対しては掲載提案に留まらず多様な価値提供を行っています。

具体的には、楽天ぐるなびサイトにただ掲載するのではなく、サイト内での集客効果を高めるための販促商品や当社ユーザー会員に直接アプローチ可能なeメールサービスなどの新規集客やリピート促進に効果的な商品のほか、予約・顧客管理システムやモバイルオーダーサービス、楽天ぐるなびサイトのほか外部メディアの更新・運用の代行サービスなどの業務支援商品を数多く取り揃えています。

株式会社ぐるなび インベスターズガイド(2024年6月更新) より引用

事業における優位性

人的サポート体制の重要性

当社が飲食店向けに様々な価値提供、経営者に寄り添ったサポートを行う上で必要不可欠とするもの、それは「人的サポート体制」です。

豊富な商品群の中から個々のお店の課題に合わせ適切に提供することで、飲食店が抱える経営課題の解決に取り組んでいます。

これが、「ITと人」2つの力を融合した独自のサポート力の所以であり、当社の競争力の源泉です。

株式会社ぐるなび インベスターズガイド(2024年6月更新) より引用

強固な協業体制

さらに、当社競争力を一層高めるために不可欠な「消費者とつながる力」「飲食店とつながる力」それらを支える「プラットフォーム構築力」、この3つの力をより強固なものとするための協業体制を構築しています。

「消費者とつながる力」については、日本最大級の経済圏を持つ楽天と効果的・効率的なユーザーマーケティングを展開しています。

そして、「飲食店とつながる力」については、当社同様飲食店を顧客としつつ、開業・閉業のフェーズという当社とは異なる飲食店との接点を持つテンポスホールディングスと協業し、営業・販売活動などの連携を図っています。そして、飲食店に対するサポート力の中長期的な向上のための新たな取り組みとして、厨房機器販売店「テンポスぐるなび」を2024年4月にオープンしました。

また、「プラットフォーム構築力」においては、システムの開発・品質管理に強みを持つSHIFT、AI・IoT活用などに強みを持つOPTiMとの協業を行っています。例えばモバイルオーダーシステムの開発においては、SHIFTと定期的にボードミーティングを開催し、事業の進め方や改善点についての議論を深めています。

持続可能な外食産業の発展を目指すにあたり、想いを共有する強力なパートナーがいることも、当社の競争優位性であると考えています。

株式会社ぐるなび インベスターズガイド(2024年6月更新) より引用

ぐるなびの成長戦略

サービス展開全体像

コロナ禍を経て、街には賑いが戻っていますが、他方で人手不足の再燃や原材料価格や光熱費の高騰が飲食店経営の足かせとなっています。

加えて、消費者が外食に出かける際の飲食店検索・予約手段において、 Google やSNSなど従来の飲食店検索サイトの利用に留まらない多様化が進んでおり、こうした中、飲食店が収益を高めることは決して容易ではありません。

そこで当社は、飲食店が限られたリソースのもと効率的かつ効果的な販促活動を行えるよう支援すると同時に、消費者により便利にお得に安心して外食を楽しんでいただけるよう、中期事業方針(2023年度~2025年度)のもと、重点施策に取り組んでいます。

株式会社ぐるなび 2023年3月期 通期決算・中期事業方針説明資料 より引用

楽天ぐるなびの強化

消費者の飲食店検索行動が多様化する中にあって、飲食店に対する送客力を高めるため、楽天会員にとって最も便利でお得なネット予約メディアへの進化に取り組んでいます。

足元において、楽天会員の中で最もロイヤリティの高いダイヤモンド会員の新規利用の増加や、楽天会員によるリピート予約の活性化などポジティブな変化が生まれています。

株式会社ぐるなび 2025年3月期 第1四半期 決算説明会資料 より引用

2024年においては、コロナ禍により影をひそめてしまった「宴会」を盛り上げるべく、“繰り返し、大勢で集まりたくなる仕組みづくり”として「幹事ガンバレプロジェクト」を始動しました。

具体的には所定期間における来店人数に応じてボーナスポイントを進呈する楽天会員向けのロイヤリティプログラムです。

第3四半期(10月〜12月)中の本格稼動を予定していますので、ぜひ本プロジェクトを活用し、楽しくお得に忘・新年会をお楽しみいただければと思います。

株式会社ぐるなび 2025年3月期 第1四半期 決算説明会資料 より引用

さらに長期的な視点では、いかにAIを有効活用するかも、非常に重要です。

お店探しの際、食べたいものはもちろん、その時々の気分や健康状態などをもとに、AIに相談しお店を予約する時代の到来を見据え、当社ではAIを含む最新技術の活用について研究を進めています。

マーケティングエージェントの本格化

飲食店が様々なWebサービスを活用する上で、人手不足が大きな制約となっています。

そこで、当社は飲食店が取り組むWeb集客活動を一括支援する「マーケティングエージェント」の確立を進めています。

その中のサービスの一つ、 Google ビジネスプロフィールの運用支援商品を紹介します。

Google 検索や Google マップの活用について、多くのお店がその必要性を感じていますが、手間がかかるために対応しきれていないお店が多く存在するのが実情です。

そこで、当社がお店の Google アカウントを預かり、その運用を代行するというサービスです。

飲食店からの評価は高く、2024年3月末の利用店舗数は前年同月比2倍以上となり、現在も順調に拡大しています。

今後さらに、 Google 以外の取り扱いサービス拡充を進め、飲食店が美味しい料理づくりや接客といった謂わば本業に集中できるよう支援するとともに、売上アップと業務負荷軽減双方に寄与することで外食産業の労働環境改善にも貢献していきます。

株式会社ぐるなび 2025年3月期 第1四半期 決算説明会資料 より引用

モバイルオーダーサービス

当社が提供するモバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」は、大手チェーン店を中心に導入が進んでおり、ホールスタッフ不足の軽減だけでなく、来店客がお店のスタッフを呼び止めることなく好きなタイミングに注文できることから、注文点数の増加による客単価アップなど売上づくりの面でも効果を発揮しています。

さらにはメニュー情報の多言語表示機能により訪日旅行者へのスムーズな対応にも役立っています。

中期的には、来店客とのリアルな場での新たなデジタル接点であることを活かし、集客に役立つ「マーケティング機能」を拡充するなど進化を図り、飲食店DXの基盤への発展を進めます。

株式会社ぐるなび 2025年3月期 第1四半期 決算説明会資料 より引用

新たな可能性

新たな可能性として、飲食店のメディア化を進めています。

飲食店が飲食事業で収益を上げることはもちろんですが、それ以外の新たな収益源として、多くの人が集まるお店自体をメディアとする取り組みを開始しました。

具体的には、店内にスクリーンやビジョンを導入し、消費者向けのプロモーションを希望する食品・飲料メーカーや食関連事業者、優れた地域産品を持つ自治体などのCMを流すというものです。

実証実験を進める中で、来店客だけでなく飲食店で働く従業員にも強く影響を与えるという新たな発見がありました。

飲食店のメディア化、すなわち広告媒体としての新たな価値を生み出すことで、飲食店の安定的な収益源の確保に寄与できると考えています。

注目していただきたいポイント

コロナ禍を背景に厳しい業績が続きましたが、この間、経営資源配分の見直しや効率的な働き方の進化などを通じ、筋肉質な収益体質づくりを推進してきました。

そして迎えた2024年度については、中期事業方針に掲げた黒字化計画を5月に発表し、そして第1四半期の良好な実績を踏まえ8月には上方修正することができました。

こうした確かな業績回復・再成長が株価の面でもご評価いただけるものと考えております。

株式会社ぐるなび 2025年3月期 第1四半期 決算説明会資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

ぐるなびが単なる“IT企業”ではなく、ITの持つ力を最大限に活かし、さらに人(飲食店)と人(ぐるなびスタッフ)のつながりを大切にする飲食店のパートナーでああること、また当社で働く従業員は皆、心底「食」が好きで、情熱を持っているということを知っていただきたいです。

日本の外食を支える飲食店の多くが小規模店。個々のお店がこだわり・個性を発揮しているからこそ、世界から注目を集める豊かな食文化が育まれています。

ぐるなびをご支援いただくことは、日本の食文化の担い手である飲食店を応援することにつながると捉えていただき、サステナブルな食の未来を目指すぐるなびの今後にご期待ください。

株式会社ぐるなび

本社所在地:〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井タワー11F

設立:1989年10月2日(事業開始:2000年2月29日)

資本金:100百万円(2024年3月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2005年4月25日上場)

証券コード:2440

楽天ぐるなびhttps://www.gnavi.co.jp/

ぐるなび公式note https://note.com/gnavi_official/

インベスターズガイドhttps://corporate.gnavi.co.jp/ir/library/investorsguide/

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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