※本コラムは2024年7月11日に実施したIRインタビューをもとにしております。
トーソー株式会社は国内シェアNo.1のカーテンレールを中心に、インテリア文化の発展と豊かな暮らしを提案するメーカーです。
代表取締役社長の八重島 真人氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
トーソー株式会社を一言で言うと
インテリア文化の発展と豊かな暮らしを提案するメーカーです。
トーソーの沿革
創業経緯
当社は2024年9月で創立75周年を迎えます。
戦後間もない頃、創業者は内装工事業を営んでおり、住宅の西洋化が進む中でカーテンの需要を見越し、素人ながらカーテンレールの製造に着手しました。
最初に開発されたのがC型カーテンレールです。
西洋のカーテンは開閉を前提として作られておらず、固定されていることがほとんどです。
一方、日本では障子や襖のように左右に開け閉めする文化が根付いており、日本でカーテンが普及するためには、カーテンをスライドさせる必要があるというアイデアから生まれたのがC型カーテンレールです。
そして、1955年に日本住宅公団(現在のUR都市機構)が設立され、洋式の住宅を取り入れ日本の住宅不足を解消しようという国家プロジェクトが始まりました。
その公団住宅の内装の一部として当社のカーテンレールが採用され、日本全国に広がる団地とともに市場を拡大していきました。
新製品の開発と啓発活動
日本家屋にカーテンを取り入れるという考えを普及させるために、新製品の開発や積極的な発信、啓発活動を行ってきました。
例えば、日本家屋では障子や襖が主流だったため、カーテンレールを二重にして、内側に薄めのレース生地のカーテン、外側に厚めのカーテンを取り付ける内装を提案しました。
現在ではこのスタイルは一般的ですが、この文化を普及させたのは当社のカーテンレールです。
また、当時はカーテンの縫製業者が不足していたため、営業マンがミシンを持ち歩き、全国各地でカーテンを縫製する勉強会を開催していました。
さらに、1980年代ごろからはインテリア産業協会の設立にも携わり、インテリアコーディネーターの資格にカーテンに関する項目を加えるなど、啓発活動に注力しました。
市場のニーズに合わせて新商品を開発し続け、現在ではカーテンレールだけでも数百以上のラインナップを取り揃えています。
海外展開と多角化
当社は早期から世界へも進出しており、約50年にわたり海外への輸出で市場を拡大してきました。
1981年に西ドイツで開催された世界最大の室内装飾織物見本市であるハイムテキスタイル展に日本企業として初めて出展し、ヨーロッパでの販売網を獲得しました。
その後、1988年にインドネシアに生産拠点を新設し、2002年には中国の上海に進出し、アジアでも市場を拡大しています。
現在は、海外展開を進めるとともに、ホテルや老人ホームなどの非住宅用途やスーパーやコンビニなどの新しい用途の開発も進め、事業を拡大しています。
トーソーの事業概要と特徴
概要
当社は窓周りの総合プロデュース企業として、主に住宅関連の室内装飾事業を展開しており、これが売上の98%を占めています。
カーテンレールの製造メーカーとして、自社開発・設計から製造・流通まで一貫して行っています。
流通に関しては約300社の代理店販売がほとんどで、内装工事業者やゼネコン、ハウスメーカーなどが最終顧客となります。
また、大手家具量販店とも取引があり、最終的には一般消費者が直接購入できる流通網も確保しています。
このような多層的な流通網を活用することで、幅広い顧客層にリーチしています。
事業における優位性
カーテンレール国内シェアNo.1
当社はカーテンレールのパイオニアであり、カーテンレール類に関しては国内で約50%のシェアを有しています。
このシェアを維持し続けている理由は、当社の製品力と豊富なラインナップです。
カーテンレールのカタログは500ページにも及び、毎年新商品をリリースしています。
遮光性能や防音性能を備えたカーテンレールや、デザイン性に優れた製品など、多岐にわたります。
また、製品は自社で開発・設計し、自社工場で製造するため、品質管理が徹底されています。
さらに、販売面では日本国内のカーテン市場を最も理解している企業として、顧客ニーズに即応したサービスが必要です。
そこで、企業専用カーテンレールや、特注サイズにも迅速に対応できる体制を整えています。
新規分野への拡大
国内の住宅市場が縮小する中で、事業の多角化が必要です。
そこで、既存のコアビジネスである住宅市場を維持しつつ、海外市場や非住宅分野への進出を図っています。
例えば、高級ホテルやリゾート施設への導入を進めており、特に電動カーテンレールやブラインド類は、国内外の宿泊施設で高い評価を得ています。
また、省エネや快適さが求められるため、そのニーズを満たす新製品の開発を行っています。
従来の製品よりも高単価で販売できるため、高付加価値製品の開発は今後の成長のためにも重要な戦略となっています。
このように市場のニーズを確かめながら、新製品の開発に挑戦できることも当社の強みです。
トーソーの成長戦略
Vision2025
2016年度より開始した「Vision2025」は、コロナ禍による打撃を受けたため見直しを実施し、目標指標として新たに売上高240億円、ROE6%以上を設定しました。
これまでの取り組みを着実に遂行することで、成長軌道を回復させることができると考えています。
コアビジネスにおける「TOSO」特有の新しい企業価値創造
国内の住宅市場でのシェア拡大を目指し、窓周辺の付加価値提案や電動化製品の開発を進めています。
まず、窓周辺の付加価値提案として「ハンギングバー」という新たな内装提案を行っています。
これは衣服や観葉植物を室内に掛けるための製品で、共働き世帯が増える中で室内干しの需要が高まっており、非常に人気です。
また、住宅市場におけるIoT製品の需要が高まっており、電動でカーテンの開閉ができる製品の開発も行っています。
このように、住宅市場のニーズに合わせた様々な製品開発・提案を行うことで、「TOSO」としての企業価値を高めていきたいと考えています。
成長戦略への重点投資による事業領域拡大
事業領域の拡大という戦略には、非住宅、新用途、海外の3つの視点があります。まず、非住宅についてはホテルやオフィスへの導入です。
ホテルやオフィスの窓は住宅に比べて大型なものが多いため、その規格に応じた製品を開発しています。
国内では特にインバウンド需要が高まっているため、新たなホテル建設が進んでいます。
高級ホテルなどに当社の製品が採用されることで当社の技術力が認められ、市場拡大に貢献できると考えています。
次に、新用途についてはスーパーやコンビニの保冷スクリーンの開発を行っています。
スーパーやコンビニの冷蔵商品は夜間も冷やしておく必要がありますが、基本的には開けっ放しのため、冷蔵効率が悪く電気代もかさんでしまいます。
そこで、開け閉めに強みを持つ当社の技術を活かし、冷蔵庫用のスクリーン導入を進めています。
省エネとコスト削減を実現する製品として、新用途分野で事業を拡大させることができると考えています。
最後に、海外についてですが、当社のグローバルネットワークを活用して戦略的な販売を続けていきます。
高級ホテルや富裕層向け住宅での需要が高まっており、今後も成長余地の高い分野だと考えています。
持続的な企業成長を実現するための強固な経営基盤の再整備
働き方改革を進めており、在宅勤務などの柔軟な働き方にも対応できる組織体制を構築しています。
社員のモチベーションを高めるため、ワークライフバランスの向上と生産性の向上に取り組んでいます。
創立75周年を迎えるにあたり、社員に自社のイメージをアンケートしたところ、「寄り添う・アシスト」という言葉が多く見受けられました。
創業以来、カーテンレールというカーテンが無ければ成り立たないビジネスを一貫して行ってきたこともあり、補完関係を大切にしています。
そのような観点から、コアバリューとして「WITH」を掲げています。
顧客やパートナー企業とともに成長し、より良い社会を築くためにあらゆる製品を生み出していきます。
注目していただきたいポイント
当社は国内シェアNo.1の事業基盤を持ち、安定した配当を続けています。
現在は安定配当を行っていますが、今後の成長に伴い、業績に連動した配当も検討しています。
株主の皆様にとって魅力的な投資先となるよう努力してまいります。
また、持続可能な経営のためには、環境負荷の低減や社会貢献活動も重要です。
例えば、製品のリサイクル率向上や地域社会への支援活動などを行っています。
当社の安定した事業基盤と、社会に貢献しながら成長していく事業戦略にご注目いただければ幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
当社はカーテンレールの国内市場で約50%のシェアを誇り、皆様のご家庭でも二軒に一軒は当社の商品が使われているはずです。
TOSO(トーソー)の社名はそれほど有名ではありませんが、皆様の生活を支えているのは当社の製品です。
今後とも、皆様のご支援を賜りながら、更なる飛躍を目指してまいりますので、温かく見守っていただけると嬉しいです。
本社所在地:〒104-0033 東京都中央区新川1丁目4番9号
設立:1949年9月1日
資本金:11億7,000万円(2024年7月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(1996年1月31日上場)
証券コード:5956