【166A】株式会社タスキホールディングス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社タスキホールディングスは不動産デベロッパーとしての事業基盤を活かし、不動産業界におけるDXを推進していきます。

代表取締役社長の柏村 雄氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社タスキホールディングスを一言で言うと

不動産×ITで業界課題にチャレンジするトレイルブレイザー(先駆者)です。 

タスキホールディングスの沿革

株式会社タスキホールディングス代表取締役社長 柏村 雄氏

創業経緯

当社の事業会社である株式会社タスキは、株式会社新日本建物の社内ベンチャーとして、2013年に創業しました。

実質的な事業開始は2016年からですが、創業期から新築投資用IoTレジデンスの開発に従事してきました。

相続税対策ニーズのある富裕層をターゲットに、3億円規模の投資用マンションの開発がメインでした。

2017年にはMBOを実施し、新日本建物との資本関係を解消し独立しました。

このタイミングで私はCFOとして当社に参画し、上場準備のためにガバナンス体制の構築を進めました。

その後、タスキは2020年10月に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。

新日本建物との経営統合

タスキと新日本建物の経営統合をするために両社を上場廃止後、新たに持ち株会社としてタスキホールディングスを設立し、2024年4月1日にテクニカル上場しました。

タスキは中長期的な成長のための主要戦略のひとつに、「インオーガニック戦略」を掲げ、経営統合後の現在も、ライフプラットフォーマーとしてさらなる成長を目指しています。

その戦略を推進していく中で、シナジーが効果的に発揮できると考え、タスキ側からアプローチし、新日本建物との統合が実現されました。

具体的には、両社がターゲットとするエリアが東京23区で共通しているものの、不動産のアセットサイズが異なっており、直接的な競合関係にはならないことから、事業シナジーが生まれやすいとの判断に至りました。

また、今後の金利上昇に伴い、事業資金の調達コスト低減が課題となる中で、新日本建物の信用力を活用できると期待しています。

PMI(Post Merger Integration)に関しては、コーポレート体制の強化など、経営面での効率化を実現していきます。

さらに、2024年4月より空き家情報プラットフォームや資産コンサルティングを扱う株式会社オーラを統合し、グループ全体でのデータの利活用による新たな事業機会の創出を目指しています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

タスキホールディングスの事業概要と特徴

概要

統合後、事業セグメントを整理し、新セグメント区分としてLife Platform事業、Finance Consulting事業、SaaS事業(非連結)に変更しました。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

Life Platform事業では、タスキで開発していた3億円〜5億円の新築投資用IoTレジデンス「タスキSmart」、タスキが取得しバリューアップを実施し販売する「リファイリング物件」、新日本建物で開発していた6億円〜15億円の新築投資用レジデンス「ルネサンスコート」、10億円〜20億円の同レジデンス「ルネサンスプレミアムコート」などを取り扱っています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

このように幅広い投資用商品を開発できるデベロッパーは業界内でも珍しいと考えています。

また、SaaS事業では、主力サービスである「TASUKI TECH LAND」の提供、導入支援を行っています。

このプロダクトは不動産業界に特化した実用性が高いDXサービスとして、マンション開発企業・戸建開発企業を中心に導入が進んでおり、2024年9月期3Q時点では導入社数は77社と、着実に実績を伸ばしています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

Life Platform事業の強み

当社の事業エリアは東京23区が中心です。

ドミナント戦略によって同一エリアで複数棟の工事を受注することでコスト削減を実現しています。

建築コストを抑え、浮いたコストを価格転嫁できるため、業界内でも屈指の高い仕入力があります。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

また、仕入れの際には空き家情報プラットフォームが役立っています。

一般的に空き家は郊外に多くあると思われがちですが、近年は都内でも空き家が増えており、世田谷区や大田区などが実は空き家が多くあります。

過去開発してきたIoTレジデンスの開発用地は、空き家になっていた土地が多く、不動産オーナーに対して有効活用の提案を経て、開発を行いました。

2026年には20万件の空き家情報を獲得することを目標としており、着実にそのデータを蓄積し、グループシナジーを活かした新たな事業機会の創出を狙っています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

また、提供するアセットはIoTを活用した物件が多く、ブランドロイヤリティを形成することができると考えており、東京23区エリア内での市場拡大を狙うことができます。

さらに、自社開発物件を対象としたクラウドファンディング「TASUKI FUNDS」と、特定投資家向け不動産私募ファンドを運用中で、様々な販売先があることも当社の強みです。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

SaaS事業の強み

「TASUKI TECH LAND」は使い勝手の良さから、導入社数が伸びているSaaSです。

不動産デベロッパーでもある当社が開発することで、不動産開発の現場で本当に必要な機能を網羅した実務有用性の高いプロダクトとなっています。生成AI技術を活用し特許も取得しています。

また、他社サービスと異なり最短即日導入を実現しており、月額費用も5万円〜10万円と低コストで利用可能です。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

そして、オプション機能として、生成AI-OCRでの自動入力や、謄本取得サービスなどを提供しています。

不動産デベロップメント業務は担当者の能力や経験に基づいて業務が遂行されることも多く、属人化されることで社内での情報の不透明性や、ノウハウが蓄積されないといった課題がありました。

そこで、TASUKI TECH LANDを活用し情報や進捗の可視化、自動化による効率化を行うことで、担当者の業務負担の軽減やコスト削減、社内でのデータ活用を実現することができます。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

このように、不動産業界でなかなか進まないDX化を推進し、独自性を持ったSaaS事業を展開していることが当社の強みです。

「TASUKI TECH LAND」についてhttps://tasuki-tech.jp/step1/

「TASUKI TECH LAND」紹介動画https://youtu.be/E_146kAQA2I

タスキホールディングスの成長戦略

富裕層向けビジネスの伸長

これまで、タスキ単体では3億円〜5億円の新築投資用マンションの開発が主なビジネスで、個人の富裕層がメインターゲットでした、

今後は、新日本建物と統合したことによって提供可能物件の幅が広がり、販売先もファンドや海外投資家といった層にまでターゲットが広がりました。

今後も不動産市場の動向を確認しながら、バランスを意識した開発を進めてまいります。

SaaS事業の成長とARR増大

当社の強みでもあるSaaS事業を軸に、成長余地の大きい不動産事業のDX変革を推進することで売上拡大を目指します。

現在のターゲットとしている、不動産取引業を営む中規模事業者の市場規模は約383億円ですが、不動産業全体では約3,678億円の市場が広がっています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

今後は地方の金融機関や不動産仲介会社、他業界のパートナーなど、販売パートナーを活用しながら「TASUKI TECH LAND」の全国展開を進めていきます。

また、新たに「TOUCH&PLAN」のサービス提供を開始しました。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

この機能は、用地情報や建築規制を自動取得し、最適なボリュームプランを自動算出するため、仕入担当者のスキルの均一化と事業検討の迅速化、コスト削減を実現しています。

これまでは、書類や設計書の作成を他の部署や外部の設計事務所に依頼すると、5日〜10日ほどかかる上に、多額の費用がかかっていました。

しかし、「TOUCH&PLAN」を利用すれば約5分でボリュームチェックが可能となり、コストも月額10万円と削減することができます。

このような新機能をフックに拡販し、2026年9月までにARR(Annual Recurring Revenue)10億円を目指します。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

「TOUCH&PLAN」についてhttps://tasuki-tech.jp/step2/

インオーガニック戦略

中長期的な成長に向け、M&Aや資本業務提携、CVCによるマイノリティ投資など、シナジーを創出する企業と連携し、積極的にグループを拡大していきます。

2024年9月からは「M&A・グループ戦略部」を新設しました。

今後も積極的なM&Aによるインオーガニックでの成長を継続することを目的とし、新たな専門人材を投入し、組織力の強化をいたしました。

専門人財による意思決定プロセスの迅速化と、既存事業拡大にインパクトのあるパートナー企業とのリレーション構築、連携強化を図ることで、グループ全体への成長へと繋げていく方針です。

当然資金も必要となりますが、当社のキャピタルアロケーションの基本方針に沿って、当面はエクイティファイナンスではなく、自己資金または金融機関からの借入による調達と投資を検討しています。

プライム上場に向けて

当社は2026年9月期中のプライム上場を目指しています。

数値基準については達成していますが、経営統合を行ったことにより、今後2年程度は内部的な運用実績の積上げが必要となっております。さらなる成長を目指し、市場変更には積極的に取り組んでまいります。

プライム上場後も成長を続けていくためにも、これまで各社が培ってきた不動産事業でのノウハウを活用し事業成長を継続しながら、グループ全体でSaaS事業を積み上げていくことでバリエーションを高め、投資家や市場における見られ方を変えていきたいと考えています。

株式会社タスキホールディングス 2024年9月期第3四半期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

不動産業界には多岐にわたる企業が存在し、売買も含めて競争が激しい分野です。

その中で、当社は独自性が非常に重要だと考えています。

特に、SaaS事業をはじめ、他社とは一線を画す取り組みがタスキホールディングスの強みとなっています。

この独自性をさらに高めていくことが、今後の成長に繋がると確信しているので、今後も注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

2024年4月の経営統合を経て、引き続き成長を続けてまいります。

株主の皆様への還元についても、しっかりと貢献していく所存です。

ぜひ、今後の当社が示す事業戦略と成長にご期待いただければと思います。

株式会社タスキホールディングス

本社所在地:〒107-0061 東京都港区北青山2-7-9 日昭ビル2F

設立:2024年4月1日

資本金:30億2,496万9,600円(2024年8月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年4月1日上場)

証券コード:166A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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