※本コラムは2024年8月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ビジネスエンジニアリング株式会社は主に「SAP」および自社開発の「mcframe」などERPシステムを中心に、製造業のDX化をサポートしています。
代表取締役・専務取締役の別納 成明氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
ビジネスエンジニアリング株式会社を一言で言うと
「世の中に創造業を増やす」ことを目指し、ものづくりをITで支える企業です。
ビジネスエンジニアリングの沿革
創業経緯
当社の事業は、1980年代の後半、親会社である東洋エンジニアリングの一部門として始まりました。
当時、プラント建設を主力としていた東洋エンジニアリングは、事業ポートフォリオの多角化によるリスク分散を図るため、新たな収益源として産業システム事業を開始しました。
その一環として、工場の自動化、いわゆるFA(Factory Automation)といった工場の生産設備をシステムで制御する技術をベースとした事業を推進していました。
この時、ある外資系の化学企業からの見積もり依頼を受け、その中に「SAP」というドイツ企業が開発した基幹システムの使用が要求されていたことから、その存在を知りました。
当時のメンバーがドイツに赴き調査した結果、日本で最初にSAPとパートナー契約を締結する運びとなったのです。
これが当社のソリューション事業の礎となり、1993年に日本国内で初めて、山之内製薬(現 アステラス製薬)にSAPを導入しました。
この導入実績を皮切りに、当社は日本におけるSAP導入の先駆者として、強固な顧客基盤を築いていきました。
自社開発パッケージ「MCFrame」をリリース
SAP導入が主軸事業として成長する中で、1996年に自社開発パッケージ「MCFrame」(リブランディングにより現在は「mcframe」)を販売開始しました。
その開発の背景には、日本の製造業特有の課題がありました。
SAPは、内包するベストプラクティスに沿ったシステム導入によって業務プロセスを改善しようというコンセプトであり、グローバルに事業を展開する大企業にとっては極めて有効なERP(Enterprise Resource Planning)システムです。
しかし、日本の製造業を支える中堅・中小企業は、その多くが独自の業務プロセスにより競争力を育てているため、各企業の個別ニーズに対応できる機能が求められることが多かったのです。
そこで、当社はそのような中堅・中小企業向けに柔軟にカスタマイズ可能なERPシステムとして、MCFrameを開発しました。
開発当初は、開発から導入までを自社で行っていたため、事業スケールに限界がありました。
そこで、SAPのようなライセンス提供に特化した事業展開に転換することで、外部リソースを活用したビジネス拡大が可能になりました。
現在、約50社のパートナー企業があり、より多くの企業にシステムを提供し、成長を続けています。
海外への展開と事業成長
当社は国内市場にとどまらず、積極的に海外市場への展開も進めてきました。
2007年にはタイ、2010年には中国、2015年にはインドネシアとシンガポール、そして2017年にはアメリカに進出。グローバル展開を加速させています。
特に、日系企業がアジア各国に進出する際には、現地工場でのシステム導入において「mcframe」が大いに役立っています。
また、現地法人向けに特化した「mcframe GA」を導入することで、現地の業務プロセスに適応したシステム運用を実現しています。
このように国内外での事業成長を続けてきました。
ビジネスエンジニアリングの事業概要と特徴
概要
当社は3つの事業セグメントでビジネスを展開しています。
1つ目は「SAP」を主軸とするソリューション事業で、大手製造業を始めとする企業様向けERP等の導入支援を行っています。
2つ目は、自社開発した「mcframe」シリーズを中心に、パートナー企業を通じて中堅製造業を中心とする企業様向けにパッケージソフトを提供するプロダクト事業です。
そして3つ目は、導入したシステムの保守・運用を担うシステムサポート事業です。主にSAPやmcframeを導入した企業様向けの事後サポートを行います。
事業における優位性
バランスの取れた事業ポートフォリオ
当社の強みは、SAPのライセンシーとmcframeのライセンサーという異なる立場を活かした、強力なポートフォリオにあります。
例えば、リーマンショック後の経済低迷期には、製造業からの大規模な投資が冷え込み、SAPの導入需要が一時的に減少しましたが、mcframeのプロダクト事業が成長したため、全体として業績を維持することができました。
直近では、SAPの新しいバージョンの導入が増えていることもあり、ソリューション事業の売上も伸びています。
このように、相互に補完し合う事業ポートフォリオが、安定した成長を支えています。
長年の開発実績と安定した顧客基盤
当社は長年に渡り、製造業向けに特化した開発実績が豊富ですが、特に医薬品業界を得意分野としております。
例えば、当社の第一号案件は山之内製薬(現 アステラス製薬)のSAP導入支援でした。
その後も多くの業界大手企業様へのSAP導入を支援いたしました。
医薬品業界は横の繋がりが多く、当社の確かな実績が評価され、多くの大手企業様との取引に繋がっています。
また、ライセンサー様からのご紹介などもあり、製造業の様々な業種のSAP導入を支援することで、安定した顧客基盤を築き上げてきました。
さらに、ERPは一度導入すると保守・運用の業務が発生し、数年に一度アップグレードも必要となります。
そのため、しっかりと信頼関係を築くことが長期的な取引に繋がり、安定したストック収益モデルの構築に繋がります。
長年の開発実績と信頼関係による強固な顧客基盤は一朝一夕では実現できません。
これが当社の優位性に繋がっています。
ビジネスエンジニアリングの成長戦略
「ものづくりデジタライゼーション」の拡大
成長戦略の一つとして、製造業のデジタル化をさらに拡大していきます。
製造業が業務効率化DXを実現するためには、IT基盤の構築が不可欠です。
そのため、ERP導入を継続的に進めていくことで、顧客のIT基盤を磐石なものにしていきます。
現在はオンプレミス型で「mcframe」を提供していますが、今後はSaaS型の「mcframe」もリリースし、新たなマーケットへの展開を図りたいと考えます。
製造業には多様な業種・業態があること、中堅製造業の製造工程はそれなりに複雑性があることから、標準機能に完全にフィットさせるSaaS型の導入は容易ではないと考えます。
従い、現在のターゲットゾーンには引き続きオンプレミス版が対応すると考えていますが、もう少し小規模な製造業や海外に対しては、システムの運用体制が構築困難なこともあり、SaaS型を求められると考えます。
この新たなターゲットゾーンに対してSaaS型の「mcframe」を展開することで、マーケットの拡大を図ります。
顧客深耕に関しては、安定した顧客基盤を活用し新たな顧客課題を発掘すること、Coライセンサーについては、当社がライセンシーの立場でありながらマーケティング等のライセンサーの役割の一部を担うこと、で次のビジネスを生み出すサイクルを構築します。
このように、あらゆる角度から製造業のDX化を進めるためのIT基盤づくりに注力していく方針です。
「変革のためのDX」の推進
当社は単にシステムを提供するだけでなく、企業のデータ活用支援にも積極的に取り組んでいます。
ERPシステムや周辺システムには大量のデータが蓄積されていますが、企業側ではその効果的な使い道や分析方法についてのノウハウが不足しているケースが少なくありません。
そこで当社は蓄積されたデータを分析することで、製造不良の削減や需要予測の精度向上に繋がるコンサルティングサービスも始めています。
また、ユーザー共創型ビジネスとして、設備メーカの製品に当社のソフトウェアを組み込んで販売して頂く取り組みや、先端的医薬品の製造プロセスをITで支援する取り組みなど、ユーザーと共創してビジネスを推進することに取り組んでおります。
グローバル支援の強化
今後は、グローバル市場への展開を加速させ、製造業のサプライチェーンマネジメントの発展を支援します。
具体的な施策としては、海外パートナー体制を拡充し、日系企業の海外展開に対する支援を強化します。
また、日系企業のグローバル進出はアジアを中心に今後も活発化すると予想されることから、その支援を通じて、更なる事業拡大を目指します。
サステナビリティへの貢献
当社は、サステナビリティにも積極的に取り組んでいます。CO2排出量削減はもちろんのこと、製造業が直面している環境課題に対し、ソリューションの提供を通じて貢献していきたいと考えています。
例えば、製品の製造サイクル全体でのCO2排出量を計算・管理するためのシステムを開発し、取引先での実証を進めながら導入を進めています。
このシステムには、生産管理や原価計算などのシステムを開発してきた当社の、サプライチェーンにおける数値管理についての豊富なノウハウが活かされています。自社の強みを活かした新たな商品と言えます。
注目していただきたいポイント
当社はこれまで、様々な外部環境の変化に晒されながらも、安定的に成長を続けてきました。
中期経営計画では、新たな成長分野への投資が重要なテーマとなっています。
特にSaaS型の新たな「mcframe」シリーズや、新規ソリューションの開発に注力しており、計画年の2026年度の先も見据えて成長を加速させていく計画です。
また、IT人材の採用や育成にも力を入れており、今後の事業拡大に備えています。
このように安定した事業基盤と成長戦略を軸に、株主還元策にも注力する方針です。
資本政策を転換し、配当性向を従来の30%から35%以上に引き上げ、減配をしない累進配当を約束しました。
単に利益を上げるのではなく、成長投資を行いながら着実にリターンを確保し、利益を積み上げていきたいと考えています。
ぜひ当社の中期経営計画の成長戦略とその進捗状況、そして安定した事業基盤にご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
私たちは長年にわたり製造業向けのシステム導入に真摯に取り組み、クライアントとの揺るぎない信頼関係を築いてきました。
製造業における生産管理やサプライチェーンの分野で高度な技術力を培い、確かな実績を積み上げてきました。
今後も、次世代の製造業を支えるITソリューションを提供し続け、持続的な成長を目指してまいります。
投資家の皆様には、当社の成長にご注目いただき、温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。
本社所在地:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-8-1 KDDI大手町ビル
設立:1980年12月20日(ITサービス事業開始:1999年4月1日)
資本金:6億9,760万円(2024年8月アクセス時点)
上場市場:東証プライム市場(2001年2月19日上場)
証券コード:4828