【3135】株式会社マーケットエンタープライズ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社マーケットエンタープライズは「WinWinの関係が築ける商売を展開し商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」を経営理念に成長を続ける、「持続可能社会を実現する最適化商社」です。

代表取締役社長の小林 泰士氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社マーケットエンタープライズを一言で言うと

長期ビジョンに「持続可能社会を実現する最適化商社」を掲げる企業です。

マーケットエンタープライズの沿革

株式会社マーケットエンタープライズ代表取締役社長 小林 泰士氏

創業経緯

現在、当社は19期目を迎えていますが、社名には「マーケット(市場)をエンタープライズ(冒険的)に創出する」という想いが込められています。

2004年に個人事業からスタートし、2006年に法人化して本格的に事業を開始しました。

初めて取り組んだビジネスは、使い捨てカメラに組み込まれているアルカリ電池のリユースでした。

当時、製品に組み込まれているものの、ほぼ新品でまだ使える状態の電池が廃棄されている現状を知り、もったいないと考えたことがきっかけです。

ただ、当時はまだネット販売が一般的ではなかったため、苦労も沢山経験しました。

そして、2006年に「格安電池ドットコム」というサイトを立ち上げ、次第に月に30万本もの電池を販売するまでに成長しました。

この経験が、リユースに対する私の考えを根底から変えるきっかけとなり、現在のネット型リユース事業の始まりとなりました。

ネット型リユース企業へ

元々、学生時代から古着などヴィンテージ物にも興味を持っていたのと、ネットで集客するとより人気なイベントになるのではとフリーマーケット事業も立ち上げ、「フリーマーケット楽市楽座(2013年に事業譲渡)」を開始しました。

この取り組みは、最終的に36都道府県で延べ800回以上開催され、日本で最も広域に展開するフリーマーケット主催者に成長しました。

数万人の方に出店してもらいましたが、「洋服や雑貨はフリマで売買するけど、高額なものや大型のものはフリマで売買されない。これからはネットを使った安心な事業者が必要だ。」と考え、ネット専業のネット型リユースをスタートしました。

また、リユース商品のネット上での購入には消費者の不安も大きかったこともあり、リユース商品に対する保証制度を業界内で初めて導入し、安心していただけるサービスを提供していきました。

そして、この事業基盤を元にネット型リユース事業を伸ばし続け、2015年に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。

その後も、モバイル通信事業への進出などを通じて、事業領域の拡大に向けた先行投資を行いながら安定的な事業成長を実現し、2021年には東証一部市場(現 プライム市場)に市場変更しました。

マーケットエンタープライズの事業概要と特徴

概要

現在、ネット型リユース事業、メディア事業、そしてモバイル通信事業の三本柱で事業を展開しています。

ネット型リユース事業では、個人向けに「高く売れるドットコム」に代表される31の買取専門サイトを通じて年間で43万件もの買取依頼を受けています。

そして、リユースEC「ReRe(リリ)」での販売や、Yahoo!オークションや楽天、メルカリなどと在庫連動をして販売しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

近年は、トラクターやコンバイン、田植え機などの農業用機械を幅広く取り扱う、農機具リユース事業を展開しています。

「農機具高く売れるドットコム」は農機具に特化した査定・買取サイトですが、個人・法人問わず全国のお客様にご利用いただいています。

また、海外向けECサイト「FARM-MART」を活用して中古農機具の海外販売も行っています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

さらに、物を売りたい方とリユースショップをつなぐリユースプラットフォーム「おいくら」を通じて、複数のリユースショップの買取価格がわかる一括査定サービスを提供しています。

近年は循環型経済への取り組みを推進するサービスとして自治体との連携が増加しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

次に、メディア事業では「賢い消費」に役立つ情報を、自社メディアを通じて発信しています。

各事業領域に特化したメディアを運営し、そこで得た見込み客を自社サービスに繋げるとともに、自社メディアを通じ掘り起こした需要を他社サービスに送客しています。

このように自社のデジタルでの集客力を活かしたメディア展開で、様々なキャッシュポイントを作っています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

また、モバイル通信事業ではメディアでの集客を活かし、5G対応のWi-Fiルーター「カシモWiMAX」や、MVNOサービスの「カシモ」の提供を行っています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

事業における優位性

個人向けリユース事業の競争優位性

年間43万件もの買取依頼数というデジタルの集客力はもとより当社が長年にわたって蓄積してきたノウハウとオペレーションが強みです。

まず、インターネットで集客した顧客が買取依頼を行う際、コンタクトセンターによる事前査定で買取価格や買取方法などのご提案を行います。

当社は出張買取、店頭買取、宅配買取といった様々な買取方法を持っているため、商品の特性やロケーション、顧客ニーズに応じて柔軟な対応が可能です。

そして買い取られたリユース品は、自社で開発した在庫システムに繋がり、Yahoo!オークションや楽天市場、Amazonなど各種ECサイトで販売されます。

そして効率的な集客により、同業他社に比べて3〜4倍と非常に高い在庫回転率を実現しています。

また全国15の拠点網を活かし、顧客の身近な地域へ展開することで安心感を与えています。

このリユース品の買取から販売に至るまでのフローは、完全自社開発の統合基幹業務システムが担っています。

ワンストップでサービスを提供できるため、ネット型リユースビジネスにおけるリーディングカンパニーとして、独自のポジションを築いています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

農機具リユース事業の競争優位性

買取依頼数年間1.2万件、法人仕入業者数852社という業界随一の取引実績のほか、当社は国内で使用されなくなった農機具を海外を中心に輸出し、世界81カ国に商品を輸出してきた実績があります。

日本の農機具は品質が高く、特にヨーロッパを中心に需要が高いことが特徴です。

また、自社ヤードで農機具を保管し、国内2ヵ所に自社物流拠点を持ち、パートナー企業と提携し全国的な物流網を構築しています。

2024年1月には新拠点として茨城県結城市に「北関東第2ヤード」を開設し、在庫収容能力を拡充しました。

これにより既存の北関東RCとあわせ、在庫収容能力は最大800台に拡充することができました。

このように、ニッチではあるものの他社では取扱いの難しい商材も扱える事業基盤を強化してきたため、今後の成長が見込める事業領域として考えています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

「おいくら」の競争優位性

近年、「おいくら」では自治体やリユース業者との連携を深め、消費者とリユース業者をマッチングするプラットフォームを提供しています。

「おいくら」には全国700社を超えるリユース業者が加盟し、150以上の自治体が循環型社会の実現に向けた新たな解決策として「おいくら」を活用しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

各家庭で処分されるはずだった物品をリユースに回すことで消費者は現金化でき、自治体にとっては税金をかけてゴミ処理する必要が減るというように、「Win-Winな取引」を実現しています。

中古品を取り扱う他社アプリやサービスとの差別化戦略として、「おいくら」では当社の審査基準をクリアしたリユースショップのみを登録するというものがあります。

そのため、個人間の取引を不安に感じる方々でも、専門業者と取引ができるということから、安心して取引することができます。

このような質の高いサービスを提供することで、年間見積実績は19万件を記録しており、日本最大級のリユースプラットフォームとなっています。

メディア事業の競争優位性

8つの主力メディアを運営しており、消費者にとって役立つ情報を提供し多様な選択肢を提案して、当社は月間800万PVを達成しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

モバイル通信事業の競争優位性

2024年6月末時点で保有回線数は10万回線を超え、業界最安級で、シンプルな料金プランを活かし、契約数が増加しています。

主な契約者は当社のメディアを通じて「カシモWiMAX」を選んでいます。

引越しなどの生活の転機にフォーカスした発信に注力する戦略で効果的な集客に繋げ、多くの個人ユーザーのニーズに応えています。

さらに、新規ユーザーが増える毎に売上を積み上げることができ、ストックビジネスとして当社の事業基盤を支える安定的ビジネスとして重要な役割を果たしています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

マーケットエンタープライズの成長戦略

リユース市場の拡大と潜在リユース市場

リユース市場は年々拡大しており、2009年から2030年のCAGRは6.2%と順調に伸びていくと予測しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

ニッセイ基礎研究所・メルカリ共同調査では、日本の家庭に眠る「かくれ資産」は66.7兆円にのぼると推定されています。

また、「かくれ資産」の多くは50代以上の、ミドル以上のシニア層が保有しており、個人金融資産も50代以上の割合がほとんどです。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

当社は、このような「かくれ資産」を掘り起こし、リユース市場での価値を創出することに注力しています。

例えば、断捨離ブームや終活、相続後の資産処分など様々なニーズに対応することで、リユース市場の成長とともに当社も成長したいと考えています。

最適化ビジネス × DX

当社グループの全体戦略は最適化ビジネス×DX、つまり「持続可能な社会を実現する最適化商社」を目指していくことです。

社会情勢など外部環境を意識しながら消費者の消費行動を分析し、消費者のニーズに即応できるような体制を整えて行きます。

株式会社マーケットエンタープライズ 2023年8月14日公表「中期経営計画」 より引用

個人向けリユースと農機具領域の成長

成長事業として、個人向けリユースと農機具領域を成長事業と位置付けています。

個人向けリユースに関しては、リユース市場の拡大とともに、当社のもともとの強みを伸ばしさらに強化していくとともに、買取1件あたりの深掘りも図っていくことで、事業を拡大していきます。

これまで当社が扱ってきた、家電や楽器、オーディオ機器など生活に根付いたリユース品の買取を強化するために、コンタクトセンターや出張買取でのヒアリングで深掘りさせていただき、お客様のご要望に応じた不要品の買取を増やしていきたいと考えています。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

また、農機具領域の市場環境に関しては、年々農家の廃業が増えています。

そのため、廃業した農家にはトラクターなどまだ使える農機具が多く眠っているはずです。

また、近年は個人からのお問い合わせだけでなく、ディーラーなど法人との取引が増えています。

子会社の「MEトレーディング」を通じて、全国から買取した農機具を修理・メンテナンスし、そのまま海外へ輸出できることが評価されています。

今後もリユース可能な農機具の仕入れを増やしながら、国内外への販売を加速していきます。

株式会社マーケットエンタープライズ 2024年6月期 通期決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の成長を支える基盤は、何よりもデジタルマーケティングを活用した集客力です。

ネット型リユース事業やメディア事業、さらにはモバイル通信事業を通じて、様々な業界におけるデジタルマーケティングのノウハウを蓄積してまいりました。

そして、十数年にわたり安定的に事業を伸ばし、リユース市場の成長を上回るCAGRを達成しています。

株式会社マーケットエンタープライズ 投資WEB IRセミナー(第198回) より引用

また、これまでは先行投資に積極的でしたが、既に事業基盤が固まってきたため、これからは投資回収フェーズだと認識しています。

今後は利益率の向上を目指して、各領域の強みを伸ばした事業展開を進めていきます。

また、当社は「WinWinの関係が築ける商売を展開し商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という経営理念を掲げていますが、この「主体者集団」であり続けるためには社内での情報の共有が大切だと考えています。

そこで社内報や社内SNS、月次の業績の共有など、社員一人一人が主体的に発信できるように風通しの良い環境を整えています。

このように、しっかりと事業基盤の整備に注力し、強みを活かしたビジネスができる体制を構築してきました。

投資家の皆様には、当社が独自の事業基盤を持ち、持続的に成長し続けることにぜひご注目いただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

創業以来、着実に成長を続けてきましたが、これからもネット型リユース事業を通じて持続可能な社会の実現を目指します。

特に、リユース市場の拡大とDXの推進を通じ、長期的な視点で利益率の向上を目指していきます。

これまでの事業変遷をご覧いただければわかるように、当社は時代のニーズに対応しながら、常に新しいビジネスモデルを模索してきました。

今後も、消費者の多様なニーズに応えるため、リユースを軸とした事業をさらに発展させていきます。

投資家の皆様には、当社のこれまでの成長と今後の展望に期待していただき、将来的なポテンシャルを持った企業としてご支援いただけると嬉しいです。

株式会社マーケットエンタープライズ

本社所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座1-10-6 銀座ファーストビル2階・3階 (受付3階)

設立:2006年7月7日(事業開始:2004年11月1日)

資本金:3億3,241万6,200円(2024年6月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2015年6月17日上場)

証券コード:3135

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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