【3537】昭栄薬品株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年11月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。

昭栄薬品株式会社は1937年の創業以来、天然油脂由来の油脂化学品(オレオケミカル)を中心に取り扱う化学品専門商社として成長してきました。

代表取締役社長の藤原 佐一郎氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

昭栄薬品株式会社を一言で言うと

オレオケミカルの川上から川下まで一貫してサポートし、お客様のお困りごとを解決・改善する提案型企業です。

昭栄薬品の沿革

昭栄薬品株式会社代表取締役社長 藤原 佐一郎氏

創業の経緯

当社は、1937年に鐵野 義数氏が化学品卸売業者として創業しました。

当初は無機系薬品を主に取り扱っていました。

戦前は卸売業を中心に事業を展開していましたが、戦争の影響で一時事業が停止してしまいました。

その後、1946年に昭栄理化学工業所を設立しました。

この時期から、無機系薬品ではなく、石鹸の原料や薬品製造用原料の販売へと事業の方向性をシフトしました。

花王との取引開始

1951年には花王石鹸(現在の花王株式会社)の化学品部門との取引を開始しました。

この取引を通じて、石鹸の原料や脂肪酸およびその誘導体の販売に注力し、花王製品の販路拡大を積極的にサポートしました。

花王との取引は70年以上にわたり継続しており、現在も当社の仕入れの約45%を占める重要なパートナーです。

さらに、花王製品を通じて、現在の主要取引先である三洋化成や竹本油脂との関係を構築しました。これらの取引先は現在でも当社の売上における大きな柱となっています。

昭栄薬品株式会社の設立

1960年に現在の社名「昭栄薬品株式会社」に改称しました。

創業者の鐵野義数氏が病気で逝去した後は、夫人が社長に就任し、専務の宮崎氏を中心に経営が進められました。

その後、石鹸原料や化粧品関連の原料供給に加え、繊維産業の成長に伴い、繊維関連の工程薬剤を製造する企業への原料供給を強化しました。

この取り組みにより、界面活性剤メーカーとの取引が拡大し、現在のビジネスモデルの基盤が形成されました。

また、1965年には土木建設資材事業を開始しました。

工事現場で使用される化学品等に特化した事業として立ち上げ、独自開発した水中接着剤「ショーレジン」を中心に事業を拡大しました。

1966年にはショーレジン株式会社を設立し、当初は関連会社として運営していましたが、

2008年に完全に独立し、現在は資本関係のない別会社として運営されています。

さらに、1987年には日用品事業をスタートさせました。

「安心・安全」をテーマに、生協との親和性を重視した商品企画を進め、協力会社と連携して商品を開発しました。

現在も生協が主要な販売チャネルとなっています。

このように、当社は化学品、日用品、土木建設資材の各事業を展開し、多岐にわたるお客様の課題解決を目指す企業として成長を続けてきました。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

昭栄薬品の事業概要と特徴

概要

当社は、オレオケミカルを中心に、化学品、日用品、土木建設資材の3つの事業を展開しています。

化学品事業では、パーム油やヤシ油などの天然油脂由来のオレオケミカルを主に取り扱い、界面活性剤メーカーをはじめ、トイレタリー、化粧品、食品、医薬品など幅広い業界へ販売しています。

日用品事業では、生協等を中心としたマーケット(市場)へ顧客企業と共同でニッチな家庭用洗剤などを企画・開発し、製品提供をしています。

土木建設資材事業では、環境に配慮した薬剤選定や工法に関する情報提供を行いながら、地盤改良やコンクリートの補修・補強材料を取り扱っています。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

事業における優位性

オレオケミカルを中心とした化学品商社

当社の強みは、オレオケミカルのプロフェッショナルとして、川上・川中・川下の全ての商流に関わっている点です。

このように幅広い商流を網羅できる企業は他に例がありません。

特に、国内有数のサプライヤーである花王との取引を通じて、界面活性剤の主要メーカーへ原料を供給しています。

さらに、顧客である界面活性剤メーカーからも製品を仕入れ、それを最終商品を製造するメーカーへ販売しております。

具体的には、薬粧・トイレタリーといった業種が主な販売業種となります。

また、薬粧・トイレタリーメーカーでもある花王に対しても販売しており、各種最終製品の開発や生産活動を支援しています。

オレオケミカルに関する川上の情報から、川中の界面活性剤、さらには川下の製品開発まで一貫して把握できる点は、当社の大きな強みです。

たとえば、日用品事業では化学品事業で培ったノウハウを活かし、「安心・安全」をキーワードにニッチな製品を開発しています。

過去の例では、洗濯槽の汚れに対応する酸素系洗濯槽クリーナーを開発しました。

この製品は、主婦の方々の声をもとに、塩素系薬剤よりも安全で使いやすい仕様に仕上げ、現在でも主力商品として支持されています。

このように、消費者を含むお客様のお困りごとにフォーカスし、ニッチ市場に特化した商品開発を可能にしています。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

グローバルネットワーク

グローバルネットワークは当社の強みのひとつです。

当社は2000年以降、本格的な海外展開を開始しました。

最初にシンガポールへ進出し、その後、2005年には上海、2009年にはタイで合弁会社を設立しました。

現在、タイの拠点は当社の100%子会社となっており、シンガポールの機能を統合して東南アジアの重要な拠点として活動しています。

この3拠点(日本・タイ・中国)のグループ企業間で情報を共有しながら、お客様の生産活動を原材料選定の段階から包括的に支援しています。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

昭栄薬品の成長戦略

強みを活かした成長戦略

当社のビジネスは専門性が高い分、成長戦略を描くのは容易ではありません。

特に、界面活性剤やオレオケミカルは生活必需品に関連する分野であるため、急激な需要の伸びは期待しにくいものの、人々の生活に欠かせない重要な素材です。

最終製品メーカーは常に新しい製品を開発しており、当社もその変化に対応しています。

また、海外展開が進む中で、当社もグローバルな視点を持ち、ビジネスの強化に取り組んでいます。

日用品事業では、生協ルートとの取引に加え、ホームセンターを含む量販店などへ販路を広げています。

最近では、不快害虫の大量発生など社会問題となり、それらを忌避する害虫対策製品がヒットするなど、消費者の困りごとにフォーカスした提案型の商品開発を進めています。

このように、時代やニーズに即した商品展開を通じて、引き続き新しい価値を提供していきます。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社は化学品だけでなく、環境ソリューションの分野にも力を入れています。

化学品を扱う業界の特性上、SDGsや環境に関わるビジネスを避けて通ることはできません。

化学品事業では、環境ソリューションのお困りごと、その中でも水や臭気に関する課題に対応しています。

具体的には、工場の水処理や臭気対策に関する設備や機器の提案を行い、最近では省エネやCO2削減を目指す設備提案も開始しました。

これらの分野は引き合いが強く、検証を重ねながら取引を拡大していきたいと考えています。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

従来のお客様へのPR活動を継続しながら、好調な売れ行きを背景に大規模な展示会へも積極的に出展しています。

関西ではインテックス大阪で開催される「ものづくり」関連の展示会、名古屋ではポートメッセ名古屋での展示会に毎年参加しています。

これらの展示会では、「現場で困っているので明日来てほしい」といったご要望をいただくこともあり、新規顧客の獲得につながっています。

化学品事業を基盤としつつ、新しい仕組みを取り入れたビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

中長期的な視点では、化学品以外の分野にも事業を拡大していく方針です。

今後の当社のビジネス展開に、ぜひご期待ください。

昭栄薬品株式会社 個人投資家向け説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は、界面活性剤をはじめとする化学品を扱う専門商社として、従来の枠にとらわれることなく、お客様の課題を解決・改善するために新たな取り組みに挑戦し続けています。

これからも皆様のご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

昭栄薬品株式会社

本社所在地:〒541-0052 大阪市中央区安土町1丁目5番1号 船場昭栄ビル

設立:1960年3月17日(創業:1937年12月)

資本金:248百万円(2024年11月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2016年3月16日上場)

証券コード:3537

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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