※本コラムは2024年3月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ライトワークスは不確実性が増す現代社会に必要な人材開発プラットフォームを提供し、ミライの「はたらく」を、明るくする会社です。
代表取締役の江口 夏郎氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ライトワークスを一言で言うと
成長と安定を兼ね備えたGARP(グロース・アット・ア・リーズナブル・プライス)企業です。
ライトワークスの沿革
創業から現在の事業に至るまで
当社は2001年に設立されました。
元々は2000年にアスキー内で開始されたeラーニング事業部がスピンオフして当社が誕生しました。
初めはアスキーのグループ子会社として始まりましたが、体制の変更に伴いアスキーの親会社であったCSK(現 SCSK株式会社)が当社に直接資本参画したのが2002年です。
そして2009年まではCSKの子会社として事業を行い、その後独立して事業展開を進めてきました。
その後2010年代に入ってからは、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)の事業が主力になりました。
そして現在はHCMクラウドシステムを基盤に、企業に対してHCMプラットフォームサービス、学習塾や一般家庭にオンライン英会話サービスを展開しています。
ターニングポイントと人材の確保
創業から23年の間には様々なターニングポイントがありました。
特に2009年には上場を目指して準備を進めていましたが、リーマンショックの影響で計画が中断してしまいました。
その後、2016年頃から学習・教育領域におけるITソリューション事業を伸ばし、再び上場を目指すようになりました。
そして2022年2月に東証マザーズ市場(現 グロース市場)に上場し、更なる事業拡大のための資金調達を行い、特に採用力の強化に力を入れました。
現在までエンジニアは主に大手・中堅のソフトウェアハウスやSIerから、営業スタッフについては人材系・IT系を含む幅広い業界から中途採用し、事業拡大のための基盤作りを行ってきました。
ライトワークスの事業概要と特徴
概要
当社の事業は主に単一セグメントの二つの大きなサービスに分かれています。
HCMプラットフォームサービスが全体の売上の約70%を占め、残りの約30%はオンライン英会話サービスによるものです。
基盤となるのは「CAREERSHIP」というHCMクラウドシステムです。
「CAREERSHIP」では、eラーニングコンテンツを提供しており、具体的にはパワハラ防止研修やコンプライアンス研修など企業の人事部門向けの教材を多く取り揃えています。
また、このシステムを利用してオンラインセミナーも開催可能です。
過去に英語の講師を迎えておこなっていたオンライン英語セミナーが非常に好評で、これが現在のオンライン英会話サービスの独立につながりました。
オンライン英会話サービスは元々私たちのプラットフォーム上のコンテンツの一つでしたが、学習塾向けに販売したところ、大きく伸びたことで様々なカスタマイズを施しながら事業として成長させてきました。
事業における優位性
HCMプラットフォームサービスの競争力の源泉
多くのEd-Tech企業や学習用システムを提供する会社が存在する中で、弊社のHCMクラウドシステムは特に大企業の人事部門に選ばれています。
我々のシステムは、大企業特有の複雑な部門構造や国際展開、それに伴う教育体制の整備の煩雑さを解決するために利用されています。
例えば、コンプライアンスの要件が国によって異なる場合や、特定の役職者のみが受講を義務付けられる研修がある場合など、内部での管理は非常に大変です。
また、これまで人材開発の過程でExcelでの管理が主流でしたが、より効率的な管理を実現するLMSが活用されています。
そして2000年からの長期間にわたりコンテンツとシステムを開発し、顧客と一緒にシステムを改善しながら機能を充実させてきた実績が評価され、大企業からの信頼も厚いことも特徴です。
利用者数は2024年1月時点で500万人を超えており、「CAREERSHIP」は大手企業を中心に広く採用されています。
さらに契約期間は通常3年から5年で、一度導入されると長期にわたって利用され続けるため、売上も非常に安定しています。
例えば、5年契約の場合、売上は契約額を月割りにして計上され、継続的な収益が見込めます。
年により異なりますが売上見込み額のだいたい半分が期の初めに確定しているため、売上の予測が可能な安定したビジネスモデルを実現しています。
オンライン英会話サービスの競争力の源泉
オンライン英会話は、当社が提供する2つの主要ブランド、「オレコ」と「クラウティ」を通じて展開しています。
オレコは全国の学習塾を対象にしており、塾の生徒たちがタブレットやPCを使って海外の講師から直接英会話が学べるサービスです。
一方、クラウティはBtoCモデルで、一般のご家庭を対象にしたサービスです。
近年、小学校での英語教育必須化や、都立高校入試でのスピーキングテスト導入など、教育現場で英会話を実際に話すというニーズが高まっています。
また、外部の英語試験が多く大学の入試で優遇されるため、高いスピーキング・リスニングのスキルが求められるようになりました。
これが市場において我々のサービスが拡大している理由です。
さらにシステム面では、当社の強みであるHCMクラウドの技術ノウハウが生かされています。
学習塾では生徒の学習進捗度がばらばらなため塾の先生が効率的に管理するための学習管理システムはとても重要です。
当社が全国の学習塾で採用されているのは学習管理に優れているためです。
そしてクラウティは家庭単位で会員登録を行い、家族全員がサービスを利用でき、小学生以下のお子様が英語学習に飽きないよう、オセロゲームやトランプなど、楽しみながら学べるコンテンツを提供しています。
画面上にゲーム盤を表示させるといった技術がある当社ならではのサービスです。
これにより、お子様の学習意欲の向上に寄与し、非常に人気のあるコンテンツとなっています。
ライトワークスの成長戦略
市場環境と成長戦略
HCMプラットフォーム市場に関しては、今後も年間1〜2割程度の成長を見込んでいます。
実際に、2024年1月期の当社の売上は約20%伸びており、このペースでの成長は今後も続いていくと予想しています。
またオンライン英会話市場は、コロナウイルスの流行期間中に特に大きな成長を遂げました。
コロナ流行が一段落した後、市場は一時的に落ち込みましたが、クラウティに関しては2023年1月期には約40%の成長を記録しています。
これにより、子供向けの教育メディアとしてのポジショニングを強化し、このセグメントでさらなる成長を目指していきたいと考えています。
学びのプラットフォームの拡大
我々は英語オンライン学習サービスをタッチポイントに、クラウティを各家庭の学びのプラットフォームとして確立することを目指しています。
現在は英語教育を中心にサービスを提供していますが、算数・理科・社会といった他の教科のコンテンツも提供し始めています。
たとえば、英語の分野では英検を目指す子供たちのための英単語学習用シューティングゲームを開発しました。
このゲームは、表示される英単語を正しく打ち抜くことで学習が進む仕組みです。
このシステムを理科や社会科の用語に置き換え、幅広い科目がクラウティを通じて学べるように進めています。
また大人向けには、働く親たちを対象としたコンテンツも提供しており、登録メンバーなら誰でもアクセス可能にしています。
さらにキャリア開発や子育てに関するセミナーを定期的に開催し幅広いニーズに対応できるようなコンテンツを拡充しています。
このように、家庭内での学びのニーズに応じた多様なサービスを提供することで、クラウティを家庭全体の学びのハブになるよう目指しています。
企業向けサービス内容の拡充
最近のDX化の進展に伴い、我々のサービスも大きく変化しています。
従来は企業の情報システム部門が当社のサービスの主な窓口でしたが、SaaSモデルへの移行により実際に利用する人事部や人材開発部門と直接やりとりをすることが増えています。
彼らは単にシステムを購入したいわけではなく、具体的な人事に関わる課題の解決を求めているため、当社はコンサルティング部隊を新設し、専門のコンサルティング会社と提携し始めました。
お客様が抱える上流の問題から積極的に関わっていくことで課題を適切に把握し、その課題を解決するシステムの開発・提供を進めていきます。
また、企業の現場でシステム人員が不足している中、我々がBPOとしてシステム運用を支援し、研修や運用のサポートを一貫して提供していく方針です。
2024年4月にはマーサージャパン株式会社と人事プロフェッショナル向けの新たな学習プログラムの提供、および人事プロフェッショナル認定資格(サーティフィケイト)の発行に向けた業務提携の合意を行いました。
このようにコンサルティングの機会を増やし、大手企業の人事部門に深く切り込んでいくとともに、BPOやサポートを提供し、アップセルを狙っていきます。
注目していただきたいポイント
注目していただきたいポイントは当社の配当政策です。
我々は2023年6月から利益の100%を配当として還元する方針を取っており、2024年1月期には1株あたり44円の配当を実施しました。
この政策を採用している理由は、SaaS型ビジネスの特性上、利益が出やすい一方、これまでの減価償却により実際のキャッシュフローと利益の間にずれが生じてしまうためです。
現在、利益は減価償却により抑えられていますが、来年度からは本格的に利益が増加し、利益率も大幅に向上することが予想されます。
そのため、現状のキャッシュに対しては積極的に配当として還元し続けていく方針です。
また株価が足元で約1000円前後であることを考慮すると、配当利回りは約4.4%と高配当を実現していますが、今後も株主還元を含めた資本政策を進めることで、利益の増加に伴い更なる株価上昇が期待できます。
成長性と安定性を兼ね備えた企業への投資、GARP(Growth At Reasonable Price)投資に興味のある投資家の皆様に注目していただけるようこれからも取組んでいきたいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
投資家の皆様から成長戦略について、特にM&Aについての質問を多くいただいています。
我々はHCMクラウド事業をさらに強化するためにM&Aを積極的に検討してますが、まだお話しできる段階にはありません。
一方で、多くの大手企業から業務提携や資本提携の提案も受けています。
例えば2023年8月に電通総研(旧ISID)、2024年4月にマーサージャパンとの業務提携を行いました。
これらの投資戦略や資本提携の動きは、株価にも大きな影響を及ぼす可能性がありますので、投資家の皆様には当社の事業展開やリリースに注目していただき、ご支援いただければ幸いです。
本社所在地:〒102-0083 東京都千代田区麹町5-3-3 麹町KSスクエア
設立:2001年7月1日
資本金:142,542,800円(2024年3月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場(2022年2月9日上場)
証券コード:4267