※本コラムは2024年6月20日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社マクロミルは消費者の声を企業に届け、より良い製品・サービスの提供を支援することで社会に貢献しています。
代表執行役社長CEOの佐々木 徹氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社マクロミルを一言で言うと
日本および世界中の人々の暮らしを豊かにするため、クライアントと消費者の架け橋となる会社です。
マクロミルの沿革
創業の経緯
当社は、2000年に株式会社マクロミル・ドット・コムとして創業しました。
当時はビジネスの現場でリサーチを利用する際、調査結果が出てくるまでの時間とそれに見合わないコストの高さに大きな課題がありました。
それもそのはずで、当時の主な調査手法は郵送や電話であり、結果が出るまでに数カ月を要し、手間暇がかかり費用も非常に高額でした。
そこで、2001年から本格的にインターネットを利用したリサーチ事業を開始しました。
そして、インターネットリサーチの導入により、調査費用とスケジュールの両面で大幅なコストダウンを実現し、迅速な調査結果の提供が可能となりました。
この成功を背景に、2004年には東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場し、1年後の2005年には東証一部市場(現 東証プライム市場)に上場を果たしました。
その後、2008年のリーマンショックも乗り越え、業績は右肩上がりに成長を続けてきました。
同業他社のM&Aと株式非公開化
当初は、インターネットリサーチが中心でしたが、次第にインタビューなどのリサーチニーズの高まりを受けてサービスを拡充してきました。
そして、2011年には当時業界2位だったヤフーバリューインサイト社を買収し、国内市場でのプレゼンスを確立しました。
一方、海外展開にも注力し、M&Aを通じて韓国への進出も行いました。
その後、さらにグローバル化を推進するため、2014年に株式を非公開化し欧米でのリサーチを展開していたMetrixLab社を買収するなど、クロスボーダーなM&Aに対しても積極的に投資を行いました。
また、デジタルを活用した新たなソリューション開発にも注力し、グローバル展開とデジタルリサーチの拡大を成長ドライバーに、2017年3月に東証一部(現 東証プライム)に再上場を果たしました。
事業モデルの変革
そして現在、コロナ禍を経て市場のニーズは複雑化し、マーケティングリサーチ業界は変革の時を迎えています。
こうした環境の変化を踏まえ、当社では事業モデルの変革を行っています。
人材とテクノロジーに対しての投資を積極的に実施しながらも、着実に利益を創出するためには、日本・アジアに経営資源を集中させる必要があったことから、2023年6月にMetrixLab社を売却しました。
事業モデルの変革を進めることが、今後の成長戦略であり、この点は後ほど詳しくご説明させていただければと思います。(※マクロミルの成長戦略)
マクロミルの事業概要と特徴
概要
当社のビジネスは「お客様のより良い意思決定を支援するために、お客様が心から満足し、感動するサービスを提供する」という経営理念を軸に構築されています。
ここでいう「より良い意思決定」とは、顧客企業によるマーケティング活動上の意思決定を指しています。
企業は「市場ではどのような商品が受け入れられるのか、消費者にはどのようなニーズがあるのか」を知る必要があります。
当社は、自社パネルや提携パネルを活用してリサーチを行い、企業のマーケティング活動に資する情報を提供しています。
さらに、近年は単なるデータ提供のみならず、コンサルティングや多様なソリューションを提供し、「総合マーケティング企業」として事業を展開しています。
事業における優位性
大規模で高品質な消費者パネル
当社の優位性として、豊富でクオリティの高い消費者パネルがあります。
創業当初の2000年は、ネットユーザーの中でもアーリアダプターと呼ばれるような方々、つまり情報感度の高い方々が主なパネル会員でした。
現在は、スマートフォン1つでネットに繋がることができるため、日本全国から幅広い年齢層や職業の方々がパネルとして参加いただいており、一般的な消費者層を広くカバーできています。
国内では自社パネルで130万人、提携パネルを含めたパネルネットワークは3,600万人、海外でも1億人のパネルネットワークを有しています。
この大規模なパネルネットワークを活用し、年齢・性別・居住地・職業といった「属性データ」と購買データ・ログデータ・位置情報・生体データなどの「行動データ」を掛け合わせて解像度の高い消費者分析を行っています。
データネイティブな人的資本
当社グループには国内外合わせて、2,000名超のデータネイティブな人材が在籍しています。
業務は、営業活動を行うセールス、顧客課題を抽出しリサーチ設計を担うリサーチャー、アンケートの作成から回収を担当するリサーチディレクター、データ集計や解析を担う集計スタッフなどの分業制をとっています。
従来のマーケティングリサーチ業界では、リサーチャーがこれら全ての業務を担当していました。
そうした中、当社は創業時から分業制を取り入れ、各職種で専門性を追求することで、スピードや効率性を高めてきました。
他業界の方とお話しした時に感じたことですが、当社は業界外から見てもデータネイティブな人材が豊富です。
例えば、ある企業がデータの専門部隊を作る場合、希少価値の高い職種のため、外部からの採用コストの高さが課題となります。
一方で、社内で人材を育成する場合でも教育ノウハウがないことが課題となります。よって、データネイティブな人材を社内に擁することは当社の大きな強みと言えます。
マクロミルの社員は入社後、常にデータのクリーニングや統合といった専門性の高い業務に携わっており、データの取扱いに長けているとともに、各人の能力を高めることができる環境が整っています。
最近では、データサイエンティストやアナリストを積極的に採用、育成しており、専門人材を揃えることで、質の高いサービスを提供しています。
長年にわたって蓄積してきたノウハウを活かし、データネイティブな人材の育成や採用ができる体制は他社にはない優位性だと考えています。
優良な顧客基盤
当社の顧客企業数は、日本国内で約2,500社、日本を含めたグローバル全体で約4,000社に達しています。
多くのお客様に、圧倒的なスピードと低コスト、顧客特性に合わせた柔軟なサポート体制等の品質を評価いただいております。
その結果、大口の取引をいただいている国内企業の継続率は90%以上を維持しています。
国内においては、皆様が一度は聞いたことがあるような大手企業様と長期的な取引関係を継続いただいています。
例えば、電通、博報堂などの大手広告代理店やコンサルティングファーム、そして飲料、食品、消費財をはじめ幅広い業界に顧客基盤があります。
特に、電通、博報堂の両社のインハウスリサーチ子会社を当社の連結子会社化しており、共同経営している点も当社の特徴です。
このような優良な顧客基盤が当社の事業を支えています。
マクロミルの成長戦略
マーケティングリサーチからインサイト産業へ
現在、マーケティングリサーチ業界という市場は、周辺領域であるコンサルティング領域、デジタルリサーチ領域などが統合され、インサイト産業と新たに再定義されています。
この背景には、顧客のニーズが多様化し、ビジネスを進める中でコンサルティングファーム、広告代理店、リサーチ会社の境界が曖昧になってきたことがあると考えています。
特に、コロナ禍の影響でマーケティング課題が複雑化したことで難易度が増し、企業はマーケティングにおける真のパートナーを求めています。
そうした市場の変化に対応するため、当社は、マーケティング課題解決のための包括的なアプローチを推進しています。
事業モデルの変革
まず、当社のビジネスの中核はリサーチとデータ提供です。
顧客企業に提供できるデータにはいくつかの種類がありますが、創業以来一貫して収集しているデータが「意識データ」です。
この意識データは、消費者が認識していることを聞くケースが多く、新しいパッケージを見てどう感じたか等に対するアンケート結果から購買行動の変化を予測しています。
もう一つ、大切なデータとして「行動データ」があります。
これは、実際の購買行動に基づくデータで、例えば、毎日買った商品をスキャンしていただいているパネル会員の皆様から、10年以上にわたるストックデータを蓄積したものです。
この「意識データ」と「行動データ」を組み合わせることで、複雑化した購買行動の分析が可能になります。
例えば1週間以内に特定の商品を購入した行動データがあるにもかかわらず、その購入を覚えていないというケースにおける行動と意識の差を紐解いて理解することができるのです。
そして、私たちはパネルの方々から第三者のマーケティング活動に活用する許諾をいただいたうえで詳細な属性データ(性別、年代、居住地、結婚の有無、子供の有無、職業など)をお預かりしています。
そのような中で、顧客企業からは、データレポートの提供にとどまらず、「どのようにデータを活用すれば良いのか、実際にマーケティング課題解決にどう活かせるのか、レクチャーして欲しい」というご要望をいただく場合もあります。
そうしたご要望にお応えするため、当社グループは、コンサルティング部隊を発足し、データ利活用の支援を行っています。
さらに、リサーチから得られた結果をどのように広告配信等のマーケティング活動に活かすべきかをサポートするマーケティング施策支援も実施しています。
このように、リサーチ、データ提供のみならず、データ利活用やマーケティング施策支援といった領域へ事業を拡げ、マーケティング課題全体の解決を支援すべく、「総合マーケティング企業」への事業モデルの変革を進めています。
今後も変化するインサイト市場において、マーケティングパートナーとしてのケイパビリティを拡大させ、顧客のマーケティング課題を一気通貫でサポートしていくことを目指します。
株主還元の強化
当社は、2017年から7期連続で増配を継続しており、事業成長のための投資を実施するとともに株主の皆さまへの利益還元を充実化することが重要だと考えています。
2024年6月期は、売上拡大とともに生産性の改善も進み、しっかりとした事業利益の成長を実現することができており、今後の成長についても確かな手ごたえを感じています。
このため、2024年6月期の期末配当は増配修正しており、2024年7月から始まる2025年6月期についてもさらなる株主還元の強化を図る方針です。
今後も、持続的な成長により、企業価値および株主価値の向上に取り組んでいきます。
注目していただきたいポイント
まず一点目は、マクロミルは消費者の日常生活に溶け込んでいる商品やサービスの裏側をサポートしている点です。
私たちの調査データは、皆様が普段手に取るもの、食べるもの、使うもの、利用するものの背後で、企業がより良い商品やサービスを提供するための意思決定を支援しています。
これにより、日本および世界によりよい商品やサービスが増え、消費が活性化し、人々の生活が豊かになると信じています。
当社は企業と消費者を繋ぐ架け橋となる企業だとご認識いただければと思います。
二点目は、私たちには「Macromill Group Values(Think New, Think Deep/Act Now, Act Together/Be True, Be Open/Own it, Enjoy it)」という4つの行動指針があります。
これらはマクロミルで働く全ての従業員が大切にしている共通の価値観で、私も大切にしています。
中でも私は、「Be True, Be Open」という価値観を大切にしています。従業員、顧客企業、株主の皆さまをはじめとする全てのステークホルダーと強固な信頼関係を構築するために、誠実でオープンな存在であり続けたいと意識して行動しています。
透明性の高い経営が、最終的には当社に対する信頼を高め、持続可能な成長を支えると信じています。
ぜひ、当社の事業や考え方に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
まずは当社の事業内容を理解していただきたいと思います。
マクロミルは、高品質なデータから導かれるインサイトを提供し、企業の意思決定を支援することで、日本のみならず世界中の人々の暮らしを豊かにすることを目指しています。
当社グループの事業活動が、より良い社会の実現を通じて消費者へと還元されていく、顧客企業と消費者の双方にとってサステナブルな社会共創を推進しています。
今後も引き続き、消費者パネルとの信頼構築、人材育成を活動の礎としながら、新たな価値創出に取り組むとともに、オープンイノベーションの加速、ガバナンスの強化といった事業基盤の強化にも継続して取り組んでいきます。
ぜひ当社の事業や理念に共感していただき、ご支援いただけると幸いです。
株式会社マクロミル
本社所在地:〒108-0075 東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー 11F
設立:2000年1月31日
資本金:1,090百万円(2024年6月アクセス時点)
上場市場:東証プライム市場(2017年3月22日上場)
証券コード:3978