【2428】ウェルネット株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ウェルネット株式会社はクラウドサービス時代の先駆け企業として、イノベーティブな挑戦を続けています。

代表取締役社長の宮澤 一洋氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

ウェルネット株式会社を一言で言うと

「安全・安心・快適・便利なサービス」をITで実現するプラットフォーマーです。

ウェルネットの沿革

ウェルネット株式会社代表取締役社長 宮澤 一洋氏

創業経緯

1996年に、前職で取引のあった会社から「3年間のうちに新規事業を立ち上げる」という条件で移籍、当社を創業しました。

ちょうどインターネットとWindows95が普及し、多くの企業がECを始めた時代で、代金回収に苦労している会社が多くいました。

丁度この時期、コンビニの収納代行が公金から民間にも拡大されたので、このインフラをEC収納代行に活用できると考え、コンビニ決済のパッケージソフトを無償で配布しました。

決済手数料をいただくというビジネスモデルでサービスは瞬く間に広がり、コンビニ決済のパイオニアと呼ばれるようになりました。

決済と認証の強化:QRコードの活用

その後、2000年にリアルタイム現金決済システムを構築したことが更なる事業拡大のきっかけです。

それまでのコンビニ決済は紙の払い込み票を用いた方式で、決済のリアルタイム性が欠けていました。

そこで、ローソンのLoppi端末と当社サーバ、更には航空会社の予約システムを連携することで、航空券代金のリアルタイム現金収納システムを日本で初めて提供しました。

さらに、航空会社に対してはQRコードを携帯電話に表示させて搭乗手続きを行うシステムも開発し、普及させました。

このように決済と認証技術の普及に努め、あらゆる業界に当社システムの導入に成功しました。

最近では関西の鉄道事業者のQRコードによる広域乗車が可能な新しいスキームをローンチしました。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

ウェルネットの事業概要と特徴

概要

当社は受託開発を行わず、自社のアイディアと資金で先進的なプラットフォームを開発し、SaaS型で提供してきました。

誰もまだ気づいていない潜在的なニーズに対して、先取りして開発して事業化することを目指しています。

そのため、即座に市場に適応できる柔軟性と迅速性を備え、ANAやJALといった大手事業者に活用されるプラットフォームの開発・提供をすることに成功しています。

事業における優位性

決済基盤プラットフォームサービス

当社の決済基盤プラットフォームをベースとして、「ALTAIR(アルタイル)」、「しまえーる」、「ekaiin.com」などの高付加価値ソリューションを提供しています。

当社は2016年ごろから、付加価値プラットフォームの構築に積極的に投資してきました。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

その中でも公共交通業界向けのMaaSクラウドサービスのアルタイルは、オールインワンのチケット販売、認証システムです。

具体的には、チケットの予約・販売・発券、路線情報の管理、そして売上情報の集計や事業者間の精算処理などの一連の業務を自動化させています。

このシステムはバス業界で広く活用されており、バス業界を裏側で支えています。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

さらにこのようなオールインワンの販売基幹系システムを提供しながら、様々な収納機関と連携しています。

現在、コンビニ・銀行ATM・ネットバンク・クレジットカード・電子マネーなど様々な決済サービスと連携し、収納機関は多岐にわたります。

また、一般的にこのようなプラットフォームを作る際には決済機能を外部から調達する必要がありますが、当社は自社でも決済システムを保有しているため、大きなアドバンテージとなっています。

いわば魚屋が寿司屋をやるようなものです。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

確かな顧客基盤と導入実績

主要顧客は交通系インフラの企業含め大手企業で、優良顧客が多いことが特徴です。

中でも、当社のしくみが良く浸透しているバス業界では、100社以上のお取引先があり、スマホチケット「バスもり!」を中心に様々なサービスを導入していただいています。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

交通系インフラの事業者以外とも取引を行っており、Amazon、グーグルなどのECサイトとも取引をいただいています。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

ウェルネットの成長戦略

スルッとQRttoのローンチ

交通事業者向けオールインワンクラウドサービスにおいては、2022年から開発に着手したQRコードを活用したデジタル乗車券サービスが、2024年6月に「スルッとQRtto(クルット)」という名称でローンチされました。

これは日本初の広域QR認証事例として注目されており、今後の成長に期待がかかるサービスです。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

組込型電子マネーの開発

当社が提供してきたコンビニ決済は現金決済が主な支払い方法であるため、電子化の流れによってマーケットは今後縮小する可能性があります。

そのような中、私たちは自社で電子マネーを開発し、自社マネーとして活用できるOEM供給を行っています。

そして、交通系の事業者に強いという強みを活かして、現在の交通システムをクラウド型に移行させることができると考えています。

利用者からの見え方はほとんど変わりませんが、事業者にとってはコスト削減に繋がり、サービス導入が今後も進むと考えています。

ウェルネット株式会社 2024年6月期決算説明資料 より引用

+αの提供

決済の電子化はコモディティ化を促進するため、薄利になっていきます。

一方で、業界に関わらずどのような取引でも決済は必須です。

そのため、当社は+αを実現するサービスの開発やプラットフォーム作りに力を入れています。

例えば、郵便局の振込用紙を同窓会の案内状などに封入して送るプロセスを簡単に電子化、ネット上で決済できるようなソリューション提供も始めました。

このように、様々な業界にイノベーションを起こすことができるシステムを開発し、プラットフォーム化して提供しています。

人的資本投資

今後の成長のためには優秀な人材が必要です。

その中でも営業人材として、エンジニアリングができる人材を採用しています。

具体的にはマーケティングサイドの要件定義ができる人材、そしてプログラムを書く側が理解できる要件定義を作成できる人材が求められます。

企画・提案ができる人材と、開発・運用ができる人材、この二つの役割がうまく機能することで、新しいサービスが立ち上がります。

そのようなプレイヤーは希少なため、北海道という地の利を活かしつつ、積極的に確保していきたいと考えています。

そのためにも、2015年から北海道の4つの高等専門学校(高専)に対して、「道新ウェルネット基金」を設立し、経済的困窮に陥った学生を支援しています。

背景として、北海道の離婚率は約18%とシングルペアレントが多く、アルバイトしながら学校に通う学生がドロップアウトしてしまうケースが多くありました。

基金設立後は、ドロップアウトする学生はゼロになり、将来のITを担う人材の育成につながり、高専の学生にとって「ウェルネット」は身近な存在となっています。

こうした取り組みを強化し、優秀な人材を安定的に確保していきたいと考えています。

注目していただきたいポイント

2024年6月のスルッとQRttoのローンチによって、目に見える形で当社のプラットフォームが周知されました。

また、直近では投資家の皆様にわかりやすい資料構成に変え、オンラインで決算説明会を開催するなど様々な取り組みを行っています。

また、開示情報をより詳細にし、透明性を高める取り組みを進めています。

IR含め、当社の事業内容や成長戦略について積極的に発信していきますので、ぜひ注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

ウェルネットは、イノベーティブに挑戦することを企業のコンセプトに掲げています。

もちろん、全てが順調に進むわけではありませんが、これまで多くの成功を収め、ここまで来ました。

そのような中で、2016年からのDXへの大胆な投資により、一時的に利益が減少しました。

そして、その出口でコロナ禍の影響を受け、更なる厳しい状況に直面しました。

しかし、スルッとQRttoのローンチなど、ようやくDX化の投資が成果を上げ、マネタイズのフェーズに入っています。

次世代の成長に向けた準備が整い、今後はこれまでの投資が実を結び、持続可能な成長が期待できる段階に来ています。

投資家の皆様には、これからのウェルネットに大いに期待していただきたいと思います。

ウェルネット株式会社

本社所在地:〒060-0041 北海道札幌市中央区大通東10丁目11番地4

設立:1983年4月1日

資本金:6億6,778万円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2004年12月12日上場)、札証本則市場(2022年9月14日上場)

証券コード:2428

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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