【7865】ピープル株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ピープル株式会社は子どもの成長に寄り添った玩具作りを通じて、子ども達が好奇心丸出しで生きていける社会を目指します。

取締役兼代表執行役の桐渕 真人氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

ピープル株式会社を一言で言うと

「子供の好奇心」を研究し、それに応える玩具を作る会社です。

ピープルの沿革

ピープル株式会社取締役兼代表執行役 桐渕 真人氏

創業の経緯

ピープル株式会社は1982年に玩具事業を創業しました。

私の父は広告代理店から筆記具メーカーに取締役として入社し、その子会社を「ピープル」として独立したことが創業のきっかけです。

父は広告業界で培った知識と経験を活かし、子ども向けの玩具市場に目をつけました。

当時、0歳から3歳の子どもと主婦に絶大な人気を誇る「ひらけ!ポンキッキ」というテレビ番組があり、この番組を視聴する層に向けたビジネスができないかと考え、玩具開発を始めました。

玩具開発に関しては素人だった父は、子どもを観察して玩具を作ろうと考えました。

赤ちゃんだった私からヒントを得たようです。

当時、私はティッシュを引っ張り出す遊びに夢中で、それを見た父は、この好奇心に基づいた行動を玩具にできないかと考え、ロングセラー商品となる「やりたい放題」を1985年に開発しました。

「やりたい放題」を通じて、子ども達が夢中になる玩具を開発する企業として業界内で注目を集め、様々な流通事業者からのお問合せが殺到しました。

その後も子ども達の行動を観察して玩具を開発し続け、新商品をテレビCMで宣伝し、販売するという独自のビジネスモデルで成長しました。

ロングセラー商品への依存と停滞期

2007年に「ポンキッキ」シリーズが終了してしまい、当社の効果的なマーケティング手段を失いました。

ロングセラー商品を抱えていたため、その売上を維持するために、流通事業者や小売店との連携強化に力を入れました。

当社はノンキャラクターの玩具を中心に展開しているため、常に新しいヒット商品を生み出し続けることが求められます。

しかしながら、新商品の開発ペースは鈍化してしまいました。

ロングセラー商品に過度に依存した戦略は長くは続かず、競合他社の参入により、市場シェアの維持が困難になり、マーケティングコストの増大と利益率の低下を招きました。

当社が得意とする新しいヒット商品の開発が停滞し、企業成長は10年以上停滞していました。

企業変革と商品ポートフォリオの見直し

私が代表に就任した2019年に、この状況を打破するために、当社の存在意義を改めて見直そうと考えました。

そこで2022年4月に掲げたのがのが、「子どもの好奇心がはじける瞬間をつくりたい!」という新パーパス

です。

創業当初に立ち戻って、子どもの好奇心に着目した商品開発に注力することを決め、過去の成功に依存せず、新しい価値を創造していくビジネスモデルへ転換しました。

それに伴いロングセラー商品「ぽぽちゃん」の製造を終了するなど、商品ポートフォリオを見直し、新しいヒット商品を継続的に生み出すための体制強化を図りました。

現在は新体制の下、好奇心事業の立ち上げやグローバル展開など、成長投資を進めています。

ピープルのパーパス
ピープル株式会社 より提供

ピープルの事業概要と特徴

概要

ティッシュを引っ張り出す「やりたい放題」や、磁石プレートで造形する「ピタゴラス」、女の子でもDIY遊びができる「ねじハピ」など、子どもの好奇心を引き出す玩具を開発しています。

「子どもに身近なキャラクター玩具であれば喜んで遊ぶのでは」という親の認識に対し、私達はあくまで「子どもが飽くことなくよく遊ぶ玩具」というコンセプトにこだわり続けています。

単なる遊び道具としてだけでなく、好奇心を満たすことで子どもたちの成長を無理なく促し、個性を育む助けにもなっています。

事業における優位性

子どもの好奇心に根差した商品開発

ピープルの最大の強みは、子どもの好奇心に根ざした商品開発にあります。

40年以上にわたって続けてきた「子どもの観察」というアプローチは、単なる開発手法にとどまらず、ピープルの企業文化そのものとなっています。

この子どもの観察を通じて、子ども達が何を楽しんでいるのか、どのような刺激を求めているのかを深く理解し、それに応える玩具を作り続けることが可能です。

例えば、私達の玩具は他社と比較しても、ブラインドテストでほぼ100%の確率で子ども達に選ばれます。

これは、当社の玩具が本当に子ども達の好奇心を捉えている証拠です。

これまでも好奇心に根ざした商品開発で数々のヒット商品を生み出してきました。

初代「やりたい放題」
ピープル株式会社 より提供

ピープル赤ちゃん研究所

ピープルにとって欠かせないのが、「こどもモニター」の存在です。

創業以来、社員達が日常的に赤ちゃんの行動を観察し、その行動から仮説を立てて、その検証のためにこどもモニターに協力をしてもらい、商品開発に結びつけます。

大人にとっては何でもない日用品でも赤ちゃんにとっては興味深く手に取っている、そんな行動をつぶさに観察し、商品開発に反映させることがピープルの強みです。

その強みを象徴する新事業として生まれたのが「赤ちゃん研究所」で、親子を対象にした「赤ちゃんをあじわうワークショップ」は毎回予約枠がいっぱいになる人気ぶりです。

また、社員の約4割が育児中であり、企業文化として子どもを会社に連れてくることは日常茶飯事です。

世間一般に、この話をすると驚かれますが、子どもの観察を強みとする私達にとって、子ども達との触れ合いは必要だと考えています。

社員のほとんどが子どもに関心を寄せているため、社内にいる子どもたちの相手をすることが自然のことと捉えています。

株主総会においては2023年より「子どもまんなか株主総会」として議場内にお子様スペースを設け、株主の方はお子様と一緒にご出席頂けます。これは他に類を見ない取り組みのようです。

このような子どもや子育てへの真摯に向き合う取り組みは、当社が開発する玩具への信頼感と期待感に繋がっています。

「ピープル赤ちゃん研究所」のメンバー
ピープル株式会社 より提供

商品開発コンペ

私達は新商品の開発を推進するために、社内の全社員が参加できる商品企画コンペを導入しています。

社員全員がアイデアを出し合い、その中から最も優れたものを商品化するというコンペです。

アイデアの良し悪しは経営陣が判断するのではなく、全社員の投票で決めます。

通常、商品企画は一部の担当者が行いますが、ピープルは全社員が商品開発プロセスに関与しているため、多様な視点でアイデアが集まっています。

2022年からこの取り組みを始めており、現在7つのプロジェクトが進行中です。

赤ちゃん研究所もこのコンペから始まり、既に一つの事業部として機能しています。

このように、社員のアイデアに溢れていることも強みです。

ピープルの成長戦略

市場環境とポジション

かつては、親や祖父母が同居している家庭や、地域全体で子育てを支援する環境が一般的でした。

このような環境では、育児に関する知識やノウハウが自然に受け継がれてきました。

しかし、核家族化が進む現代では、こうしたサポートが希薄化し、インターネットなどを頼りに情報収集しています。

インターネットの情報は偏りもあり、信頼できる情報はどれか取捨選択しながら探すことは困難です。

この問題は玩具選びにも影響しており、どのような基準で選べばよいのか分からず、他人の意見やネットの口コミに過度に依存しています。

こうした情報過多の時代において、当社は確かな情報を提供し、世の中の子育てに関するリテラシーを高めていくことが役割と認識しております。

「子どもまんなか株主総会」の様子
ピープル株式会社 より提供

コーポレートブランド戦略

ピープルの玩具は子ども達から圧倒的な支持を受けています。

しかし、この優位性を活かすためには、なかなか意思表示のできない子ども達ではなく、購入者である親に魅力を伝えることが必要です。

テレビCMなどの広告が効かなくなった現代において、私達は広報活動に力を入れ、コーポレートブランディングを強化しています。

具体的には、メディアを活用して子育てに関するトピックや好奇心の研究、商品開発の裏側などを発信しています。

この発信により、購入者である親達に「子どものことをここまでしっかりと考えてくれている企業があるんだ、ピープルのおもちゃなら信頼できる」というように安心感を与え、最終的には玩具の購入に繋げていきたいと思っています。

玩具市場で「子どもに真摯に向き合う玩具メーカー」という認識が広がりつつあり、広報活動の手応えを感じています。

今後も積極的な広報活動を通して、ピープルという会社を多くの人に知っていただけるように、当社の魅力を発信していきます。

好奇心事業のローンチ

2025年春から、本格的に好奇心事業をスタートさせます。

好奇心事業は、好奇心に基づく玩具開発から、より広範にアプローチすることで新たな価値を創出する新たなビジネスです。

開示前のため、お話しできることは少ないですが、商品開発の枠を超えて、子ども達の好奇心を引き出すためのプロジェクトを進めています。

プロジェクトの中の1つ、グローバルプロジェクトでは海外の子ども達の好奇心を探求し、それに応える商品を開発しています。

これまでは日本市場向けに特化してヒットした玩具を海外向けにカスタマイズして販売していました。

しかし「やりたい放題」はティッシュを引っ張り出す遊びにヒントを得て開発しましたが、海外にはティッシュを使う習慣がない国もあります。

そこで、海外の日常生活もリサーチし、子ども達が何に興味を持っているのかを観察し、世界に共通する子どもの好奇心のポイントを見つけ出しました。

このような研究の結果、世界中の子ども達の好奇心を引き出す玩具など、新たな市場を開拓する可能性を秘めたプロジェクトが進行中です。

注目していただきたいポイント

少子化が進む日本市場において、子ども向けビジネスは縮小傾向にあると見られがちです。

しかし、私達は子どもの好奇心に無限の可能性を感じています。

好奇心は時代や場所を超えて普遍的なもので、子ども達が何かに興味を持ち、それに夢中になる瞬間は、子ども達の成長にとって重要です。

ピープルの役割は、好奇心を高める玩具で子ども達の個性を伸ばし、成長を促すことだと考えています。

コロナ禍や社会の変化により、子育ての価値観が変化しています。

従来のおもちゃに対するニーズも変わりつつありますが、子どもの好奇心は変わりません。

今だからこそ、子ども達の好奇心を引き出す玩具が求められているはずです。

この外部環境の変化に対応し、新しい玩具を生み出すことで、市場を切り拓いていきます。

私達の新しい取り組みや情報発信にご注目いただけると嬉しいです。

投資家の皆様へメッセージ

私達は、「子どもの好奇心を丸出しにする社会」を実現していきます。

例えば、男の子だから、女の子だからといった既成概念にとらわれず、もっと自由に自分の好きなことを追求できる社会です。

大人も、日々の生活の中でさまざまなことに好奇心を持ち続け、新しいことに挑戦する姿勢を持つべきだと考えています。

私達が目指しているのは、そうした好奇心が尊重される社会です。

投資家の皆様には、私達のビジョンに共感いただき、子ども達の未来を支える私達の取り組みを応援していただければと思います。

ピープル株式会社

本社所在地:〒103-0004 東京都中央区東日本橋2-15-5

設立:1977年10月1日

資本金:2億3,880万円(2024年8月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(1998年4月7日上場)

証券コード:7865

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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