【4323】日本システム技術株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月8日に実施したIRインタビューをもとにしております。

日本システム技術株式会社は完全独立系のSIerとして、長年培った確かな技術力と人徳経営を支える人間力でお客様の課題に寄り添います。

代表取締役社長の平林 武昭氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

日本システム技術株式会社を一言で言うと

人徳経営で企業のDXを進め、新たな未来を創る会社です。 

日本システム技術の沿革

日本システム技術株式会社代表取締役社長 平林 武昭氏

創業経緯

私が社会に出た62年前は、まだコンピューターが「電子計算機」と呼ばれていました。

当時、プログラマーとして働いていた私は、コンピューターの無限の可能性に感動し、将来この技術が社会に革命をもたらすと確信しました。

しかし、コンピューターのハードウェアにばかり注目され、ソフトウェアは蔑ろにされていました。

しかし、実際にコンピューターの機能を活かして社会に豊かさをもたらすのはソフトウェアだと考えていた私は、ソフトウェアの価値を世の中に広め、産業として確立させたいという信念の下、起業を決意しました。

創業時には「ソフトウェアファースト」かつ、「理念ファースト」を掲げて持続可能な経営を目指して事業を始めました。

パッケージソフトの開発

当初は開発実績や資金が乏しく、派遣型のビジネスを展開していましたが、取引先から徐々に認められ、事業規模を拡大し、受託開発を請け負うまでに成長しました。

その後、受託型のビジネスを展開する中で、自社プロダクトを開発したいと考え、世の中の「不」を解消するソフトウェアを開発しようと考えました。

社会課題にアプローチし、不安や不満、不便などを解消していくことが、当社の成長に繋がるはずだと革新し、まずは教育分野に目をつけました。

日本の教育は世界的に見て優れていますが、システム面では世界的に見てもかなり遅れを取っていました。

中でも高等教育を行う大学における事務管理やポータルサイトの管理システムは大学毎に異なり、標準化されたシステムは存在しませんでした。

そこで当社は、事務システムとポータルシステムを統合した大学向け総合パッケージソフトを開発し、1994年から「GAKUEN」シリーズを発売しました。

現在、「GAKUEN」は470校以上の高等教育機関に導入されており、事務システムデータを一元的に管理することで、業務の効率化や教育の質の向上に貢献しています。

日本システム技術株式会社 より提供

また、2009年から医療ビッグデータ事業を開始し、2010年8月から診療報酬明細書の自動点検システム「JMICS」のサービスを始めました。

国民健康保険など様々な保険者に横断的に活用していただき、現在は全国で約300の保険者との取引があります。

取り扱うレセプトデータは月間1,000万人に上り、近年、このビッグデータの利活用について健康保険組合や製薬業界などから注目を集めています。

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さらに、金融機関向けのシステム開発にも注力し、金融機関の業務をDX化するシステムをパッケージ化して提供する「BankNeo」シリーズを提供してきました。

2021年から発売を開始した「SMART BankNeo」は地方銀行や信用金庫などを対象に、必須業務に絞ることで、安価に導入できるようにスリム化したパッケージ商品です。

地方銀行や信用金庫などのDX化ニーズは高く、徐々に「SMART BankNeo」の導入が進んでいます。

日本システム技術株式会社 より提供

このように、当社は「共創DX」パートナーとして多岐にわたる業界に、業界水準となるようなパッケージシステムを開発し、顧客に寄り添いながら導入を行ってきました。

実務の効率化や体系化に役立ち、企業の成長をサポートする存在として挑戦を続けています。

日本システム技術株式会社 より提供

日本システム技術の事業概要と特徴

概要

当社はDX&SI事業、パッケージ事業、医療ビッグデータ事業、グローバル事業の4つのセグメントで事業を展開しています。

DX&SI事業では長年培ってきたデジタルに特化した技術力と専門知識を活かし、お客様に寄り添いながらDX化を進める「共創DX」を推進しています。

パッケージ事業では、自社ブランドのパッケージシステムを提供し、包括的なITサービスを展開しています。

国内トップシェアを誇る「GAKUEN」や金融機関の業務効率化を実現する「BankNeo」などのパッケージシステムがあります。

医療ビッグデータ事業では、「JIMICS」を通じて得た医療ビッグデータを利活用し、産学官の連携による総合医療DXを推進しています。

グローバル事業では、40年を超えるアジア諸国での実績を背景に、グループネットワークを活かし、アジアと世界のDX化をサポートしています。

現在はアジアに進出する日系企業や現地企業のSAPやSalesforceなどの導入支援を通じて、DX化を推進しています。

日本システム技術株式会社 より提供

事業における優位性

理念ファーストの経営と優秀な人材

当社の最大の強みは、「理念ファースト」による経営と高い「人間力」を持つ人材です。

社員一人ひとりが経営理念を深く理解し、日々の業務に反映させることで、お客様にとって真に価値あるサービスを提供しています。

技術力だけでなく、社員の人間力を重要視するこの経営理念は、お客様との長期的な信頼関係を築くことに繋がっています。

この経営理念を基に行う人材育成により、早期に第一線で活躍できるような人材を育てています。

そのため現場に新入社員を投入しても、ビジネスパーソンとして教育されている人材であるため、お客様からお褒めの言葉をいただくほどです。

当社の社員は経営理念・企業理念に共感して入社してくる人材がほとんどです。

IT業界は離職率が高いことが特徴ですが、入社後のギャップを感じることが少ないため、当社社員の離職率は非常に低く、優秀な人材を留めおくことができています。

日本システム技術株式会社 より提供

「完全独立系」ならではの提案力

完全独立系のSIerである当社は、特定の企業や業界に縛られず、自由な提案が可能です。

SIerの多くは、大手企業の傘下にあるなど、何かしらのしがらみに囚われていますが、当社は完全独立系です。

そのため、金融、通信、流通、製造といった幅広い業界において、個別のニーズに応じた提案ができることが大きな強みです。

上流から下流までワンストップ寄り添う「共創DX」パートナー

システムの企画・設計から開発、導入、運用保守まで、上流から下流まで一貫してサポートする「ワンストップサービス」を提供しています。

この体制により、お客様は複数のベンダーを管理する手間を省くことができ、プロジェクト全体の効率を大幅に向上させることが可能です。

また、システム開発の途中で発生する問題にも迅速に対応し、お客様のDX化に寄り添う提案をしています。

教育分野や医療分野、金融分野における長年の実績を通じて、顧客が信頼して依頼できる「共創DX」パートナーとしてのポジションを築いています。

日本システム技術の成長戦略

JAST流DX構想

長期成長戦略は当社ならではのDX推進イメージを反映させています。

具体的には、本業と経営管理のDX推進活動成果を余さず活用し、事業発展、生産性向上、市場価値向上の循環構造を作っていきます。

本業のDX事業については、既存事業の安定化と新技術の活用、新規事業開発が主なテーマです。

各業界に対してDXを進めながら、取引の拡大を目指します。

また、社内の経営管理におけるDX化も並行して進めています。

社内の業務効率化やデジタル化を進めることで、内部リソースの最適化を図り、ここで得た知見を外部に提供するためにナレッジを蓄積しています。

このノウハウを活かして、各業界のDX化を推進し、好循環を生み出していくことがJAST流DX構想です。

日本システム技術株式会社 より提供

未来共創Lab

未来共創Labは、当社の新規事業開発において中心的な役割を果たしています。

ここでは、未来の社会課題に対するソリューションの創出を目指し、さまざまな分野での研究開発や新規事業の立ち上げを行っています。

例えば、医療分野では、メディカルビッグデータを分析して、新たな商材開発に繋げています。

また、産学連携を通じて社会に貢献していくだけではなく、共創DX型による新たな商材開発を行いながら、次に事業化し得る新しい”タネ”を探しています。

積極的に、生成AIなどの新技術を活用しながら知見を広げ、新たな事業領域拡大に向けた取り組みを進めていきます。

日本システム技術株式会社 より提供

グローバルへの拡大

国内市場の縮小に伴い、当社はグローバル市場への展開も積極的に進めています。

現在、シンガポール、タイ、マレーシア、中国、インドなどのアジア地域を中心に事業を展開しています。

特に、インドとマレーシアを拠点に、SAPやSalesforceの導入を軸としてERP事業を展開しています。

今後もグローバル成長を加速させていくためにも、DX市場の成長率の高い地域を選定し、戦略的に拡大させていく方針です。

日本システム技術株式会社 より提供

M&A/グループ拡大戦略

当社は、M&AやCVC機能を通じてグループ拡大を図っています。

M&Aに関しては、国内外問わず、当社の成長戦略に合致する企業をターゲットにしています。

経営者の資質や、事業シナジーなどあらゆる観点からM&Aに値するかを判断し、適切に進めていきます。

日本システム技術株式会社 より提供

CVCに関しては、将来性のあるスタートアップ企業への投資を進めながら、新たな事業領域拡大を目指しています。

直近では、沖縄における陸上養殖ビジネスの成長へ向けて、Land Aqua Culture Innovation株式会社に出資しました。

国内人口の減少と担い手の不足により水産業の衰退が懸念されていますが、陸上養殖ビジネスはその社会課題を解決する一手だと期待しています。

出資を通して、地方創生や食糧不足の解消、環境負荷の低減など広範な社会貢献を行うことができると判断しました。

さらに、陸上養殖技術の革新を目指し、魚種ごとの最適な養殖条件データベース構築やIoTとAIを活用した養殖場のモニタリングなど、様々な形でサポートしながら貢献していきたいと考えています。

日本システム技術株式会社 より提供

注目していただきたいポイント

これまで日本は不動産業や製造業など、有形資産に頼ったビジネスモデルで成長してきました。

しかし、これからは無形資産、つまりソフトウェア開発における技術力や人間力が試される時代です。

近年、人的資本投資や人的資産という言葉が叫ばれていますが、当社は創業期から「人」に重きを置いて経営を進めて参りました。

そして、私たちは「夢やロマン」を持って、それらの実現のために日々挑戦しています。

企業の第一の目的は、新しいマーケットを創出することだと考えています。

社会のために、お客様のために「良い仕事」をしていれば利益は結果として後からついてきます。

人間力を高め、変化に対応するための新たなチャレンジが企業の成長には必要です。

この新たなチャレンジを支える、当社の「人徳経営」と呼ぶ独自の経営スタイルに注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

当社は「人徳経営」に基づき、社員一人ひとりが理念を理解し、業務で実践しています。

IT業界は変化の激しいマーケットですが、社員一人一人が経営理念に基づき、お客様ファーストの視点でビジネスを行っています。

その「人間力」を活かして、外部環境の変化を恐れず挑戦し、時代の変化に柔軟に対応してきました。

今後も挑戦することを忘れず、新たなビジネスチャンスを創出するための成長投資を企業全体で進めています。

投資家の皆様には、当社の経営理念やビジョンに共感していただき、長期的な視点で応援していただけると嬉しく思います。

日本システム技術株式会社

本社所在地:〒530-0005 大阪市北区中之島二丁目3番18号(中之島フェスティバルタワー29階

設立:1973年3月26日

資本金:15億3,540万円(2024年3月31日時点)

上場市場:東証プライム市場(2001年11月6日上場)

証券コード:4323

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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