【9418】株式会社U-NEXT HOLDINGS 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社U-NEXT HOLDINGSは「NEXT for U」をコーポレートスローガンに掲げ、個人向け動画配信サービス「U-NEXT」や店舗向け音楽配信サービスなど5つの事業を展開しています。

代表取締役社長CEOの宇野 康秀氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社U-NEXT HOLDINGSを一言で言うと

世の中のすべての人々の未来のために、エンターテインメントとテクノロジーで、未来をもっとより良く、新しいものにしていく会社です。

U-NEXT HOLDINGSの沿革

株式会社U-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO 宇野 康秀氏

創業の経緯

U-NEXT HOLDINGSのルーツは、1961年に私の父が立ち上げた「大阪有線放送社」にあります。

当時、飲食店などでは音楽を流す際にレコード盤が用いられ、従業員がバックヤードに戻ってレコード盤を裏返す、という非効率的な作業を負担していました。

父は、「この作業負荷を減らす事ができれば店舗運営をもっと円滑なものにできるのでは」と考え、店舗向け音楽配信「有線音楽放送」を開始しました。

このサービスは手軽に店内音楽を顧客提供できる省力化ソリューションとして、飲食店や商業施設から高い評価を得ることとなり、瞬く間に全国に広まり、トップシェアを獲得しました。

商用光ファイバーの提供

1998年に父が他界したため、私が会社を引き継ぐことになりました。

当時、私は「インテリジェンス(現 パーソルキャリア)」という人材会社を立ち上げて代表を務めていましたが、その代表を辞めて当社に参画しました。

代表就任後は、電柱を無断使用してケーブル線を引いていた状況を変えるべく、全国720万本の電柱の不正使用を是正し、2000年には全ての電柱で正常化を完了させました。

また、2001年には店舗向け音楽配信で使用していたケーブル線を活用し、世界初の商用光ファイバー・ブロードバンドサービス(現 通信事業)を開始しました。

インターネットが社会を変えると確信していた私は、通信事業の開始をきっかけにインターネット業界に進出、2005年には動画配信サービスとして「GyaO」を立ち上げ、その後、2007年には「GyaO NEXT(現 U-NEXT)」を創出しました。

リーマンショックとU-NEXTの独立

インターネットの加速とともに、当社も成長スピードを加速するために積極的なM&Aを推進しました。

しかし、2008年に発生したリーマンショックによって経済状況が急激に悪化し、当社も一部事業の売却を余儀なくされました。

そして、U-NEXTがグループから分離独立し、独自に上場させるなど、事業の再構築を進めました。

USENとU-NEXTの経営統合

コンテンツ配信事業で成長を加速させていきたいと考えていたU-NEXTには磐石な財務基盤が必要でした。またUSENはBtoB事業を通じて安定した収益基盤があるものの成長事業の創出に課題感を抱いていました。

両社ともに事業成長はしていましたが、経営統合により事業シナジーを生み出せると考え、2017年にUSENとU-NEXTは再統合し、現在のUSEN & U-NEXT GROUPが発足しました。

統合後は、7期連続(※2018/08期の8ヶ月決算値を12ヶ月換算)で増収増益を達成し、着実に事業を成長させています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

U-NEXT HOLDINGSの事業概要と特徴

概要

当社は5つのセグメントで事業を展開しています。

まず、コンテンツ配信事業として動画配信サービス「U-NEXT」を運営しています。

主にBtoC向けの事業であり、競争が激しい中でも、定額制動画配信サービスの国内シェアでNo.2のポジションを誇っています。

また、BtoB向けに、店舗サービス事業、業務用システム事業、通信事業、エネルギー事業という4つの事業を展開しています。

祖業である店舗向け音楽配信サービスを始めとする各種店舗運営支援や、ホテル・病院に対する自動精算機の製造販売、通信回線の提供、電力など、店舗や施設向けサービスを提供しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

事業における優位性

BtoC事業の強み

動画配信サービス「U-NEXT」の戦略は、様々なニーズを取り込む”百貨店戦略”です。

これは特定のコンテンツやジャンルに偏ることなく、幅広いユーザー層に向けて、様々なジャンルの作品を提供する戦略です。

新旧問わず、映画、ドラマ、アニメ、さらにはライブコンテンツなど、33万本以上の幅広い作品を提供しており、他社サービスに比べ圧倒的なラインアップ数を誇ります。

ユーザーにとって“見たいものが何でも揃っている”ことが大きな強みとなり、独自のポジションを築いています。

NetflixやAmazon Prime Videoといった配信サービスが競合であると思われることが多いですが、共存できる関係性です。

他社サービスは、オリジナル作品による差別化戦略を主軸にユーザー獲得へ注力していますが、当社はコンテンツ数のラインアップの豊富さを競争優位性にすることで、ユーザーに他社サービスと併用してもらうことを狙っています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

また、近年は独占配信作品の強化を進めており、特に音楽ライブの配信やスポーツ中継が人気を集めています。

コロナ禍以降、音楽ライブのオンライン配信が急速に普及したこともあり、“ライブ感”を求めるユーザーが増えました。

直近では欧州サッカーで人気を集めているプレミアリーグの独占配信をスタートさせ、新規のターゲットでもある、スポーツファンの獲得にも成功しています。

さらに、ポイント制を導入していることも差別化要因です。

ユーザーは、月額料金の一部がポイントとして付与され、そのポイントを使って最新の映画のレンタル作品を視聴したり、書籍の購入、さらにはライブ配信のチケット購入や映画館チケットの購入に充てることができます。

この戦略は、ユーザーへ他社にはない付加価値を提供し、継続利用のきっかけにも繋がっています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

BtoB事業の強み

BtoB事業の中でも、店舗サービス事業は祖業の店舗向け音楽配信を基盤としてスタートした事業です。

現在は、店舗に対して幅広いデジタルソリューションを提供する総合的なビジネスに昇華しています。

通信回線やクラウドベースのオペレーションシステム、店舗向けのデジタルデバイスなど多岐にわたるソリューションを展開しています。

開業から集客支援に至るまで、あらゆるソリューションを用いて店舗の運営をサポートしています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

また、60年以上積み上げてきた全国に広がる顧客基盤は当社の強みです。

飲食業だけでなく、小売や理容院、美容院、オフィス、クリニックなど幅広い業種との取引があり、その数は82万店舗まで拡大しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

そして、店舗向け音楽配信では圧倒的なシェアを構築し、この実績が他のサービス導入に繋がっています。

長年の信頼関係が、新サービスの導入などアップセルを創出しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

これだけのシェアを維持し、あらゆるサービスを提案するためには、人材によるサポートが必要不可欠です。

当社顧客の大部分は小規模店舗であり、店舗オーナーやそこで働く従業員の中には、ITリテラシーがあまり高くない方々もいるため、手厚いサポートができるかどうかが取引の決め手になります。

そのような事態に対応できるように、当社のセールススタッフやフィールドエンジニアのネットワークは全国に広がっています。

例えば、セールススタッフは、新規開業を計画しているオーナーと相談しながら、導入システムの提案から設置、運用開始までの全プロセスを一貫してサポートします。

また、タブレットPOSシステムやキャッシュレス端末などの最新鋭のIoT機器の導入時にサポートが必要な場合でも、すぐにフィールドエンジニアが現場に赴いて対応できます。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

このように、専門性の高い知見やスキルを持った人材が全国各地にいるため、「すべてUSENにお任せ」を可能にし、顧客からはその総合力を評価していただいています。

これが長期的な取引に繋がっており、BtoB事業における当社の強みです。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

U-NEXT HOLDINGSの成長戦略

コンテンツ配信事業の成長戦略

「U-NEXT」については、動画配信市場の成長性を見据え、さらなるユーザー獲得を目指しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

今後も“百貨店戦略”を継続し、コンテンツラインアップの拡充を進め、全ジャンルNo.1戦略を通じて現在の約430万ユーザーからまずは600万ユーザーまで拡大させることが目標です。さらに長期的には、1,000万ユーザー、国内でNo.1のポジションを目指します。

映画、ドラマ、アニメ、さらには音楽ライブやスポーツ中継といった多様なジャンルをカバーすることで、世代や嗜好を越えたユーザーを獲得していきます。

また、これまでアプローチが難しかった高齢者層にアプローチするためにも、古い映画や懐かしのドラマなど、幅広いコンテンツの提供も始めています。

さらに、デジタルとリアルを組み合わせた、多面的なユーザー獲得に繋がるマーケティングに注力しています。

これまでのナレッジを活用して、効果的なデジタル広告を国内最大規模で展開するとともに、地上波放送を活用してマス層へのアプローチを強化しています。

また、全国の映画館や家電量販店、住宅メーカー、自動車メーカーなどの他業種と手を組み、リアルな場でのプロモーションにも力を入れています。

例えば、映画館では上映前の予告編や館内広告を通じてU-NEXTのサービスやポイント制度を訴求することで、新規ユーザーの獲得に繋がっています。

このような独自のマーケティング戦略で、ユーザー獲得を加速させていきます。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

店舗サービス事業の成長戦略

開業準備段階で商談を行うことで、複数商材のセット成約に直結するため、新規オープン店へ注力していきます。

パートナー企業との提携も積極的に行っており、設計会社や不動産管理会社など、新規開業の情報を持っている業界関係者と連携して、顧客紹介を受ける体制を整えています。

現在、全国17,000社のパートナーネットワークにまで広がっています。

また、セールススタッフが日常的に街を回りながら出店情報などを収集し、新しい店舗や施設がオープンするタイミングで、必要なデジタルソリューションを一括して提供できるような準備を整えています。

このように、新規オープン店の9割以上を早期に捕捉できる体制を構築しており、新規契約に繋げています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

また、複数商材を提供する中で、店舗のニーズに合わせて商品のラインアップを拡充させています。

商品については、IoT機器やDX商材が多く、配膳ロボットや清掃ロボット、デジタルサイネージ、大容量Wi-Fi機器、店舗向け映像配信サービスなど多岐に渡ります。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

近年はキャッシュレス決済市場が伸びているため、キャッシュレス端末の導入が盛んです。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

地方では未だキャッシュレス化が遅れている店舗も多く、キャッシュレス未導入先への積極的な営業を推進しています。

また、既存店に対しては新商品開発などを進め、付加価値向上へむけた取り組みを行なっています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

クラウドカメラの市場も伸びており、クラウドカメラの販売強化も積極的に行なっています。

監視カメラだけでなく来店客の分析も可能とする機能を備えたカメラも取り揃えているため、幅広い提案が可能です。

今後は飲食や小売だけではなく、病院、工場、マンション、駐車場、公共施設など様々な業界での需要が高まっていくため、成長分野として期待しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

業務用システム事業の成長戦略

自動精算機の導入に関してはレジャーホテルやビジネスホテル、総合病院で国内No.1のシェアを獲得しています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

今後は成長余地の大きいクリニックや調剤薬局向けの導入支援に力を入れていきます。

また、地方の観光ホテルや旅館などにも未導入先は多く、当社の全国ネットワークを活用して更なる拡販を狙います。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

通信事業の成長戦略

通信事業の4つのサービス領域のうち、法人向けICTと業務店向け自社光回線を成長領域としています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

どちらもリカーリング収益モデルが期待でき、BtoB事業であるため安定的な収益基盤を確立することができます。

法人向けICTに関しては、当社の強みである手厚いサポート体制を活かし、「ひとり情シス」と呼ばれる情報システム部門の人員が少ない企業に対して寄り添った提案を行いながら、ワンストップのICT提案を進めます。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

また、業務店向け自社光回線については、店舗サービス事業におけるアップセルとしてシナジーを発揮しています。

現在、回線取次(フロー収益)の既契約先に対し、自社回線へスイッチすることで、リカーリング収益へ転換を図っています。

自社回線の切り替えはIoT機器やDX商材のアップセルに繋げる事ができるため、店舗サービス事業との更なるシナジーを創出できると考えています。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

エネルギー事業の成長戦略

エネルギー事業はBtoB事業の一環として、通信やDXソリューションと連携し、顧客に対する一貫したサービス提供を目的に開始しました。

店舗や企業が使用する電気料金の削減を実現し、浮いたコストをDX投資に活用していただくことが目的です。

特徴として、当社は再生可能エネルギーを利用した電気を使用しているため、SDGs対応に積極的な店舗や企業からの引き合いが多くなってきています。

そこで、脱炭素コンサルティングなどカーボンニュートラルへ向けた取り組みをワンストップで支援する施策を進め、契約件数の拡大を目指していきます。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社の中長期的な成長ポテンシャルにご注目いただきたいです。

ビジネスモデルはリカーリング収益のため、安定した事業基盤でキャッシュフローを確保することが可能です。

そして、安定的に獲得できるキャッシュを成長投資に回すことで、持続的な成長を実現しています。

決して既存のビジネスに囚われることなく、常に時代の変化を先取りし、これからのニーズに対するサービスを展開していきます。

そのように将来的に成長余地の高いビジネスに先行投資しながら事業を拡大し、売上高1兆円を目指し、売上高100億円の会社を100社作るという構想を掲げています。

私たちの強みをしっかりと活かせる事業を創出し、この目標に向けて着実に成長していきたいと考えています。

ぜひ、当社の安定的で柔軟な事業基盤と自社の強みを活かした成長戦略に期待していただければと存じます。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 2024年6月 イントロダクション資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

U-NEXT HOLDINGSは、時代の変化を先取りし、リカーリング収益モデルに基づいた堅実なビジネスを展開しています。

当社は7年連続で増収増益を達成し、今後も着実に成長していく見込みです。

私たちの強みは、安定した収益基盤を持ちながらも、常に次の一手を考え、柔軟な対応ができるところにあります。

未来を見据えた確かな舵取りを行い、投資家の皆様にもご満足いただけるよう、引き続き企業価値向上を目指した経営を進めて参りますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社U-NEXT HOLDINGS

本社所在地:〒141-0021 東京都品川区上大崎三丁目1番1号 目黒セントラルスクエア

設立:2017年12月1日(創業:1961年6月1日)

資本金:97百万円(2023年8月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2014年12月16日上場)

証券コード:9418

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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