※本コラムは2024年8月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社イノベーションは成長市場領域に注力し、「働く」を変えるDXソリューションカンパニーです。
代表取締役社長の富田 直人氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社イノベーションを一言で言うと
「働く」を変える、DXソリューションカンパニーです。
イノベーションの沿革
創業経緯
私は前職のリクルート時代に、IT業界向けの営業支援やマーケティング支援を行っていました。
当時、IT企業は優れた製品を持ちながらも営業活動が得意ではなかったため、展示会への出展によるインサイドセールスや代理店からの紹介が主な営業手法でした。
これでは仮に良い商材があっても普及しないだろうと考え、IT企業の営業手法を変革するという想いの下、2000年末に独立して当社を創業しました。
当初はBtoB企業向けの営業支援としてテレアポ代行を行い、IBM、富士通、NECといった大手IT企業を主要顧客として事業を拡大しました。
さらに、グーグルやYahoo!でリスティング広告を展開できるようになった頃から広告代理業を開始し、数年で10億の売り上げを突破するまで成長しました。
ITトレンドの確立
2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災など、外部環境の大きな変化や経済停滞などが原因で、テレアポ代行やリスティング広告の受注が減少しました。
また、労働集約型のビジネスモデルでは利益率が低く、中長期的に安定して事業を継続することが困難だと考えたため、ビジネスモデルの転換を図りました。
クライアントの景気に左右されず、安定的に収益を確保できるビジネスを試行錯誤し、選択と集中を行った結果、2007年にスタートしていた、B2B商材のマッチングプラットフォーム「ITトレンド」に注力することにしました。
「ITトレンド」はDX商材やサービスを様々なターゲットに届けるためのWEBメディアで、効率良く確度の高い見込み客を企業に送客することが可能です。
2016年にはこのビジネスモデルを基盤に、当社は東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。
金融領域への進出
2019年に株式会社Innovation IFA Consultingを設立し、金融業界に事業領域を拡大しました。
私個人の証券取引における経験から、一般的に流布している証券営業の在り方に疑問を持っており、「もっと顧客本位の営業ができるのではないだろうか」と考えていました。
そのような中、証券業界にはIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)と呼ばれる存在がいることを知りました。
IFAは、顧客の資産運用に対して中立的なアドバイスを提供し、従来の証券営業とは異なるアプローチで、より顧客のニーズに応えることが可能です。
そこで、金融業界に一石を投じる想いで、IFA法人を設立しました。
また、M&A業界にも進出しており2020年に株式会社Innovation M&A Partnersを設立しました。
M&A業界は非常に競争の激しい業界ですが、私たちの強みを活かした今までのM&A業界にないような取り組みを行ってまいります。
イノベーションの事業概要と特徴
概要
オンラインメディア事業、ITソリューション事業、金融プラットフォーム事業、VCファンド事業の4つのセグメントで事業を展開しています。
祖業であるオンラインメディア事業では、B2B商材のマッチングプラットフォームである「ITトレンド」が主力サービスです。
また、B2B特化の動画プラットフォーム「bizplay」を運営し、展示会や説明会などリアルイベントの場である「ITトレンドEXPO」の開催などを通じて、当社サービスの利用を促進しています。
このオンラインメディア事業は売上の約70%近くを占める主力ビジネスです。
ITソリューション事業では自社開発したDX商材を販売しています。
「List Finder」の導入企業は1,600社以上で、上場企業シェアNo.1国産マーケティングオートメーションツールです。
その他にも、「Sales Doc.」や「Cocripo」などの企業のDX化をサポートするB2B商材の開発や販売を行っています。
金融プラットフォーム事業では、資産運用コンサルティングを行う株式会社Innovation IFA Consulting、M&Aのコンサルティングを行う株式会社Innovation M&A Partnersを子会社に持ち、金融業界の変革を進めています。
そして、近年はCVCによる投資事業を進めており、幅広い業界のスタートアップに投資を行っています。
当社と事業シナジーを創出できる企業を選定し、共に成長を目指しています。
事業における優位性
絶妙なバランスの「ITトレンド」
当社のオンラインメディア事業「ITトレンド」は、B2B向けのDX商材を必要とする企業と、ITベンダーとの効率的なマッチングを実現するプラットフォームです。
このプラットフォームは、当社がこれまで経験してきたテレアポ代行と広告代理業で得たノウハウを活かして構築されました。
まず、ITベンダーへの送客単価や、どのような見込み客が欲しいのかについては、テレアポ代行を通じて深い理解があります。
また、広告代理業を通じて、リスティング広告などの広告運用や、マーケティングに関するノウハウを蓄積し、ウェブサイトを展開する上で必要となるSEO対策にも精通しています。
このようなノウハウを元に、B2Bマッチングプラットフォーム「ITトレンド」が完成しました。
「ITトレンド」では、カテゴリを細分化し、訪問したユーザーの企業規模やニーズに合わせて導入可能な商材の情報を絞り込んだ上で提供しています。
最終的には複数企業の資料請求に繋げ、ITベンダーから送客手数料を獲得しています。
他社サービスで検索した場合、資料請求の対象となる企業は数十件に及ぶケースもありますが、それではユーザーにとってかなり不便で、営業電話が鳴り止まないなどといったトラブルにも繋がってしまいます。
結局、最終的な導入もされず、ITベンダーからの信頼も失ってしまうため、しっかりと情報を絞り込んで適切なユーザーと企業をマッチングさせることが大切です。
そのため、当社はメディア集客力で集めたユーザーをしっかりとニーズごとに絞り込み、送客に繋げることで、クライアントやユーザー双方にとって価値のあるビジネスモデルを築いています。
金融プラットフォーム事業の成長
近年、IFA業界は、政府の個人投資家への支援策や個人の資産運用の必要性の高まりを背景に、急成長しています。
当社のIFA事業も、良好な業界環境を追い風に着実に事業を拡大しています。
デジタルマーケティングを併用した営業が功を奏し、預かり資産残高が増加したことで、2024年3月期は増収増益を達成しました。
当社所属のIFAの数も増えており、着実に事業を伸長させています。
イノベーションの成長戦略
INNOVATION Ecosystemの確立
当社には、「INNOVATION Ecosystemを確立し、連続・非連続領域での成長を実現する。」という中期コンセプトがあります。
これは、「働く」を変えるというミッションの下、セールス、プラットフォーム、プロダクトという3つのステップを経た事業成長サイクルを構築することが目標です。
例えば、ITトレンドはセールス領域から、そこで得た知見を元にプラットフォームを構築し、最終的には自社商材によるソリューションを提供するビジネスモデルを確立させました。
このように市場を分析し、買い手側や売り手側の課題に合わせたサービスを展開することが可能です。
このITトレンドで培った事業拡大のノウハウを金融業界や他業界へと広げ、「INNOVATION Ecosystem」を確立することで、中期的な成長を実現できると考えています。
既存事業領域における成長戦略
オンラインメディア事業は当社の成長を牽引する主要な事業領域であり、特に「ITトレンド」のさらなる拡大を目指しています。
そのためにも、デジタルマーケティングを強化するとともに、ITトレンドEXPOやbizplayといったリアルおよびデジタルのイベントを通じて、B2Bの顧客に直接アプローチする機会を提供し、より多くのユーザーやクライアントにサービスを利用してもらうことを目標としています。
一方、ITソリューション事業は当社内でも常に課題に感じている事業領域です。
特に、外資系のベンダーが競合他社になりますが、大規模な資本力での事業投資のペースには敵いません。
そのため既存商品に頼るのではなく、独自性を持った製品開発やM&Aを通じて、事業を拡大していきたいと考えています。
また、金融プラットフォーム事業におけるIFA事業に関しては、「ITトレンド」のようなメディアプラットフォームを立ち上げます。
また、SaaS製品の開発も積極的に進める予定です。
具体的にはCVCで投資したMONO Investmentと協業し、新たなSaaS製品としてIFA向けのCRMを提供し、業界を変革を推進するための基盤作りに貢献したいと考えています。
新規事業領域における投資戦略
「ITトレンド」には過去のクライアントも含めると、5,000以上の商材のデータを蓄積していることが分かっています。
また、年間ユニークユーザー数は約2,000万人と膨大な顧客情報を蓄積しています。
このビッグデータを活用することで、新規領域や新規事業の創出ができると考えています。
例えば、これまでは見込み客と外部ベンダーをマッチングするだけでしたが、今後は当社が企業のDXを直接支援するビジネスを立ち上げたいと考えています。
この新規事業への挑戦が、数年後には巨大なビジネスに成長すると期待しており、当社の事業には今後も成長するポテンシャルがあると確信しています。
既存事業領域以外に関してはCVCを通じた支援などを通じて、新たな製品開発やサービス開発を推進していきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
当社が注力している事業領域は、すべて成長が見込まれる分野です。
特にDXは、あらゆる業界で遅れており、大企業ですら対応が進んでいない現状があります。
当社は、「ITトレンド」を通じて、DX化を可能とするB2B商材が必要なユーザーとそれを提供する企業のマッチングを実現してきました。
また、金融業界においてもIFA事業は高い成長可能性を秘めており、国策としても金融への関心が向けられているため、事業環境は良好です。
さらに、M&Aに関しては従来の事業承継だけでなく、スタートアップ企業の事業承継や成長企業とのシナジーを生むようなポジティブなM&Aの支援にも注力していきたいと考えています。
このように、各事業領域で独自の戦略を描きながら中長期的な成長を目指しておりますので、ぜひ今後の展開にご注目いただければ幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
私たちは、ITと金融の両分野で「働く」を変える、というビジョンを持ち、業界を変革する企業として様々な事業に挑戦しています。
DXニーズの高まりや金融業界の変革は当社にとって追い風です。
今後は「INNOVATION Ecosystem」を確立させ、持続可能で中長期的な成長を実現するために事業領域の深掘りと新事業への展開を進めてまいります。
引き続き当社の事業に関心を持っていただき、中長期的な目線でご支援いただければと存じます。
本社所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-10-13 TOKYU REIT 渋谷Rビル3F
設立:2000年12月14日
資本金:1,211,086千円(2024年3月末時点)
上場市場:東証グロース市場(2016年12月21日上場)
証券コード:3970