※本コラムは2024年9月5日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ハッチ・ワークは月極駐車場を起点としたDXを推進し、業界におけるリーディングカンパニーを目指します。
代表取締役社長の増田 知平氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ハッチ・ワークを一言で言うと
「月極駐車場DX」推進により、モビリティ社会の未来を創る会社です。
ハッチ・ワークの沿革
創業の経緯
当社はインターネット黎明期の2000年に創業されました。
創業者は賃貸業界のデジタル化に大きな可能性を感じ、オフィス賃貸データベースの提供を目的として事業をスタートしました。
当初の売上はほとんどありませんでしたが、会議室の貸出やレンタルオフィスの管理を中心に徐々に事業を伸ばしていきました。
月極駐車場に注目した事業を開始
2010年に月極駐車場検索ポータルサイト「アットパーキング」を立ち上げました。
これは私が、月極駐車場を探す経験を通じて、不便だと感じたことがきっかけです。
当時、月極駐車場に関する情報がインターネット上でほとんど公開されておらず、利用者が空き情報を把握することができませんでした。
また、ホテルの予約はインターネットで完結できる一方で、月極駐車場の契約には賃貸物件の契約をするのと同じくらいの手間がかかり、非常に煩雑だと感じました。
この課題を解決するために、駐車場情報をオンラインで検索・契約できるサービスを提供したい、ホテルの予約のように便利なサービスを提供したいと考え、「アットパーキング」を始めました。
当初は駐車場オーナーや管理会社からの協力を得るのに苦労しました。
従来、紙ベースで管理していた情報を、費用を支払ってまでオンライン化するメリットがないと考えられていたためです。
そのため、最初の数年間は、オンラインのデータベースを構築するため、私自身が現地を回って駐車場の空き情報を収集し、管理会社との信頼関係を0から作っていきました。
さらに自社で月極駐車場を管理する事業を運営し、どのような課題があるのか、どのようなニーズが発生するのかを肌で感じながら、ソリューションの開発を進めました。
こうした地道な活動を続ける中で、徐々に問い合わせが増加し、「アットパーキング」が管理会社や利用者に少しずつ認知されるようになりました。
そして2018年、遂に「アットパーキング(AP)クラウド」のサービスをリリースし、月極駐車場をオンラインで管理する時代に一歩近づきました。
東証グロース市場へ上場
クラウドサービスを中心とした事業の成長と、その信頼性をさらに高めることを目的に上場しました。
「APクラウド」は、オンライン決済や滞納保証といったサービスを内包しているため、オーナーや管理会社にとっては、当社の信用力が重要な指標となります。
また、今後さらに月極駐車場のDX化を推進していくためには資金が必要です。
上場によって得られた資金を活用し、内部リソースの拡充などを通じて、APクラウドの登録台数を増やしていきたいと考えています。
今後も月極駐車場業界のDX化をリードし、サービスの拡充と市場拡大を目指します。
ハッチ・ワークの事業概要と特徴
概要
大きく分けて2つの事業を展開しています。
主力事業である月極イノベーション事業では、オンラインでの駐車場契約や決済、滞納保証を含む「APクラウド」を提供し、業界のDX化を進めています。
また、「アットパーキング」を通じた駐車場マッチングサービスも展開しており、利用者が簡単に駐車場を探し、契約できる仕組みを構築しています。
もう1つの事業はビルディングイノベーション事業です。
企業の社内研修やミーティングなどに利用されるような中小規模の会議室を中心に提供しています。
事業における優位性
月極イノベーション事業の強み
まず、最大の強みは「リアルタイムに月極駐車場データを管理・掌握できる」ことです。
全国に展開している5万4,000ヵ所以上の駐車場情報を「アットパーキング」に掲載し、さらに月極駐車場にある約34.5万台分の区画が「APクラウド」に連携されています。
「APクラウド」により駐車場オーナーや管理会社は、空き埋まりの情報をリアルタイムで確認し、契約状況や料金、駐車場のサイズなどを一元的に管理ができます。
また、利用者もリアルタイムで駐車場の空き埋まりの情報を確認でき、オンライン上で簡単に契約と決済を完了できるため、利用者と管理者双方にとって非常に利便性の高いサービスとなっています。
さらに、「アットパーキング」の持つ集客力も当社の大きな強みです。
全国規模で展開される駐車場検索ポータルサイトとして、毎日多くのユーザーが駐車場を探しに訪れます。
また、大手住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」や「at home」ともデータ連携を行っているため、多くの潜在的な利用者へリーチすることができ、駐車場オーナーや管理会社にとっては効率的な集客が可能となっています。
また、当社の収益モデルも独自の強みを持っています。
APクラウドでは、駐車場の管理会社からは月額1万5千円という固定費を徴収する一方で、駐車場の利用者からは決済手数料や滞納保証料を収益として得ており、当社の売上の大半は駐車場利用者からの収入が基盤となっています。
駐車場管理台数にかかわらず固定のシステム利用料のみで導入できるため、駐車場オーナーや管理会社にとってはコストパフォーマンスが非常に高いモデルです。
さらに、APクラウドには滞納保証が含まれており、利用者の支払いが滞った際にも、管理会社がリスクを負うことなく安心して運営を続けられる仕組みが整っています。
このため、エントリーハードルを下げながら利便性の高いシステムを提供しているため、クラウドサービス導入後の解約率は極めて低く、多くの利用者から信頼が寄せられています。
ビルディングイノベーション事業
ビルディングイノベーション事業では、中小規模の会議室に特化して提供しており、東京や大阪など都市部を中心に展開しています。
企業の社内研修やミーティング、小規模なセミナーなどに対応する施設としており、大手が展開している貸会議室事業と異なり、中小型ビルをターゲットにしていることが特徴です。
また、当社には創業以来培ってきたオフィスビルの運営に関する豊富な経験とノウハウがあります。
この経験を活かし、効率的な運営と高い顧客満足度を実現しています。
ハッチ・ワークの成長戦略
APクラウド登録台数拡大
APクラウドの登録台数の拡大が成長戦略の1つです。
現在、全国の月極駐車場のうち、当社のシステム導入によってクラウド化が進んでいるのは全体のわずか1〜2%に過ぎません。
大半の駐車場は依然として紙ベースや電話での予約・管理を行っており、情報のデジタル化が進んでいません。
事実、政府のデータにも月極駐車場の正確なデータは存在しておらず、未開拓の市場です。
私たちは、この巨大な未開拓市場において、APクラウドを通じて効率的な管理と利用者の利便性向上を実現し、業界のDX化をリードしていきたいと考えています。
APクラウドの利便性が業界内で広く認知されれば、導入が広がると考えています。
これまで利用者は現地に足を運び、契約書を手書きで記入し、印鑑を押すといった手続きが必要でしたが、APクラウドではスマートフォン一つで完結しています。
このような利用者側の利便性を武器に、全国各地の駐車場オーナーや管理会社にアプローチし、登録台数を増やしていきたいと考えています。
今後も双方が利便性を感じられるようなサービス開発や、メリットを理解していただけるような営業を積極的に行っていきます。
データの収集と活用
APクラウドは単なる駐車場管理システムに留まらず、月極駐車場に関連するビッグデータの収集と活用を実現しています。
駐車場の稼働状況や契約履歴、利用者の属性など、多岐にわたる情報を蓄積しているため、このデータを活用して、さらに高度なサービスの提供が可能です。
例えば、当社が持っているデータでは全国平均で約20%の月極駐車場が空いており、これらのスペースは収益を生み出していない状態です。
それに対して、近隣の工事関係車両利用者や一時利用者などに向けて「アットパーキングウィークリー」という短期契約ができるサービスの提供を開始しました。
空き駐車場を1週間単位などの短期間で貸し出すビジネスモデルを創出し、不動産オーナーに対して新たな収益機会を提供しています。
さらに、利用者データも非常に役立っています。
例えば、どの地域でどのような車が駐車場を利用しているのか、利用頻度や契約期間などのデータを分析することで、今後の駐車場需要を予測し、最適な場所に新たな駐車場を開設することが可能となります。
このように、これまで収集することができなかった月極駐車場に関するデータを蓄積することで、新たなビジネスの可能性に繋いでいます。
ファーストワンマイルステーション構想
ファーストワンマイルステーション構想は、月極駐車場を単なる車の駐車スペースとして利用するだけでなく、次世代のモビリティインフラとして再定義しようという取り組みです。
日本では少子高齢化により、今後数十年で人口が大幅に減少することが予測されています。
それに伴い、月極駐車場の需要も減少する可能性がありますが、私たちはこの状況を逆手に取り、月極駐車場をスペースとして捉え、新たな用途に転用する可能性を模索しています。
例えば、電気自動車(EV)の充電ステーションや、カーシェアリングの拠点、さらにはドローンの発着場など、未来のモビリティ社会に対応するためのインフラとして月極駐車場を活用できると考えています。
実際に、私たちはすでにいくつかの実証実験を開始しています。
例えば、ある自治体では遊休地を活用したモビリティ拠点としての月極駐車場の運営を提案し、災害時の物資輸送や緊急車両の駐車スペースとしての利用も検討されています。
また、ドローン配送の拠点としても駐車場を活用する試みもあり、地域の物流インフラを支える新たな役割を担うことができると期待しています。
このようにファーストワンマイルステーション構想では、月極駐車場の価値を再定義し、当社の事業領域を大きく拡大する可能性を秘めています。
注目していただきたいポイント
特に注目していただきたいポイントは、単なる月極駐車場に留まらないサービスの創出と、地域貢献などの社会的な意義を持つ取り組みについてです。
ファーストワンマイルステーション構想や自治体との取り組みなど、私たちが提供するサービスは、地域社会や公共の福祉にも貢献できる可能性を持っています。
また、私たちが積極的に進めている月極駐車場のDX化は、不動産業界におけるDX推進にも貢献しています。
今後も当社の取り組みにご注目いただき、事業成長に期待していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
月極駐車場のDX化は、まだまだ成長余地が大きく、未開拓の市場が広がっています。
私たちが提供するAPクラウドは、その市場をリードする革新的なサービスであり、全国の駐車場オーナーや管理会社への認知も広がりつつあります。
今後もAPクラウドの登録台数を着実に拡大し、データを活用した新たな収益モデルの創出に取り組んでいきます。
そして、ファーストワンマイルステーション構想のような未来を見据えたプロジェクトを推進し、モビリティ社会の未来を支える企業として、成長を続けていく所存です。
これからもさらなる企業価値の向上を目指し、挑戦を続けてまいります。
ぜひ、私たちの成長戦略に期待していただき、応援いただければと存じます。
株式会社ハッチ・ワーク
本社所在地:〒107-0062 東京都港区南青山2-2-8 DFビル3階
設立:2000年6月26日
資本金:238,607,200円(2024年9月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場(2024年3月26日上場)
証券コード:148A