※本コラムは2024年4月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
SOLIZE株式会社は人間の創造性とデジタルテクノロジーを通じてさまざまな制約を超え、ものづくりを次世代に向けて革新し続ける会社です。
代表取締役社長CEOの宮藤康聡氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
SOLIZE株式会社を一言で言うと
ものづくりをデジタル化するベンチャー企業です。
SOLIZEの沿革

創業の経緯
1990年に株式会社インクスとしてスタートしました。
当時、大手資源・素材メーカー出身の創業者が、アメリカで進むものづくりの3D化に衝撃を受け、ものづくりのデジタル化を進めるために創業したのがきっかけです。
そして1990年代から2000年代にかけては、この取り組みが脚光を浴び、経済産業省から表彰されるなど、ものづくりベンチャーとして世間に認知されるようになりました。
民事再生手続きと早期終結
着実に事業を成長させていく中、2009年に過剰な投資とリーマンショックの影響で経営が危機に陥り、民事再生を余儀なくされました。
そこで経営陣の刷新や選択と集中を行い、オーナー主導の会社から脱却した体制へと移行しました。
そして異例ともいえるスピードで事業の回復を果たし、2012年末には民事再生を終了し、社名をSOLIZEに変更しました。
この民事再生からの回復は、お客さまからの熱い信頼や従業員からの支持を受けながら実現しました。
成長のための統合と上場
その後、2010年代には業績は着実に回復し、2021年には国内3社を統合して新たな成長モデルの構築と上場の準備を始めました。
そうして2020年からのコロナウイルス流行中の経済停滞を乗り越え、2024年2月に東証スタンダード市場に上場を果たしました。
現在はスタンダード市場に属しながら、グロースするために積極的な投資も行なっています。

SOLIZEの事業の概要と特徴
概要
当社のビジネスモデルは3つの主要な柱に基づいています。
第1にエンジニアリングサービスがあります。
これは設立以来継続している事業で、1990年代から2000年代にかけて設計開発領域の2Dから3Dへの変革をいち早く取り入れ、3D CAD/CAEの技術を確立しました。
当初は自動車メーカーを中心に3D設計の教育事業からスタートし、実際に当社のエンジニアが企業の現場に入って直接支援を行うサービスへと拡大していきました。
このエンジニアリングサービスが現在の売上の約70%です。
第2の柱は3Dプリンティング技術を活用したマニュファクチュアリングサービスです。
第3に、コンサルティングサービスがあります。
これは2000年代に入ってから強化してきた事業で、暗黙知を形式知に転換し、技術を次世代に継承する方法に関するコンサルティングを大企業のお客さまを中心に展開しています。

事業における優位性
豊富かつ高度なデジタルエンジニアリング人材
私たちの最大の強みは、約1,500名の高度なエンジニアリング人材が在籍している点です。
毎年新卒で約100名を採用し、機械工学から情報システム、物理学、数理モデル開発など理系人材を中心に専門性を重視しています。
またエンジニアからコンサルタントに職種の変更も可能で、さらにはその逆のキャリアパスも自由に選択できる環境を提供しており、これが私たちの組織の流動性と多様性を支えています。
またそのような観点で当社は強い採用力を有している点も強みです。
2010年代後半には海外人材の採用にも力を入れてきましたが、最近では経験者採用も積極的に行っており、特にコロナ禍の状況が落ち着いてきた2022年から2023年にかけて大幅に増やしていきました。
例えば、自動車業界においては技術の更新速度が非常に速く、技術者にとって特定の部品だけに特化することはリスクと捉える方が多いのが現状です。
そこで当社は先ほども申しましたが、自由なキャリアパスで広範な製品設計に携わることが可能で技術の進歩に伴い提供する技術も常に変化させているため、さまざまな製品開発においてそのスキルを活用することができます。
そしてコンサルティング業務は、実際の製造プロセスに深く関与しており、理論だけでなく実践的な問題解決能力を培うことができるため、多様な業界のニーズに対応する強みを発揮しています。

高度な人材が揃うエンジニアリングサービス
例えば自動車産業における大手OEM(Original Equipment Manufacturer)では、内部で処理できない専門的な作業を外部に委託することが多く、私たちはそのニーズに応えるために技術者を派遣することや、自動車の内装や外装の設計といった具体的なプロジェクトを請け負うこともあり、長年技術を研鑽しながらノウハウを積み上げてきました。
そのように蓄積してきたノウハウを活かしてお客さまの開発工程の課題を解決しています。

3Dプリンティング技術を駆使したマニュファクチュアリングサービス
当社のマニュファクチュアリングサービスは製造だけでなく、材料開発、装置導入・保守、活用支援まで幅広い3Dプリンティングサービスを提供しています。
時代に先駆けて3Dプリンティング技術を磨き、3Dプリンターの販売代理店業務を手がけると同時に、自社工場での試作品製造サービスを提供してきました。
さらに3Dプリンターの材料も開発するというように、ワンストップでお客さまのニーズに対応することが可能です。

3Dプリンターは主に試作品の製作に非常に有効です。
大量生産には金型を使用した方がコストを低く抑えられますが、3Dプリンターは特に開発初期段階の試作品の生産においてその速度と柔軟性から重宝されています。

また、近年では少量の量産製品への適用も進んでいます。
2023年、我々はトヨタの高級ブランドであるレクサスの量産部品を3Dプリンターで製作する契約を受注し、これが国内外で注目されました。
3Dプリンターは金属も扱えるため、航空宇宙業界やレーシングカーなど、高性能が求められる産業との相性が良く、注目されています。

お客さまの組織を活性化させるコンサルティング
コンサルティング事業は、もともと金型職人の意思決定ロジックを可視化するノウハウから派生したもので、今ではAI技術を組み合わせてさらに発展させています。
主なお客さまは大企業ですが、社内での事業承継が進んでいないことが課題となっており、当社の持つエンジニアリングで培った現場の経験、ノウハウとデジタル技術、独自の方法論を融合したコンサルティングを提供しています。
そして独自の方法論により、徹底的に可視化・数値化した共通課題に基づく変革活動を推進し組織横断でのプロセス最適化を実施しています。

SOLIZEの中長期の成長イメージとそのための施策
安定的な市場
現在、当社のお客さまの約70%が自動車産業に属しています。

自動車業界におけるOEM開発費用はコロナ禍でも減少することなく増加し続けており、今後さらに増加すると見込まれています。
これは自動車業界全体で、自動車が車体の製造工程領域からソフトウェア領域へと開発リソースを割いていることが大きく影響しています。
昨今の自動車には多くのセンサーが搭載されていたり、自動制御の領域が広がったりなど、電動化・自動化等への対応で継続的に増加する見込みです。

さらに国際的にはサプライチェーン対応、最終製品対応により、市場の成長スピードは加速していく見込みがあります。

この安定的な市場と急成長する市場に対して、当社は実践力と変革力で価値を発揮していきます。

お客さまへの貢献価値の向上
先ほどもお話ししましたが、自動車業界においてはソフトウェア領域などを中心に競争分野へのリソースシフトにより、従来領域の外部委託化が加速しています。
このような状況の中、当社はお客さまの開発工程において、高度な設計・解析力と進捗・品質管理等のプロジェクトマネジメント力を有しております。
長年築き上げてきたお客さまとの信頼関係の下、お客さまの競争力を強化していくためにも貢献価値を向上させていきます。

デジタルものづくりケイパビリティの拡張
まず、既存のビジネスの周辺領域を拡大し、新たな市場に進出しています。
これまでにも、製品の設計、開発、解析、生産、少量量産というプロセスを手がけてきましたが、最近では基礎研究領域への進出も進めています。
特に製品開発の初期段階でのプルーフ・オブ・コンセプト(POC)を迅速に進行させるために、3Dプリンターを活用しています。
また2020年以降、当社は収益の一部を戦略的に投資に回し、新たな事業を複数立ち上げました。
そのような中でソフトウェアやサイバーセキュリティ分野に注力し、AI技術を用いた新ビジネスが急成長を遂げています。
このように、お客さまの開発工程における研究開発からアフターフォローに至るまで対象プロセスを拡張しつつ、事業領域も拡張させていく方針です。

創出した新規領域
優位性の中でもお話ししましたが、エンジニアリング×コンサルティングによる高付加価値・価値創造推進人財の開発に力を入れています。

さらには研究開発部門の新設、専門部門と既存部門で事業開発を加速させ、組織の強化も行なっています。

そして、従来事業から得た収益を、次の成長に向け事業・技術開発へ積極的に投資(昨年実績は売上高の約5%)しております。

この人財や組織の強化を行うことで、新規事業の創出に繋げております。
当社では年に1度、社員からの創造的なアイデアを形にするためにオリジナルのソフトウェアやハードウェア製品を生み出すコンテストを開催しています。
そこで生まれた成果物やサービスに関しては将来的には商品化や製品化を目指しており、自社で完結させるか、あるいはパートナーシップを組んで市場に投入するかを検討しています。
また、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)機能を通じて、スタートアップ企業への投資も行い、社員に実践的なビジネス経験を積ませていく予定です。

注目していただきたいポイント
SOLIZEは、スタンダード市場に位置しながらも、グロース市場のような成長イメージを描きながら独自のビジネスモデルを構築しています。
日本の経済全体としても、スタンダード市場の活性化は重要であり、私たちはこの市場で安定した収益を確保しつつ、新しい成長領域を積極的に開拓していきます。
民事再生からの回復と上場を経て、私たちはロイヤリティと成長意欲の高い社員を背景に、独特の企業文化を築いており、この点も大きな強みです。
今後も無借金経営を維持しながら資金を調達し、今後は非有機的な成長戦略も積極的に推進していく方針です。
ぜひこれまで発揮してきた実践力と変革力の下、当社が成長していく姿に注目していただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ
これまで当社はデジタル化の黎明期から製造業における革新的な変革を推進してきました。
今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、企業運営全般にわたるイノベーションを加速させていきます。
私たちのデジタル技術は、単に製品を作るだけではなく、企業経営や社会の課題解決にも貢献できると考えています。
そして2030年に向けて見据えているのは、企業としてより公益性を高めていくことです。
投資家の皆様には、この長期的なビジョンにご注目いただきご支援いただけると幸いです。
SOLIZE株式会社
本社所在地:〒102-0075 東京都千代田区三番町6番3号 三番町UFビル3F
設立:1990年7月27日
資本金:1,000万円(2024年4月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2024年2月7日上場)
証券コード:5871