【3922】株式会社PR TIMES 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月18日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社PR TIMESは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、「行動者」のポジティブな情報がニュースの中心となり、個人を勇気づけ前向きにする社会の実現を目指しています。

代表取締役の山口 拓己氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社PR TIMESを一言で言うと

「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」を実現する会社です。 

PR TIMESの沿革

株式会社PR TIMES代表取締役 山口 拓己氏

創業の経緯

当社の設立は2005年ですが、事業が本格的に始まったのは2007年4月です。

私は、もともと親会社のベクトルで取締役CFOを務めており、2006年のIPOを目指して準備を進めていたものの、業績が下降傾向にあったため上場の延期をせざるを得ない状況にありました。

IPOを目指してベクトルに入社した私でしたが、そのような状況の中で「自分に何かできることはないか」と考えた際、休眠状態にあった「キジネタコム」というサービスを立て直すことに着手しました。

準備と再投資を経て、翌年の2007年4月に「PR TIMES」として新たにスタートを切ることができました。

ただ、この再出発も決して順風満帆とはいかず、最初の1,000社に利用企業が到達するまでに2年3ヶ月を要しました。

スマートフォンの普及と閲覧数の増加

PR TIMESの閲覧数が伸び始めたのは、2010年頃のことでした。

この頃の成長は、私たちのサービス運営やマーケティング活動に加え、時代の流れに大きく助けられたものでもありました。

特に2010年にはソフトバンクからiPhone 4が発売され、Twitter(現:X)やFacebookといったSNSの急成長が影響を与えました。

当時の日本においては、ミクシィのような内向きの交流が主流でしたが、スマートフォンとSNSの普及によって、広く世の中とつながり情報を共有するという新しい文化が根付いていったのです。

手軽にネット検索ができるようになり、「情報もオープンなもの」という認識が広まりつつありました。

そのような中、PR TIMESは決してスマートフォン向けに特化していたわけではないにも関わらず、閲覧数が急増しました。

やがて、生活者やビジネスパーソンの両方がアクセスしやすいプラットフォームとして、広く利用されるようになっていきました。

PR TIMESと東日本大震災

2011年3月に発生した東日本大震災は、PR TIMESにとっても重要な転機となりました。

震災直後の営業日には、企業や団体に対してキャンペーンやイベントの延期を検討するよう呼びかける内容とともに、震災に関わるプレスリリースを無償で配信する取り組みを始めました。

この試みは、単に企業の利益を追求するものではなく、社会的に有益な情報を広く届けることを目指したものでした。

翌年の2012年にはNPOやNGOといった団体に対して、無償でプレスリリースを配信できるプログラムを正式に開始し、現在では600を超える団体が利用しています。

またこの頃から、CSRなどの情報の発信に消極的だった企業や団体が、PR TIMESを通じて発信するようになり始めました。

それまでは、マーケティングツールとしての利用がほとんどでしたが、震災を境に社会貢献につながる情報が発信できるツールとしても活用できるという、新たな価値に気付けたことは当社にとって大きかったと考えています。

PR TIMESの事業概要と特徴

概要

当社の主力サービスは、累計100,000社以上が利用する配信シェア国内No.1のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」です。

企業がプレスリリースを配信する際に課金していただくモデルで、スポット利用と定額利用の2種類で提供しています。

株式会社PR TIMES 2024年度 第2四半期決算説明資料 より引用

その他にも、企業担当者がサービスの開発秘話や背景、裏話などを語るストーリー形式の「PR TIMES STORY」、アート特化型のオンラインPRプラットフォーム「MARPH」、動画で発信する「PR TIMES TV」などを提供しています。

また、当社はプラットフォームの提供だけに留まらず、PRパートナーとしてこれまで得たデータやノウハウ、そしてその分析を基に、企業のPR戦略立案から実施までをトータルでサポートしています。

さらに、プロダクトとしてタスク・プロジェクト管理ツール「Jooto」やカスタマーサポートツール「Tayori」を提供しています。

自社メディアの運営も行っており、行動者たちの情報を世の中に届けるための発信を行っています。

子会社には、スタートアップメディア「BRIDGE」を運営する株式会社THE BRIDGE、ソフトウェア受託開発を行う株式会社グルコース、SNSマーケティング支援の株式会社NAVICUSがあります。

株式会社PR TIMES より提供

事業における優位性

「行動者」のサイクル

PR TIMESは、単なる情報発信のプラットフォームとして提供するのではなく、「行動者」の集まる場所として築き上げてきました。

ただし、サービス開始から17年間で、利用者の行動も大きく変化しました。

現在では、資金調達時にスタートアップ企業が積極的にプレスリリースを出すことが一般的ですが、このような動きは以前はありませんでした。

例えば、X(旧 Twitter)も、当初は「〇〇なう」という言葉が使われていたように、シンプルな使われ方が主流でしたが、今ではユーザーが相互に情報を発信し合うソーシャルメディアへと変化しています。

PR TIMESもこのようなSNSと同様に、当社では「行動者」と位置付けていますが、ユーザーである企業が価値のあるプレスリリースを発信することで、プラットフォームを盛り上げています。

これが新たなユーザーの利用にも繋がり、「行動者」の活動が良い変化を起こすとともに、プラットフォームの拡大にも貢献しています。

パブリシティの獲得と拡散

PR TIMESのユーザーは企業のマーケティングやブランディング、リクルーティングを主な目的として利用していますが、さまざまな規模や業種の企業が日々の活動や新しいプロジェクトについて発信する場所となりました。

パブリシティという観点では、その良質な発信がメディアにとって報道素材として利用され、さらに多くの生活者やビジネスパーソンに情報が届くという循環を生み出しています。

また、SNS等での情報伝達が進み、PR TIMESを閲覧する人が増え、好循環が生まれています。

そして、提携メディアに関しては当初は一社一社と提携を進めていましたが、現在では提携を希望するメディアが増え、先方から声をかけていただくことも多くなりました。

提携メディアにとって使いやすいサービスとなるように心がけており、例えば、PR TIMESのプレスリリースをCMSに連携し、記者が下書き保存を活用できる機能も提供しています。

また、ユーザー企業側は、プレスリリースの内容やカテゴリによって、より特定のジャンルや地域に特化した情報を提供しているメディアへの転載も期待できます。

PR TIMESの成長戦略

中期経営目標

現在、当社が掲げる中期経営目標は、2021年に設定したものですが、2025年度までに営業利益35億円を目指しています。

現在の進捗としては、前期の営業利益が17億円、今期の見通しが19億円で、まだ目標とは乖離があります。

しかし、前回の中期経営目標において2020年度の営業利益10億円の目標を立てた際も、前期の営業利益5億6,000万円から結果的に倍以上の利益を達成したため、今回も2025年度の目標達成を諦めていません。

そして、私たちのミッションの実現や事業のインパクトをより強めるために、利益を確保しつつ、再投資する循環を目指しています。

2025年度で現在の中期経営目標の5年計画が終了しますが、その後の目標は3つあります。

1つ目は、PR TIMESを日本国内における「情報インフラ」と呼べるような存在に成長させることです。

2つ目は、PR TIMESが日本国内での利用に留まらず、世界有数のインターネットサービスになることです。

そして3つ目は、たとえPR TIMESが国内外で成功を収めたとしても、それにとどまらず、PR TIMESを超える事業を生み出せるような企業・組織へと成長することです。

このように、国内外で社会的な価値を創出し続けられる会社にしていきたいと考えています。

海外への進出

まず、ターゲットはアメリカで、日本国内と同様のビジネスモデルをグローバルでも検証していく方針です。

日本国内での実績と同様に、海外市場でも通用する価値があると信じています。

現在、一気にベースを築くために、M&A(買収・合併)を軸にした進出を検討しています。

ただ、アメリカでは、プレスリリースのサービスを提供する会社がそれほど多くないため、買収対象も限られています。

もし、適切な会社が見つからない場合には、現在PR TIMESのリニューアルを進めている機能を活用し、独自に市場に参入していくことも視野に入れています。

プロダクト事業の拡販

「Jooto」や「Tayori」というプロダクトを提供していますが、これらはPR TIMESを超える社会的インパクトを目指しています。

いずれも共通する点は、PR TIMESを超えるポテンシャルを持つこと、そしてビジネス向けSaaS事業であることです。

現在の中期経営目標としては、それぞれ2〜3億円程度の利益を生み出すことを目標にしていましたが、進捗としては下方修正を余儀なくされています。

まずは現在の成長率を維持しつつ、2025年度には黒字化を実現することを短期的な目標としています。

注目していただきたいポイント

今後の当社の事業展開にご注目ください。

これまでは、単体でプレスリリース配信サービスを提供し、利用頻度に応じたアップセルによる成長を目指してきましたが、今後はプレスリリース配信サービスとしてだけでなく、大企業のさまざまなニーズにも応えることを目指します。

顧客の事業規模やニーズに合わせて、クロスセルを含むサービスラインナップを強化し、複数のサービスを組み合わせてご利用いただける形を構築していきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

上場企業として、誰でも株主になれる環境は素晴らしいものだと考えています。

現在、特徴的な取り組みとして株主優待を活用し、PR TIMESのユーザーと株主の方々をつなげる活動も行っています。

具体的には、PR TIMESのお客様にご提供いただいた商品やサービスを株主優待として株主様にお届けすることで、株主様が当社のお客様の「お客様」になる機会を創出しています。

こうした取り組みを通じて株主様に満足いただき、企業価値や時価総額の向上にも貢献できると考えています。

また、私たちの事業が社会的にどのような価値を持ち、将来的にどのような目標を掲げているかを理解していただき、応援してくださる株主様を増やしていきたいと考えています。

時価総額は社会的な役割の大きさで評価されるものと信じています。

ぜひ、当社の理念に共感し、株主となっていただければ幸いです。

株式会社PR TIMES

本社所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂1-11-44 赤坂インターシティ8F

設立:2005年12月26日

資本金:422,717千円(2024年2月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2016年3月31日上場)

証券コード:3922

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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