※本コラムは2024年10月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ワイヤレスゲートは生活インフラとして欠かせない通信事業を提供し、イマジネーションとつなげる力で「あって良かった」を届ける会社です。
代表取締役CEOの成田 徹氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ワイヤレスゲートを一言で言うと
イマジネーションとつなげる力で「あって良かった」を届ける会社です。
ワイヤレスゲートの沿革
創業の経緯
当社は2004年に創業し、今年で(2024年)ちょうど20年が経過しました。
創業当初は、初代社長である池田と現COO兼CFOの原田の2名で始まった会社です。
池田はNTTドコモの研究所で無線通信のスペシャリストとして働いており、無線技術を活用した新しいサービスを企画したいと考えていましたが、大企業の中では自分のアイデアを実現するのが難しいと感じていました。
一方、原田はインターネット事業の黎明期に携わっており、池田から相談を受けた際、そのビジネスモデルに非常に興味を持ち、創業に至ったそうです。
当時はまだスマートフォンもWi-Fiも普及しておらず、ノートパソコンが軽量化され、持ち運びやすくなり始めた時期でした。
そこで、外出先で仕事をするビジネスマンをターゲットに、会社や自宅以外の場所でも手軽にインターネットを利用できる環境を提供することを目指しました。
街中のカフェや駅などにWi-Fiスポットを設置し、移動中でもインターネットに接続できる「ワイヤレスゲート Wi-Fiサービス」を開始したのが始まりです。
ヨドバシカメラとの提携とWi-Fiサービスの拡大
サービス開始当初は、インターネット広告や雑誌との提携を通じて宣伝を行いましたが、会員数の伸び悩みに苦労していました。
しかし、2007年にヨドバシカメラ様に協業を提案し、当社のWi-Fiサービスを取り扱っていただけることになりました。
ヨドバシカメラ様は丁寧な製品説明で知られる家電量販店であり、対面での説明が重要な当社のサービスとは非常に相性が良く、理想的なパートナーとなりました。
具体的な販売プロセスとしては、当社が店員の方に研修を通じてWi-Fiサービスの特徴や利点をご説明することで、店員の方にその内容を理解していただき、パソコンを購入されたお客様に「こういうサービスがあると便利ですよ」とおすすめしていただく形で、サービスが広く浸透し始めました。
その後、ヨドバシカメラ様には株主としてもご支援いただき、まさに二人三脚で成長を遂げてきました。
また、東海道新幹線の中でWi-Fiサービスが利用できるようになったことも大きな進展でした。
これにより、長時間の移動中でもメール送信や動画視聴などさまざまなニーズに応えられるようになり、サービスの認知度が一気に向上しました。
WiMAXサービスの開始と上場
当社は事業拡大の一環として上場を目指していましたが、Wi-Fiサービスは単価が200〜300円と安価なため、売上規模や利益面で物足りないと評価されていました。
そこで、UQコミュニケーションズ様が提供を開始した「WiMAX」に着目し、UQコミュニケーションズ様からWiMAXの回線を仕入れ、ヨドバシカメラ様を通じて販売するという新たなサービスを展開しました。
Wi-Fiは特定のエリアで高速に利用できる一方、WiMAXは全国で利用できる点が強みです。この両方のサービスをセットで提供することでユーザー数が一気に増加しました。
さらに、2011年には社名を「トリプレットゲート」から「ワイヤレスゲート」に変更し、2012年7月には上場を果たしました。
現在は、インバウンド向けにe-SIMサービスも提供するなど、幅広い通信サービスを展開する企業へと成長を遂げています。
ワイヤレスゲートの事業概要と特徴
概要
当社は、ワイヤレスゲートWi-Fi事業と近年開始したデジタルマーケティング事業の2軸で展開しています。
ワイヤレスゲートWi-Fi事業の主力はWiMAXのサブスクリプションサービスで、ヨドバシカメラ様などの店頭チャネルを通じて個人向けに提供しています。
一方、デジタルマーケティング事業では、外国人観光客向けにWEBを活用して集客を行い、e-SIMサービスを提供しています。
事業における優位性
ヨドバシカメラとの強力なパートナーシップ
ヨドバシカメラ様との提携は、当社にとって非常に大きな強みです。
ヨドバシカメラ様を訪れるお客様に対して、当社が研修を行ったヨドバシカメラ様の社員が当社サービスを丁寧に説明できるため、サービスの拡販が可能です。
また、店頭にはドコモ、ソフトバンク、auといった主要キャリアが並んでいるため、お客様から「スマホが故障した際の保険があると安心」といったさまざまなご要望を直接いただく機会も多くあります。
当社はフットワークの軽い会社なので、スマホ保険などのオプション機能を設けて各キャリアの商品として展開するなど、柔軟に対応しています。
こうした取り組みにより、通信に関連するサービスを拡充し、ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)の向上を図っています。
WiMAXを中心とした通信サービス
現在、通信業界では各社が多様なプランを提供しており、スマホの無制限プランも増えてきたため、競争が激化しています。
しかし、通信そのものの需要は衰えず、市場規模は拡大し続けています。
その中で、WiMAXは無制限利用が可能な点が大きな強みです。(※一定期間内に大量のデータ通信があった場合は、混雑する時間帯の通信速度を制限する場合があります。)
また、5G、LTE、WiMAXの3つの回線が揃っているため、一つの回線がたとえ通信障害になったとしても別の回線へ自動的に切り替えて利用することができるという利点があります。
このようにWiMAX自体が高い競争力を持つサービスであることから、当社がWiMAXを扱えることは大きな優位性だと考えています。
ワイヤレスゲートの成長戦略
通信事業の基盤強化
今後もヨドバシカメラ様の強力な販売力を活用しながら、パートナーシップをさらに強化し、持続的な成長を目指していきます。
また、スマホ保険やセキュリティサービスなど、周辺商品の展開にも多くの機会があると考えています。
さらに、新たなパートナーとしてカメラのキタムラ様との提携を進めています。
カメラのキタムラ様を訪れるお客様はカメラ好きな高齢者の方が多く、また地方では中古スマホなども取り扱っているため、当社の通信サービスとの親和性が高く、サービス拡大が期待できます。
ヨドバシカメラ様とは異なる層をターゲットに、ITリテラシーが比較的高くない高齢者の方々に向けて、さまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。
また、当社の中核である通信事業につきましては、WiMAX以外の通信サービスにおける新プランを続々と提供していく予定です。
これまではWiMAXの無制限プランを主力としており、使い勝手の良さから一定の層に支持されてきました。
しかし、「そこまで多くは使わないが、外出時に通信が欲しい」というお客様のために、価格を半分程度に抑えた月30GBまで利用できる通信サービスプランなど、幅広いニーズに対応できるプランを導入していきます。
このように、多様なニーズに応えるための各種施策を実施し、さらなる成長を目指してまいります。
デジタルマーケティング事業の成長
当社では、デジタルマーケティング事業の中核となるe-SIMサービスの拡充を進めています。
この市場は非常に大きく、ヨドバシカメラ様でも多くの業者がプリペイドSIMの取り扱いを始めていますが、e-SIMを拡充している業者は業界内でも少ない状況です。
当社は訪日外国人が旅行前に自国で購入してもらうことを狙い、デジタルマーケティング施策を展開しています。
この分野を新たな事業の柱とするため、マーケティングやウェブ関連への先行投資も積極的に行っています。
代理店を活用した広告や比較サイトへの掲載など、幅広い施策を展開し、認知拡大を図っています。
注目していただきたいポイント
当社の強みは、ヨドバシカメラ様との長年の関係から培った、量販店で売れるためのノウハウにあります。
もともとは通信サービスが主力でしたが、そこに保険サービスやその他のオプションサービスを付加し、多様な商品展開を行っています。
今後はEC市場でも競争力を高めていく予定です。
当社はリアルでの強力なプラットフォームを持つ一方で、ECでも競争力を強化し、他社にはない新しい形で市場を席巻できると考えています。
ぜひ、今後の当社の事業基盤を活かした成長にご注目いただければ幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
この7年間ほどは売上が微減し、伸び悩む時期が続いていましたが、今期の中間決算でようやく売上が前年比を上回り、新しいサービスやデジタルマーケティング事業での取り組みが実を結び始めています。
長く暗いトンネルを抜け、明るい兆しが見えてきたと実感しています。
また、代表も私に変わり、当社はまさに「第二の創業」ともいえる転換期を迎えております。
今後の成長にご期待いただき、引き続きご支援いただけると幸いです。
株式会社ワイヤレスゲート
本社所在地:〒140-0002 東京都品川区東品川2-2-20 天王洲オーシャンスクエア5F
設立:2004年1月26日
資本金:921,976千円(2024年6月30日時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2012年7月19日上場)
証券コード:9419