【4259】株式会社エクサウィザーズ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年11月28日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社エクサウィザーズはAI・生成AIを利活用したサービス開発による、産業革新と社会課題の解決に取り組んでいます。

代表取締役社長の春田 真氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社エクサウィザーズを一言で言うと

AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する会社です。 

エクサウィザーズの沿革

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 春田 真氏

創業の経緯

当社を創業する前はディー・エヌ・エー(DeNA)に勤めていました。

新卒で金融機関に入社した私は、最初の3年間は営業を経験し、後の5年間は証券企画部で新規事業の立ち上げを担当していました。

テクノロジーや新しいことが好きだった私は「いつか起業してみたい」と考えていましたが、組織での仕事には慣れていたものの、ゼロから何かを作るというのはまた別物だと感じていたので、まずは経験を積もうと思いました。

2000年頃にDeNAの最初のサービスでもあるオークションサイトが始まり、その時期に私は参画しました。

その後、DeNAで新規事業創出に関わり続け、インターネットの発展や停滞期、さらにはモバイル革命の波を経験しました。

日本ではフィーチャーフォンが主流だった時代から、2008年頃にiPhoneが登場しスマートフォンが普及していくというように時代が大きく変化する中で、DeNAで面白い仕事を経験することができました。

しかし、会社が大きくなるにつれて現場から少しずつ離れていく感覚があったので、「自分で事業を立ち上げよう」と決意し、2016年に当社(当時エクサインテリジェンス)を設立しました。

AIビジネスのパイオニアとして

スタートアップを始めるにあたり、DeNAで多くの事業に携わってきた経験から、最初から一つの事業に絞るのではなく、複数のアイデアを並行して進める形でスタートしました。その中から興味のある領域で2社を立ち上げ、そのうちの1社が当社の前身であるエクサインテリジェンスです。

ディープラーニングが2012年頃から注目され、2015年にはさらに盛り上がっていたことから、「これが今後のテクノロジーの中心になる」と感じ、事業を始めました。

AIを含むテクノロジーはあくまで手段であり、最終的にユーザーが使うことで価値が発揮されると考えていました。

そして、新たなビジネスを始めるのであれば、DeNAで経験できなかった、多くの企業に使われるBtoBのSaaSやプロダクトを育てたいという思いがありました。

ただし、AIへの受容性や顧客側の認識が追いつくにはある程度の時間がかかるだろうとも思っていました。

それでも、AI活用の提案を行う中で「チャレンジしたい」と考える顧客が増え、結果としてコンサルティングビジネスであるAIプラットフォーム事業が大きく成長しました。

その中で2021年に当社は上場を果たし、さらなる成長に向けて投資を行ってきました。

もともと目指していたのは、1社1社にソリューションを提供することではなく、広範に利用されるプロダクトやサービスを提供することです。

ここ2年ほどで生成AIが登場し、プロダクトをSaaSとして広く顧客に提供できるようになったため、ビジネスとして形になり始めており、次のステージに向けた新たな挑戦を進めています。

エクサウィザーズの事業概要と特徴

概要

当社は独自のAIプラットフォーム「exaBase」を活用して、AIプラットフォーム事業、AIプロダクト事業の2つの事業を主に展開しています。

AIプラットフォーム事業では企業の課題に対するAI開発やAI活用におけるコンサルティングを提供しています。

AIプロダクト事業ではAIプラットフォーム事業で培ったアルゴリズム・データを活用し、汎用的なサービスやプロダクトを創出しています。

現在(2024年11月時点)の売上構成比率はAIプラットフォーム事業が7割、AIプロダクト事業が3割となっていますが、今後はAIプロダクト事業が大きく伸びていくと考えています。

株式会社エクサウィザーズ 2025年3月期第2四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

参入障壁の高い分野での成功

当社は創業時より、将来的にはAIを活用したプロダクトを提供したいと考え、幅広い業界に対してAIの専門家として開発や導入サポートなどを行ってきました。

当初から特定の領域に集中しようとは考えず、この最先端のテクノロジーがどのような領域で最大の効果を発揮するか分からなかったので、「AIを使って課題を解決したい顧客」と一緒に活用方法を考えてきました。

できるだけ門戸を開き、いわゆるベンチャーやスタートアップがターゲットを絞るのとは、真逆のアプローチを取っています。

たとえば大手製薬メーカーの第一三共とは2019年から協業を始めており、AIを活用した創薬プロジェクトを進めております。

当社が発表しているモデルの一例としては、病気の原因となる標的タンパク質の中でも難易度の高いターゲットに関して、良質なヒット化合物を取得するAIの構築です。

この分野において、当社からはエンジニアだけではなく、創薬に関わった経験のある人材も携わっており、常に専門家との議論ができる体制を整えています。

このように難易度の高い分野に果敢に挑戦し、専門的な知識が必要とされる製薬業界など参入障壁の高い業界に対しても着実に成果を上げています。
業界や領域を絞らずに採用していることもあり、さまざまな専門領域に興味を持つ優秀で社会課題を解決したいと真剣に考える人材が集まってくるという好循環となっています。

また、プロジェクトについては、OpenAIのGPTのような海外のLLM(大規模言語モデル)を使い、API連携してスクラッチでプロダクトを開発するお手伝いもしています。

中でも大企業ではAPI連携する際に社内データと結びつける必要があり、他社では難しいとされている高度なフローを当社は幾度も経験してきたため、スムーズに支援することが可能です。

このようなAIに特化した技術やノウハウを活用して、大企業を含む多くの顧客への支援実績を積み上げてきたことで、新たな取引が始まるきっかけにもなっています。

株式会社エクサウィザーズ より提供

”AIぐるぐるモデル”による成長

当社の持つアセットを強みに”AIぐるぐるモデル”を実現しています。

AIプラットフォーム事業で蓄積したデータ・アルゴリズムを汎用的な顧客課題へと昇華させ、AIプロダクト事業におけるサービス開発に役立てています。

そして、AIプロダクト事業で提供したサービスが広く利用されることで低コスト化を実現し、新たな個社企業の解決策の提供に繋げています。

これは顧客ネットワークや経験値も豊富である当社だからこそ実現できるモデルです。

年間300件ほどのプロジェクトを手掛けていますが、これほどの実績を持つ会社は極めて希少だと思います。

このように、AIプラットフォーム事業とAIプロダクト事業の両輪で好サイクルを回しているのが、この”AIぐるぐるモデル”であり、当社の競争力の源泉です。

株式会社エクサウィザーズ 2025年3月期第2四半期 決算説明資料 より引用

エクサウィザーズの成長戦略

AI市場の成長性

生成AIの市場は形成期にあり、まだまだ成長していく業界です。

当社の「exaBase 生成AI」に関しても、これまでに約650社に導入されていますが、多くのユーザーがまだ十分に活用できていない状況です。

これは当社だけでなく、業界全体にも共通する課題であると考えています。

そこで、これからAIが本格的に実装され、活用されるフェーズに向けて、市場をどのように開拓していくかが重要な鍵となります。

たとえば、同じ生成AIであっても、コーポレート部門と営業部門、本社勤務者と現場・店舗勤務者ではニーズが大きく異なります。

こうした違いを踏まえ、生成AIを「営業向け」「店舗向け」などに特化させ、それぞれの部門に適したプロンプトや機能を提供することで、導入の幅を広げることができると考えています。

そうしたアプローチを通じて、「自分たちの部門でも試してみよう」という動きが広がり、結果的に生成AIの活用が進むと期待しています。

生産性向上を目指して

AIを導入することで「1人が1日1時間削減できました」という成果が出たとしても、直接的に「残業時間の削減」には結びついていません。

これはAI自体を業務プロセス全体に活用できていないからだと考えています。

私が社会に出た1990年代初頭、職場ではワープロが主流でした。

しかし、その後PCやインターネットが普及とともに、電子メールが活用され、「データを共有する」という意識が浸透していきました。

さらに、Wordなどの書類作成ツールが広く使われるようになりました。

このように、技術の進化によって「いつの間にかこれが当たり前になっている」という状況が生まれるように、AIも徐々に日常の一部へと変化していくと考えています。

ただし、営業フロント、つまり人と人が直接接する部分は、引き続き人が担うべき重要な分野です。

ここで求められるのは、生成AIを含む多様なツールを活用し、周辺業務を効率化することで、営業活動そのものに集中できる環境を作り出すことです。

たとえば、当社では営業プロセスを効率化するためのプロダクトとして、生成AIを活用した議事録作成や面談要約を自動化し、次のアクションに繋がるデータを自動整備する「exaBase 面談要約」をリリースしています。

また、営業リストの作成やターゲティングを効率化する機能も備えています。

このような小さな進歩を積み重ねることで、業務プロセスの効率化を着実に進め、最終的には生産性の向上に繋がると考えています。

さらに、最終的な目標として、顧客自身が自分たちの使いやすいタイミングで必要なAIアプリを開発できる環境を提供したいと考えています。

これが「exaBase Studio」の目指している領域です。

「exaBase Studio」は、いわゆる「DIY」的な発想を取り入れ、顧客が自らAIを活用したツールを作成し、運用できる仕組み作りを支援するものです。

株式会社エクサウィザーズ より提供

生成AIの進化により、現場のPCで必要なものを必要な時に利用できる環境がさらに整備されていき、業務効率化の自由度は大幅に向上していくと考えています。

今後も顧客とともに課題を解決しながら、レディメイド(既成品)とテーラーメイド(個別対応)の両方のサービスを提供することで、さらなる成長を目指していきます。

株式会社エクサウィザーズ 2025年3月期第2四半期 決算説明資料 より引用

人材戦略

新しい価値を生み出すのは、何よりも人材です。

社員が効率よく働ける仕組みを整えることで、新しいことに挑戦できる環境を作りたいと考えています。

「こうしたら面白いんじゃないか?」「この新しいテクノロジーを使ってみよう」といった発想力こそが成長の鍵です。

たとえば、生成AIは2年前と比べると驚くほど進化しています。

このような技術の急速な変化に対応するためには、過去の知識や経験だけでなく、柔軟な考えが必要です。

AIの歴史自体が浅い中で、たとえ10年のキャリアを持つベテランであっても、博士課程を卒業している新卒の方が6年以上AI研究に携わっているケースもあるため、若い世代が新しい発想を生み出す可能性を秘めています。

また、ツールの進化によって、社会人経験の差を埋める手段も増えてきています。

「このツールをどう活用するか?」「どこを改善すればさらに良くなるか?」といった問いを持ち続けられる人が、これからの時代を切り拓いていける人材だと考えています。

人が主体となって社会を動かす以上、社内でも技術をどう活用するのかを整理しつつ、顧客課題に対して新しい視点で向き合っていけるかがポイントだと思い、そのようにして欲しいと社員に伝えています。

注目していただきたいポイント

AIを取り巻くマーケットの規模にご注目ください。

事業を進めていく中で、改めてMicrosoftの強大さを実感しました。

日本国内のホワイトカラー層は約6,000万人といわれていますが、ほとんどのPCにMicrosoftのOSやアプリケーションが導入されています。

この規模感を考えると、生成AIも単なる一つのテクノロジーにとどまらず、業務に深く関わる形で普及すれば、同様のポテンシャルを持つと考えています。

現在、当社の生成AIを契約いただいている企業は約650社で、1社あたりの利用者は約100人です。

そのため全体の利用者は2024年9月時点で6万人程度です。

これはSaaS市場全体の規模から見ればまだ小さな数字ですが、既存顧客の全社員に導入が広がれば、利用者は100万人を超えるポテンシャルがあります。

仮に1アカウント1,000円で提供した場合でも、月額10億円、年間120億円規模の収益となり、収益構造に大きな変化をもたらすでしょう。

このAIを取り巻くマーケットは非常に広大で、当社はこの巨大な市場に向き合い、勝負を仕掛けています。

さらに視野をグローバル市場に広げれば、そのポテンシャルは計り知れません。

今後も、この巨大なマーケットに向けて、ユーザーが「便利だ」「使いたい」と思えるサービスを提供し続け、数字を積み上げながら成長してまいります。

当社の挑戦に、ぜひご期待ください。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、ようやく本格的に戦える武器が揃い、次のステージに向けた準備が整いました。

私たちが挑んでいるのは、成長性が非常に高い魅力的なマーケットです。

この巨大な市場からどれだけの価値を引き出せるか、当社の可能性にぜひご注目ください。

これからも挑戦を続け、新たな価値を創出することで、皆様の期待を超える成果をお届けしたいと考えています。

株式会社エクサウィザーズ 2025年3月期第2四半期 決算説明資料 より引用

株式会社エクサウィザーズ

本社所在地:〒108-0023 東京都港区芝浦4丁目2−8 住友不動産三田ファーストビル5階

設立:2016年2月8日

資本金:24億円(2024年9月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2021年12月23日上場)

証券コード:4259

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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