【9428】株式会社クロップス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年12月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社クロップスは、通信を仲立ちに、お客様、スタッフ、お取引先、地域社会を“つなげる”ことで、ワクワクする未来を創り出します。

代表取締役 社長執行役員の前田 有幾氏に事業戦略や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社クロップスを一言で言うと

「つなげる力でワクワクする未来」を実現する会社です。

クロップスの沿革

株式会社クロップス代表取締役 社長執行役員 前田 有幾氏

創業の経緯

当社は1977年にいすゞ自動車のディーラーとして創業しました。

1985年の電電公社の民営化などの通信自由化政策により、1988年から旧IDO・DDIグループ(現 au)が自動車電話事業を開始したことに伴って、当社も1989年に日本移動通信株式会社(現 KDDI株式会社)の一次代理店として自動車電話の販売を開始しました。

ここが当社のターニングポイントとなりますが、その後、自動車電話・携帯電話の需要が急増します。

当時、携帯電話の販売店という概念はありませんでしたが、普及の際の販売チャネルとして活用できるとされ、成長を確信した当社は、1994年に日本移動体通信株式会社と一次代理店契約を締結するとともに、いすゞ自動車のディーラー権を返上し、携帯端末の販売に特化することになりました。

こうしてKDDIの一次代理店として携帯ショップの店舗数を拡大し、東海エリア・関東エリアを中心に事業基盤を構築しました。

その後、携帯電話市場の拡大とともに順調に業績を伸ばし、2005年に名古屋証券取引所(セントレックス)に株式を上場、2014年に東証・名証一部に上場を果たしました。

現在、東海エリアと関東エリアを中心に80店舗(2024年12月現在)を運営しています。

事業の多角化

当社は、携帯の普及期にあわせて事業を成長させてまいりましたが、一方で、近い将来市場の成長が鈍化することを予想しており、事業の多角化を図るべく、M&Aを活用して積極的に異業種への展開を進めました。

2000年には人材派遣業、2003年にビルメンテナンス事業、2009年の店舗転貸借事業に続き、卸事業、海外事業など複数のM&Aを実施し、事業を拡大しました。

KDDIからの出資

2022年12月にKDDIと資本業務提携契約を締結し、20%の出資をいただきました。

KDDIとしては強固な販売網を築きたいという意図があり、当社としても事業戦略を刷新したい、新たな一歩を踏み出したいという想いがあり、両社の利害が一致したため提携するに至りました。

現在、業界全体でリアルの店舗が減少傾向にある中、当社は店舗数を増やしながら、着実に売上・利益を拡大しています。

クロップスの事業概要と特徴

概要

当社はKDDIの携帯販売代理店として、関東・中部を中心に通信に関わる商品やサービスをお客様に提供しており、移動体通信事業を中心に多角的な事業展開を行っています。

まず基幹事業である移動体通信事業では、東海エリアと関東エリアにau Styleやau ショップ、UQスポットを展開し、店舗数は約80店舗にまで広がっています。

その他の事業としては、クロップス・クルーによる人材派遣事業やいすゞビルメンテナンスによるビルメンテナンス事業、イノベーションホールディングスが手掛ける店舗転貸借事業・不動産売買事業・家賃保証事業、ハピラや七つの海による卸事業、そして海外子会社2社による海外事業など多岐にわたります。

事業における優位性

KDDIとの強固な連携と店舗網

当社は沿革の中でもお話しした通り、KDDIとの30年を超える長いお付き合いがあります。

2022年に出資していただけたのも、当社の長年の実績が無ければ実現せず、私たちがコツコツと真摯にKDDIのお客様と向き合いながら事業を進めてきた結果であると考えています。

コンシューマービジネスという特性上、お客様の多い地域を狙って展開しておりますが、東名阪エリアのうち東海エリアで約50店舗、関東エリアで約30店舗を運営しています。

東海エリアでは最大規模、関東エリアでもかなりの店舗数を運営しており、人口の多い地域でドミナント戦略を展開しながら、リアルな店舗でお客様に真摯に向き合ってきました。

この実績は一朝一夕で実現することができるものではなく、当社とKDDIの強固な関係性を構築している他社にはない強みだと認識しています。

株式会社クロップス より提供

多角的な事業展開

当社は相関性の低い事業を多角的に展開しているため、グループ全体として安定した事業ポートフォリオを実現することができています。

その中でも成長しているのは、2009年にM&Aを行い、その後2018年東証一部(現 プライム)に上場した、イノベーションホールディングス(旧テンポイノベーション)です。

同社は店舗転貸借事業からスタートしましたが、2024年10月より不動産売買事業と家賃保証事業を分社化し、事業体制を整えています。

この分野は過去より成長を遂げており、今後も非常に高い成長余地があると考えています。

クロップスの成長戦略

高付加価値・サービスで未来志向型の利益創出の実現

今後も移動体通信事業の拡大に力を入れていきたいと考えています。

業界全体としては、通信端末や回線の売買市場が縮小傾向にあります。またリアルな販売現場の減少も予想されます。

そのようなダウントレンドの中、当社はKDDIとの連携を活かした新たな戦略を進めています。

それが「au Styleの拡大」です。

現在、全国に約2000店舗あるauショップのうち、約300店舗がau Styleという新たな形態のショップとなっており、当社が運営している店舗の多くもこのau Styleへと変貌を遂げています。

au Styleとは、通常のショップとは異なり、生命保険や金融関連セミナーの開催など、付加価値の高いサービスを提供する店舗形態です。

当社はau Style店舗を通して地域のお客様に総合的な提案を行い、これまで以上に多様な価値を提供することを目指しています。

また、業界再編が進む中においては、店舗をどのように改善し、どのように増やしていくかが重要なポイントとなります。

その中で、当社は新たな出店にもつながる店舗譲渡の機会を活かしていくことで、効率的に新規出店を進めていきたいと考えています。

このように、付加価値の向上と面的な展開の両輪で、売上と利益の成長を目指しています。

M&Aや事業投資の方向性

これまで事業の多角化を目指して複数のM&Aを進めてきましたが、今後は既存事業をさらに深掘りしつつ、それを補完する形でのM&Aを検討しています。

つまり、既存事業をしっかりと強化しながら、その延長線上でM&Aを活用するという方針です。

現在、中期経営計画は公表していませんが、社内での議論を進めているところであり、しかるべきタイミングで、開示させていただきたいと考えております。

また、2024年春にコーポレートステートメント・ミッション・バリューを再定義いたしました。

企業理念に基づき、事業戦略を具体化させていきたいと考えています。

株式会社クロップス より提供

注目していただきたいポイント

移動体通信事業では、地域密着型の店舗運営における品質向上と、広域的な店舗展開を安定的に継続すること、の2つの軸が重要となります。

同業他社でも地域密着型・広域展開のどちらか一方に強みを持っている企業はありますが、当社のように両方に強みを持つ企業は極めて少ないと思います。

また、auStyleでは付加価値の高いサービスを提供しており、当社はその運営を多く任されています。

この点からも、KDDIとの信頼関係の強さを感じていただけるのではないかと考えています。

そして、当社が目指しているのは「ワクワクする未来」を創ることです。

私たちの事業が、お客様にワクワクしていただけるものであることはもちろんのこと、社員自身も同じように前向きな気持ちで取り組める環境を整えたい、そうした思いで事業を成長させていきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

通信業界は携帯電話の普及に伴い成熟化しており、環境の変化が激しい業界です。

また、生成AIやスマートデバイスなど最先端のテクノロジーが次々と投入される分野であり、最も早く個人の生活に影響を与える業界でもあります。

私たちは、こうした新しい技術をお客様に直接お伝えし、生活に取り入れていただくお手伝いをしています。

この事業は社会にとってなくてはならないものであり、今後もその重要性は変わりません。

当社としては、さらに事業を磨き上げ、新しい価値やワクワクする体験をお客様にお届けしていきたいと考えています。

引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。

株式会社クロップス

本社所在地:〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅3丁目26番8号

設立:1977年11月2日

資本金:255,157,000円(2024年3月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2014年3月15日上場)、名証プレミア市場(2005年8月11日上場)

証券コード:9428

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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