【5075】アップコン株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年5月13日に実施したIRインタビューをもとにしております。

アップコン株式会社はウレタンを活用した沈下修正事業と新技術・新市場を創出し続ける会社です。

代表取締役社長の松藤 展和氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

アップコン株式会社を一言で言うと

ウレタンで”〇〇”する会社です。 

アップコンの沿革

アップコン株式会社代表取締役社長 松藤 展和氏

創業経緯

もともと私は学生時代に建築学を専攻しており、日本の大学からニューヨークの大学院に進学しました。

そして大学院卒業後はシドニーで建築家として活動していました。

そこで、ウレタンを用いた沈下修正を行う現地の会社から日本での事業展開を任され、2001年に日本法人を設立しました。

当時、その会社が使用していたウレタンにはフロンガスを含んでいる可能性が高く、環境問題への懸念がありました。

また日本ではアスベスト問題が広がり、安全性が担保されていない材料を使うことにリスクを感じていた私は、本社に問い合わせましたが明確な回答は返ってきませんでした。

そこで2003年6月にその会社を退職し、アップコンを設立しました。

そして日本の材料メーカーと共同で、フロンガスを排除した完全ノンフロンのウレタンを開発し、日本で初めて完全ノンフロンのウレタンを活用した沈下修正の事業を始めました。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

上場の経緯

当社の最も大きなターニングポイントとなったのは上場です。

まず2021年7月に東証TOKYO PRO Marketに上場しました。

特定の投資家のみが取引できる市場でしたが、上場後は信頼度と知名度が上がり、サイトのリニューアルも相まってWEBでの集客に拍車がかかりました。

今後は国内市場の開拓のために2022年12月には名証ネクスト市場に上場し、新規開拓とシェア拡大に努めています。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

アップコンの事業概要と特徴

概要

ビジネスモデルはBtoBとBtoCの2パターンがあります。

まずBtoBのビジネスについては、ゼネコン・工務店・設計コンサルタント等からの依頼が主です。

工場や倉庫等を中心に行っていますが、単なる床の沈下修正だけでなく、道路・農業用水路トンネル・空港エプロンの沈下修正等、公共事業も多く手がけています。

特に設計コンサルタントに積極的に情報提供を行うことで連携を強め、公共事業の際にはアップコン工法が設計仕様に取り入れられることが多くなっています。

また、「ゼネコンが主な取引先ですか」と聞かれることが多いのですが、BtoCの事業にも注力しています。

当社はWEBでの集客に力を入れており、住宅・工場・倉庫・店舗のオーナー等から直接依頼されるケースもあります。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

短工期で操業を止めない

当社の最大の強みは、依頼主の業務を止めずに施工できる点です。

例えば、従来のコンクリート打替え工法では大規模な修繕工事となるため、スーパーマーケットでは営業を数週間止める必要があります。

しかしアップコン工法では商品棚をそのままにして夜間に作業を行うため、営業時間に関係なく工事を進めることができます。

もちろん24時間営業の店舗でも運営を止めることなく施工が可能で、業務を止めないため、多くの方にアップコン工法が喜ばれています。

また短工期での施工が可能です。

従来のコンクリート打替え工法に比べて約1/10の期間で施工が完了します。

例えば、従来は2ヶ月かかっていたスーパーマーケットの沈下修正を1週間で完了できます。

昨年の平均では、施工期間は3〜4日程度でした。

この、短工期かつ操業を止めないアップコン技術は従来の工法に比べて非常に高い優位性があります。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

高い技術力かつ施工がコンパクト

施工には非常に高い技術力が必要になるため、徹底的に教育を受けた自社スタッフが責任を持って行います。

全従業員が川崎に集約されているため、機動力や対応力に懸念を感じる依頼主がいます。

そのような場合は、もし依頼主が北海道や沖縄であっても「明日なら何とか対応できるかもしれません。明後日以降なら確実に対応できます。」といった形でスピード感を持って対応しています。

更に施工自体が比較的短工期で完了し、施工に必要な機材もコンパクトであるためすぐに取り掛かることができることも強みです。

現在、川崎だけでなく、比較的受注の多い九州地域にも柔軟に対応するために倉庫を借り、機材一式を配置しています。

急な依頼があった場合でも従業員を送り込むだけで早期に施工できるような体制を整えています。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

環境に優しい工法

アップコン工法では、完全ノンフロン硬質発泡ウレタン樹脂を使用しています。

このウレタン素材は、国内のウレタン製造メーカーと共同で開発を行い、環境に配慮した素材です。

傾いてしまったコンクリート床を修正する場合、従来はコンクリート打替え工法が一般的な技術でした。

しかしこのウレタンを使って沈下修正を行うことができるのは当社しかありません。

このアップコン工法は環境に配慮した工法であるため、昨今のESGへの高まりは追い風になっています。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

アップコン​​の成長戦略

シェア拡大

まず国内市場の開拓に注力しています。

データを分析した結果、特に中部地方と関西地方での知名度が低かったこともあり、これらの地域に焦点を当てています。

当社の施工についてはリピーターが非常に多く、過去依頼した顧客の約60%以上から再び依頼が来ます。

しかし当社の存在を知らなければリピーターにはなり得ないのも事実です。

そこで戦略の1つとして名証に上場したことで、名古屋を中心に認知度を上げていくことで地域間の情報のばらつきを無くしつつ、全国的に売上を拡大することを目指しています。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

新市場創出

引き続き研究開発に力を入れていきます。

アップコンの事業モデルは、製薬会社のように常に新技術の開発に投資し続けることです。

主に製薬会社が新薬を開発し、市場に投入して利益を得るように、当社もウレタンの新技術を開発し、進化させています。

そして研究開発投資は継続的に行う必要があります。

アップコン工法が従来のコンクリート打替え工法を行っていた建設会社の仕事を代替したように、いつ新技術が台頭してくるか分かりません。

そのため既存事業で得た利益の一部を研究開発投資に回し、新技術の開発と新市場の創出を目指しています。

足元では5つの研究開発プロジェクトが進行中です。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

このような研究開発投資から生まれた事業として、農業用水路トンネルの補修技術があります。

農業用水路トンネルを復旧させる事業として2016年に事業化に成功しましたが、開発に3年、さらに公共工事として認可されるまで3年必要でした。

非常に事業化までに長い年月がかかりましたが、当社のみが農業用水路トンネルの補修技術を持っているため、独占的に受注することができます。

日本には多くの農業用水路トンネルが存在し、2020年時点でその半数が補修を必要としており、成長性の見込める分野です。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

一般的にはウレタン製造メーカーは、ウレタンのセル構造を真球に近づける形状で製造するのですが、アップコンでは逆にウレタンのセル構造を破壊して新しい特性を発見し、別の活用方法を見つけました。

従来は水を通さなかったウレタンに水を通し、芝生の下の土壌への水の浸透を調整することができるようになり土壌改良剤「ナテルン」を生みだしました。

当社はウレタンの構造を壊す際に、ある成分を加えることで、大きな穴を増やしたり減らしたり、水をたくさん通したり、通さなかったりと自由に調整できる技術を持っています。

現在はこの性質を活かして新たにテラリウム用基盤素材「テラタン」を新製品として販売を開始し、水族館でのワークショップをおこなうなど啓蒙活動を通じて様々な場面で活用できることをアピールしています。

このようにウレタン製造メーカーとは異なり、当社はウレタンの可能性を最大限に引き出すことを常に考えています。

ウレタンはあらゆる可能性を持つ素材のため、沈下修正を起点に様々な分野に応用できるように研究開発を進めます。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

グローバル展開

現在、ベトナム北部のハノイを中心に事業展開を進め、協力会社を通してアップコン工法を広めています。

今後は南部のホーチミンに進出予定で、ベトナムで培ったノウハウを活かしながら他の東南アジア地域にも展開する計画です。

最終的には、先進国にもアップコン工法を拡大していきたいと考えています。

というのも日本のような先進国にこそ、当社の技術力が必要だからです。

例えば半導体工場や自動車工場等ではミリ単位の精度での修正が必要です。

アップコン工法を使って0.5mmの誤差を埋めるための沈下修正を手がけたこともあり、今後は高度な要求に対応できる技術として重宝されていくと考えています。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

ウレタンの可能性は無限大です。

主にポリオールとイソシアネートという2種類の石油製品からウレタンは作られています。

またウレタンは、第二次世界大戦中に発明された素材で、まだ80年程しか経っていません。

さらに建築素材の中でも鉄・木材・セメントのように何千年も使われてきた素材と比べると、ウレタンの用途開発には無限の可能性があると考えています。

当社は「ウレタンで〇〇する」と宣言しているように、将来性が非常に高い素材です。

皆様にはウレタンという素材の可能性と、ウレタンの新たな活用方法を発見し、新しい市場を創出し続ける当社に注目していただきたいです。

アップコン株式会社 2024年4月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

投資家の皆様へメッセージ

我々はステップアップを続けています。

2021年には東証TOKYO PRO Marketに上場し、2022年には名証ネクスト市場に上場しました。

しかし現状に満足することなく、今後も研究開発を続けながら売上と利益を増やし、次の市場へステップアップを目指して日々活動しています。

投資家の皆様には、ウレタンと当社の可能性にご期待いただき、是非応援していただければと思います。

アップコン株式会社

本社所在地:〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1KSP東棟611

設立:2003年6月18日

資本金:7,325万円(2024年5月31日時点)

上場市場:名証ネクスト市場 (2022年12月26日上場)

証券コード:5075

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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