【2935】株式会社ピックルスホールディングス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年12月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ピックルスホールディングスは「野菜の元気をお届けします。」をスローガンとして掲げ、野菜の美味しさにこだわりながら、安全・安心を第一に、「食」をテーマに新しいことにチャレンジしていきます。

代表取締役社長の影山 直司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ピックルスホールディングスを一言で言うと

安全・安心で美味しい製品を提供し、消費者の健康的な生活の実現に貢献していく企業です。

ピックルスホールディングスの沿革

株式会社ピックルスホールディングス代表取締役社長 影山 直司氏

創業の経緯

当社は、1977年に「きゅうりのキューちゃん」で知られる東海漬物の子会社として設立されました。

設立当時、漬物は、段ボール等を使用し、ある程度まとまった量での取引が一般的でしたが、スーパーマーケットから要望のあったデイリー商品への対応が設立当初の目的でありました。

大手コンビニチェーンへの供給拡大

1977年にセブンイレブンとの取引が開始し、それ以降、同社の全国展開に伴い、当社も北海道から九州まで生産拠点を整備しました。その際は、新工場の設立だけでなく、各地域では地元企業と合弁会社を設立することで全国を網羅する供給体制を構築していきました。

その後、1993年には社名を「ピックルスコーポレーション」に変更し、2001年には株式を店頭登録しました。

セブンイレブンのグループ会社であるイトーヨーカ堂や、その他の大手スーパーマーケットとの取引も拡大し、2009年には、ヒット製品「ご飯がススムキムチ」が誕生し、全国のスーパーマーケットに展開されたことで、当社の事業規模は飛躍的に拡大しました。

現在、当社は全国に工場を展開し、業界内で唯一の上場企業として事業活動をしています。

特に「浅漬」「キムチ」や「惣菜」を中心とした製品で高い評価をいただいており、これらを基盤としてさらなる事業拡大を目指しています。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

ピックルスホールディングスの事業概要と特徴

概要

当社の製品構成の大半を占めるのは「浅漬」と「キムチ」であり、売上の約4割は自社製造していない商品を仕入れて販売するビジネスモデルとなっています。

また、スーパーマーケットの売場提案も積極的に行い、自社製品と仕入商品を組み合わせて、それぞれのニーズに応じた提案を行っています。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

事業における優位性

「開発力」

当社には約30名の開発スタッフが在籍しており、新たな製品開発に力を入れています。

当社では、NB(ナショナルブランド)製品だけでなく、得意先からの要望を受けた製品の開発も行っております。

当社の代表的な製品として「ご飯がススムキムチ」シリーズがあります。

このシリーズは、入社2年目の若手女性スタッフが、「女性や子ども、キムチが苦手な人でも食べられる製品を作りたい」という思いから開発したものです。

試食イベントでは、「これなら食べられる」と多くのお客様に支持され、現在まで続くヒット製品となりました。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

地域ごとのニーズに応じた製品開発にも力を入れており、関西地区では千枚漬けやカブを使った製品など、地場の特産品を活用して他社との差別化を図っています。

味付けの地域性にも対応しており、たとえば、なますでは柚子や日向夏、レモンを使い分けるなど、各エリアにあわせた展開をしています。

このような独自性と柔軟性を兼ね備えた開発力が、当社の競争力の源泉です。

「製造力」

当社の取り扱う製品は、日配品であり消費期限が短いものが中心になります。

そのため、迅速かつ効率的に製品を配送できる製造体制を構築しています。

全国約20カ所に製造拠点を持ち、北海道から九州まで同一品質の製品を提供できる体制を整えています。

一方で、地域ごとの特性に応じた製品展開も可能です。

当社の製造体制は、地域のお客様からの注文を受けてから製造する受注生産の方法を採用しているため、在庫を持たない効率的な運営を実現できるとともに、新鮮な野菜を使用した製品をすぐにお客様にお届けできる仕組みとなっております。

このような体制を持つ企業は全国的にも稀有であり、当社の大きな強みとなっています。

「販売力」

当社は、大手全国チェーンから地場の小規模小売店まで幅広い販売網を持ち、直口座による取引で長年の信頼関係を築いています。

各事業所には担当エリアごとの営業スタッフを配置し、全国向けと地域特化型の2軸で販売活動を行っています。

この販売網と売場提案のノウハウは、当社の安定した収益基盤を支える重要な要素です。

また、販売現場の意見は開発にも活用されており、最近では箸休めとしての漬物需要が減少している状況にあり、その対応策の1つとして、「甘辛醤油仕立て3種の浅漬」を開発しました。

この製品は、浅漬の調味液をそのまま鍋に入れるだけで、調味料を使わずとも美味しい鍋が楽しめるというアイデア製品です。

こうした現場の情報をもとに新たな製品を生み出し、販売と開発の両面で連携を深めることで、当社の強みがさらに強固になっています。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

ピックルスホールディングスの成長戦略

外部環境と当社のポジション

漬物市場の規模は、2000年ごろは約4,800億円に達する巨大市場でした。

漬物には梅干、たくあん、地域特有のものなど多様な種類があり、野菜を塩などで漬けることにより保存できるようにすることで、一年中楽しむという漬物文化が根付いていました。

しかし、日本人の米消費量の減少とともに漬物市場の規模も縮小し、約3,200億円となっており、現在は下げ止まりの状況で推移しています。

当社はこの業界で唯一の上場企業ですが、売上高はグループ全体で約430億円であり、市場シェアは15%に満たない状況です。

ただし、業界の構造変化に伴い、廃業する企業が増える一方で、上位企業による寡占化が進んでいます。

こうした環境の中で、当社は漬物を「箸休め」だけでなく、おかずの一品になる製品や料理に使える製品として提案し、野菜摂取量を増やす取り組みを進めています。

厚生労働省が「1日350gの野菜摂取」を推奨していますが、平均摂取量は70〜80gほど不足しているといわれています。

農林水産省の「野菜を食べようプロジェクト」では、漬物で野菜を食べようという取り組みも行われています。

この不足分を漬物で補うべく、塩分を抑えた製品や料理に使いやすい製品開発を進めています。

これら新製品を通じて、より健康的な食生活をサポートしていきます。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

中長期戦略

当社は中長期戦略として、「収益性の向上」「資本効率を意識した経営」「新製品・新領域への挑戦」を進めていきます。

まず、収益性の向上の一環として、韓国直輸入のキムチは、為替変動や原材料価格の高騰を受けて値上げを実施しましたが、その結果売上が減少しました。

一方、「ご飯がススムキムチ」はこれまで値上げをしていませんでしたが、原材料費や人件費、物流費の上昇を受け、2024年9月から順次、値上げを実施しております。

現在は徐々に市場に浸透しつつありますが、さらなる収益性向上のため、追加の値上げや内容量の見直しも検討しています。

一般的には、「業界上位の会社が値段を上げないと他社も上げられない」という状況があり、当社が先行して値上げに踏み切ることで、業界全体の収益改善に貢献したいと考えています。

さらに、近年は農家の平均年齢が65歳を超え、生産者が減少している現状では、野菜の安定調達が課題です。

野菜の生産コストも上がっており、今後は今のような価格では調達できなくなる可能性を考え、当社では仕入価格に見合った製品価格の再設定を進めていく必要があると考えています。

そして、製品の選択と集中を進め、当社が取り扱うアイテムのうち、売上への貢献が大きい製品を中心に展開していき、生産効率の低いアイテムから順次集約・削減を図ります。

また、新製品・新領域への挑戦については、冷凍食品がキーワードです。

近年、スーパーマーケットでは冷凍食品売場が大幅に拡大しており、消費者の人気を集めています。

この流れの中で、当社は「ご飯がススムキムチ鍋」を冷凍食品として企画し、スーパーマーケットの冷凍食品売場で販売を開始しました。

冷凍食品は、時短やコスパ、タイパ(タイムパフォーマンス)の面で多くのメリットがあり、今後も需要が増加すると見込まれます。

業務用の商品においてもチルドのものより使用期間が長くなることで食品ロスの削減につながり、当社・得意先双方にメリットが生まれます。

当社としても冷凍食品のラインナップをさらに充実させ、新たな市場を開拓していきます。

この冷凍食品を軸とした新たな事業領域への挑戦は、当社の成長戦略の重要な柱となっています。

株式会社ピックルスホールディングス 2025年2月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

注目していただきたいポイント

和食が海外で再び注目される可能性があると期待しています。

特に東南アジアにおいては、和食文化が広がるポテンシャルがあると考えており、海外展開についてもさまざまな可能性を検討中です。

具体的には、輸出を中心に展開するのか、現地での生産を行うのかといった形態を含め、まだ検討段階ではありますが、海外市場への進出を視野に入れています。

また、ベトナムから技能実習生を受け入れ、当社の工場で働いていただいています。

彼らに当社の製品を食べてもらった際、「美味しい」と評価されることが多く、「これならベトナム市場でも売れるのでは?」という声も上がっています。

こうした現地の意見を参考にしつつ、日本国内にとどまらず、いずれは海外でも事業展開を進めていきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

私たちの「あるべき姿」として、「新たな価値を創造し続ける野菜・発酵・健康の総合メーカー」を目指しています。

世の中のライフスタイルが変化する中、消費者の皆様や取引先企業に寄り添い、適切な形で製品を提案し、食生活をサポートしていきたいと考えています。

皆様が身近なコンビニで購入されるおにぎりの具材の中には、当社が調達・加工した原材料が使われているものもあります。

また、レストランなどでも知らないうちに当社の製品を口にしていることがあるかもしれません。

今後は「ピックルス」というブランド名が広く認知され、「これがピックルスの製品だったのか」と気づいていただける機会を増やしていきたいと思っています。

そのために、積極的に情報発信を行い、皆様に当社の製品や取り組みを知っていただけるよう努めます。

引き続き、変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

株式会社ピックルスホールディングス

本社所在地:〒359-1124 埼玉県所沢市東住吉7番8号

設立:2022年9月1日

資本金:1億円(2024年12月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2022年9月1日上場)

証券コード:2935

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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