【6191】株式会社エアトリ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年2月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社エアトリは総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心にITの力で、計11事業を展開し、中長期成長戦略「エアトリ5000」(連結取扱高5,000億円)に向けて成長を続けている会社です。

また、エアトリグループでは役職員へ、日々伝えている「6項目」をまとめています。こうした取り組みを通じて、社員の育成強化や働きやすい環境の構築に努めています。

▼「エアトリグループの約束」
https://www.airtrip.co.jp/promise/

代表取締役社長 兼 CFOの柴田 裕亮氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社エアトリを一言で言うと

和製OTA No.1を目指し、終わりなき成長を続けていく会社です。 

エアトリの沿革

株式会社エアトリ代表取締役社長 兼 CFO 柴田 裕亮氏

創業経緯

当社は大石崇徳と吉村英毅の二人の共同創業者によって創業されました。

彼らはそれぞれ事業を手掛けており、2007年に統合する形で今の「エアトリ」の基礎となる旅行事業をスタートさせました。

そして旅行事業のシステム開発をする上で、2011年には新しい展開としてITオフショア開発事業を開始しました。

第1ステージ

上場後は、ほぼ毎年新たな事業を立ち上げてきました。

2016年にはオンライン旅行事業(現エアトリ旅行事業)とITオフショア開発事業を軸に上場し、翌年の2017年には東京証券取引所の一部に市場変更しました。

そして、2020年にはメディア事業の株式会社まぐまぐが上場しました。

第2ステージ

2021年9月にはコロナ禍の影響を受けながら、柔軟に事業機会を活かし過去最高益を達成しました。

そして2021年12月にはITオフショア開発事業の中核を担う株式会社ハイブリッドテクノロジーズが、2023年8月には訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業の中核を担う株式会社インバウンドプラットフォームが上場しました。

現在はコロナ禍での赤字を取り返し、「エアトリ5000」を達成するためにも第3ステージでの成長戦略を進めています。

株式会社エアトリ 統合報告書2022 完全完成版 より引用

エアトリの事業概要と特徴

概要

当社最大の収益源であるエアトリ旅行事業では、インターネット取扱高No.1である総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を運営しています。

そして、そのエアトリ旅行事業を中心に、シナジーを生かした事業展開をしています。

例えばITオフショア開発事業では、当社のシステム開発で培ったノウハウを基にベトナムにおける開発拠点から顧客企業に開発サービスを提供しています。

また、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業ではインバウンド顧客のサポートサービスを、地方創生事業では地域経済の課題解決を行っています。

そして関連したメディア事業としてメールマガジン配信サービスの「まぐまぐ!」などを提供しています。

さらに投資事業(エアトリCVC)においてはグループ子会社を含め計17社上場させてきたノウハウを活かして、成長企業への投資を行い、築いた関係性を元に新たな事業機会の創出も行っています。

株式会社エアトリ 統合報告書2022 完全完成版 より引用

事業における優位性

開発力

当社のITオフショア開発事業は、流動的に外部へ技術を提供すると同時に、自社開発にも開発力を役立てています。

この事業は元来、ラボ型のモデルに根ざしています。

具体的には、ベトナムに顧客専用の開発拠点を設けることから始まりました。

このモデルでは、ベトナムで採用した人材により、遠隔地からでもクライアントの専門のラボとして機能する開発環境を提供しています。

当社は「ハイブリッド型」と呼んでいますが、日本の拠点にもエンジニアを採用し、日本とベトナムの拠点にいるエンジニアが協力し合い、プロジェクトの上流から下流まで一貫して対応することが可能です。

また、懸念されるコミュニケーションコストの面では通訳が可能なブリッジエンジニアやコミュニケーターを配置することで、日本とベトナム間のスムーズな連携を実現しています。

他社プラットフォームとの差別化

多くの方が感じる通り、旅行プラットフォームは一見似ているように見えますが、実は得意とする領域には大きな違いがあります。

「エアトリ」は航空券の販売を主軸に据えています。

我々は航空券販売で国内トップで、国内外の航空券を提供しています。

この航空券販売における当社の優位性を3つお話しいたします。

1つ目は政府観光局(観光庁)・航空会社との深い関係性です。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

2つ目は、国内の旅行会社の中で自社開発リソースを持ち、UI/UXにこだわったサイトと優れたバックエンドシステムを構築できる点です。これを支える丁寧なオペレーションも強みです。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

最後に、長年にわたるブランド投資により、「エアトリ」の認知度が40%台に達し、多くのリピーターを獲得できている点です。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

この3つにより当社は航空券予約においては国内トップシェアを維持しています。

エアトリサービスは、「毎日がファンづくり」です。

エアトリの成長戦略

航空券の市場拡大

航空券の市場については、現在約2.6兆円規模あり、およそその半分がインターネット経由で購入されています。

また2000年代からインターネット販売が増え続ける中、当社はこの変化を捉え、成長を遂げてきました。

このような背景から顧客が航空券を直接またはホテルと組み合わせて購入するニーズは高まっており、「エアトリ」の成長をさらに加速させるのに追い風の環境だと考えています。

「エアトリ5000」

中長期成長戦略として「エアトリ5000」を掲げ、FY2025〜26にグループ連結取扱高1,500億円、営業利益50億円を、将来的にはグループ連結取扱高5,000億円の達成に向けて邁進中です。

株式会社エアトリ 統合報告書2022 完全完成版 より引用

この達成のためには大きく3つの重要なポイントがあります。

まず1つ目は、エアトリ旅行事業を国民的サービスへと押し上げ、和製OTA No.1を目指していくことです。

具体的には、総合旅行プラットフォームとして、提供する商品やサービスを拡充することで、より多くの方々に利用していただけるように質を高めていきます。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

次に2つ目は、既に上場しているグループ子会社3社を含めた、エアトリ旅行事業を除く既存事業に関する戦略です。

グループ子会社3社は既に一定の事業規模を築き、成長可能な市場に位置しているため、当社の主要な支柱として位置づけていく方針です。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

そして3つ目は、現在11ある事業のポートフォリオのさらなる拡張を目指します。

特に、新たに事業を立ち上げ、それぞれが上場という選択肢を含めて成長を目指していくことに注力していきます。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

日本国内需要:オンラインチャネルでの販売推進

まず、日本国内の旅行市場が横ばいの状況の中で、インターネット経由での航空券購入が増加している現状を踏まえ、オンラインチャネルでの販売を促進していきます。

特に当社のアプリを通じて、この傾向をさらに加速させる方向性を強化していきます。

そのためにもマーケティングやブランディングの強化も行う方針のため、戦略的広告投資を実行しています。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

インバウンド:訪日外国人向けサービスの拡大

インバウンド市場の拡大に伴い、訪日外国人向けのサービス展開を加速しています。

具体的には既にWi-Fiレンタルサービスは提供していますが、それ以外にも不動産紹介、ハイヤーサービス、キャンピングカーレンタルなど日本におけるライフスタイル全般にわたって拡大していきます。

今後は市場の需要を的確に捉え、新事業の立ち上げも積極的に行っていきます。

注目していただきたいポイント

注目していただきたいポイントとして、特に強調したいのは「エアトリの第三ステージ」としての事業展開です。

コロナウイルス感染症の流行前を第一ステージと位置づけ、パンデミック中を乗り越えたリスタートを第二ステージと定義しています。

そして現在、我々はこれらの経験を踏まえ、新たなステージへと進出し始めています。

この「次のステージへ」というフェーズは、エアトリがこれまで以上に前進していることを表しています。

今後の事業展開に大きな期待を持っていただきたいと思います。

株式会社エアトリ 2024年9月期第1四半期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

現在、当社は「エアトリ5000」の達成に向けて2つの大きな取り組みを進めています。

1つは「エアトリ」を国民的サービス化し、もう1つはエアトリ経済圏のさらなる強化をしていくということです。

これらの取り組みにより、企業価値の向上を目指していきますので皆様の継続的な支援と応援を心よりお願い申し上げます。

株式会社エアトリ

本社所在地:〒105-6219 東京都港区愛宕2-5-1 愛宕グリーンヒルズ MORIタワー19F

設立:2007年5月11日

資本金:1,787,647,040円※払込資本3,902,440,323円(2024年2月末時点)

上場市場:東証プライム市場 (2016年3月31日上場)

証券コード:6191

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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