【9248】人・夢・技術グループ株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年3月8日に実施したIRインタビューをもとにしております。

人・夢・技術グループ株式会社はこれまでに培った技術をさらに高度化・多角化し、さまざまな社会課題に迅速かつ柔軟に対応し、あらゆる生活基盤に関わる社会インフラサービスを提供するために持ち株会社として設立しました。

代表取締役社長の永冶 泰司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

人・夢・技術グループ株式会社を一言で言うと

人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する会社です。 

人・夢・技術グループの沿革

人・夢・技術グループ株式会社代表取締役社長 永冶 泰司氏

創業の経緯

当社は創業から3年の会社ですが、前身となる長大には60年近い歴史があります。

長大は本州と四国を結ぶ長大吊橋を設計する目的で集まったことからスタートしました。

そこから、「夢の架け橋」と呼ばれるプロジェクトが始動し、国の方針とも合致したため、その受け皿となる橋梁設計会社の設立に至りました。

現在までの事業展開

長大は、本州連絡三橋の1つである明石海峡大橋など、多くの長大橋梁の設計を手掛けてきました。

また、橋梁設計には、その前段階として環境調査が必要になったり、橋梁をかけた先には道路が必要であったり、将来の交通量の予測等の社会的な分析、災害対策など、幅広い技術が必要となります。

そこで、環境アセスメント分野や交通計画分野の事業へも展開し、総合建設コンサルタントへ成長しました。

当時からコンピュータ技術の必要性を認識し、長大橋設計に必要な解析には大型コンピュータを導入して、今で言うIT技術を活用してきました。

さらに、我々の技術は世界にも広がっており、東南アジアをはじめ南米、ヨーロッパ、アフリカ、南アジアにおけるビッグプロジェクトにも関与しています。

その後も事業分野を広げ、さらにM&Aによる事業拡大をしながら、人が夢を持って暮らせる社会の創造に向けて、幅広い分野で事業を展開しています。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

人・夢・技術グループの事業概要と特徴

概要

当社は人々の生活を支える社会インフラサービスを提供しています。

基幹事業である総合建設コンサルタント事業を中心に、各事業会社がそれぞれの特徴を活かしながらグループシナジーを発揮し、新しい事業分野にも展開しています。

主に、国土基盤整備・保全、環境・新エネルギー、地域創生、海外連携・新領域の4領域に分けられます。

主要顧客は国や官公庁、地方自治体などが中心です。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

また、新規事業としては空飛ぶクルマ、量子コンピュータ、デジタル田園都市、水上都市等、次世代の社会・市民生活を支えていくような新技術を軸に事業を展開しています。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

事業における優位性

総合力とチャレンジ精神

総合建設コンサルタントとしてのサービス提供が大きな強みです。

その根底にあるのは他がまだ手をつけていない分野で不可能と考えられていたことに対しても挑戦し、それを成し遂げるチャレンジ精神です。

これまで国内外を含め、巨大な橋の建造やまちづくりなどインフラに関わる分野において重要なプロジェクトに携わり、実現してきました。

会社設立のきっかけとなる本州四国連絡橋の架橋プロジェクトも、当時は世界でも前例のないプロジェクトでした。そのチャレンジ精神が今も会社の原点となっています。

また、実際のプロジェクトにおいて、分析や環境影響評価など複雑な問題に取り組む際にはチームでの作業が必須です。

そして一つの分野だけでなく、トータルでの解決策を提供するためには、多様な専門知識を持つチームが不可欠です。

当社は必要な技術や新技術に対してM&Aや研究開発を通じて新たな価値を提供し、事業を拡大してきました。

このようにして、当社のグループ間のシナジーを発揮した総合力と、ビッグプロジェクトや新技術へのチャレンジ精神が相まって、他社にはない価値を提供しています。

人材戦略

社会インフラ整備という当社の事業の性質上、プロジェクトの開始から運用開始までには長期間が必要とされるため、社員には長く当社で働いてもらうことが必要です。

そのため、即戦力となる高い技術を持った中途採用の採用に加えて、新卒を採用し、当社の一員として必要な技術を身につけてもらうため、一から育て上げています。

そして、健康経営やDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な働き方を可能にする制度を整え、社員一人ひとりが成長・活躍し、長く働ける環境づくりを進めています。

例えば、結婚や子育て、介護といった個人の状況に合わせた働き方を支援する制度です。

社員にはライフスタイルハンドブックを配布し、ライフステージに合わせた制度の活用方法を示すことで、積極的な制度利用による働きやすい環境づくりを行っています。

また、各グループ会社から委員を選出した「ダイバーシティ推進委員会」での好事例の横展開や活動を一般社員にも共有するため「ダイバーシティセミナー」を開催しています。

さらに健康支援センターを設置しており、社員の健康面だけでなく、コミュニケーションの活性化にも寄与しています。

このように、社員一人ひとりが充実したキャリアを築けるよう、多面的なサポートを提供していることも技術力の源泉となっています。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

人・夢・技術グループの成長戦略

持続成長プラン2025

我々が携わっている事業は長期間に亘るプロジェクトがほとんどです。

そのため数十年先を見据えて、人が夢を持てる安全で安心な社会の創造を目指して、生活基盤に関わる幅広い社会インフラサービスを提供していくために、自ら新たな技術やサービスを開発・創出するという新たなコンサル像を目指す必要があると考えました。

2018年に長期経営計画「長期経営ビジョン2030」を策定し、企業規模として売上高を600億円まで伸ばしROEも10%程度またはそれ以上を安定的に実現する目標を掲げております。

そして、長期経営計画を4分割した第2フェーズとして、将来の成長に向けた足固めとなる中期経営計画「持続成長プラン2025」を策定しました。

今後は人的・組織体制強化投資、戦略的事業投資、M&A投資を軸に投資を行っていく方針です。

人・夢・技術グループ株式会社 「持続成長プラン2025」の成長投資と効果 より引用

戦略的事業投資

既存事業の強化はもちろんのことですが、特に新事業への投資は人・夢・技術グループの使命でもあると考えています。

地域社会への貢献を通じて、人々が夢を持って暮らせるような社会を構築することは、我々の使命であり、人・夢・技術グループを設立した理由でもあります。

例えば、今の日本では特に山間部の過疎化が進み東京への一極集中が進む中で、地域活性化が一つの大きな課題となっています。

そこで「空飛ぶクルマ」の開発に取り組んでいますが、これは中山間地域の生活の利便性を高めることが目的です。

特に地方では交通の便が悪く、生活が不便な地域では、人口減少が進んでいます。

そのままでは地域全体が衰退し、国内自給率という観点では国力が減退していくことになります。

そこで我々は空飛ぶクルマをはじめとして、革新的なインフラを提供することによって、地域の医療や福祉、物流の問題を解決し、地域が自立して発展できる環境を作ろうとしています。

また、デジタル田園都市構想に基づき、ITやデジタル技術を活用したまちづくりにも力を入れています。

例えば、人口3000人規模の町でも、この構想下では住民が安心して生活できる環境を整えることが可能です。

さらに、再生可能エネルギーや災害対策といった分野でも、DXや研究開発を通じて地球温暖化の進行や自然災害の増加に対抗するための取り組みを進めています。

このように、多岐にわたる分野での取り組みを通じて、技術の力で社会に貢献し、人々が夢を持って生きられる社会を創造することが、我々の目指す目標です。

M&A投資

グループ強化による地域創生と新規事業の推進を行うために、将来当社に必要になるような技術を持つ企業を積極的にM&Aしていく方針です。

既に2023年7月には、企業のDX推進向けのシステム設計・開発や社内DXに注力するために株式会社ニックスを子会社化しました。

これにより、IT・DX活用コンサルティング、WEBソリューション、開発・導入・構築支援などの新たなグループシナジーを生み出しています。

今後はその他にも、インフラをコアとして新たな価値提供ができる分野、それに付随する業務領域に拡大していくことで、総合建設コンサルタントとして更なる成長をしていきます。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

注目していただきたいポイント

我々の目標は「人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する」ことで、そのためには様々なアイデアと情熱が必要です。

この変化の激しい時代において、常に新しい挑戦を恐れずに取り組むことが企業にとって必要なことだと考えています。

実は最近、フィリピンでのうなぎの養殖事業を行っています。

これは単にうなぎを養殖することが目的ではなく、労働環境の提供やインフラの整備など地域経済の活性化に貢献することを目指して、現地の企業と協力して事業を開始しました。

このように日本から遠く離れた地域でも、地元のパートナー企業と協力して、工業団地や農業団地の開発、道路や港湾の整備を行うことで、地域社会に新たな仕事を創出しています。

我々は、技術力を活かして、世界各地で持続可能な社会の発展に貢献していきたいと考えています。

これまでの長年にわたる経験と、新たな挑戦への取り組みを通じて、地域の発展を支える未来のインフラを形作るというビジョンを実現していくので、今後の事業展開に是非ご注目ください。

人・夢・技術グループ株式会社 2023年9月期 決算説明会 より引用

投資家の皆様へメッセージ

我々は常に新しいことに挑戦しています。

当社の事業から生み出される利益は積極的に新たな事業と研究開発に投資しており、皆様の日常や社会全体に良い影響を与えていることを感じていただけると思います。

基幹事業で安定して成果を上げつつ、積極的な投資が行えるこのバランス力は大きな強みです。

ただ挑戦するだけではなく、株主の皆様への還元も忘れてはいません。

投資と株主還元の両輪で企業を成長させることで、事業を通じて社会全体への更なる貢献をしてまいります。

ホームページ上でその取り組みや成果を公開しているので、ぜひご覧いただければと思います。

人・夢・技術グループ株式会社

本社所在地:〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目20番4号

設立:2021年10月1日

資本金:31億750万円(2024年3月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2021年10月1日上場)

証券コード:9248

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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