※本コラムは2025年1月20日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ビーアンドピーはリアルとデジタルを融合させ、総合販促支援企業として多角的なビジネスモデルを構築しています。
代表取締役社長執行役員の和田山 朋弥氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ビーアンドピーを一言で言うと
「社会課題を解決する先端の総合販促支援企業を目指す」企業です。
ビーアンドピーの沿革
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創業の経緯
当社は1985年に「和田山コピーセンター」として創業し、コピーサービス事業からスタートしました。
当初はゼネコン向けの図面用コピーサービスを提供していましたが、時代の変化とともにカラープリントの需要が高まり、それに対応する形で大判カラープリント出力事業を開始しました。
ちょうどその頃、アメリカではApple社のMacintosh(マッキントッシュ)が普及し始め、DTPによるデジタルデータ制作が始まり、業界全体の流れが大きく変わり始めていました。
この変化をいち早く察知した当社は、世界初の写真画質のインクジェットプリンターを導入し、1991年にコピーサービスから撤退し、インクジェットプリント事業に全面的に参入しました。
着実な成長と上場
当社の売上推移をご覧いただくと分かるように、一気に急成長したわけではなく、毎年10〜20%のペースで着実に事業を拡大してきました。
特に、大きな転機となったのが2002年の東京進出です。
それまで大阪を中心に関西で展開していた当社が東京へと商圏を拡大したことで、毎年新たな人材を採用しながら成長を続けました。
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その後も順調に事業を拡大し、2016年頃から上場準備を開始しました。
当時の売上は18〜20億円に達し、利益率も約20%と、業界内では比較的高い水準を維持していました。
また、社員数も100名を超え、「今後、会社としてどの方向を目指すべきか」を真剣に考えるタイミングを迎えました。
創業家の枠を超え、より社会的に開かれた企業を目指すとともに、会社の成長を支えてくれた社員に対して何らかの形で報いたいという思いもありました。
その中で選択肢として浮かび上がったのが「上場」でした。
当社が掲げる理念である「従業員の幸せ」を実現するためには、パブリックカンパニーとしての誇りや、業務へのやりがいを感じてもらうことが重要だと考えたのです。
その結果、2019年7月に東証マザーズ市場へ上場を果たし(現在は東証スタンダード市場に区分変更)、これを機に、プリントビジネスの枠を超えた多角的な事業展開を進めることができました。
現在は、企画から生産まで対応可能な自社一貫体制を構築し、販促物に関する課題を解決できる「総合販促支援企業」としてさらなる成長を目指し、新たな挑戦に積極的に取り組んでいます。
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ビーアンドピーの事業概要と特徴
概要
当社のビジネスモデルは、独自の付加価値サービスを提供しながらリピーターを増やしていくモデルです。
現在は、インクジェットプリンターを使用した多品種少量生産を強みとした販売促進用広告を制作するインクジェットプリント事業を主力事業として、少品種多量生産のニーズに対応するプリントソリューション、ノベルティやキャラクターグッズなどのオーダーグッズ制作、デジタルサイネージや動画コンテンツ、AR(拡張現実)サービスを展開するデジタルクリエイトなど、プリントだけでなく、販売促進にかかわる幅広い商品を手掛けています。
また、オウンドメディア「インクイット」を活用し、インサイドセールスの強化も図っています。
これにより、新規顧客の獲得に繋げ、継続的なフォローによってリピーターの増加を支えています。
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事業における優位性
国内トップレベルの設備と生産能力
当社は国内6か所の営業・生産拠点を有し、全国のビジネスエリアを中心に24時間の生産体制を構築することで、高品質・短納期を実現しています。
全国的に見ても24時間稼働している同業者は限られており、この体制を維持するためには、社内の仕組み化やシフト管理の整備が不可欠です。
また、広告代理店や広告主の担当者が当社に直接訪問し、サンプル確認や検品、ショールームでの打ち合わせができる環境を整備しています。
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当社の制作する販促広告物は、多種多様な素材や用途があり、これらに対応するため当社では水性プリンター、溶剤プリンター、UVプリンターなど多様な設備を取り揃えています。
これらの最新鋭の設備は、事業拡大の過程でお客様のニーズに応えるために継続的に投資し、整備してきたものです。
そのため、同等の環境を短期間で整えることは容易ではありません。
さらに、インテリア向けのインクジェットプリンターを活用した壁紙プリントサービスなど、新しい市場開拓にも積極的に取り組んでいます。
このように、常にお客様の要望に応えながら、設備の進化を続けています。
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高付加価値を与えるサービス体制
お客様のニーズに対応し続けることで、高いリピート率を維持しています。
30年以上継続してお取引いただいているお客様も多く、毎月・毎年、新規の取引先が増え続けています。
当社のプリントビジネスの中で、お客様から「プリント以外の販促施策も提供してほしい」という要望を多くいただいたことを契機に、事業の多角化を進めてきました。
創業当初は、販促用のポップアップやディスプレイなどリテール業界向けの販促物が中心でしたが、そこから派生し、グッズ制作やデジタルサイネージなど多様なニーズに対応できるビジネスモデルへと進化しています。
このように、お客様の要望に応えながら高付加価値のサービスを提供し、事業領域を拡大しています。
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多様な販売機会に対応した営業力
当社の特徴は、多くの案件を積み重ねることで安定した事業成長を実現している点にあります。
年間で約5万〜6万件の案件を受注しており、このビジネスモデルを支えているのが、全国の営業チームによる細かい案件の獲得と迅速な対応です。
現在は、サービスごとに専任の営業担当者を配置するのではなく、エリアごとの営業担当者が複数のサービスを扱う形で、お客様への積極的な提案活動と拡販を推進しています。
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ビーアンドピーの成長戦略
シェア拡大・機能拡大・領域拡大
当社の強みである「リピート獲得」をさらに強化するためには、ECのみで完結するのではなく、高付加価値な案件を中心に提案していくことが重要だと考えています。
そのため、今後の展開では、すでに拠点を構えている主要都市部で市場シェアをどれだけ拡大できるかが鍵となります。
現在、東京では営業スタッフを40名ほど配置し、それぞれの担当エリアを細かく分けながら市場の開拓を進めています。
営業人員の増強に加えて、新しいサービスや商品の積極的な展開を進める方針です。
しかし、当社が属する業界には多くの競合企業が存在しており、上場していない企業も含め、激しい競争が繰り広げられる中で、当社が競争優位性を確立するためには、営業担当者がどれだけ「武器」を持てるかが重要になります。
たとえば、環境配慮型の製品の取り扱いを開始したことで、一部の顧客には非常に興味を持っていただいています。
しかし、すべての顧客に響くわけではないため、各顧客のニーズに応じた柔軟な提案が求められます。
その対応力を高めるために、デジタル商材やオーダーグッズ制作サービスなど、さまざまな提案が可能となる体制を整備しています。
営業担当者が顧客のニーズを的確に分析し、最適な提案を構築できるようになれば、確実にシェアを拡大することが可能です。
今後も市場動向を見極めながら、多角的な提案活動を強化していきます。
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注目していただきたいポイント
2024年12月に、シンガポールを拠点とするZKDigimax Pte. Ltd(以下、ZKDIGIMAX社)との事業提携を発表しました。
ZKDIGIMAX社はインドネシアのデジタルサイネージ市場で約90%のシェアを占めています。
今回の提携は、ZKDIGIMAX社の革新的なサービスを日本市場に導入するプロジェクトを目的に始まりました。
ZKDIGIMAX社はリテール業界におけるデジタルサイネージ活用の実績が豊富であり、AI技術を活用したデジタルサイネージや、カメラ・センサー機能と連動した統合ソリューションを提供しています。
日本ではまだ普及が進んでいないこれらの技術を、今後当社が日本市場で展開し、国内のリテール業界や販促領域で革新的な取り組みを行っていきたいと考えています。
国内にもデジタルサイネージ関連の企業は多数ありますが、ハードウェアとソフトウェアの両方を開発、提供できる企業はほとんど存在しません。
その点、ZKDIGIMAX社のような企業は世界的に見ても非常に希少であり、高い競争力を持っています。
今回の提携を通じて、マーケティングデータを統合的に取得できる新たなサービスを日本国内で展開することが可能になりました。
これは当社にとっても大きな成長の機会となると考えています。
今後のデジタルサイネージ分野における展開にぜひご注目ください。
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投資家の皆様へメッセージ
当社は、株主還元の強化に積極的に取り組んでいます。
2024年10月期には、株主優待制度を導入し、2026年10月期に配当性向を40%とすることを目指しています。
今後も株主の皆様への還元策を充実させることに注力していく方針です。
現在進行中の中期経営計画は、当社の成長過程における一つの通過点にすぎません。
これからも販促広告ビジネスのさらなる発展を見据え、株主還元を意識した経営を推進してまいります。
引き続き、皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
株式会社ビーアンドピー
本社所在地:〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀2丁目6番33号
設立:1985年10月22日
資本金:288,050,000円(2025年1月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2019年7月24日上場)
証券コード:7804