【7681】株式会社レオクラン 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年1月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社レオクランは「医療機関の良きパートナー」として、病院の建設・運営を総合的に支援する会社です。

代表取締役会長の杉田 昭吾氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社レオクランを一言で言うと

病院の建設・運営を総合的に支援する会社です。 

レオクランの沿革

株式会社レオクラン代表取締役会長 杉田 昭吾氏

創業の経緯

私を含む創業メンバーは、前職の医療機器商社で現在のビジネスモデルに近い形で事業を展開していました。

その商社では、医療業界向け消耗品を扱う卸売事業、そして私が統括していたメディカル事業部の事業が展開されていました。

執行役員としてメディカル事業部を統括する中で、業界環境を踏まえた新たな方向性を提案しましたが、上層部の理解を得ることができませんでした。

そのため、「自分たちで新たな道を切り開こう」と決意し、十数名の仲間とともに退職し、2001年にレオクランを設立しました。

全国展開

創業当初は少数精鋭のチームで、医師のクリニック開業支援や病院の新築プロジェクトの新規案件獲得に力を入れていました。

2001年から2008年頃にかけて、近畿地方を中心に市場を開拓していましたが、次第に新規案件が減少し、市場の縮小を実感しました。

ただ、前職時代に沖縄や北陸などで同様のビジネスモデルを展開した経験があったことから、全国に進出すればさらなる事業拡大が可能だと考えました。

そこで、四国、九州、北海道など潜在的な需要が見込める地域への進出を決断しました。

全国展開を進める中で、病院の新築・移転に関するすべてを支援する独自のビジネスモデル「トータルパックシステム」を確立しました。

また、当社が得意とする「狩猟型」の営業スタイルを活かし、新たな市場の開拓に注力しました。こうした取り組みを続けることで、当社のビジネスモデルに共感していただける顧客との関係を築き、着実に成長を遂げてきました。

2019年10月に上場

2019年9月期までに、当社は36都道府県での販売実績を達成し、2019年10月2日に東証二部市場へ上場しました。

事業のさらなる成長には信用力の向上と優秀な人材の確保が不可欠であると考え、上場を決断しました。

その後、2022年4月には東証スタンダード市場へ市場区分を変更し、現在に至ります。

株式会社レオクラン より提供

レオクランの事業概要と特徴

概要

当社は「医療機関の良きパートナー」として、病院の新築・移転プロジェクトに関わるビジネスを包括的にサポートしています。

メディカルトータルソリューション、遠隔画像診断サービス(京都プロメド)、給食(ゲイト)の三つのセグメントで展開しています。

コア事業であるメディカルトータルソリューションでは、医療機関や福祉施設に対して、企画段階から開設に至るまでの総合的なコンサルティングを行い、医療機器・医療設備・医療情報システムを販売しています。

これまで経験してきたノウハウを活かして、医療機関・福祉施設のサポートを行っています。

株式会社レオクラン より提供

事業における優位性

「狩猟型」商社とワンストップサービス

当社は独自のビジネスモデルを強みに、「狩猟型」商社として医療機関から新規案件を獲得し続けています。

主な事業領域は病院の新築・移転プロジェクトであり、そこには多くの重要な要素が関わっています。

病院を建設する際には、まず基本構想・基本計画の策定が必要です。

この段階では、コンサルティングファームや設計事務所が支援することもあれば、病院が主体となって進めるケースもあります。

当社は単なる支援にとどまらず、必要に応じて基本構想・基本計画の立案にも直接関与しています。

その後、設計事務所やゼネコンが決まり、病院の建築が進む中で、医療機器の調達が必要となります。

医療機器は約6,000種類にも及び、それぞれに電気設備、衛生設備、空調などの特殊な条件が関係するため、病院ごとに適切な機器を選定しなければいけません。

そこで当社の技術者が、選定された医療機器を考慮してレイアウトを作成し、その図面をもとに建築条件の調整をサポートしています。

たとえば、空調設備の設計図を技術部が手掛けることもあります。

また、当社のサポートは医療機器の調達にとどまりません。

電子カルテや関連システムの導入・運用についても支援しています。

病院の運営において電子カルテの適切な運用は不可欠で、これが円滑に機能しなければ病院全体の業務に支障をきたします。

20名以上在籍する医療機器とシステムに精通した専門スタッフがIT分野をサポートしています。

このように、「狩猟型」商社として積極的に営業活動を行いながら、病院の新築・移転におけるさまざまなフェーズを一貫して支援していることが強みです。

株式会社レオクラン より提供

独自のポジション

当社は全国展開を進める中で、新規案件のほとんどを紹介経由で獲得しています。

たとえば、地方で展開する医療機器商社と協業することで、病院の新築・移転に関する情報が当社に連携され、新規案件としてアプローチできる仕組みを確立しています。

また、基本構想や基本設計を担うゼネコンや設計事務所からの紹介も多く、安定した案件獲得につながっています。

こうした協業体制が円滑に機能している理由の一つに、当社が協業会社と競合関係にないことが挙げられます。

当社は病院の立ち上げまでのプロセスを支援し、その後の運営は地元の医療機器商社に任せる形を取っています。

多くの医療機器商社は売上の大半を消耗品に依存していますが、当社は消耗品を扱わず、医療機器の導入支援に特化しています。

この明確な棲み分けにより、競合せずに強みを発揮できる事業モデルを確立しています。

このように、他社との差別化を明確にし、専門性を活かした事業展開を進めることで、独自のポジションを築いています。

レオクランの成長戦略

市場環境と成長の方向性

当社は、基本的に中長期を見据えた戦略をもとに事業展開を進めています。

日本国内には約8,0001の病院(精神科病院を含む)があり、これらの病院の耐用年数は一般的に30〜40年とされています。

設備の老朽化や、最新の医療機器を導入する際の基準変更などにより、多くの病院が30〜40年のスパンで新築または大規模な改修を行わざるを得ません。

10年以上前は、年間約200件の病院新築案件がありましたが、現在はその半分の約100件に減少しています。

当社が関与しているのは年間平均で約15件ですが、今後はメンバーの増員や情報収集の強化を図り、案件数を2倍の30件まで拡大することを目指しています。

これにより、市場シェアを現在の約3割から、成長次第では4割程度まで伸ばせる可能性があると考えています。

ただし、病院の約4割は自社スタッフのみで新築・移転プロジェクトを進めるため、当社のようなビジネスモデルを持つ企業やコンサルティングファームが関与できない案件も多く存在します。

こうした未開拓市場にアプローチし、当社の関与する案件をさらに増やしていくことが今後の課題です。

株式会社レオクラン 2024年9月期 決算補足説明資料 より引用

新規ビジネスの強化

当社が抱える課題の一つに、売上の変動(ボラティリティ)があります。病院の新築・移転数やプロジェクトの進捗状況に大きく左右されるため、安定的な収益基盤の確立が求められています。

そのため、当社の資産を活かした出資・業務提携を通じた新たな事業展開が必要だと考えています。

その一環として、医療機器メンテナンスを一括請負する「MSE(メディカルサポートエンジニアリング)事業」を強化しています。

MSE事業は医療機器の保守・修理というような機器サポートを提供するサービスであり、新しい病院の建設に依存せず、全国にある既存の病院すべてが潜在的な顧客となります。

この事業は年間契約が基本となるため、安定的な収益が見込めます。

2024年までにMSE事業の規模は約20億円に達しましたが、今後はこれを60億円規模へと拡大し、収益基盤の強化を図る方針です。

さらに、保守・メンテナンス業務を通じて病院設備の状態を把握し、新しい医療機器の調達が必要なタイミングをいち早く察知できる点も強みです。

従来、中古の医療機器はメーカーに費用を支払って引き取ってもらうのが一般的でしたが、近年は中古医療機器の価値が高騰しており、買取によってより有利な条件で新しい機器を導入できる環境が整っています。

そこで当社では、病院から中古医療機器を買い取り、新しい医療機器の導入を促進するビジネスモデルを構築しています。

資本業務提携を結んでいる企業と連携し、当社が機器の査定・買取を行うと同時に、病院への新機器の販売を進めることで、価格競争において大きな優位性を確保する方針です。

株式会社レオクラン 2024年9月期 決算補足説明資料 より引用

人的資本への投資

当社は新卒採用を重視しており、創業以来、毎年継続して新卒社員を採用しています。

近年は年間約10名程度が新卒入社しており、今後もこの方針を維持していきます。

ただし、病院の新築・移転に関する業務は専門性が高く、導入される医療機器は約6,000種類にも及びます。

これらの機器を理解し、適切な提案ができるようになるまでには、3〜4年の教育期間が必要です。

そのため、新卒社員を長期的に育成し、専門知識を身につけてもらうことが重要だと考えています。

今後も教育体制の整備を進め、人材への積極的な投資を継続していきます。

注目していただきたいポイント

当社は、病院の新築や立ち上げを支援する商社です。

しかし、単なる「医療機器商社」として認識されることに懸念を抱いています。

確かに、当社は医療機器の販売を行っていますが、実際にはコンサルティング事業部やIT事業部を内包し、単なる医療機器商社とは異なるビジネスモデルを展開しています。

たとえば、病院の基本計画・基本構想の立案支援、病院建築における建築要件の把握、電子カルテの運用支援など、幅広い業務を手掛けています。

こうした総合的な支援を一社で提供できる企業は他にありません。

しかし、業界内でも稀有な存在であるがゆえに、この違いを説明しても、病院関係者であっても十分に理解していただくのが難しいという課題があります。

地方の協業先と話をする際には、「そんなことが本当にできるのですか?」と驚かれることも少なくありません。

ここで、一般的な医療機器商社と当社の違いについて説明します。

一般的な医療機器商社は、消耗品(ガーゼやカテーテルなど)の供給を主なビジネスとしています。

病院にとって、こうした消耗品は不可欠であり、その供給を担う商社が数多く存在します。

大手の医療機器商社も、消耗品ビジネスを主要事業としています。

一方、当社は医療機器の販売だけでなく、病院の新築・移転に関するサポート業務を主軸とし、多岐にわたるサービスを提供しています。

この違いや当社の立ち位置について、より多くの方々に理解していただきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

当社のミッションは、医療に関わるすべての人々のニーズに応えることです。

これは、医師や看護師にとどまらず、病院経営者や医療従事者、さらには福祉や保健分野に携わる方々すべてを含みます。

医療・福祉・保健の分野において、新築・移転をはじめとする多角的な支援を一社で提供できる企業は限られています。

また、市場環境として日本国内には、築25年以上の病院が約5,000施設存在するとされています。

今後15年以内に、これらの病院の多くが改築や設備更新、移転を検討する必要に迫られると考えられます。

こうした市場の動向を踏まえ、今後も積極的な営業展開を行い、より多くの医療機関を支援していきます。

当社の成長をさらに加速させるためにも、投資家の皆様のご支援を心よりお願い申し上げます。

株式会社レオクラン

本社所在地:〒566-0001 大阪府摂津市千里丘2丁目4番26号

設立:2001年1月12日

資本金:542百万円(2024年9月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2019年10月2日上場)

証券コード:7681

  1. 出所:令和6年11月 医療施設動態調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m24/is2411.html) ↩︎

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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