※本コラムは2025年1月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ガイアックスは「Empowering the people to connect 〜人と人をつなげる」をミッションに、より良い社会の実現に向けて様々な取り組みを進めています。
代表執行役社長の上田 祐司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ガイアックスを一言で言うと
人と人がつながる社会を実現する会社です。
ガイアックスの沿革

創業の経緯
当社は1999年に創業しました。
その頃は、インターネットが本格的に普及し始めた時期であり、「見ず知らずの人同士をつなぐ」という可能性に大きな魅力を感じ、その仕組みを活かした事業展開を目指しました。
創業当初は、一般消費者向けのソーシャルメディアを運営し、mixiが競合相手でした。
しかし、mixiがシェアを大きく伸ばし、最終的にはFacebookが市場を席巻したことで、BtoCのビジネスからは撤退する判断をしました。
その後、企業によるソーシャルメディア活用のニーズが高まったことを受け、BtoB事業へとシフトしました。
ソーシャルメディアのコンサルティング、運用代行、監視など、企業向けの包括的な支援を提供するビジネスを展開し、事業の成長を続けています。
投資ビジネスへの拡大
創業から数年間は、すべての事業を自社で運営していました。
そのような中で、後に上場するAppBank(証券コード:6177)のチームメンバーから「この事業をさらに成長させたい」という強い希望があり、それを受け入れる形で2012年にカーブアウト(事業の分社化)を実施しました。
このケースを契機に、投資事業としてキャピタルゲイン(株式売却益)を得るビジネスモデルへの挑戦を決断しました。
全事業部に対し、希望すれば子会社化が可能となる制度を整備し、事業責任者やメンバーが少なくとも3分の1の株式を保有できる仕組みを確立しました。
また、同時期に当社の卒業生がピクスタ(証券コード:3416)を起業しました。
ピクスタは当社の事業ドメインと親和性が高く、創業メンバーも非常に優秀であったことから、当社としても投資を決断しました。
その後、成長を続け、2015年にAppBankとピクスタの両社が上場を果たしました。
このように、当社のビジネスモデルは「自社運営」だけでなく、「事業の創出と投資による成長支援」を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルへと進化しました。
現在もこのモデルを軸に事業を拡大し、さらなる成長を目指しています。

ガイアックスの事業概要と特徴
概要
当社の事業は、一見すると、ソーシャルメディア事業、スタートアップスタジオ事業、web3/DAO事業と三つの領域に分かれていますが、すべて「人と人をフラットにつなげる」という共通の目的のもとで展開されています。

ソーシャルメディア事業では、企業の要望に応じてソーシャルメディアの活用方法を提案し、支援を行っています。
創業初期から取り組んできた分野であり、企業が求めるリスク回避の対応にも強みを持っています。
これまで数多くの事例を経験し、炎上リスクに関する研究も長年にわたり続けてきました。
対応可能なSNSプラットフォームも幅広く、YouTube、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokなど、多様な媒体での戦略提案を行っています。
社員がSNSを利用する際のガイドライン設計、企業や商品に関する世間の評価のモニタリング、戦略立案、運用代行、炎上対策など、一貫したサービスを提供する体制を整えています。
その結果、大企業から中小企業、スタートアップ、官公庁に至るまで、多様なクライアントと確かな取引実績を築いてきました。
また、インキュベーション事業では、社内外のスタートアップ企業へ投資を行い、投資先企業が上場することでキャピタルゲインの獲得を目指しています。
主な投資領域は、シェアリングエコノミーやDAO(自律分散型組織)といった新興分野です。
このように、成長領域に注力しながら、ストック型の既存事業(ソーシャルメディアサービス事業)と新規および投資事業(インキュベーション事業)がハイブリッド型になったカーブアウト機能を持つ独自のビジネスモデルで成長を実現しています。

事業における優位性
ソーシャルメディアにおける第一人者として
SNSは日々進化しており、ソーシャルメディア向けのビジネスもここ10〜20年で急成長した分野です。
かつてのSNSはテキスト主体の文化が中心で、FacebookやX(旧Twitter)が普及しました。
その後、YouTubeやInstagramへとシフトし、近年ではTikTokをはじめとする画像・動画コンテンツへの関心が高まっています。
このトレンドに対応するため、当社は2023年2月にクリエイター・プラットフォーム「スナップマート」を買収しました。
スナップマートは、多くのクリエイターを抱えるプラットフォームです。
そのネットワークを活用し、企業向けに縦型ショート動画のコンサルティングや運用代行を提供する体制を整えています。
当社の社員のみで対応できる案件には限りがあるため、登録クリエイター30万人以上を活用したコンテンツ制作を進めています。
急速に変化するSNSに対応するためにも、当社もサービスを進化させています。
これにより、時代の変化に対応したソリューションを提供し、企業のソーシャルメディア活用を包括的に支援できる体制を常に整えています。
新領域への事業投資と独自ノウハウ
ソーシャルメディア事業に注力する一方で、シェアリングエコノミーやDAOの領域にも積極的に投資を行い、インキュベーション事業として成長させています。
シェアリングエコノミーは、過去のユニコーン企業を見ても、Airbnb、Uber、WeWorkなど、多くの成功事例が生まれた分野です。
当社もこの領域で新規事業の立ち上げを数多く手掛け、豊富なノウハウを蓄積してきました。
市場の変化が激しい業界であり、こうした知見がなければ企業の存続自体が難しくなります。
また、カーブアウトを経て独立する社員や、退職後に起業するメンバーも多く、当社は常に新しい事業に投資し続けています。
これにより、多様な知見が蓄積されるだけでなく、当社の投資ネットワークが拡大し続けています。
さらに、当社では新卒で入社した社員が10年後には上場企業の役員になれる仕組みづくりを進めており、すでに複数の上場企業が誕生しています。
近年、政府が「スタートアップ創出元年」を掲げ、5か年計画を策定するなど、国内のスタートアップ支援が活発化しています。
従来、地方の起業向けセミナーは、中小企業診断士や税理士が中心となり、国や地方自治体と連携して行われるのが一般的でした。
しかし、最近では自治体から当社に直接ご指名いただき、起業家支援事業を受託するケースが増えています。
東京都が推進するスタートアップ支援プロジェクトにおいても、当社が主要な役割を担っています。
これまでの実績やノウハウが評価され、プロジェクトの中核として参画しています。
一般的なベンチャーキャピタル(VC)は、すでに設立されたスタートアップの中から有望な企業を選定し、投資を行います。
一方、当社は起業経験のない学生などをゼロから育成し、最終的に上場企業の経営者へと成長させることに注力しています。
自己資金を活用しながら独自のノウハウを築き上げてきた結果、多方面から高い評価を得るようになりました。
その実績が評価され、東京都のプロジェクトをはじめとする公共事業にも参画できる機会が増えています。

ガイアックスの成長戦略
中長期的な成長を見据えた戦略
当社は2022年末に中期経営方針を発表し、2023年12月期の目標を問題なく達成しました。
2024年12月期には、タイミーのキャピタルゲインが発生し、当初の計画を上回る形での着地を予定しています。(取材時点)
これから3年目、4年目、5年目へと進んでいきますが、事業の方向性に大きな変更はありません。
中期経営方針を策定する以前から展開している事業と現在の事業との間に一貫性があり、今後もこの軸を維持しながら成長を続けていきます。

ソーシャルメディア事業の方針
ただし、一つ大きな変化として、SNSの重要性が年々増していることが挙げられます。
かつては、SNSはマーケティングの手法の一つとされていましたが、現在では市場や顧客の動向を把握するためのツールとしての役割が強まり、プロモーション施策の効果測定にも活用されるようになりました。
その結果、マーケティング全体の中心的な存在へと変化しています。
この流れを受け、当社はマーケティング全般のコンサルティング企業へとシフトし、順調に売上を伸ばしています。
利益率についても大きな変動はなく、BtoBビジネスとして安定した収益を確保できているため、引き続き高品質なサービスを提供しながら成長を続けていく方針です。

インキュベーション事業の方針
インキュベーション事業においては、これまで上場銘柄がなかったため、投資額がすべて赤字計上されるなど、不安定な状況が続いていました。
しかし、投資案件の成熟に伴い、いくつかの企業が上場するタイミングを迎えたことで、コストを削減しながら効率的な投資を進め、手元の上場銘柄の売却を適切に進めるという戦略を採用し、安定的な業績確保に向けた取り組みを進めています。
その中でも特に重要なのが、どれだけ「ホームラン案件」を生み出せるかという点です。
時価総額30億円の投資先よりも、時価総額300億円の投資先の方が当然ながら大きなインパクトを持ち、持ち株比率が1%か10%かによってもリターンの規模は大きく異なります。
そのため、当社は重点的に投資する案件と通常の投資案件を区別して投資先のポートフォリオを組んでいます。
中でも、重点的に投資する企業については、事業の規模をより大きく成長させるために積極的な支援を行い、最終的には時価総額数百億円規模の企業の10%〜30%の株式を保有することを目指しています。
単に上場することがゴールではなく、市場での存在感のある企業へと成長させることが重要であると考えています。

また、スタートアップ業界では、その業界の1位だけが圧倒的な時価総額を生み出し、2位や3位では価値がつかないという状況です。
特にアーリーフェーズのスタートアップでは、バランス型でそつなく事業に当たるよりも、1つの事業が大成功する方が成長しやすいため、当社では「本当にやりたくてたまらない仕事だけをやる」という方針を採用しています。
従来の軍隊型のトップダウン組織ではなく、アメーバ型の柔軟な組織を目指し、情報をオープンに共有しながら、多様性(ダイバーシティ)を尊重し、個人の特性を最大限に活かせる環境づくりを進めています。
情熱を持って取り組める優秀な人材に対しては、積極的に支援し、事業に集中できる環境を提供することで、新たな価値を生み出せるよう後押ししています。
新たに生まれるビジネスチャンスを確実に捉えるためにも、自社で新規事業を立ち上げながら、重点投資先の企業を活用し、ビジネスの創出を進めていきます。
これにより、事業の拡大、収益の増加、時価総額の成長を実現し、さらなる企業価値の向上を目指します。

注目していただきたいポイント
地方自治体や政府との連携が進む中で、起業を目指す方々との接点を持つ機会が増えています。
これにより、当社の「ガイアックス」という名前の認知度が向上し、起業を検討している方々からの直接の問い合わせも多くいただいております。
こうした状況に対応するため、当社では起業支援のサポート体制を強化しています。
社内で培ったノウハウをドキュメント化し、体系的に整理することで、より効率的な支援が可能になりました。
その結果、起業支援のエキスパートが社内で育ちつつあると実感しています。
また、当社が取り組んでいるシェアリングエコノミーやDAOは、まだ市場規模が小さい分野です。

これらの領域の成長を促進するため、業界団体の設立などにも積極的に取り組んでいます。
具体的には、シェアリングエコノミー協会の設立・日本ブロックチェーン協会への参画などがあります。
このような枠組みを構築することで、新しい分野で起業を考えている方々が自然と当社に集まっています。
当社が支援するのは、単に投資家を探している起業家ではなく、「何かビジネスを始めたいが、どうすればよいか分からない」という方々です。
そのため、学生からの相談も多く、学生団体への支援を通じて、起業を志す若い世代との関係構築にも注力しています。
このように、次世代を見据えた取り組みも積極的に進めており、Web3やDAOが一般化する未来に向けて事業を拡大中です。
これからの社会において、新しい世界を実現するための当社の事業や新たなサービスの提供にぜひご注目ください。

投資家の皆様へメッセージ
当社は、マーケティングの基軸となりつつあるソーシャルメディア、年々拡大を続けるシェアリングエコノミー、新たな概念として注目されつつあるDAOを事業領域として、着実に成長を続けています。
以前は、投資を行った際に、それを吸収できるだけの基盤が整っておらず、サイクルが十分に回っていないという課題がありました。
しかし、現在はその仕組みが整い、利益成長や株主利益の向上を含めた事業拡大を進める準備ができました。
今後もさらなる成長に向けて挑戦を続けていきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
株式会社ガイアックス
本社所在地:〒102-0093 東京都千代田区平河町2-5-3 MIDORI.so NAGATACHO
設立:1999年3月5日
資本金:1億円(2025年1月アクセス時点)
上場市場:名証ネクスト市場(2005年7月12日上場)
証券コード:3775