※本コラムは2025年2月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ユナイテッド&コレクティブ株式会社はすべてのお客様に「美味しい」料理、「胸を張れる」料理だけを提供していきます。
代表取締役社長の坂井 英也氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
ユナイテッド&コレクティブ株式会社を一言で言うと
徹底的に美味しいものを追求し、真面目でストイックなスタッフが集まる会社です。
ユナイテッド&コレクティブの沿革

創業の経緯
当社は2000年に創業しました。
社名の「ユナイテッド&コレクティブ」は、私が大学時代にテニスの同好会で大切にしていた「一体感」を表現したものです。
私は、その同好会の部長を務めており、全員で力を合わせて目標を達成することが非常に楽しく感じていました。
その経験から、社会に出ても仲間と協力して目標を成し遂げるような活動をしたいと考え、学生時代から起業を意識していました。
しかし、社会を知るためにも就職することを決め、縁があった企業の中でも最も規模の大きい自動車メーカーに入社しました。
ただ、どうしても起業したいという思いが強く、1年足らずで退社し、個人店やチェーン店を含む料理修行を約2年間行いました。
そして、その経験を活かして25歳の時に当社を立ち上げました。
創業の地は高田馬場で、現在は閉店してしまいましたが、小さな居酒屋からのスタートでした。
日本酒や地酒をメインにした和食居酒屋で、当時の客単価としては4,000〜5,000円程度と少しアッパーな業態で勝負していました。
属人的なビジネスモデルからの脱却
2000年から1年ごとに1店舗ずつ増やしていたのですが、2001年に3店舗目をオープンした後、2003年に倒産の危機を迎えました。
その原因は、料理人のマネジメントがうまくできていなかったことだと考えています。
売上や利益は順調でしたが、業界特有の「総上がり」というハプニングが起き、料理長が部下の職人たちを連れて一斉に辞めてしまうという出来事がありました。
その結果、1店舗が1ヶ月間営業できなくなり、一気にキャッシュが枯渇してしまったのです。
会社の資金がみるみるうちに底をつき、倒産寸前まで追い込まれました。
直接的な原因は料理長の「総上がり」でしたが、振り返ってみると、人に依存する属人的な経営をしていたことが問題だったと痛感しました。
そこで新規出店を凍結し、人に頼らない業態づくりを目指す方針に転換しました。
一店舗で最大の売上を目指すのではなく、チェーン展開が可能な業態づくりに注力することにしたのです。
この経験を基に「てけてけ」という業態を2005年にスタートさせました。
私自身、料理人として修行をしていた経験があるため、属人的なやり方を中心に学んできましたが、マニュアル化やシステム化を強く意識し、再現性のある運営方法を整備することに注力しました。
そして、直営店を通じてマニュアル・システムの整備を進め、「てけてけ」スタートから10年以上経った後に、フランチャイズ展開を始めることになりました。
コロナショックとその後
コロナ禍によって外食産業は大きくダメージを受け、当社も非常に厳しい環境での経営を経験しました。
現在も株式市場で資金調達を続けている状況であり、完全に乗り越えたとは言い切れません。
ただ、コロナ禍からコロナ後にかけて、さまざまなトライアンドエラーを重ね、多くの失敗も経験しました。
その中で、最終的な着地点として足元で展開を進めているのが「もつ焼き酒場てけてけ」です。
また、「てけてけ」では展開が難しかった小規模店舗の業態として、「海鮮丼新太郎」という新業態も展開しています。
まだまだブラッシュアップが必要ですが、この業態も今後の柱になり得る可能性を感じています。
この二つの業態への展開が、コロナ後における明るい兆しです。

ユナイテッド&コレクティブの事業概要と特徴
概要
当社の主力事業は鶏料理居酒屋「てけてけ」で、首都圏を中心に70店舗(取材時点)展開しています。

中にはリニューアルオープンした「もつ焼き酒場てけてけ」もあり、新たな商品で勝負しています。
また、第3世代のハンバーガーを目指しているハンバーガーカフェ「the 3rd Burger」は都心に7店舗(取材時点)展開しています。

そして、2024年1月には飯田橋に「海鮮丼新太郎」を出店し、新業態への挑戦も続けています。
客層は業態によって異なり、「てけてけ」では主に会社勤めの方々にご利用いただいており、年齢層で言うと30代前後からそれ以上の方が中心です。
「the 3rd Burger」では、30代前後以上の女性の方が多い印象です。
「海鮮丼新太郎」については、立地によって異なりますが、周辺にお勤めの30代前後の男女がほぼ同じ割合でご利用いただいているように感じています。
各業態と極力重ならないようにすることを意識し、TPO(時間・場所・状況)も含めて、慎重に考えながら展開しています。
事業における優位性
PPM戦略の追求
当社のPPM(Preparation Process Management)戦略は他社にはない強みです。
業態だけでなく、それぞれの商品において、一律に「セントラルキッチンで製造する」や「店内仕込みが美味しい」といった決まりきった方法ではなく、物流コストも含めて、どの方法が最も美味しく、かつコストを抑えられるのかを徹底的に検討してきました。
商品一つ一つに対して、外部委託に任せるだけでもなく、全てをセントラルキッチンで作るだけでもなく、それぞれのベストな調理・仕込み工程を追求しています。
これまで私と商品開発のメンバー、そしてPPMセンターのスタッフがコミュニケーションを密に取りながら、トライアンドエラーを繰り返し、ようやくその仕組みが形になりつつあります。
この取り組みを緻密に行ってきたことで、結果として原価率の削減やコスト競争力につながっています。
これからは、より高い付加価値を提供できる体制を整え、独自の強みを磨き続けていきます。
特にPPMセンターの活用は、コロナ禍で一時的に停滞していた部分もありましたが、現在は「てけてけ」業態に適した商品作りが少しずつ進んでいます。
今後もPPMセンターを活用した商品クオリティの高さが、当社の強みとして発揮されていくのではないかと考えています。

サービス力の追求
商品力だけでなく、サービス力にも注力しています。
同じ商品を提供していても、サービス次第で「美味しい」と感じられる店舗と「不快」と感じられる店舗が生まれることを、これまでの経験で実感しました。
そのため、この2〜3年は社内でサービス力向上に徹底して取り組んでいます。
現在の成果として、足元の数字に当社のサービス力が反映されているのではと自負しています。
過去との比較や競合他社との違いを含め、当社のサービス力は一段と向上しているはずです。
このサービス力については、実際に当店に足を運んでいただき、そのクオリティの高さを実感していただきたいと思います。
中でも、曙橋にある「the 3rd Burger」を改装した「もつ焼き酒場てけてけ」はその世界観を限りなく実現できている店舗です。
当社が理想とする店づくりができている店舗の一つですので、機会があればぜひ訪れてみてください。
ユナイテッド&コレクティブの成長戦略
市場環境とポジショニングの変化
コロナ禍では、戦略を立てるどころか、矢が降り注ぐような状況の中、生き延びること自体が最優先で、なんとか持ちこたえることに必死でした。
コロナ後についても、コロナ前の延長線上で成長できるわけではなく、ここ4〜5年で状況は大きく変わり、居酒屋業界に求められるものも変化してきました。
特に大きな変化として、競合環境が激変しました。
たとえば「てけてけ」の場合、以前はある種の空白市場とも呼べる業態で、鳥貴族さんのような競合は存在していたものの、都心部やオフィスエリアでは鳥料理チェーンの店舗数は非常に少なかったはずです。
しかし、コロナ前から徐々に競合が増え始め、コロナ明けには競合がひしめき合う市場になっていました。
当社はPPM戦略に自信を持っていましたが、競合が増えることで、相対的な強みが分散してしまうことを痛感しました。
今後は独自性をさらに磨きつつ、競合が少なく、多くのお客様に支持される市場で活路を見出していきたいと考えています。

新業態への挑戦と新規出店
市場環境の大きな変化を受けて、当社は「もつ焼き」と「海鮮丼とおでん」を中心とした新業態に挑戦しています。
これまで大きくチェーン展開されていなかった業界であったことから、「伸びるのではないか」という仮説を基にスタートしましたが、すでに手応えを感じ始めています。
現時点では、「もつ焼き酒場てけてけ」への業態転換への投資に加えて、「海鮮丼新太郎」についてもブラッシュアップを重ねながら、数店舗増やしてその動向を見ていく予定です。

今後はこれらの業態をさらに深掘りし、成長につなげていきたいと考えています。
また、新規出店に関しては、基本的には一都三県を中心に直営店で進めていきます。
ただし、フランチャイズの希望があれば、その地域をお任せする場合もあります。
実際に、川越や朝霞台の店舗はフランチャイズとして運営されています。
今後の出店方針としては、一都三県内は可能な限り直営で展開し、それ以外の地域についてはフランチャイズに運営をお任せする形で、出店網を広げていく方針です。
人材の確保について
外食産業では同様の悩みがあるかと思いますが、人材面においては日本人の採用は引き続き厳しい状況が続いています。
そのため、新卒採用は一時的に中止しており、中途採用を中心に進めています。
ただし、中途採用においても即戦力となる人材を容易に確保できる状況ではありません。
そこで、これまで以上に業務の幅を広げられる人材を対象に、給与面でも上乗せした条件を提示しています。
具体的には、1店舗の店長として活躍していた方を、2店舗、3店舗を任せられるようなスキルを持った方として採用し、提示する給与に見合う働きをしていただく形を取っています。
また、外国人の活用は積極的に進めており、特定技能の人材については、この1年間で100名以上採用しました。
この特定技能の人材により、必要な人材数をなんとか確保できている状況です。
このため、人手不足に関しては、この特定技能人材の活用でクリアしています。
今後も人材難は続くかと思いますが、様々な策を講じて乗り越えていきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
まず注目していただきたいのは、当社が核商品のPPM戦略を徹底している点です。
これにより、美味しさを追求しながら、お客様の満足度を向上させるとともに、全社的な原価率を抑えることができています。
これが中長期的な競争力につながっていると考えています。
さらに短期的な視点では、業態の集客力が重要です。
核商品の美味しさが直接的に集客力に影響するため、特に注力しています。
成功事例の一つとして「塩つくね」を挙げさせていただきます。
この商品は、タイの統合型サプライチェーンを活用し、飼料の生産から鶏の育成、屠殺、加工、そして瞬間冷凍までを一貫して行い、日本に輸送する仕組みを構築しました。
店舗ではこれを解凍し、焼き上げて提供しています。
この取り組みによりコストを抑えつつ高品質を実現し、現在も当社で最も人気のある商品となっています。

一方で、失敗もありました。
特に内臓系の串については、品質面で納得のいくものを提供できず、現時点では「ハツ」のみがメニューに残っています。
これらの経験から学んだのは、店内調理の重要性です。
店内で付加価値を加えることで、お客様にご満足いただき、競合との差別化を図れると痛感しました。
その結果、現在の「もつ焼き」という業態に着目しています。
「もつ」は特に鮮度が命であり、店内調理が大きな付加価値を生む食材です。
冷凍せずに鮮度の高い状態で店舗に届け、店内でカットして串にすることで、他では味わえない美味しさを提供できています。
この取り組みが直近の集客力につながっており、自信を持っておすすめできるポイントです。
ぜひ、当社の「もつ焼き」を召し上がっていただき、競合他社との違いを体感していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
コロナ禍からコロナ後のこの約2年間は、まさに悪戦苦闘の日々でした。
コロナ禍では降りかかる困難をなんとか乗り越え、コロナ後には大きく変化した時代に適応することに注力してきました。
その過程で、トライアンドエラーを繰り返し、多くの失敗も経験しましたが、ようやく「もつ焼き酒場てけてけ」と「海鮮丼新太郎」という今後の成長の軸となる方向性が見えてきました。
これからの展開にぜひご期待いただければと思います。
ユナイテッド&コレクティブ株式会社
本社所在地:〒102-0083 東京都千代田区麴町2-5-1 WeWork 半蔵門 PREX South
設立:2000年7月27日
資本金:572,054,710円(2025年2月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場(2017年2月23日上場)
証券コード:3557