※本コラムは2025年2月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。
グロービング株式会社は「Be a “Growth” Infrastructure」をパーパスに掲げ、企業の成長を支えるインフラとして社会に貢献することを目指しています。
代表取締役社長の田中 耕平氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
グロービング株式会社を一言で言うと
「Be a “Growth” Infrastructure」を体現する戦略コンサルティングファームです。
グロービングの沿革

創業の経緯
2021年3月から本格的に事業をスタートさせました。
かつて、コンサルティングといえば「グレーヘアコンサルタント」と呼ばれる、豊富な経験を持つ限られた人数の専門家が、限られた数の企業経営者に助言を与えるスタイルが主流でした。
しかし、時代とともに大手コンサルティングファームがフレームワークやメソドロジーを導入し、ノウハウを形式知化したことで、経験の浅いコンサルタントでも成果を出せるようなビジネスモデルに変化してきました。
その結果、プロジェクトチームの人数に応じて報酬が決まるビジネスモデルが一般化し、利益を優先するあまり、必ずしもクライアントの利益に直結しないサービスが提供されることも増えています。
私たちグロービングは、こうした現状を打破し、コンサルティング企業の利益ではなく、クライアントの事業価値の最大化を追求することを使命としています。

頭数に依存したビジネスモデルから脱却し、デジタル技術やAIを積極的に活用することで、より効率的かつ効果的な支援を実現してきました。
プロジェクトには、事業経営のプロフェッショナルが責任者としてクライアント企業に深く関わり、単なる提案に留まらず、実行まで伴走します。
一方で、若手コンサルタントが担当してきた定型業務は、AIやデジタルツールを駆使して効率化しています。
さらに、将来的にはコンサルティングのノウハウを型化し、クラウドプロダクトとして提供することで、より多くの企業の価値創造に貢献していきます。
これからも私たちは、成長のインフラとして企業の挑戦を支え、コンサルティング業界を変革していきます。

グロービングの事業概要と特徴
概要
当社のビジネスモデルは、大きく二つに分かれています。
一つは企業の成長を直接支援するコンサルティング事業、もう一つはこれまでに培ったノウハウを活用し、SaaSとして提供するクラウドプロダクト事業です。
コンサルティング事業では、従来型のアドバイザリーに加えて、私たちが特に力を入れている「Joint Initiative(JI)型コンサルティング」を提供しています。
このJI型モデルは、単なる提案に留まらず、私たちのプロフェッショナルがクライアント企業に深く入り込み、事業責任者として変革や新規事業の立ち上げに徹底的にコミットするものです。
従来型のプロジェクトと比較して契約形態そのものに大きな違いはありません。
ただし、JI型コンサルティングでは、新規事業の立ち上げや全社横断の大規模プロジェクトなど、数年単位で取り組む長期的な取り組みが中心です。
そのため、当社のメンバーがクライアント企業に出向し、プロジェクトを推進することもあります。
具体的には、プロジェクトごとにメンバー出向とコンサルティング契約を組み合わせた契約形態になります。
特に、大規模かつ重要なイニシアチブでは、プロジェクト全体が3年から5年にわたる長期的な取り組みとなるケースがほとんどです。
もう一つの柱であるクラウドプロダクト事業では、これまでのコンサルティング経験から得た戦略コンサルティングのノウハウを取り入れたプロダクトを開発し、提供しています。
このプロダクトは、コンサルティングプロジェクトで行われる分析、試算、施策立案、効果測定といったプロセスを標準化し、SaaSとして提供することで、クライアントの業務を効率化し、コスト削減を実現します。
従来のコンサルティングファームでは、若手コンサルタントがこれらの分析や作業を担当し、経験を積ませるために高い単価でサービスを提供することが一般的でした。
しかし、私たちはこれをクラウドプロダクト化することで、クライアントは必要な機能をより迅速かつ低コストで利用できるようになります。
現在、営業の効率化、支出の最適化を支援するクラウドプロダクトを開発開始しており、一部ではクライアントと協業しながらさらなる機能拡張を進めています。

事業における優位性
JI型コンサルティングモデルの優位性
私たちが提供する「Joint Initiative(JI)型コンサルティングモデル」は、従来のコンサルティングにはない圧倒的な優位性を持っています。
単に戦略を立案するだけでなく、事業責任者やプロジェクト責任者としてクライアント企業に深く関わり、実行までコミットすることが最大の特徴です。
企業が新規事業を立ち上げたり、全社横断の大規模プロジェクトを推進したりする際、既存事業で成果を出している優秀な社員を新たなプロジェクトに配置することは容易ではありません。
既存事業から人材を引き抜いてしまうと、事業の安定性やパフォーマンスに影響が出るリスクがあるからです。
こうした課題を抱える経営者の皆様から、私たちに相談いただくことが増えています。
戦略立案を支援した後に「ここまで作ったのなら、実行まで責任を持ってほしい」というご要望をいただくケースもあり、こうした背景からJI型コンサルティングモデルが生まれました。
ただし、私たちの関与は「ずっと居座り続ける」ものではありません。
一般的なコンサルティングファームでは、プロジェクトノウハウがブラックボックス化してしまい、コンサルティングファーム内に留まることがあります。
しかし、私たちはクライアント企業の内部にノウハウをしっかりと引き継ぎ、価値を残すことを重視しています。
具体的には、当社から事業責任者を派遣するだけでなく、クライアント企業のメンバーにもプロジェクトに参画していただき、実務を通じてスキルや知識を身につけてもらいます。
また、外部から責任者クラスの人材を採用する支援も行い、クライアント企業に最適な人材を配置することで、組織の持続的な成長を後押ししています。
このように、成果を出すだけでなく、クライアント企業の中に人材と知見を根付かせることで、長期的な競争力の向上に貢献している点が、当社のJI型コンサルティングモデルの大きな強みです。
そのため、多くの企業から継続的なご依頼をいただいております。

当社のポジショニングと競合
JI型コンサルティングモデルを展開する中で、クライアント企業様から当社の競合と考えられているのは外資系の戦略コンサルティングファームです。
日系の総合ファームと比較されることはありません。
さらに、外資系の戦略ファームの多くはグローバルポリシーとしてクライアント企業の内部に入り込むことを良しとしておらず、人材の質としては可能であっても、JI型コンサルティングのような関与は行えない状況です。
こうした背景から、私たちは競合との差別化を図り、クライアントと長期的な関係を築きながら、事業に深くコミットする独自のポジションを確立しています。
従来のコンサルティング形態では、短期的に戦略だけを提示し、その後の実行についてはクライアントに委ねるのが一般的です。
しかし、私たちは「実行できないのはクライアントの責任」と切り捨てるのではなく、最後まで伴走し、成果を共に創出しています。

また、競合が外資系ファームであるため、当社のサービス単価も非常に高く設定されていますが、高単価である以上、それに見合うビジネス価値を提供する責任があります。
そのため、私たちは「関与したプロジェクトでは最低でも10倍以上の価値を返す」ことにコミットしてきました。
こうした実績と信頼によって、多くの企業から選ばれ続けています。
これからも、JI型コンサルティングモデルを通じて、クライアント企業の成長に深く貢献し、共に新たな価値を創造していきます。

グロービングの成長戦略
AI Consultant「グロービングくん」の開発
コンサルティングの現場では、戦略を構築するための抽象度の高い思考だけでなく、議事録作成やリサーチ、資料作成といった定型業務も欠かせません。
JI型コンサルティングでは、クライアント企業に深く関わり、長期的にプロジェクトを推進するため、多くの実務労働が必要になります。
その一方で、こうした業務のために不要なコンサルタントを雇用することは、クライアントにとって負担となります。
こうした課題を解決するために、私たちはAI Consultant「グロービングくん」の開発を進めています。

まずは議事録作成からスタートし、今後はリサーチやパワーポイント作成といった作業もAIが担えるように進化させる予定です。
一般的な議事録ツールとは異なり、議論の論点を構造化し、コンサルティングファームの求める水準でアウトプットを提供することが特長です。
また、将来的にはリサーチや資料作成についても、コンサルタントが提供するレベルのアウトプットを自動生成できるモデルを構築します。
これは、長年にわたり蓄積したコンサルティングのノウハウをAIに組み込むことで実現できるものであり、他社にはない強みだと考えています。
もちろん、他のコンサルティングファームもAI化を進めると予想されますが、大量の人材を抱えるモデルであるため、自社ビジネスへの影響を懸念して外販には踏み切りにくいでしょう。
そのため、社内向けのツールとして導入するケースが多くなると考えています。
こうした背景を踏まえ、私たちは競合よりも早い段階でAIコンサルタントを実用化し、クライアント企業様にご使用いただく外販も含めて、業界全体に変革をもたらしていきます。
今後数年以内には、コンサルタントが行っている業務の多くがAIに置き換わると見ており、その先駆者として市場をリードしていく考えです。

クラウドプロダクトの開発
クラウドプロダクトは、AI Consultant「グロービングくん」とは異なる切り口で、クライアントの課題を解決するサービスです。
これまでのコンサルティング経験を通じて蓄積したノウハウを型化し、プロダクトを開発しています。

まず、「営業効率化」を目的としたセールススイートは、MVP(Minimum Viable Product:最小実用製品)の段階ではありますが、複数のクライアント企業に月額課金モデルで導入いただいています。
クライアントからのフィードバックをもとに機能を強化していきます。
さらに、「支出の最適化」を目的としたスペンドインテリジェンススイートについては、既にクライアント企業との共同開発契約を締結し、今後1年ほどかけてプロダクトを完成させていく予定です。
MVPが既に完成しており、クライアントと共に実用性を高めていきます。
この開発モデルは、共同開発のアプローチに近く、知的財産権(IP)は当社が保持し、他のクライアントにも横展開していく計画です。
クラウドプロダクトは、完全に手離れの良いSaaSではなく、ある程度の人的サポートを必要とするため、カスタマーサクセス担当者がサポートを提供します。
コンサルタントほどの高単価ではありませんが、このサポート部分も収益の一部を担うビジネスモデルです。
最終的には、プロダクト単体でも利用いただけるようにし、中小企業(SMB)市場への展開も視野に入れています。
ただし、SMB向けのSaaS企業のように、低価格または無料で大量に提供するモデルではなく、大企業からのフィードバックを活かしながら、質の高いプロダクトを提供することで差別化を図ります。
海外展開について
「コンサルティング × AI」という革新的な取り組みを展開している企業は、グローバルに見てもほとんど存在しないと自負しています。
特に、JI型コンサルティングモデルとAIを組み合わせて提供している企業は、現時点では見当たりません。
まずは日本国内でこのモデルをさらにブラッシュアップし、実績を積み重ねた上で、早いタイミングで海外市場にも進出していきます。
既にヨーロッパ市場では複数のクライアント企業を支援しており、十分な成果を上げることができています。
今後はさらにプロジェクト数を増やし、海外でのプレゼンスを高めていく予定です。
また、アジア市場についても大きな可能性があると考えています。
特定の地域に絞るのではなく、状況に応じて柔軟に展開することで、さらなる成長を目指します。
これからも、JI型コンサルティングモデルとAI、クラウドプロダクトを組み合わせることで、企業の成長を支えるインフラとしての役割を果たし、国内外での事業拡大を進めていきます。

注目していただきたいポイント
改めてにはなりますが、日系のコンサルティングファームとの違いについてご理解いただきたいです。
当社が他の日系コンサルティングファームと大きく異なる点は、業務のレイヤーや関与の深さにあります。
確かに、クライアント企業の層においては日系ファームと重なる部分があるかもしれませんが、私たちが提供している価値は外資系の戦略コンサルティングファームと比較されることが多いです。
これは、単にアドバイスを提供するだけでなく、JI型コンサルティングモデルによって、私たちのプロフェッショナルがクライアントの内部に入り込み、事業価値を直接的に高めているからです。
こうした違いは一部の方には既に理解されているものの、まだ十分に認識されていない場合もあります。
だからこそ、この点を明確にご理解いただくことで、当社の特徴と強みをより深くご理解いただけると考えています。
また、優秀なメンバーを集めてクライアントの価値創出に貢献する戦略ファームは、国内ではほとんど存在しません。
私たちは規模を拡大しながらも、質の高い人材を採用し、より高度なサービスを提供し続けています。
さらに、AIの活用により、既に対象となる業務の工数を50%以下に削減することに成功しており、効率性と品質を両立しています。
今後もコンサルティング事業とクラウドプロダクト事業の二軸を軸に、成長を加速させていきます。
投資家の皆様へメッセージ
私たちグロービングは、コンサルティング業界全体に変革をもたらすことを目指しています。
JI型コンサルティングモデルの確立によって、単なるアドバイザーではなく、クライアントの成果にコミットする新しいコンサルティングの形を提案しています。
さらに、AIエージェント「グロービングくん」を活用した次世代型コンサルタントの提供を通じて、業務の効率化と価値創出の最大化を実現しています。
現在、全世界には約230万人のコンサルタントが存在し、市場規模は約40兆円とされています。
この巨大な市場を根本から変革し、新たな価値を生み出すことで、私たちはグローバルな競争においても優位性を確立していきます。
私たちの挑戦を末永くご支援いただけますと幸いです。
グロービング株式会社
本社所在地:〒107-0062 東京都港区南青山3丁目1-34
設立:2017年1月26日
資本金:1,195,288,500円(2024年11月29日時点)
上場市場:東証グロース市場(2024年11月29日上場)
証券コード:277A