【3495】香陵住販株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年2月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。

香陵住販株式会社は不動産事業を通じて地域の皆様との深い信頼関係を築き、「ファンづくり」を大切にしている企業です。

代表取締役社長の金子 哲広氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

香陵住販株式会社を一言で言うと

「地域密着型のファンづくり」を軸にした不動産会社です。

単に物件の売買や管理を行うだけでなく、地元のお客様やオーナー様との信頼関係を大切にしながら、長く愛される企業を目指しています。

香陵住販の沿革

香陵住販株式会社代表取締役社長 金子 哲広氏

創業の経緯

香陵住販の原点は、現会長の薄井が大学時代に読んだ「日本列島改造論」にあります。

不動産業の可能性に魅了された薄井は、在学中に宅地建物取引士の資格を取得し、卒業後に都内の大手不動産会社へ就職しました。

その後、「安定を捨ててでも独立する意味は何か」と自問する中で、「自らの手で社会に貢献したい」という強い想いが芽生えたそうです。

そして、「会社は社会の公器であり、一度設立したら倒産してはならない」という信念のもと、1981年に茨城県水戸市で香陵住販を創業しました。

売買・賃貸・仲介のワンストップ運営

創業当初は土地の売買仲介を中心に展開していましたが、より安定した収益基盤を確立するため、賃貸管理にも注力するようになりました。

特に、賃貸物件のオーナー様との関係構築に力を入れたことで、管理戸数を順調に拡大することができました。

1988年には、自社企画マンション「フォーライフ」(現在の「レーガベーネ」)シリーズをスタートしました。

この事業では、土地の仕入れからマンションの企画・建設、入居者募集、投資家への売却、さらには賃貸管理までを一貫して手がけています。

東京進出とドミナント戦略

2003年には東京都台東区上野に東京支社を設立し、首都圏への進出を果たしました。

現在は、東京支社を中心に、常磐線沿線の日立市まで計20店舗を展開し、地域密着型の「ドミナント戦略」を推進しています。

これは、各エリアに深く根ざすことで、地元のオーナー様やお客様と密接な関係を築き、より質の高いサービスを提供することを目的としているものです。

今後も、このドミナント戦略で着実にエリアを拡大していきたいと考えています。

上場と新規事業への挑戦

2018年に東証JASDAQ市場(現 東証スタンダード市場)に上場してから7年が経ちました。

規模としては上場企業の中では比較的小さいですが、その分、地域密着型の強みを活かしながら成長を続けています。

2019年3月には、茨城県南部や千葉県柏市で不動産仲介業を展開する株式会社KASUMICを完全子会社化し、事業エリアを拡大しました。

さらに、2022年3月には「KORYO Funding」という不動産投資型クラウドファンディングを立ち上げ、新たな投資家層の開拓を進めています。

これは、単なる資金調達の手段にとどまらず、香陵住販の認知度向上にもつながる重要な取り組みとなっています。

香陵住販株式会社 より引用

香陵住販の事業概要と特徴

概要

当社は賃貸仲介を中心に、賃貸管理、売買仲介、収益不動産の開発・運用、資産活用の提案までをワンストップで手がける不動産会社です。

まず、リアルな店舗で培った市場の声を活かし、アパート・マンションの企画を立案しています。

そして、投資家オーナー様にご購入いただいた後も、入居者募集から管理まで責任を持ってサポートしています。

「仕入」「販売」「管理」という3つの収益モデルを組み合わせることで、安定したストック型ビジネスを確立しています。

香陵住販株式会社 より引用

事業における優位性

地域密着型の総合力・垂直統合モデル

これまで、茨城県水戸市を中心に、賃貸・売買・管理から開発・投資までをワンストップで手がける「地域密着型」のビジネスモデルで成長してきました。

「不動産業は信用がすべて」とよく言われますが、当社の強みは、長年の誠実な事業運営によって築き上げた地域の不動産オーナー様との強い信頼関係にあります。

不動産の相続や物件売却の際に、オーナー様から直接ご相談をいただくケースも多く、地域に根ざした企業だからこそ選ばれていると実感しています。

また、当社は土地の仕入れから販売、管理までを自社で一貫して手がけています。これは、地域の不動産市場のニーズを細かく把握し、的確な商品開発を行うための重要な要素です。また、店舗をドミナント展開することで、お客様のリアルな声を直接聞くことができ、それをもとにアパートやマンションの企画を立案することができています。

地道な取り組みではありますが、1棟あたり10世帯のアパートを50棟建築すれば、管理戸数として500戸が増えることになります。

このように、小規模な物件でもエリアに密着し、自社企画物件を責任を持って管理・運営することで、当社のストック型ビジネスの安定性を支えています。

ブランド力を持つ「レーガベーネ」シリーズ

当社が手がける自社企画マンション「レーガベーネ」シリーズは、投資家の方々から高い評価を得ています。

一般的な物件の利回りが4〜5%程度なのに対し、「レーガベーネ」シリーズは約7.5%という高利回りを実現しています。

この高い収益性を維持するためには、優れたリーシング(入居者募集)力が欠かせません。

当社はリアル店舗を中心に展開しているため、営業スタッフが直接入居者募集を管理し、高い入居率を維持しています。

遠方の物件を扱う場合、他の不動産会社にリーシングを委託することが一般的ですが、その場合、入居率の管理が難しくなることもあります。

一方、当社では自社で責任を持って物件を管理することで、このリスクを回避し、投資家オーナー様にも安心していただける体制を整えています。

また、「レーガベーネ」シリーズは木造を中心に展開していますが、建物設備については常にバージョンアップを行い、市場ニーズに応じた改良を加えています。

2024年には、ペット共生型の特化物件を2棟建築し、ペットを飼う入居者のニーズに対応しました。

このように、地域の実情を踏まえた商品開発を進めている点も、「レーガベーネ」シリーズの強みの一つです。

地域密着型による確かな実績

当社は茨城県内の賃貸仲介件数において長年1位を維持しています。

これは、豊富な市場データをもとに、お客様のニーズを的確に把握し、それを商品企画に活かしているからこそ実現できることです。

「家賃をもう少し抑えたい」「間取りをこうしてほしい」といったお客様の声は、現場の営業スタッフが日々の業務を通じて直接収集しています。

通常、不動産会社がマーケティング調査にコストをかけるのに対し、当社ではリアルな顧客ニーズを即座に商品企画へと反映できる仕組みを構築しています。

さらに、リアル店舗を持つ強みを活かし、お客様との対話を通じて新しい設備やサービスの導入に関する情報も自然と吸い上げています。

このように、地域密着型の企業だからこそ、エンドユーザーと直接コミュニケーションを取りながら、より良い住環境を提供することが可能なのです。

香陵住販の成長戦略

中期経営計画「KORYO2027」

中期経営計画「KORYO2027」を掲げ、「増収」「増益」「累進配当」の継続を目指しながら、さらなる事業拡大と収益力の向上に取り組んでいます。

地域密着型の不動産ビジネスを基盤としながら、新たな市場の開拓や新規事業の成長にも注力することで、安定した成長を実現していく考えです。

現在、安定成長戦略を継続しながら、さらなる収益力向上と株主還元方針の維持に取り組んでいます。

その柱となるのが、茨城県南部および首都圏マーケットでの拡大、新規事業の強化です。

これらの取り組みにより、フロービジネスとストックビジネスのバランスを取りながら、持続可能な成長を目指します。

香陵住販株式会社 2024年9月期決算説明資料 より引用

茨城県南地域・首都圏マーケットでの展開可能性

現在、当社は茨城県水戸市を中心に、ひたちなか市など県北エリアで確固たるシェアを獲得しています。

一方で、県南のつくばエリアではまだ成長の余地があり、2025年9月期はこの県南地域への資本投入を強化し、事業拡大を進めています。

ただし、新規出店については慎重に進める方針です。

まずは県南エリアの既存店舗の基盤を固め、その後、出店機会があれば積極的に検討していきます。

また、2019年にM&Aで子会社化した株式会社KASUMICが千葉県柏市に拠点を持っていたことから、千葉エリアでの「レーガベーネ」シリーズの展開も進めています。

柏エリアでの基盤を強化し、その影響を周辺の「流山おおたかの森」などにも広げ、新たなビジネスチャンスを生み出していきたいと考えています。

香陵住販株式会社 2024年9月期決算説明資料 より引用

新規事業の成長

既存の不動産事業に加え、新たな収益の柱となる分野にも積極的に取り組んでいます。

特に、不動産投資型クラウドファンディング「KORYO Funding」や、収益性の高いコインパーキング事業など、新規事業への注力を続けています。

その中でも特に成長が期待されるのが、「レーガベーネ」シリーズの建設請負事業です。

これまで当社は、自社で土地を仕入れ、企画・開発する形で「レーガベーネ」シリーズを展開してきましたが、2024年頃から建物自体の評価が高まり、オーナー様から直接、建築請負の依頼をいただくケースが増えてきました。

この建設請負事業は、地元の地主様がアパートなどの不動産事業を検討される際に、土地の有効活用として建物の建築から管理までをワンストップで当社に任せていただくというスキームです。

これにより、土地オーナー様にとっては安心して不動産事業を始められる環境が整い、当社にとっても「レーガベーネ」シリーズの拡大と賃貸管理物件の増加につながります。

今後もオーナー様への提案力を強化し、「レーガベーネ」シリーズの展開をさらに加速させていく考えです。

注目していただきたいポイント

当社の成長の根幹を支えるのは、ストックビジネスとしての賃貸管理事業です。

過去にはリーマンショックや東日本大震災といった大きな経済的な打撃がありましたが、そのような状況下でも当社は利益を積み上げることで危機を乗り越えてきました。

これは、当社のストックビジネスがしっかりと機能していた証だと考えています。

ストックビジネスは、一気に売上や利益を急増させることは難しいですが、着実に積み重ねることで企業の基盤を強固にしていきます。

また、「レーガベーネ」シリーズや建設請負事業は、単発の収益を生むフロービジネスでありながら、最終的には賃貸管理事業へとつながるモデルになっています。

オーナー様にとって、不動産投資は長期的な資産運用です。

当社は単なる一時的な取引ではなく、20年、30年と長くお付き合いを続け、世代を超えて信頼関係を築いていくことを最も大切にしています。

その結果、上場以来7年連続で増収・増益・増配を達成しており、安定した成長を続けています。

香陵住販株式会社 2024年9月期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

香陵住販は、ストックビジネスを中心に、着実な成長を続けていくことを最優先としています。

もちろん、一気に大きな売上を狙いたいという気持ちがないわけではありません。

しかし、当社が大切にしているのは、短期的な利益の追求ではなく、安定した経営を継続し、長期的な視点で成長を実現することです。

そのためにも、「KORYO2027」の目標に向けて、「稼ぐ力」と「成長」の両輪を軸に、慎重かつ的確な戦略を取締役会で検討しながら、着実に前進していきます。

これまでの7年間、上場企業として安定した成長を積み重ねてきたように、これからも地に足のついた経営を続けてまいります。

投資家の皆様には、引き続き当社の歩みを温かく見守っていただければ幸いです。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

香陵住販株式会社

本社所在地:〒310-0021 茨城県水戸市南町2-4-33

設立:1981年10月5日

資本金:386,189,800円(2024年9月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2018年9月13日上場)

証券コード:3495

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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