※本コラムは2025年3月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社Faber Companyは「知の探索」をDNAとし、デジタルマーケティングを通じて企業の目標達成、事業成長、ビジネス変革を支援している会社です。
代表取締役執行役員Founderの古澤 暢央氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社Faber Companyを一言で言うと
”アナログで地道な営業”にも強いデジタルマーケティング支援会社です。
Faber Companyの沿革

創業の経緯
Faber Companyの原点は、2005年に私が設立した「有限会社セルフデザイン」という小さな会社です。
気づけば、創業からもう20年という歳月が過ぎました。
当時、「SEO(検索エンジン最適化)」という言葉は世間にまったく浸透しておらず、私自身も、まさかこんなに広まるとは想像できませんでした。
そもそも私が検索という仕組みに大きな可能性を感じたきっかけは、「人はなぜ検索をするのだろう?」という単純な疑問でした。
1990年代後半頃まで、人々が何かを知りたいと思ったら、図書館や書店へ出向き、書籍や雑誌などから情報を得るしかありませんでした。
しかし2000年代に入り、日本にもGoogleが登場したことで、「これは世の中を根底から変えるぞ」と直感的に確信しました。
そんな中で、私自身が具体的に感じた課題がクレジットカード選びでした。
当時、クレジットカードの比較といえば、『2004年ベストクレジットカード10選』といった書籍が唯一の頼りでしたが、それらは出版後に情報が古くなり、自分のニーズにぴったりの情報を得ることは困難です。
そこで、「インターネットなら、もっと便利にリアルタイムな情報が得られるんじゃないか?」そんな考えから実際にネットで検索してみたところ、意外にも自分が欲しい情報が見つかりませんでした。
「それなら自分で作ってしまえばいい」と思いつき、ブログを立ち上げたのが創業の経緯にもつながる最初の一歩です。
最初に取り組んだテーマは、「車を利用する人にとって最もお得なクレジットカードは何か?」というものでした。
自分で徹底的に調査し、それを記事にして公開すると、「クレジットカード お得 ガソリン」といったキーワードで検索した方が次々とブログを訪れてくれました。
当時はアフィリエイトの仕組みを利用していたため、記事を読んで納得した方がカードを申し込むたびに、1件あたり1,600円が報酬として入ってきました。
これが私にとって初めてのインターネットを通じた収益で、本当に感動的な出来事でした。

その瞬間、「検索が持つ力は想像以上だ」と強く確信しました。
その頃の私はまだ会社員でしたが、以降は寝る時間以外のほとんどをSEOやアフィリエイトの研究と実践に没頭していきました。
2005年頃、一般的に企業はホームページを作ることだけに満足し、それを集客に活かすという発想自体が一般的ではありませんでした。
しかし私は、「これから必ず企業がウェブサイトを使って集客をする時代がくる」と強く信じ、検索エンジンを使った集客のためのコンサルティング事業を始めたのです。
私自身が身につけた技術や経験を、多くの企業に提供するというビジネスモデルを築き上げていきました。
着実な成長と「暗黙知」の体系化
創業して最初の5年間というのは、とにかく地道な日々の連続でした。
当時は会社の知名度もなく、小規模な会社でしたから、すべての業務を私自身がひとりで抱えていました。
そのため、自分でできる範囲でオウンドメディアを立ち上げ、一歩ずつ事業を広げていったのです。
人を採用したくても、まだ信用や実績が十分ではなかったので、いきなり多くの人材を迎え入れることは難しかったと記憶しています。
そこで、まず私自身の雑務や簡単な仕事を誰かに引き継ぐところから始め、業務を細かく分解し、少しずつ任せられる部分を増やしていきました。
こうして地味ではありましたが、ゆっくりと着実に成長の土台を築いてきました。
しかし、そのような状況が5年も続くと、さすがに限界が見えてきました。
当社の事業は、私個人の経験や感覚に基づく「暗黙知」が多く含まれていました。
「もし、この私が持っているノウハウの6割、7割でも機械化し、ツール化できれば、もっと多くの人がSEOやデジタルマーケティングの恩恵を受けられるのではないか?」そんな考えが徐々に強まっていったのです。
そこで、創業から8期目となる2013年9月期に入り、いよいよ私の持つ暗黙知を可視化し、ツールとして体系化するためのプロジェクトをスタートさせました。
しかし暗黙知というのは、頭の中にある漠然とした感覚や直感に近いもので、それを言葉にしたり、システム化することは決して簡単ではありませんでした。
それでも、エンジニアたちと何度も議論し、試行錯誤を繰り返しながら、約2年の時間をかけてようやくツールを作り上げました。
そしてついに、2015年9月期にローンチしたのがSEOプラットフォーム「ミエルカ(現在のミエルカSEO)」です。
ミエルカは、これまで属人的で曖昧だったノウハウをはっきり「見える化」したツールとして、市場で予想以上に大きな反響を得ることができました。
ちょうどその頃、SEOやコンテンツマーケティングが世間的にも注目され、一般化しつつありましたから、市場からツールが求められる絶好のタイミングでもありました。
今振り返ると、このタイミングの良さが、当社の成長を大きく後押ししたと思っています。
ミエルカをリリースしたことで、大手企業からのお問い合わせが急激に増え、会社の業績も大きく伸びました。
大手企業のマーケティング部署では、5〜10人ほどのチームで業務を進めるのが一般的です。
そういったチームの中には、まだデジタルマーケティングの経験が少ない新人や若手メンバーが多く含まれています。
彼らが一定の品質で施策を実施し、チームとして成果を出すために、「何か良い教材やツールはないだろうか?」というニーズが高まっていました。
そこにうまくミエルカがフィットしたのだと考えています。
また、価格設定も大手企業にとって導入しやすい手頃な水準に抑えたことが、導入のハードルをさらに下げるきっかけとなりました。
結果として、「まずは試してみよう」という感覚でミエルカを使い始める企業が徐々に増え、さらに口コミや評判を通じて広がっていきました。
このようにして、大手企業から徐々に支持を得ることができ、当社の安定的な成長を支えていったのです。
2024年7月に上場
2024年7月、当社は東証スタンダード市場への上場を実現しました。
上場を目指した最大の理由は、財務基盤をより強固にし、資本市場へのアクセスを広げていくことでした。
具体的には、M&Aを戦略的に展開していくために、資金調達の選択肢を増やしたいという狙いがありました。
実は現時点では、上場後に1社M&Aしただけで、まだ大きな成果を上げているわけではありません。
ただ、私たちが事業を行っているマーケット自体がそれほど大きくありませんから、小さなプレイヤー同士で限られた顧客を奪い合っている状態は決して好ましくないと考えていました。
むしろ、お互いの強みを活かせる企業同士で統合(ロールアップ)したり、自社にはない技術を持つ企業と提携したりすることで、さらなる成長の道が拓けるのではないかと考えています。
このような戦略を進めていくためには、やはり一定の資金力が不可欠になります。
そこで、上場を通じて財務基盤を安定させ、必要な時にスピーディに資金調達できる体制を作ることが重要でした。
また、実際に上場して半年ほど経ちましたが、特に採用面では非常に良い影響を感じています。
上場前、新卒採用の際には「名前を聞いたこともない会社に子どもを就職させるのは心配だ」という親御さんの意見があり、採用活動で壁になることも少なくありませんでした。
しかし上場したことにより社会的な信用が高まり、こうした親御さんの不安もほとんど解消されるようになりました。
中途採用においても同様で、特に家庭を持つ求職者にとって「会社の安定性」は重要な判断材料です。
上場したことによって会社の財務状況や経営の安定性が第三者に証明され、求職者が安心して入社できるようになり、新卒・中途ともに採用活動は格段にスムーズになりました。
さらに、大手企業との取引にもポジティブな変化が生まれています。
競合他社と並べられてコンペになった場合でも、「上場企業」という信用力が多少なりとも私たちの勝率を高めているのだと感じています。
このように、上場が会社の成長を様々な側面から後押ししていることを実感しています。

Faber Companyの事業概要と特徴
概要
当社はデジタルマーケティング分野において、大きく二つのサービスを提供しています。
一つは「自動化ツール」、もう一つは「人的リソース」による支援です。
まず自動化ツールの領域ですが、主力となるのがクラウド型SEO分析ツール「ミエルカSEO」をはじめとするクラウドツール群です。
これらのサービスは月額課金の形で提供しており、これまでに累計1,900社以上、現在アクティブなアカウント数では約1,700社のクライアント企業に導入されています。
ミエルカSEOは、主にオウンドメディアの流入改善やコンテンツSEOを支援するためのツールです。
具体的な機能として、検索意図の把握、検索ワードのタイプ分析、ページ品質評価などがあります。
たとえば、競合サイトが獲得しているキーワードや検索ユーザーのニーズを見える化し、自社サイトの課題を的確に把握することで、改善施策を自動的に提案してくれます。
このツールを使えば、「ユーザーが何を求めているのか」を理解した上で、効率的にコンテンツ作りを進めることが可能になります。
また、ミエルカシリーズの一つとして提供しているツールに「ミエルカヒートマップ」があります。
これはウェブサイトに訪れたユーザーの行動をヒートマップという視覚的な方法で分析し、サイト内の改善点を洗い出すためのUI/UX改善ツールです。
ユーザーがよく見ている場所(アテンションヒートマップ)、離脱してしまう場所(スクロールヒートマップ)、クリックが多い箇所(クリックヒートマップ)などをサーモグラフィーのように色分けして可視化します。
そのため、サイト内のどこに問題があり、どこを改善すれば良いかが直感的に理解できるようになるのです。
この他にも、デジタルマーケティングを支援するためのツールを複数提供しています。
さらに、もう一つの軸である「人的リソース」の支援サービスとして提供しているのが「ミエルカコネクト」です。
このサービスでは、クライアントの代わりにマーケターのスキルを評価し、最適な人材をマッチングしています。
具体的には、フリーランスのマーケターや副業が許可されている企業で現役マーケターとして活躍中の方々がデータベースに登録されており、クライアント企業のニーズに合ったスキルセットを持つ候補者を3〜5名ほど選定します。
その後、クライアントとの三者面談を行い、合意が得られれば業務委託契約を結ぶという流れになっています。
当社では、このように自動化ツールと人的リソースの両面から、クライアント企業が抱えるマーケティングの課題解決を支援しています。

事業における優位性
リード獲得力
当社の事業における強みとして、まず挙げられるのが「リード獲得力」です。
当社の営業活動は、大企業のコンペに参加して億単位の予算を獲得するといった派手なスタイルではありません。
むしろ、実際に現場で手を動かしている実務担当者の方々を主なお客様として想定しています。
具体的には、企業の広告運用担当者の方や、上司から「SEO対策を強化するように」と指示を受けて日々情報収集している方々です。
こうした方々が情報を探すときに多く利用しているのは、YouTube、X(旧Twitter)、オンラインセミナー、そしてGoogle検索です。
そこで当社では、これらのタッチポイントを徹底的に強化し、最大限に活用することに力を入れています。

自社のSEO対策はもちろんのこと、YouTubeチャンネルやSNSでも積極的に情報発信を行い、潜在顧客が当社に出会う機会を増やしています。
その結果、現場担当者が抱えている課題をピンポイントで捉え、それに適した解決策を提示することで、確実に最初の商談につながる仕組みができています。

リード獲得力×プロダクト力による展開
さらに、こうしたリード獲得力をベースに、当社が持つ「プロダクト力」と掛け合わせて事業を展開していることが特徴です。
いくらリードが獲得できても、肝心のプロダクトが魅力的でなければ意味がありません。
私たちが特に意識しているのは、決裁権限を持つ現場の課長クラスが、自分の判断で購入できるエントリープランを数多く揃えていることです。
具体的には月額9,800円〜49,800円といった、比較的導入が容易な価格帯のサービスをラインナップしています。
この価格帯であれば、部長や役員といった上位層の承認を待つことなく、課長クラスの裁量でスピーディに導入が可能となります。
そのため、リードタイムが短く、初回の導入ハードルを大きく下げることができています。
まずは低価格帯のサービスで取引を開始し、その後、信頼関係を深めながらクロスセルやアップセルを進めていくのが当社の営業戦略の基本です。

実際の事例として、ある大手企業からユーザー行動分析に関する問い合わせがあり、ミエルカヒートマップを提供したことがありました。
その企業は非常に規模が大きかったのですが、月額15万円程度であれば、比較的容易に導入の決裁を得ることができました。
そこで、まずは手頃な価格で導入いただき、導入後3〜6ヶ月経ったタイミングで、こちらから部長クラスの方を交えてフィードバックミーティングを提案しました。
このミーティングでは、導入後に得られた具体的な成果を報告します。
成果が出ていれば、当然部長クラスの方々にとっても評価ポイントとなります。
そういった話をしているうちに、「御社は他にどのようなサービスを展開されているのですか?」という質問をいただきます。
そこで、「実はヒートマップだけでなく、SEO対策やマーケティングのコンサルティングも提供しています」と新たな提案を行うことで、営業機会をさらに広げることができています。

こうした取り組みを繰り返し、徐々に関係を深めていくことで、部長クラスが予算を確保し、ミエルカSEOやより高額なコンサルティングサービスを次年度に導入いただくケースが着実に増えています。
小さな案件から信頼を積み重ね、大きな取引へと発展させていくのが、当社が成長を実現している戦略の柱となっています。

過去導入実績と成功事例の共有
また、こうした戦略を支えているのが、「過去の導入実績と成功事例の共有」です。
詳しくはぜひ当社のサービスページを見ていただきたいのですが、企業はサービスを検討する際、自社と同じ業種や規模の会社の成功事例でないと、なかなか導入をイメージすることができません。
たとえば、不動産会社が靴屋の成功事例を見ても説得力がありません。
そのため、業種や企業規模ごとに成功事例を幅広く分類し、どのような企業が訪れても「これならうちにも合いそうだ」と感じていただけるよう工夫しています。
この工夫によって、競合他社と比較しても一歩リードできていると感じています。
ただ、成功事例を増やすには、まず顧客企業に実際の成果を上げてもらう必要があります。
当社がそのために重視しているのがカスタマーサクセスです。
当社では、サービス導入の初期段階でオンボーディングと呼ばれる導入支援を必ず行っています。
契約前からお客様と目標を共有し、「半年後にこれくらいまで使いこなしましょう」「1年後にはさらにレベルを上げましょう」と具体的な目標を設定し、オンライン中心で伴走型のサポートを提供しています。
ただし、さらに実務的な支援や高度な戦略立案、作業の代行といったサポートが必要な場合は、別途お見積もりの上、当社のコンサルタントがサポートする仕組みとなっています。
特にメディア運営に不慣れな企業の場合、人的リソースを補う支援も柔軟に行っています。
こうした伴走型支援によって顧客が確実に成果を出し、その成果を成功事例として掲載させていただくという好循環を継続しています。
低コストの開発力と確かな研究実績
当社の大きな強みの一つは、「低コストでの開発力」と「確かな研究実績」を両立していることです。
もともとミエルカSEOを開発しようと思った頃、日本国内で優秀なエンジニアを採用する難しさを強く感じていました。
そこで検討した結果、最終的に選んだのがベトナムでのオフショア開発という方法でした。
ベトナムでの開発は、日本国内で開発する場合の約4分の1のコストで実現できるという大きなメリットがありました。
そして、ベトナムでの開発を進めるにあたり、私は定期的に現地に通い詰めることにしました。
毎月のうち約3分の1から半分の時間をベトナムで過ごし、現地のエンジニアたちと直接コミュニケーションを取りながら開発を進めました。
そのようなプロセスの中で、非常に優秀で意欲的なベトナム人のエンジニア達と出会うことができました。
そして現在では、ベトナムに100%子会社を設立し、25人ほどの現地エンジニアを抱えるまでに至っています。
また、開発を進める中で、技術的に解決が難しい課題にも数多く直面しました。
その解決策を探すために論文を読み漁ったところ、ある大学教授が研究していた自然言語処理の技術が、私たちの課題解決に役立つ可能性があることに気づきました。
そこで私は迷わず、その教授に直接会いに行き、共同研究を提案しました。
その結果、技術的に高度な課題をスピーディーに解決することができました。
このようにしてスタートした大学との共同研究は、すでに10年以上も継続しています。
サービス名には特に「AI」という言葉を掲げてはいませんが、実はミエルカシリーズにはAIの基礎技術が数多く活用されています。
私たちは以前から積極的にAI技術を導入し、製品に反映させてきており、研究の恩恵を享受しています。
これからも、ベトナムでの低コストの開発力を最大限に活かし、さらに大学などアカデミアとの共同研究を続けながら、最新機能を迅速にプロダクトに取り入れていくことで、競争力を高めていきたいと考えています。

Faber Companyの成長戦略
大手・中堅企業顧客へのターゲティングの絞り込み
当社の成長戦略の柱の一つに、「大手・中堅企業へのターゲティングの絞り込み」があります。
先ほど少し触れましたが、現在当社はターゲットを上場企業、もしくは売上100億円以上の企業に明確に絞っています。
こちらに示した表をご覧いただくとわかるように、お客様から月額でいただく料金は、「3万円未満」「3万円〜30万円未満」「30万円以上」という区分に分類されています。
この数字は厳密には粗利益ですが、売上と解釈していただいても大きな問題はありません。
この表を見ると、特に「3万円未満」の顧客が大幅に減少しています。

この背景には、約2年半前に私たちが戦略を明確に変更し、ターゲットを上場企業や売上100億円以上の企業に絞ったことが大きく影響しています。
それ以前は、大企業から中小・零細企業、さらには個人事業主まで、とにかく幅広く多くのお客様にご利用いただく戦略を取っていました。
しかし、コロナ禍が広がったことで、私たちは特に中小企業や零細企業のお客様を中心に、多くの解約が発生するという非常に厳しい状況を経験しました。
そのとき私自身が強く感じたことがあります。
それは、「たとえ経済危機や予期せぬ事態が起きたとしても、しっかり計画的に投資を続けられる企業は、やはり上場企業や売上100億円以上の企業が中心である」ということでした。
もちろん頭では理解していたつもりですが、実際にこうした厳しい状況を経験することで、その重要性を身をもって実感しました。
そうした経緯から当社は戦略を再検討し、より成長ポテンシャルが高く、安定的に予算を投じられる上場企業や中堅企業にリソースを集中する決断をしました。
「3万円未満」の顧客層には、月額9,800円のサービスを利用するような小規模な個人経営のマッサージ店や税理士事務所などが多く含まれます。
この層のお客様が不要ということではありませんが、私たちの限られたリソースをより将来性の高い企業に振り向けるという経営判断を行った結果、この顧客層が縮小することになりました。
一方で、「3万円〜30万円未満」、そして「30万円以上」の顧客層については、主に上場企業や売上100億円以上の中堅企業が多く含まれており、この層の顧客数は着実に増加しています。
さらに右側の棒グラフをご覧いただくと、粗利益の総額は着実に伸びています。
色別に見ると、灰色が3万円未満、黄色が3万円〜30万円未満、ピンクが30万円以上ですが、利益構成の変化からも明らかに当社の戦略が機能していることが分かるかと思います。
このような成果を踏まえて、今後も上場企業や中堅企業をターゲットにした顧客開拓を積極的に進めていきます。
もう一つ、やや泥臭い話になりますが、「営業及びCS活動における接点総数」に示している左側の折れ線グラフをご覧ください。

このグラフは、商談やミーティングにおいて「決裁者」が参加してくださった比率を示しています。
具体的な決裁者とは、部長や役員クラスの方々です。
このグラフは現在、高止まりしていますが、かつては右肩上がりに伸び続けていました。
なぜこのような推移になったかというと、私たちが意識的に商談やミーティングにおいて決裁権を持つ方々の参加を促す取り組みを行ってきたからです。
当然、部長や役員クラスの方に商談に参加していただくには、それなりのメリットを提供する必要があります。
そのため私たちは、「導入して半年間の成果報告」や「最新のSEOトレンド、AI活用のニーズ」といった、現場担当者だけでなく役員層にも興味を持ってもらえるようなテーマを積極的に提案しています。
この取り組みの結果として、決裁者が参加してくださる割合が徐々に高まりました。
単純に商談件数を増やすのではなく、「商談一件あたりの質」を高めるために、決裁権を持つ方々の参加率を上げることにこだわったのです。
現在は一定水準に達し、さらにこの数値を上げることは難しくなっていますが、これはむしろ戦略が成熟したことを示すポジティブな結果だと捉えています。
決裁者が商談に参加すると、意思決定のスピードが圧倒的に速まります。
さらに、現場だけでは見えなかったような新しい課題やニーズが掘り起こされ、想定外の大きな商談が生まれることも少なくありません。
そのため、この「決裁者参加率」を維持する取り組みは今後も非常に重要な施策だと認識しています。
まとめると、私たちはターゲットを上場企業や売上100億円以上の企業に絞り込むこと、そして商談やミーティングの場に部長や役員などの決裁者に同席してもらうこと、この二つを徹底して進めることで、営業活動の効率性と生産性を最大限まで高め、成長を加速させていくことを目指しています。
アライアンス・M&A戦略
当社の成長をさらに加速させる上で、アライアンスやM&Aを戦略的に活用することは非常に重要だと考えています。
現在、私たちはナショナルクライアントを多数抱える大手企業とのパートナーシップを通じ、より幅広い顧客層にアプローチすることを目指しています。
その第一弾として、大手インターネット広告代理店である「株式会社CARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)」と資本業務提携を結びました。
大手企業の中には、電通グループや博報堂グループといった一部の巨大広告代理店としか取引をしないという会社が一定数存在します。
私たちは、そのような企業にも当社のサービスを知っていただく機会を増やしたいという狙いで、2024年7月31日にCARTA HDと資本提携を結び、実際の営業活動は同年9月から本格的にスタートしています。
当初想定していた通り、CARTA HDのお客様を当社にご紹介いただく流れができており、実際に受注件数も順調に伸びています。
しかし、この提携は独占的なものではありません。
したがって、私たちはCARTA HD以外にも、大手広告代理店や有力なコンサルティングファームなど複数の企業と、水面下で提携交渉を進めている状況です。
今後、さらに複数のアライアンスを進め、当社の営業チャネルを拡充させていきます。

また、アライアンスだけでなく、当社の強固な財務基盤を活かしたM&A戦略も積極的に進めています。
当社は上場時点で約20億円の現預金を有しており、現在も無借金経営を続けています。
さらに、当社の売上の80%以上がリカーリング型(継続収益型)の契約で占められていることも特徴です。
一般的に、当社と同じ規模の企業の場合、一社で全売上の30%以上を占めるような大口顧客が存在することも珍しくありません。
しかし当社の場合は、最も大きな取引先でも売上全体の2%未満にとどまっており、非常に健全な顧客ポートフォリオを築いています。
そのため、特定の顧客が契約を終了しても、業績への影響が極めて限定的であるというのが当社の強みの一つだと考えています。
このように、当社は安定したキャッシュフローを毎年確保しており、蓄積された資金と安定的な収益基盤を活用して積極的にM&Aを推進する方針です。
現在のところ、慎重に候補企業の選定を進めているため、まだ具体的な成果は限定的ですが、適切な投資が実現すれば当社の営業利益を大きく押し上げることが可能だと考えています。
直近の例として、2025年1月に実施した「株式会社so.la」のM&Aがあります。
このM&Aは、いわゆる「のれん負け」にならないよう慎重に進めた案件です。
so.laの代表である辻 正浩氏とは以前から深い関係性があり、SEO分野における認知度向上や当社の競争力、差別化を実現できると判断しました。
この買収によってブランド力や権威性を一層高め、情報発信力の強化にも大きな効果が期待できます。
今後も当社は、このように資本提携やM&Aを積極的に活用し、戦略的に事業拡大を進め、さらなる成長を目指していきます。

注目していただきたいポイント
私たちはこれまで、上場後のロードショーなどを通じて、多くの機関投資家の方々とお会いする機会をいただきました。
その際に非常によくいただく質問として、「この業界は典型的なレッドオーシャンであり、差別化が難しいのではないか?」というご指摘があります。
実は、私自身もその点については深く認識していますし、常に課題として意識しているところです。
では、当社と他社では一体何が違うのでしょうか?
その違いを一言で表現するならば、デジタルに強い企業ほど「アナログな営業活動を軽視する傾向がある」という業界特有の現象に対し、当社は徹底的に「地道なアナログの営業活動」を重視し、実践し続けていることです。
実際、多くの同業他社はデジタルマーケティングやSEO施策といったデジタル領域には非常に長けています。
しかし、それだけでは差別化が難しく、競合との差はほとんど出ません。
そこで当社は、アナログな営業活動の部分に強くこだわりを持ち、KPIを細かく設定した上で、日々の営業活動の積み重ねに真摯に向き合っています。
具体的には、営業担当者が顧客と行う日々の商談やアポイントメントから得られたフィードバックを即座に分析し、改善に繋げています。
一回一回の商談やお客様からいただいたコメントを無駄にせず、愚直にPDCAを回しているのです。
この地道な取り組みこそが、当社の最大の特徴であり、差別化のポイントだと考えています。

もう一つ、私たちが自信を持っているのが自社のSEO施策です。
SEOを支援する会社として、自社のSEO施策に本気で取り組むのは当たり前だと思われるかもしれません。
しかし、当社はそこに圧倒的なリソースを注ぎ、「ファインダビリティスコア」という独自の指標で、数千ものキーワードにおける自社の露出度を日々スコアリングしています。
このスコアは競合他社とも常に比較し、毎年着実に上昇し続けています。
これは、まさに私たち自身がデジタルマーケティングを駆使して集客を実践していることを証明する指標でもあります。

つまり当社の強みは、「愚直な改善を軽視せず、徹底的にやり抜くこと」です。
日々の小さな改善や営業活動の積み重ねこそが、「オペレーショナル・エクセレンス(業務の卓越性)」を生み出す唯一の方法だと信じています。
さらに、このような活動を支えているのは、当社に集まる「優秀なメンバー」たちの存在です。
この点については、私自身がこの業界に対して深い情熱と使命感を持っていることが大きく影響していると考えています。
もともと私は、純粋にSEOが好きでこの仕事を始めました。
そして、この業界をより良くしていきたいという使命感もずっと抱いています。
こうした想いは自然と組織全体に浸透し、同じ価値観を持つメンバーが集まる土台になっていると感じています。
10年ほど前、SEO業界には悪徳業者が多く存在し、「短期的に不正な手法で利益を得て、そのまま逃げる」といったネガティブなイメージが根強くありました。
しかし私たちは、その状況を変えたいと強く願い、「正しい情報を発信し、嘘をつかず、最後まで責任を持つ」という姿勢を徹底しています。
そのような取り組みが徐々に評価され、私たちの理念に共感する優秀な人材が自然と集まるようになってきました。
また、私自身が「日本のインターネットをより良いものにしていきたい」という強い思いを持ち続けており、その想いに共鳴したメンバーが「ぜひ一緒に働きたい」と入社してくれることも多くあります。
このように、強い理念や使命感があるからこそ、同じ志を持つ優秀なメンバーが集まり、競合と差別化できる組織が出来上がっているのだと思います。

投資家の皆様へメッセージ
当社の業績をご覧になった投資家の皆様からは、「派手な成長が見えにくい」「成長速度が物足りない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、これは私自身もよく理解していることです。
しかし、私たちFaber Companyの最大の強みは、「派手さや瞬発力のある成長」ではなく、「コツコツと日々の改善を積み重ねていく文化」や「細かなKPIを設定し、それを着実に実行するための愚直な努力」にあります。
そのため、短期間で急激な成長を遂げるタイプの会社ではありませんが、その代わりに安定感のある着実な成長を長期的に継続することができます。
ぜひ、このような視点で、私たちの会社の成長を長期的に見守っていただきたいと思います。
また、私は投資家の皆様とのコミュニケーションを非常に大切に考えており、皆様と直接お話しできる機会を心から楽しみにしております。
その一環として、IR情報を発信するためのYouTubeチャンネルを開設しております。
ぜひそちらもご覧いただき、私たちの会社についてより深く知っていただければと思います。
さらに、当社ホームページからのご質問や、お電話でのお問い合わせにも積極的に対応しております。
どんな些細な疑問や質問でも構いません。
また、叱咤激励などのご意見も大歓迎ですので、ぜひ気軽にお寄せください。
株主総会の場にも、ぜひ積極的にご参加いただければ幸いです。
直接皆様とお会いしてご意見をいただくことは、私にとっても非常に貴重な機会となります。
皆様と共に、さらに良い会社に育てていきたいと強く願っていますので、今後ともFaber Companyをどうぞよろしくお願いいたします。
株式会社Faber Company
本社所在地:〒105-6923 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー23階
設立:2005年10月24日
資本金:1億円(2025年3月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2024年7月31日上場)
証券コード:220A