【4178】株式会社Sharing Innovations 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年3月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社Sharing InnovationsはITやテクノロジーの力で社会を変革していきます。

代表取締役社長の信田 人氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社Sharing Innovationsを一言で言うと

「経営基盤を支えるDXパートナー」です。 

Sharing Innovationsの沿革

株式会社Sharing Innovations 代表取締役社長 信田 人氏

創業の経緯

私たちSharing Innovationsは、もともと「受託開発」の会社としてスタートしました。その後「受託開発」や「SES(システムエンジニアリングサービス)」を行う小規模な企業をいくつかM&A(合併・買収)することで、成長してきました。

2018年から2019年頃、「これからクラウドが市場の中でどういった位置づけになっていくのか」「その中で、どの分野で勝負すれば自分たちの強みを活かせるのか」ということを、何度も検討しました。

その結果、将来的な市場の可能性を見据え、Salesforceという領域に特化して参入していくことを決めたのです。

Salesforceのパートナーとして

当社にとっては、2018年から2019年頃が特に大きな転換期だったと振り返っています。

当時の日本国内では、Salesforceの市場はまだまだ成長途上でした。

具体的には、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)などの分野が少しずつ注目され始めてはいたものの、まだ大規模なエンタープライズ向けよりは、スモールビジネスを中心に小規模な導入案件が多く展開されていた時期です。

実は、この時期の私たちの社内のメンバー構成も、比較的大手向けよりも、中小規模の企業にフィットする人材を多く抱えていました。

言い換えると、私たちの強みや提供できるサービスが、まさにそのタイミングの市場ニーズとうまく合致した、ということになります。

また、その頃から新卒採用を本格的に拡大し、年間で約70名ほど採用しています。

採用した新卒社員には社内でしっかりと研修や教育を行い、Salesforceのプロジェクトに即戦力として対応できる人材を育てることに注力していきました。

こうして人材育成が進んで体制が整ったことで、Salesforce社からも「信頼できるパートナー企業」と認めていただけるようになり、結果として案件のご紹介やリードが増えるなど、良い循環が生まれました。

私たちとしては、こうした「社内体制の強化」と「市場のニーズ」が自然に噛み合ったこのタイミングが、まさに大きなターニングポイントになったと感じています。

上場と事業多角化

2021年3月に東証マザーズ市場(現 グロース市場)へ新規上場を果たしました。

翌年の2022年には、日本で初めて「Tableau Premierサービスパートナー」認定を獲得するなどSalesforce社との連携を強化するとともに事業の多角化を進めていきました。

現在は、Salesforceの導入支援に加えて、当社の人材や技術力を活かした受託開発とSES(システムエンジニアリングサービス)の3事業が当社の大きな柱となっています。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

Sharing Innovationsの事業概要と特徴

概要

現在、当社のビジネスは、大きく「BtoB(企業向け)」と「BtoC(個人向け)」の2つの領域に分かれています。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

まずBtoB領域についてご説明します。

こちらは「受託開発」「SES(システムエンジニアリングサービス)」「Salesforceの導入支援」という3つが主要な柱です。

これらはすべてクラウド関連のソリューションが中心となっており、特にSalesforceの導入支援とSESについては、パートナー企業との協力関係が不可欠なビジネスモデルとなっています。

Salesforceの導入支援は、基本的にSalesforce社を通じて案件を仲介していただく形ではありますが、実際のお客様とのやり取りや契約は直接当社で行っています。

当社の売上の約半分は、Salesforceの導入支援とSESの領域です。

規模が一定以上あるからこそ、より柔軟で効率的なビジネス展開が可能になっていると感じています。

受託開発に関しては、比較的プライム(元請け)として直接お客様とお取引をする案件が中心となっています。

IT業界ではよくあるケースですが、一度プロジェクトに参画したあと、PM(プロジェクトマネージャー)を軸に徐々に業務範囲が広がっていくというパターンがほとんどです。

私たちもこのようなかたちで事業を拡大してきました。

最近では受託開発部門の営業体制も強化しており、既存のお客様だけでなく、新規のお客様の開拓にも積極的に取り組めるよう準備を進めています。

BtoC領域としては「ウラーラ」という占いアプリのプラットフォームを展開しています。

一般的に「占いアプリ」と聞くと、多くの方は自分の生年月日や星座を入力すると自動的に結果が出るタイプをイメージされるかもしれません。

一方、私たちのサービスは少し違います。

私たちが提供するのは、チャットや電話、あるいは対面鑑定といった、「リアルなコミュニケーション」を求めるユーザーのニーズに応えた対話型のサービスです。

具体的には、子会社を通じて一定の基準を満たした占い師の方々と業務委託契約を結び、その占い師の皆さんがアプリ上で直接ユーザーとコミュニケーションをとるという仕組みになっています。

料金体系はポイント制で、チャットの場合には1文字ごとにポイントを消費するなど、利用した分だけ料金が発生する仕組みです。

実際のユーザーさんにとっては、占いというよりも「カウンセリング」に近い感覚で利用される方が多く、日常の悩み相談や心のケアのニーズに応える内容となっています。

このように占いを切り口としながらも、「リアルタイムかつ対話型のサービス」をポイント課金というモデルで展開しているのが、私たちのBtoC事業の特徴です。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

事業における優位性

マルチTech力で多角的な事業ポートフォリオを構築

Salesforceの導入支援を中心に事業を拡大してきたことで、多様な技術スキルを持った人材が数多く揃っています。

その技術力を活かしながら、多角的な事業ポートフォリオを構築していることが特徴です。

具体的には、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなど主要クラウド環境での開発に幅広く対応でき、お客様ごとに異なるインフラ戦略にも柔軟に応じることができます。

クラウドインテグレーションだけでなく、Webシステムやスマホアプリ、基幹系システムなどのスクラッチ開発、さらにはデータ基盤の構築まで、DX推進に求められる幅広い技術を自社内で一貫して提供できることも強みです。

実際、Salesforce導入支援を行ったお客様から、「他のシステム開発もまとめてお願いしたい」というご相談をいただくケースも多くあります。

そういった場合には、受託開発チームが連携して柔軟に対応しています。

このように特定の技術分野に限定せず、複数の技術領域を掛け合わせ、総合的なソリューションを提供できることが、当社の大きな強みです。

技術力を持った人材

当社の人材構成を大きく分けてみると、全体のおよそ4割がSalesforceに精通したメンバーとなっています。

その中でも、特に実務の中心を担っているのが、Salesforceの開発やカスタマイズに対応できる高い技術スキルを持った人材です。

Salesforce関連の資格保有者も非常に多く在籍しています。

実際に、マーケティング、開発、管理者など様々な分野を合計すると、認定資格数は社内全体で600以上です。

さらに、リーダーやPMとして活躍しているメンバーも10名ほどおり、安定的にプロジェクトを推進できる体制が整っています。

次に、全体の3〜4割を占めるのがSES領域を担当するメンバーです。

この領域は、特に高い技術スキルを備えたエンジニアが中心で、専門性を活かして各プロジェクトに参画しています。

プロジェクトマネジメントよりも、技術的な専門性に特化したエンジニアが多いことが特徴です。

さらに残りの2〜3割は、受託開発に携わるメンバーで、JavaやPHPなど汎用的な開発言語やオープン系技術に強みを持つエンジニアが多く在籍しています。

こちらの領域は比較的柔軟にお客様のニーズに対応できるため、新規案件の獲得にも貢献しています。

こうしたことから、現在の社内は、Salesforce領域に大きな強みを持ちながらも、SESや受託開発など複数の領域でバランス良く人材を配置し、多様なニーズに応えられる人員構成となっています。

親会社OrchestraHoldings社とSharing Innovationsの関係性

当社は、Orchestra Holdingsという持株会社を親会社とするグループの一員であり、その傘下にある複数の事業会社とは「兄弟会社」の関係にあります。

ただし、ホールディングスから一方的に案件が供給され、当社がそれを処理するというような位置づけではありません。

むしろ、経営レベルで密接なつながりを持ちながら、お互いが「戦略的なパートナー」として協力関係を築いています。

また、グループ内の兄弟会社同士の結びつきは非常に強く、実際にシナジー効果も生まれています。

たとえば、私自身、Orchestra Holdingsグループ内でソフトウェアの検証サービスを提供する「ヴェス」という会社の取締役も兼任しています。

ヴェスは当社と同じシステム開発の領域に関連しているため、お互いの強みを生かしながら、顧客の紹介や共同プロジェクトなどを積極的に進めています。

こうしたグループ内での密接な協業関係が築けていること自体が、当社の大きな強みの一つであると感じています。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

Sharing Innovationsの成長戦略

Sharing Innovationsの現状と成長可能性

これまで当社の事業構成は、「Salesforce導入支援」「SES」「受託開発」という3つの柱が中心でした。

ただ、これらの”既存事業だけ”で今後も同じスピード感を維持しながら成長を続けられるかと問われれば、正直なところ、難しい部分があると感じています。

たとえばSESの場合、「さらに大きく伸ばす」ためには一定規模の人材確保が必要です。

Salesforceについても、市場環境をしっかり見極めながら、いかにお客様に「選ばれる存在」になっていくかが重要となります。

受託開発に関しては、これまで営業体制が十分ではなかったため、新規クライアントの獲得が課題です。

一方で、当社にはまだまだ手をつけられていない領域が多くあります。

たとえば「ITコンサルティング」、いわゆる上流工程の領域については、今年から本格的に立ち上げた新領域です。

上流工程をしっかり押さえることで、そこから受託開発やその他のサービスへ展開していく流れを作ることが可能になると考えています。

さらに、「データ活用」の分野においても成長の可能性があると感じています。

これまで、BIツールの「Tableau」やデータウェアハウスサービスを提供する「Snowflake」と協業しながらクラウド領域の一部として対応してきました。

それらを独立した事業として十分に確立できておらず、この点が、これまで伸び悩んだ原因のひとつだと捉えています。

そこで現在は、「データ活用」と「マーケティングオートメーション」の分野を切り出し、それぞれ独立した事業として成長できるかどうかを丁寧に検討しながら動いているところです。

これらの新しい分野を「次の成長の種」としてしっかり育て、将来的な事業規模の拡大につなげていきます。

Salesforce領域に関しても、国内のマーケットシェアが80%以上という成熟した市場です。

当社はこれまでCRMやSFAなど、比較的バリューチェーンの末端にあたる領域を中心に取り組んできましたが、今後は、ERP(基幹業務システム)のような、より上流の領域に取り組んでいきます。

ERPを起点として、CRMやSFAなどの下流領域を効果的に連携させることで、「経営基盤を支えるITに強い企業」というポジションを確立し、ブランド価値の高めることが目標です。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

成長性の高い領域に投資

今後の成長戦略の方向性として、「ITコンサルティング」「データ活用」「マーケティングオートメーション」「ERP」の4つの分野を、それぞれ独立した事業として立ち上げ、さらなる強化を進めていく計画です。

特にBtoBビジネスに関しては、改めてターゲット市場を見直し、「ユーザーが本当に求めているサービスとは何か」を常に考えながら、提供するサービス内容自体をブラッシュアップしていきます。

現在はまだ、「特定の業界に絞り込んで注力する」という段階ではありませんが、実際のお客様を見渡すと、製造業や情報通信業のお客様が多く占めています。

そのため、今後は自然とこれらの分野が強みとして定着し、得意分野として特化していく可能性が高いと感じています。

その背景には、今後さらに積極的にお客様の成功事例を発信し、それをきっかけに新たな問い合わせやニーズが集まってくることが予想されるからです。

結果的に、製造業や情報通信業などが当社が実績を多く保有する業種が得意領域として明確になっていくと考えています。

また、BtoC領域における占いアプリの事業については、これまでは提供するコンテンツや展開エリアが限定されていました。

今後はコンテンツの種類をさらに増やし、サービス提供エリアも拡大することで、より多くのユーザーに利用していただけるような事業に成長させていく予定です。

株式会社Sharing Innovations 2024年12月期 決算補足説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社はどうしても「Salesforceの導入支援を専門にしている会社」というイメージが強く、それ以外の事業にはなかなかスポットライトが当たりにくい状況があります。

もちろんSalesforce の導入支援は私たちの強みですが、実際には、それだけではありません。

ただ、その部分を十分に発信できていないことも、原因の一つなのかもしれません。

たとえば「データ活用領域」では、単にデータ基盤を構築して終わりではなく、その先の活用や定着化支援まで踏み込んだサービスを展開しています。

一般的なシステム開発会社ではなかなか対応できないような、より深い領域にも挑戦していることが特徴です。

さらに、今後AIの活用が進む中で、ますます重要性が高まるのが「データ品質」です。

当社はこうした社会全体で求められる課題に対しても、きちんと応えられる技術力やノウハウを持った企業だと自負しています。

ぜひ今後は、こうしたSalesforce以外の領域においても注目していただければ嬉しく思います。

投資家の皆様へメッセージ

一見するとSalesforceの関連銘柄としてイメージしていただいているかもしれません。

実際は、Salesforce以外にも幅広い領域にチャレンジしています。

私たちは短期的な成果だけを追求するのではなく、中長期的な視点で市場や社会のニーズの変化に柔軟に対応し、常にフィットし続けてきました。

単なるシステム開発企業という枠にとどまらず、社会の動向や市場の変化を見据えながら柔軟に事業を進化させていけることこそが、私たちSharing Innovationsの本質的な強みであり、競争力の源泉です。

ぜひ、そういった視点で当社を捉えていただき、今後のさらなる成長可能性にご期待いただければ大変嬉しく思います。

株式会社Sharing Innovations

本社所在地:〒150-6008 東京都渋谷区恵比寿四丁目20番3号 恵比寿ガーデンプレイスタワー8階

設立:2008年6月6日

資本金:436,000,000円(2025年2月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2021年3月24日上場)

証券コード:4178

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

目次