【2195】アミタホールディングス株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年3月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。

アミタホールディングス株式会社は、企業向けのサステナブル経営移行支援や自治体向けの持続可能なまちづくりの提案を通じて、循環型社会の実現を目指しています。

代表取締役社長 兼 CIOOの末次 貴英氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

アミタホールディングス株式会社を一言で言うと

循環の仕組みで近代の誤作動を正し、持続可能な社会の実現を目指す会社です。

アミタホールディングスの沿革

アミタホールディングス株式会社代表取締役社長 兼 CIOO 末次 貴英氏

創業の経緯

当社は1977年に兵庫県姫路市でスミエイト興産株式会社として創業しました。

当時は、亜鉛の資源リサイクル過程において関係する各企業との商取引を担う、一種の商社として事業を開始し、製鉄を行う電炉から排出されるダストに含まれる亜鉛を精製・再利用する取引の窓口を担当していました。

しかし、第二次オイルショックの影響で電炉製鉄産業が衰え、電炉ダストの排出量が少なくなるとともに、亜鉛のインゴッドも売れなくなり、我々も大赤字に陥りました。

そのような中で、副産物(廃棄物)の処分を依頼されました。そして、副産物の中に高純度のニッケルや銅が含まれることを発見し、これを「新たな価値を持つ資源」として非鉄金属系の製造会社で再利用いただけるよう、工場を回り、地道に営業活動を開始したのです。

しかしながら当時は「リサイクル」という概念が一般的ではなかったため、廃棄物由来の原料を使用することに対して、多くの会社の担当者から大きな抵抗を受けました。

社会が不景気になると、製造会社も生き残りをかけて、我々が提案した低コストのサーキュラーマテリアル(代替資源)に関心を寄せ、資源として利用してくれるようになりました。

ビジネスエコシステムの形成

我々のビジネスのモットーは「この世に無駄なものはない」です。

製品以外のものはすべて「地上の資源」と捉え、価値がないものと見なされている廃棄物から新たな価値を生み出す「地上資源事業(現 サーキュラーマテリアル事業)」はここから開始しました。我々のビジネスの原点とも言えます。この考えから、我々は廃棄物のことを「発生品」と呼んでいます。

しかし、資源ユーザーである顧客に対して、安定的にこのサーキュラーマテリアルを供給するには大きな課題がありました。それは、発生品ならではの「不確実性」です。

例えば、毎月100トンの定期的な資源供給を求められても、発生頻度や量、性状などが不安定な発生品を原料にしているため、不確定要素が多く存在したのです。

そこで、様々な工場を回り、複数の供給源から多種多様な発生品を集め、それらを組み合わせることで安定化を図りました。さらに、サーキュラーマテリアルを利用するユーザー企業を複数確保しておくことも重要でした。

当社は、1979年から「循環型サプライチェーン」の構築に取り組み、圧倒的な数の取引先(廃棄物の排出事業者と代替資源のユーザー企業)によるビジネスエコシステム(複数の企業が業種・業界の垣根を越えて共存共栄する仕組み)を形成してきました。

このビジネスエコシステムは、現在まで続くアミタのビジネスモデルの根幹を成しています。

社会課題と事業の多角化

この40年間で、大量生産・大量消費の時代から、SDGsや海洋プラスチック問題に対する意識が高まる現代へと、我々をとりまくビジネス環境は大きく変化しました。

資源価格の変動、人口動態の変化、労働力市場の縮小など、多くの外部環境の変化に対応するために、どのようにコストを管理し、利益率を向上させるかを考えることは重要です。

そこで我々は、2021年度にサービスの多様化やプラットフォーム化をキーワードとした業態改革に着手しました。

企業の「〇〇経済圏」のようなビジネスモデルをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、同一プラットフォーム上で、シナジーを持つ様々なサービスを統合的に提供することで、各々のサービス提供コストを共通化して全体コストを低減し、特定の経済範囲の中で顧客占有率(顧客内シェア)を高めて、収益性を上げることが可能です。

このような「最小の投資で最大の効果を得る」仕組みづくりと事業展開を我々は目指しています。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

また、我々の経営スタイルは、先行投資型による潜在的な社会ニーズの市場化です。

顕在化した社会ニーズに向けて事業を行うのではなく、まだ形になっていない、しかし確実に存在する潜在的な社会ニーズを捉え、先行投資を行い市場化することで、事業を発展させてきました。

創業当時は、第二次オイルショックをきっかけに地上資源事業をスタートさせ、その後1990年代の急激な自然破壊、資源枯渇の顕在化を受けて、国内初となる持続可能な森林管理を審査するFSC®認証審査サービスを開始しました。

以降、持続可能な調達・仕入のトレーサビリティを評価・認証する、環境認証審査サービスを本格化しました。

2000年代には、環境分野における法律や国際基準が強化される中で、廃棄物管理の厳格化が求められました。

そこで、ICTを用いた環境管理のクラウドサービスや専門知識を有するスタッフによる、アウトソーシングサービスの提供を開始しました。

さらに、地域の4大課題である人口減少・雇用縮小・少子高齢化・社会保障費の増大の深刻化を受けて、「循環」と「関係性」に軸を置いた持続可能な地域モデルの提案を始めました。

そして、2020年頃からは社会全体のサステナビリティ向上や、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現に向けた支援ニーズの高まりを捉えて、企業のサステナブル経営を支援するコンサルティングサービスを始めるとともに、社会全体を持続可能にする「社会デザイン事業」を開始しました。

このように社会課題が顕在化した時に、すばやく事業やサービスを展開できるよう、常に時代の変化に目を向け、潜在的な社会ニーズをいち早く見つけ出し、そこに対する積極的な先行投資によって市場を自ら創造する点が、当社の独自性であり、強みと考えています。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

アミタホールディングスの事業概要と特徴

概要

先程少しお話しましたように、社会全体を持続可能にする「社会デザイン事業」を展開しています。

具体的には、企業のサステナブル経営への移行戦略とその実践を統合的に支援する、循環型事業創出プログラム「Cyano Project(シアノプロジェクト)」と、産官学民連携による持続可能なまちづくり支援を行う「Co-Creation City(コ・クリエーションシティ)」を中核サービスとして提供しています。

アミタグループ 会社案内 より引用

事業における優位性

循環型サプライチェーンの市場創出と業務プロセスの代行

沿革でも少しお話ししましたが、当社は創業以来一貫して、顧客のサプライチェーンの持続性を高めるため、廃棄物(発生品)の100%リサイクルや環境認証審査サービス(サプライチェーンマネジメント)、環境管理業務のリスク対応などの市場を開拓し、その業務プロセスを代行してきました。

当社の強みは、「循環型サプライチェーン」を構築することで新たな市場を創造し、圧倒的な取引社数を獲得することで、より高度な循環を実現している点です。

先行投資型の経営によるブルーオーシャンの開拓は、投資回収に一定の時間を要する場合もありますが、このような先行者利益によって形成したビジネスエコシステムが、我々の競争優位性となっています。

アミタホールディングス株式会社 より提供

サステナブル経営への移行を支援するCyano Project

深刻化する環境問題や資源価格の高騰等による、グローバルサプライチェーンの不安定化等の影響を受け、企業のサステナブル経営への移行の動きが加速しています。

Cyano Projectは、顧客企業の持続可能な原材料調達や、循環型のビジネスモデルへの移行(モノから機能売り:サービサイジング)などを、戦略立案から実行・運営まで統合的に支援するサービスです。

その際に、サステナブル経営の重要な3要素である「サーキュラーエコノミー」「カーボンニュートラル」「ネイチャーポジティブ」の全領域を横断したビジネスモデルへの変革・移行を提案します。

部分的な最適化ではなく、事業活動そのものを持続可能にする「全体最適」を目指す点が特徴の一つです。

また、我々はシンクタンクとは異なり、Doタンクを標榜しています。

描いたビジョンが“絵に描いた餅”にならないよう、再資源化による代替資源の製造・供給や環境情報管理システムの提供、サステナビリティ関連業務の運営代行などを通じて、実行・運営に至るまで一気通貫での支援を提供します。

このような「領域横断」×「一気通貫」による徹底的な伴走支援で、他社との差別化を実現しています。

アミタホールディングス株式会社 より提供

持続可能なまちづくりを目指すCo-Creation City

現在多くの地域が、人口減少・雇用縮小・少子高齢化・社会保障費の増大といった課題に直面しています。

我々が提案する新たな地域モデル「Co-Creation City」では、地域住民・自治体・企業が三位一体となって「関係性の増幅」と「循環の促進」の基盤をつくることで、これらの課題を統合的に解決し、地域の関係性・多様性・文化性を豊かにし、持続可能なまちづくりの実現を目指します。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

Co-Creation Cityの一つの要素として、「MEGURU STATION®(めぐるステーション)」という互助共助コミュニティ型資源回収ステーションの開発・提供に取り組んでいます。

小学校区単位に1箇所を目途に設置するMEGURU STATION®は、地域住民の関係性を再構築する互助共助のコミュニティステーションであると同時に、家庭からの資源回収と、資源に紐づく情報収集(利用者の行動情報、回収資源の種類・量など)の機能を併せ持ちます。

また、自治体の財源にも好影響をもたらします。

自治体予算は環境、農業、福祉などの縦割りで決められますが、MEGURU STATION®ではあらゆる地域課題の解決が可能です。

例えば、地域における資源循環を促進することで、廃棄物の収集運搬費や焼却埋立費は低減され、外出機会の増加による健康増進を促すことで、社会保障費などのコスト削減にも繋がります。

このように資源循環によって環境を良くするだけでなく、人々の暮らしや自治体の財政状況も改善できるシステムを有することは当社の強みです。

人と資源と情報が集まる拠点|MEGURU STATION®|アミタホールディングス株式会社 より引用

現在、MEGURU STATION®は奈良県奈良市月ヶ瀬地域や福岡県大刀洗町など4自治体13箇所で運営しており、今後も展開数を拡大していく予定です。

アミタホールディングスの成長戦略

中長期ビジョン

アミタグループは、中長期ビジョン「エコシステム社会構想2030」を掲げています。

エコシステム社会とは、様々な生き物が相互に共存しながら一定の関係を維持する、持続可能な生態系システムに倣った社会の在り方です。

自然や人間関係が豊かになることを価値と定義し、その価値を増やす手段として、アミタは「もの・情報・気持ち」が循環する仕組みである「MEGURU PLATFORM(めぐるプラットフォーム)」の構築を目指しています。

MEGURU PLATFORMは主に、MEGURU STATION®と、MEGURU FACTORIESで構成されています。

MEGURU FACTORIESは、MEGURU STATION®から回収された資源を加工・再利用し、再生資源として企業等に安定供給するサーキュラーマテリアル製造所(循環資源製造所)です。

アミタグループはプラットフォームプロバイダーとして、企業のローカル調達を支援するとともに、資源に紐づく情報(ビッグデータ)を収集・分析・活用することにより、企業や自治体へ地域特性などを加味した需要予測を提供します。

アミタホールディングス株式会社 より提供

このビジョンの実現に向け、基盤整備期である2024年度から2025年度は業態改革を完了させ、社会デザイン事業の中核サービスであるCyano Projectの提供を拡大し、収益安定化を目指します。

2026年からの市場展開期では、Co-Creation City構想によってMEGURU STATION®の展開を進め、2028年からの市場拡大期でMEGURU PLATFORMの稼働を目指します。

2030年には、MEGURU PLATFORMによる事業を確立させ、エコシステム社会を実現します。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

Cyano Projectの提供拡大

Cyano Projectの提供拡大に向けて、①Cyano Projectの商品性向上、②マーケティングの強化に取り組みます。

まず、商品性向上についてお話します。

Cyano Projectの支援領域には、コンサルテーション・ソリューション・オペレーションの三つがあり、現在はソリューションに注力しています。

ソリューションの商品性向上に向けた取り組みとして、2024年4月1日に三井住友ファイナンス&リースグループと廃棄物マネジメント事業に関する合弁会社「サーキュラーリンクス株式会社」を設立しました。

両者が持つ環境・サステナビリティ領域の知見やシステムを用いて、ICT・BPOを通じた企業のサーキュラー化を支援する新サービスの開発を行います。

また、マーケティングの強化については、共感を軸とした顧客との長期的なパートナーシップを活かしつつ、啓蒙・広報・営業・販売を連動させるアミタ流のマーケティング戦略の再構築に取り組みます。

その他、MEGURU STATION®を活用した実証実験によって戦略や計画を具体化することで、顧客の本質的ニーズである循環型ビジネスへの移行を推進します。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

MEGURU STATIONの拡大と啓蒙活動

我々が掲げる2030年ビジョンおよびMEGURU PLATFORMの実装には、MEGURU STATION®の設置数拡大と、地域内で資源を循環させる仕組みづくりが重要になります。

そのために、新たなまちづくりコンセプトとしてCo-Creation Cityを自治体に提言し、環境や福祉など個別課題へのソリューションとしてではなく、まちづくり政策の実現手段としてMEGURU STATION®の設置拡大を狙います。

また、上記を推進するにあたり、企業や他の団体との連携も重要です。サーキュラーエコノミーに取り組む企業連合「J-CEP(ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ)」での活動を通じて、社内外の経営資源を効率的に活用し、価値を創出する取り組みを進めています。

さらに2024年4月1日に一般社団法人エコシステム社会機構(ESA:イーサ)を発起し参画しています。

ESAは人口減少・少子高齢化や新しい政策課題に直面する地方自治体と、新たなビジネスモデルの創出を目指す企業等が一体となり、統合的思考に立ってイノベーションを起こし、社会的価値を創出するプラットフォームとなることを目指す組織です。

当社は、ESAの立ち上げおよび参画を通じて、これまで以上に多くの自治体や企業と共創し、「エコシステム社会」の実現に向けた取り組みを加速させます。

注目していただきたいポイント

注目してほしいポイントとして大きく二つあります。

まず一つ目は、我々が創業から社会ニーズ、特に潜在的な社会ニーズを市場に繋げようと試行錯誤してきた点です。

社会課題はなくなることはありませんし、社会課題そのものも時代とともに変化していく中で、常に潜在的な社会ニーズの市場化に取り組んできたことが我々の競争力の根源なので、この点を理解していただけると嬉しいです。

二つ目は、循環というコンセプトにこだわり続けていることです。

現在、日本だけではなく世界的に見ても、限られた資源を使ってどのように高い付加価値と満足度を提供できるかということが問われています。

この問いに対しての我々の答えは、循環型社会の実現です。

この循環型社会の基盤となりうるのが、今我々が構築を進めているMEGURU PLATFORMです。

トレーサビリティの重要性が高まる中で、ひとつの製品をとってもリサイクルの比率や製品のCO2排出量など、環境負荷の低減についての情報が明確になることが求められます。

今後5年から10年の間に、このような情報が消費者に伝わる世界が来るはずです。

アミタホールディングス株式会社 2023年12月期 決算説明会資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

「出資・参画・利用」が投資に対する我々のコンセプトです。

投資家の皆様には、資金を提供してリターンを得ていただくだけではなく、アミタの事業に積極的に参画し、アミタが持つ経営リソースを利用して、自らの暮らしや地域社会、所属する企業にポジティブな変化をもたらすことにも関わっていただきたいと考えています。

これからも投資家の皆様との強固なリレーションをもとに、アミタのステークホルダー経営をご支援いただけると嬉しいです。

アミタホールディングス株式会社

本社所在地:〒604-0847 京都府京都市中京区烏丸通押小路上ル秋野々町535番地

設立:2010年1月4日

資本金:483,560,300円(2024年1月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2006年6月23日上場)

証券コード:2195

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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