※本コラムは2024年5月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ストレージ王はお客様にとって最も信頼できる収納ソリューションを提供し続ける会社です。
代表取締役の荒川 滋郎氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ストレージ王を一言で言うと
トランクルームという資産で利用者と投資家を繋ぎ、収納ソリューションを提供し続ける会社です。
ストレージ王の沿革
創業の経緯
2007年2月にコンテナ建設会社である株式会社デベロップが設立されました。
コンテナを使ったトランクルームは海上輸送用を転用しているケースも散見されますが、デベロップでは強度が高く建築基準法で認められている建築用コンテナに着目したことがきっかけです。
創業当初は資金繰の状況もあり、借地上に建築用コンテナでトランクルームを建設して、投資家に売却する事業を行っていました。
そして、投資家に売却したトランクルームの運営が必要なので、PM(プロパティマネジメント)専業の会社として2008年5月にストレージ王が設立されました。
PM専業の会社が必要となる背景としては、一つ一つの部屋が小さいトランクルームは初めて利用する方も多く、マンションやアパートと比べて管理の手間が煩雑であることです。
屋内型トランクルームの開発と上場
当社は創業以来、デベロップによるトランクルーム開発の伸長に合わせ成長してきました。2015年にはデベロップのコンテナ建築の顧客であった岡山の百貨店、天満屋グループのトランクルーム会社と合併し、拠点を増やしました。
数年前から、都心部ではマンションの部屋の広さが狭くなり、収納スペースの確保が難しくなっています。
そのためトランクルーム市場では、郊外立地のコンテナ型店舗に続いて、空調の効いた屋内型トランクルームのニーズが高まっていました。
そして屋内型トランクルームは都心マンションの近くにあり、一畳前後で月々1万円程度で借りることができること、建物の入口にセキュリティラインがあり、安心して利用出来ることから、普及していきました。
そこで当社は2020年1月に屋内型トランクルームの第一号案件として、川崎市に梶が谷トランクルームをオープンしました。
ストレージ王の事業概要と特徴
概要
当社はトランクルームに関する企画・開発・運営・管理等をワンストップで行っています。
現在、売上の約8割は不動産投資家に開発したトランクルームを売却する取引です。
また直近では、不動産投資家のニーズに合わせその他不動産取引を増やしています。
当社はメットライフ生命さんをはじめとする不動産投資家にトランクルームを売却していますが、彼らは様々な利回りの不動産を求めています。
そこで割安感のある物件を見つけた場合に当社が購入しておき、取引のある不動産投資家に売却するなどの事業にも取り組んでいます。
事業における優位性
運営力:安全面への配慮と高い専門性
当社はトランクルーム専用建築を行い、安全面等を遵守した設計を行ってきました。
特に屋外型コンテナに使用している建築用コンテナの遵法性の高さが特徴的です。
これまで屋外型コンテナはボルトを外せば簡単に移動できるため、「建築物として扱うことができるのか?」という議論もありましたが、安全性の問題から、ここ10年ほどで行政や国土交通省が指導を強化し、建築基準法が適用されるようになりました。
屋外型コンテナの一部には建築用に比べて耐久性が低い海上輸送用コンテナが使用されており、中には建築基準法に則っていない違法建築も見受けられます。
それに対して当社は遵法性を意識し、利用者と投資家に信頼していただけるようなトランクルームを作っています。
また創業以来、立地選定含めたノウハウを蓄積してきました。
長年トランクルームに特化して専門性を高め、地域や利用者のニーズを適切に捉えて開発を行っています。
例えば2020年に建築した梶が谷トランクルームなど、屋内型トランクルームの開発では、高クオリティで安全に使っていただけることをコンセプトとしています。
トランクルームというと薄暗い倉庫や物置のようなイメージがあるかもしれませんが、この物件の内装デザインは商業施設を手掛けた経験もある建築士が手掛けています。
利便性を高めるためにエレベーターを備え、床は全てカーペットで、女性が衣類の出し入れをしやすいクローゼットのような内装に仕上げています。
また、天井には埋め込み型のエアコンを設置し、サーキュレーターで風を回すことでカビの発生を抑制しています。
さらに断熱材を使用し、結露を防ぐための工夫も施しています。
そしてセキュリティも高く、契約者のみが入室可能で各所に監視カメラを設置する等、安全に荷物の搬出入、整理することができるようにしています。
仕入開発力・物件売却力
借地型の案件では初期投資が少ないこともあり、利回りが約18%と高利回りを実現しています。
土地を購入する場合、投資回収のために利回りが10%程度に留まりますが、借地型では土地購入の必要がないため、利回りが大幅に向上しています。
例えば郊外型に関しては、土地を手放したくない地主も多く、借地で提供するケースが多いです。
当社は敷地が100坪から150坪の敷地でも屋外型コンテナでトランクルームを作ることができます。
この大きさの土地ではファミリーレストランやコンビニエンスストアを作るだけの広さが無く、利用用途も限られてしまいます。
そこで地主にとっては借り手が見つからなかった土地を「トランクルームとして有効活用しませんか?」と提案できるため、競争力のある価格設定が出来ます。
このように比較的小さな土地でも開発が可能なため、仕入と開発に関しては、マンションデベロッパーや他の商業施設との競合が少ないです。
そして物件の売却に関しては不動産投資家と強固な関係を築いており、リピートしてトランクルームを購入する投資家に支えられています。
トランクルームの弱点は部屋が埋まるまでに時間がかかることですが、一度稼働すると安定し、解約率も低いことが特徴です。
例えばアパートやマンションの場合、10部屋のうち1部屋が空いてしまうと稼働率が10%下がりますが、トランクルームは100部屋あるうち1部屋が空いても稼働率は1%しか下がりません。
さらに水回りの設備は不要で、追加投資が少ないため安定性の高い投資商品です。
特にメットライフ生命さんは当社の物件を安定した投資対象、ボラティリティの低い不動産として判断していただき、梶が谷やときわ台の物件を購入しました。
彼らは値上がり益を狙うのではなく、安定的な利回りを求めて投資を行うタイプの投資家です。
通常は30億円以下の物件には投資していませんでしたが、10億円以下でも当社の物件を購入してくれています。
メットライフ生命さんは有力な不動産投資家であり、この売却実績が注目されて、当社物件を投資対象として検討していただける機会が増えています。
このように投資家からの需要や注目度が高く、リピーターも多いため安定的に物件を売却できることが優位性の1つです。
ストレージ王の成長戦略
成長するトランクルーム市場
民間の調査機関等によればトランクルーム業界全体で年率5パーセント程度の成長が見込まれています。
市場規模も約800億と、ここ10年で約2倍になっています。
アメリカではトランクルームが広く普及しており、世帯普及率が10%あります。これに対し日本の世帯普及率は全国で1%弱、東京エリアでも2%台です。
アメリカと日本の世帯普及率の差は市場の成熟度にもよりますが、生活習慣や土地の価格差にも原因があると思われます。
例えばアメリカの学生は、学年が変わるごとに寮を移動し、一時的にトランクルームを活用して荷物を預けるという習慣があります。
さらに車の普及率が高いため、少し離れたトランクルームへのアクセスも容易です。
また、アメリカでは都市部と郊外の土地の価格差が大きいです。
例えばロサンゼルスでは車で30分走るだけで土地の価格が1/10まで下がるというようなイメージです。
それに比べて日本では、学生時代に寮生活を送る学校が少ない、或いは都市部と郊外の土地価格の差がそこまで大きくないため、アメリカ等のトランクルーム先進国に比べてまだまだ普及率が低いと思われます。
今後も成長性の高いマーケットであることは確かですが、当社はお客様のニーズの変化や外部環境を意識したトランクルームの開発を進めていきます。
多様なトランクルーム開発
足元では、在来建築の建材の高騰や輸送費の値上がりによって建築費が上昇している上に、エレベーターの供給が逼迫しているため、コンテナ建築を活用したトランクルーム開発を強化しています。
2024年1月期は屋外型トランクルームの開発は3件でしたが、2025年1月期は27件の開発を見込んでいます。
また、新たに都心型木造案件を池尻で進めていく予定です。
これまでビル型の大きな物件を手掛けてきましたが、住宅街に近い場所で小さめの物件を作ることで、近所で歩いて荷物を預けるようなニーズにもアプローチしていきたいと考えています。
ただし、このような物件は投資額が大きい不動産投資家には購入されないため、節税や相続対策として購入する個人などをターゲットとしています。
今後も時代のニーズに合った多様なトランクルーム開発に挑戦していきます。
自社保有物件の増加
これまで開発した物件は主として外部売却して参りました。
基本的には不動産投資家や事業会社に売却し、その売却益やPMの手数料でビジネスを行ってきました。
しかし、非常に収益性の高い物件を開発し続け、高利回りを実現しているので、自社保有物件を増やすことで利益率を上げていきたいと考えています。
これまでの開発ノウハウを活かしながら、建築費等の市況を見据え、数年間保有する物件を増やしていきます。
2023年1月期の売上は32億円、2024年1月期は38億円まで伸ばしていますが、建築費の高騰により利益率が低下しているため、売上規模を拡大して利益額を確保する予定です。
今後は自己資産を増やし、売上が伸びなくても利益を伸ばせる構造に転換していきます。
協業体制の強化
2024年1月期には、アーバネットコーポレーションさん・バリュークリエーションさんとの業務提携や、タイムズモビリティさんとの営業連携を行いました。
バリュークリエーションさんの「解体の窓口」を通じての成約事例は未だございませんが、適宜不動産情報を共有していただいています。
「解体の窓口」のお客様の約2割の方が建物解体後の土地の売却を希望されていると伺っています。
これは例えば相続で譲り受けた不動産を自分では利用せず、建物を解体して土地を売却するという背景があるようです。
今後も繋がりを強化し両社のシナジーを生み出していきたいと考えています。
また、タイムズモビリティさんとは新規利用者の創出のための取り組みをしています。
この協業は2024年1月に下目黒の物件をオープンしたことがきっかけです。
下目黒は非常に人気のあるエリアで居住者も増え、新築マンションだと約50平米で1億円近い物件もあるようです。
更に下目黒近辺では駐車料金が高く、月極駐車場が一台5万円以上かかることもあるようです。
今後、都内では車を保有する人口の割合は減少していくと考えられるため、カーシェアと当社のサービスを掛け合わせることで利用者を増やせると考えています。
主にトランクルームは車で荷物を運ぶことが多いため、トランクルームの利用者にカーシェアを活用していただくことで、車を持たない層にアプローチできると期待しています。
注目していただきたいポイント
まず当社のビジネスは季節性のある事業で、土地の仕入れの関係から第4四半期に売上が集中しています。
第3四半期までは赤字で、最終的に黒字になるというパターンが数年続いてしまっています。
なぜこの現象が起きるのかというと、当社のビジネスモデルが大きく関係しています。
当社のビジネスモデルは、まず2〜3億円で50〜60坪の都内の土地を仕入れ、トランクルームを建て、投資家に売るサイクルです。
その2〜3億円で50〜60坪の土地の所有者は中小企業や個人が多く、所有する不動産の処分が年度末の決算をきっかけにすることも多いため、仕入れのタイミングが12月から3月に集中しています。
土地購入後、設計・建築を行うため1年程度の工期がかかります。
そのため、当社の決算期末である1月のタイミングで開発した物件の売却が決まることが多く、売り上げも第3四半期を超えたタイミングでの計上になってしまいます。
今後は年度内の平準化を図りたいと思いますが、期末に物件売却が集中していても、建築工程管理をしっかり行うことで事業計画をしっかり達成したいと考えています。
もちろん投資家の皆様には誤解が無いように適宜情報開示をしていきますが、季節性があるということはご理解頂ければ幸いです。
また、当社では利用者層のマーケティング活動に注力しています。
最近の事例では若い女性層にも注目しています。
例えば洋服をたくさん持っている方や推し活動をしている方にとってトランクルームのニーズは高まっていくと考えています。
足元では女性向け雑誌への記事を掲載する等、積極的な広報活動をしています。
今後はトランクルームを利用することで家の中が片付くという利便性を訴求し、入口のハードルを下げることで多くの方に利用してもらえるような情報発信を続けていきます。
従来の家電や夏物、冬物の衣類など季節ごとの家財の入れ替えに加え、防災備蓄品をトランクルームにしまって消費期限を超えないようにローリングストックすることができます。
様々な物品が値上がりしている昨今では、文房具や缶詰など日持ちのする日用品を買いだめして、ローリングストックすることで家計の節約もできます。
ぜひ、家財の保管だけでなく、トランクルームの様々な利便性にもご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
現時点で具体的にお伝えできないのですが、すでにいろいろな先と業務提携などの交渉を始めており、いくつかは今期中に行う予定で話を進めています。
当社の力だけでは解決できない生活上の不便や課題を解決するためにいろいろな会社と協業出来ればと考えています。
また今後もIR活動・広報なども積極的に行い、企業の経営状況・業界動向・内部の取組など可能な限り透明性を保ちます。
私たちのビジョンは、お客様にとって最も信頼できる収納ソリューションを提供し続けることです。
業界の動向や市場のニーズに柔軟に対応し、持続可能な成長を遂げるための戦略を進めています。
現在の業績は順調に推移しており、今後も新規事業の拡大やマーケティング戦略、技術革新を通じてさらなる成長を目指しています。
投資家の皆様の信頼に応えるため、透明性を保ちつつ、最大限の価値を提供することをお約束します。
今後ともストレージ王へのご支援とご期待を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
株式会社ストレージ王
本社所在地:〒272-0033 千葉県市川市市川南1丁目9番23号 京葉住設市川ビル4階
設立:2008年5月26日
資本金:260,928,200円(2024年6月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場(2022年4月27日上場)
証券コード:2997