【9204】スカイマーク株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。

スカイマーク株式会社はあらゆる人々に、安全で安心かつ高品質な航空サービスを、身近な価格で提供していく会社です。

代表取締役社長執行役員の本橋 学氏に事業戦略の変遷や今後の成長戦略を伺いました。

目次

スカイマーク株式会社を一言で言うと

「安全確保を前提に、高い運航品質とシンプルで心のこもったサービスを身近な運賃で提供する」航空会社です。

スカイマークの沿革

スカイマーク株式会社代表取締役社長執行役員 本橋 学氏

創業の経緯

スカイマークは、1990年代に本格化した航空規制緩和を受け設立されました。

それまでの日本の航空業界は「45・47体制」と呼ばれる制度のもと、航空市場における各社の事業分野の棲み分けが定められておりました。

しかし、規制緩和の流れを受け新しい航空サービスを提供する機運が高まりました。

この背景のもと、1996年にスカイマークエアラインズ株式会社(現:スカイマーク株式会社)が設立されました。

事業再生と再上場

初飛行は1998年9月19日の羽田-福岡線で、使用機材は中型機であるボーイング767-300ERでした。

当初は大手航空会社と競争する中で運賃競争が激化し、経営は厳しい状況に置かれました。

そこで2000年代後半に入り、ボーイング767から小型機のボーイング737-800へと機種を統一することで経営の効率化を図りました。

更なる業績拡大を視野に、国際線の就航を目指して、世界最大の乗客数を誇るエアバスA380を発注しましたが、投資負担は重く、経営は再び厳しい状況に陥りました。

そして2015年1月に民事再生手続を開始し、同年3月に東証一部上場を廃止、同年9月より新しい株主と経営陣のもとで事業再建に乗り出しました。

そして経営の効率化を行いながら、1年で営業利益を黒字化し、事業再生に努めました。

その後、コロナ禍による大きな打撃を乗り越え、2022年12月に東証グロース市場に再上場を果たしました。

上場時に調達した資金により省燃費機材の導入を進め、中長期的な成長を目指しています。

直近の2024年3月期には営業利益で約46億円を達成しています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

スカイマークの事業概要と特徴

概要

当社の運航便は国内線が100%を占めており、国内12空港、23路線に就航しています。

1日あたり150便程度、年間で約5万5千便を運航し、年間の利用客数は約794万人(2024年3月期実績)に達します。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

本邦最大である羽田空港を拠点として、大手航空会社のFSC(Full Service Carrier)や格安航空のLCC(Low Cost Carrier)とは異なった独自のポジショニング戦略を展開しています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

事業における優位性

羽田空港での高いポジショニング:国内高収益路線に注力

羽田空港を主要拠点として、国内高収益路線に特化した運航体制が特徴です。

羽田空港は世界有数の旅客数を誇り、都心からのアクセスが非常に良いため、高い競争力を持っています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

当社の運航便数の約半数が羽田発着便です。

さらに、大きな後背人口を有する茨城空港においてのシェアは100%で、国内線は全てスカイマークの便となっています。

また、神戸空港においても国内線のシェアは約70%を占めています。

このように国内線に注力し、羽田・茨城・神戸・福岡といった当社が強みを有する拠点で運航を行っています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

FSC・LCCとの差別化:高品質なサービスを身近な価格で提供

リーンなオペレーションを背景に、高品質なサービスを提供しつつ、手頃な価格を実現していることが特徴です。

一般的に大手航空会社は搭乗日が近づくほど運賃が高くなる傾向にありますが、当社は相対的に手頃な運賃を提供するような価格設定をしています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

また「飛行機は遅れるもの」というイメージをお持ちの方が多い中で、当社は2015年の新体制に移行後、定時運航を徹底し、高い定時性・低い欠航率を実現しております。

例えば、国土交通省が公表する「航空輸送サービスに係る情報公開」における国内定時運航率順位では、2017年から6年連続で1位を達成しています。

また、機内サービスなど高いサービス品質を提供し、公益財団法人日本生産性本部サービス産業生産性協議会が公表するJCSI(日本版顧客満足度指数)調査における「顧客満足」においても、数年にわたってトップクラスの評価を維持しています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

この高品質なサービスを実現している理由は、当社の組織構造にあると考えています。

一般的に大手航空会社は、グランドハンドリング業務(機材の整備や搭乗客のチェックインなど)を、子会社や委託会社が行っています。

当社は2,500人規模の会社ですが、基本的には発着に関わるオペレーションを自社で行うことで、素早い情報共有や円滑な意思疎通を可能にしています。

そして、パイロットがコックピットに入るタイミングを早めたり、乗客の搭乗順序に工夫を凝らしたりなど、細かな改善を全社で徹底することで定時性を高めています。

高いコスト効率性:B737-800の単一機材運用

当社は座席数が177席のボーイング737-800という機材に統一しています。

機材を統一したことで、部品や乗務員の訓練などのコストは複数機材を運航することに比べて抑えることができます。

特にパイロットに関しては1機種のライセンスのみで対応できることから、大きなコストメリットがあります。

また、航空機の稼働効率を高めるために多頻度運航を心掛け、当社の主要空港である羽田路線の追加定期便などを活用して運航便を増やしています。

さらにFSCと同水準の機内サービスを提供しつつも、ラウンジサービスやマイレージサービスを提供せず、基本機能に注力することで、コストを抑制しています。

このため、他社に比べてユニットコストを低く抑えることができ、高いコスト効率性を実現しています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

スカイマークの成長戦略

市場環境とスカイマークの現状

現在、国内線航空市場のビジネス需要はコロナ前の水準に完全には戻っておらず、回復率はおおむね70%から80%に留まっています。

しかしながら、レジャーや親族・友人訪問、そして推し活といったノンビジネス需要は拡大傾向にあります。

特に、近年の円安傾向も相まって、日本人の旅行需要が海外旅行から国内旅行にシフトし、インバウンド需要も増えています。

ポストコロナの時代において、国内旅行への関心が高まっており、この傾向は今後も続くと予想されます。

こうした市場環境の変化は、国内需要をターゲットとしている当社にとって追い風だと考えています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

ポストコロナの利益成長を導く事業戦略

成長のステップは三段階で考えています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

まず一段目は、現状の機材数29機を活用し、国内需要を取り込みながら、サービス品質の向上と単価の引き上げを通じて収益性を高めていく戦略です。

お客様へのサービス品質を上げながら、提供価値に応じた運賃の引き上げに取り組んでいます。

二段目は、羽田・神戸・福岡の発着枠の拡大に応じた機材数の増加と2026年3月期第2四半期から導入を予定している省燃費機材(ボーイング737-8)によるコスト削減です。

最終段階は、ボーイング737-10の導入による羽田幹線の取りこぼし需要の獲得です。

ボーイング737-10は2027年3月期以降に導入予定で、座席数は210席と既存の機材に比べて約19%増加します。

使われている部品も既存機材やボーイング737-8との互換性が高く、整備コストも大きく変わりません。

これを高い搭乗率を誇る羽田路線に就航させることで、高い搭乗率を維持し、需要を確実に取り込んでいきます。

これらの新型機材はエンジン性能が向上し省燃費な機材なので、かかるコストが削減でき、売上・利益を伸ばしていくことができると考えています。

スカイマーク株式会社 2024年6月20日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

品質向上施策:マイページサービスのリリース

マイページサービスのリリースは当初予想していた以上の反響がありました。

2024年2月14日にリリース後、6月9日時点では登録者数は25万人を超え、順調に登録者数が伸びています。

マイページでは複数の予約を一覧で確認できるなどの機能を追加し、予約が簡便になったことで、お客様はストレスフリーに利用していただけるようになりました。

お客様のデータを蓄積することで、1to1マーケティングやデジタルマーケティングに活用できると考えています。

今後はデータを活用しながら、CRMツールやMAツールの活用も視野に入れ、お客様に提供する価値を向上させていきます。

スカイマーク株式会社 2024年3月期 決算補足説明資料 より引用

機材数の増加と省燃費機材の導入

機材数の増加に関しては空港によって状況が異なります。

例えば、羽田空港や福岡空港のように発着の数が多く混雑している空港では、航空会社によって1日あたりの発着回数が決められています。

これを発着枠と呼んでいますが、当社はこの枠を更に獲得していく必要があります。

特に福岡空港については、現在は一本の滑走路ですが、2025年3月末に二本目の滑走路が完成予定です。

今後、空港としてのキャパシティも増加すると見込んでおり、増枠に向けて積極的にアプローチしていく方針です。

また、神戸空港はこれまで、関西空港や伊丹空港との兼ね合いもあり、発着枠は1日80枠と制限されていました。

2025年には、約1.5倍の120枠に増枠が予定されており利便性がさらに高まり、利用者数も伸びると考えているため、ネットワークの拡大を検討してまいります。

このように発着できる機材数を増やしながら、各空港での戦略を進めてシェアを高めていきます。

注目していただきたいポイント

繰り返しになりますが、当社は大手航空会社と全く遜色ないサービスを、3割ほど安い運賃で提供していると自負しています。

まずは、FSCと同水準のサービスを実感していただき、スカイマークの魅力や成長可能性を肌で感じていただきたいと考えています。

現在、世界的なサプライチェーンの混乱により、航空機の調達がますます困難になってきています。

そこで、当社はその先を見据え、必要な機材を確保しながら成長のための基盤を着実に築いています。

さらに、人手不足が深刻化する中でも、当社は高い求心力を持っています。

ワンチームで目標に向かって全社員が一丸となって努力していくことが必要です。

この企業カルチャーが今後の成長を実現する大きな原動力となると信じています。

当社の高品質なサービスとそれを実現する事業基盤に注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

これからもお客様の気持ちに寄り添いながら、運航サービスの改善およびネットワーク拡充を進めてまいります。

スカイマークを何度もご利用いただける、お客様に「スカイマークが良い」と感じていただける航空会社を目指します。

多様なメンバーと共に挑戦と努力を重ね、さらに強固な経営基盤を築き、磐石な企業カルチャーを育んでいく所存です。

今後とも、スカイマークへのご支援を賜りますようお願い申し上げます。

スカイマーク株式会社

本社所在地:〒144-0041 東京都大田区羽田空港3丁目5番10号 ユーティリティセンタービル 8階

設立:1996年11月12日

資本金:1億円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2022年12月14日上場)

証券コード:9204

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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