【2820】株式会社やまみ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月13日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社やまみは大豆食品の提供を通じて、お客様に信頼される価値ある企業を目指しています。

代表取締役社長の山名 徹氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社やまみを一言で言うと

大豆からのイノベーションを起こす会社です。 

やまみの沿革

株式会社やまみ代表取締役社長 山名 徹氏

創業の経緯

当社は先々代の社長、つまり私の祖父が創業しました。

事業をすることが好きだった人で、八百屋をやったり、尾道市でレジを一番に入れたなどと聞いています。

そして、チルド製品の配送効率を向上させるために買収した会社に偶然、豆腐屋が付随していたことが豆腐事業の始まりでした。

結果的に豆腐事業が残り、現在に至っています。

大量生産・自動化の導入

2000年に現会長の父が専務から社長に就任した時期が大きな転換点でした。

当時、売上は4億5000万円でしたが、債務超過の状態にありました。

そこから得意先を回り、「やまみに何ができますか?」とニーズを把握しながら、2000年に量産機械を導入しました。

これにより、賞味期限の延長やコストパフォーマンスの高い自動化ラインの整備を進めました。

私は2022年に社長に就任しましたが、大量生産・自動化の方針は変えず、さらに自動化とIoT技術の導入を進めています。

そして生産の効率化と商品の集約化を図り、より競争力のある体制を築いています。

やまみの事業概要と特徴

概要

量販店やスーパー向けに豆腐製品を製造・販売しています。

また、一部は中食の惣菜工場やコンビニのベンダーなどの業者向けにも販売を行なっています。

ニッチな製品販売など、小口取引を行わず、大量生産した製品を販売できるチャネルを活用して販路を拡大させています。

エリアは西日本エリア中心に販路を拡大させていますが、近年は関東にも進出しています。

製品に関しては豆腐や油揚げなどを中心に、「簡便、小分け、時短、お得」というキーワードで開発しています。

事業における優位性

分野調整法による恵まれた事業環境と高いポジショニング

豆腐業界はまだ寡占化が進んでいない状態です。

具体的には「分野調整法」という、中小企業の経営に悪影響を及ぼすおそれのある大企業が新たに参入することを規制する法律が日本国内を対象に定められていることが大きく関係しています。

主に豆腐やラムネなどが分野調整法の対象品目となっています。

そのため、大企業が参入せず、地域の豆腐屋さんや小規模の豆腐メーカーが多いのが現状で、豆腐業界には大量生産できる体制を整備できる企業はほとんどありません。

そこで当社は量産体制を確立し、業界内でのポジショニングを高めています。

例えば、機械メーカーに豆腐をパック詰めする機械を依頼しても、豆腐業界の特有の機械は存在しないため断られてしまうケースが多いです。

一方で、飲料メーカーに供給している飲料の充填装置は技術革新が進んでおり、1時間で4万〜5万本生産できる機械があります。

そこで当社は、飲料メーカー用の機械を作っているメーカーに掛け合って、「お豆腐1万丁ならいけますか?」と少し要求を落として依頼します。

他業界で導入している機械をカスタマイズして開発していただいています。

このように、大量生産設備をいち早く導入し、低価格で高品質の豆腐製品の提供を実現して、業界内での寡占化を図っています。

自動化と大量生産による効率化と品質向上

2000年から自動化する機械を入れ始め、資金調達を行なった2016年ごろから本格的に導入を進めました。

全体的に豆腐業界自体が遅れていることもあり、他業界での自動化・機械化を後追いで導入しても、かなりの効率化に繋がっています。

そこで当社は、他業界での技術革新を参考に常に効率化できないか、生産性を向上させることができないかを常に考えています。

また、豆腐を製造するには、大豆の選別やすりつぶし、状態管理、絞り具合の調整など、職人技ともいえる多くの工程が求められます。

これらを可能な限り自動化し、マニュアル化しながら、職人の技術を超える品質を実現するシステムを構築し続けています。

実際に、数年前まではお取引様からは「安い豆腐メーカー」というイメージを持たれていましたが、現在は「良質な製品を便利でお買い得な価格で全国に提供できる豆腐メーカー」として認知されています。

やまみの成長戦略

豆腐市場動向

豆腐は健康食品であり、伝統的な食品でもあります。

少子高齢化社会において、高齢者の方々は豆腐を好んで食べていただけますし、健康意識の高まりもあり、豆腐の需要は堅調だと考えています。

株式会社やまみ 2024年6月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

そのため人口は減少していますが、豆腐の需要全体としては横ばいで推移しています。

そして事業承継の問題や経営維持が難しい場合も多く、業者数は減少しているため、残存者利益を享受しながら、市場シェアを拡大していくことができると考えています。

株式会社やまみ 2024年6月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

シェアの拡大

将来的には関東市場を中心に拡大し、ある程度の売上シェアを確保できたら、海外市場で健康食品としての展開を進めていきたいと考えています。

引き続き中国、四国、近畿エリアを深耕していきますが、より拡大余地のある関東エリアに注力していきたいと考えています。

株式会社やまみ 2024年6月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

当社の製品は他社製品よりも「便利でお買い得」という特徴があるため、お店の利益にも貢献します。

そのため、一度当社の製品が導入されると、お客様からの支持が高く、スーパー側からも外せない存在になります。

また市場のニーズに応じた新製品の開発も行なっています。

ただし当社が提供しているのは奇抜なものではなく、多くの方に手にとっていただけるベーシックな豆腐や油揚げなどで、価格が安く、賞味期限が長い製品です。

そのような中で新製品に関しては、例えば油揚げは味がしみやすく、三枚や四枚入りで賞味期限が12日も持つ(通常は4〜5日)ものもあります。

これは全自動衛生ラインをロボット化することで実現しました。

賞味期限が長いため、スーパーも喜んで仕入れてくれますし、売り場での値引き率にも貢献しています。

このように、大量生産・自動化でコストメリットが生まれる製品をターゲットに開発していきます。

新製品の開発を行いながら、ターゲットエリアに訴求できる製品を販売し、製品力と供給力でシェアを拡大させていきたいと考えています。

株式会社やまみ 2024年6月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

収益性の向上

収益性の向上のためには、コストの削減と生産性の向上が大切です。

まず、コスト削減の観点から、足元では工場のDX化を進めています。

具体的にはIoTやカメラを活用してデータの可視化や温度データの収集を行い、省力化・省人化を目指しています。

また、生産性については効率化を行うことで高めていきます。

少し細かい話にはなってしまいますが、例えば、仕入れや棚卸しの際のデータ入力ミスを防ぐシステムを導入し、棚卸しの確定後にデータが自動的に反映される仕組みを作っています。

これにより無駄な作業を削減し、事務の人員による二重確認が不要になります。

株式会社やまみ 2024年6月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

また、人材の育成も重要です。

技術力や従業員のスキルが向上することで、生産性や品質が向上すると考えています。

機械はお金を出せば買えますが、人材の育成やノウハウの蓄積は一朝一夕にはできません。

そのため、しっかりと従業員に利益を還元しながら働きやすい環境を整え、人材の確保と育成に注力していきたいと考えています。

注目していただきたいポイント

投資家の皆様からは、豆腐業界の企業はどれも似たように見えるかもしれません。

しかし、当社は他社にはできないレベルの高みを目指しています。

そして、独自の強みと差別化戦略を通じて、今後大きく成長するポテンシャルを秘めています。

現在、当社はその飛躍の一歩手前まで来ていると感じています。

当社の目指す姿は、単なる豆腐メーカーから、大豆食品全般を手がける企業へと進化することです。

そのために、自動化やDX戦略を駆使し、生産効率の向上と新製品開発に取り組んでいます。

ぜひ、当社の独自性と成長性に注目していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、従来の豆腐製造業から大豆食品全般を手がける企業へと変革し、業界にイノベーションを起こします。

今後、業界をリードする存在となるべく努力してまいります。

投資家の皆様には、当社の成長と変革を応援していただけると幸いです。

株式会社やまみ

本社所在地:〒729-0473 広島県三原市沼田西町小原字袖掛73番地

設立:1975年1月29日

資本金:12億4,572万円(2024年6月時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2016年6月17日上場)

証券コード:2820

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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