【5244】株式会社jig.jp 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月28日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社jig.jpはライブ配信サービス「ふわっち」を運営するとともに、利用者に最も近いモバイルソフトウェアを開発し続けています。

代表取締役社長CEOの川股 将氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社jig.jpを一言で言うと

利用者に最も近いモバイルソフトウェアを次々と開発するエンジニア主導のIT企業です。 

jig.jpの沿革

株式会社jig.jp代表取締役社長CEO 川股 将氏

創業の経緯

当社は2003年に創業しました。

創業者の福野はエンジニア出身で、現取締役の岸と赤浦の三名で立ち上げ、当初はガラケー向けのサービスを提供していました。

そして、2004年7月には開発体制を強化するため、福井県鯖江市に開発センターを設置しました。

また、同年10月には携帯電話用PCサイト閲覧ブラウザ「jigブラウザ」をリリースし、過去数百万人のユーザーを獲得したサービスが生まれました。

しかしスマートフォンの台頭と共にガラケー向けのサービスの需要が減退したので、スマホアプリの開発にシフトしていきました。

「ふわっち」のリリースと上場

様々なソフトウェアやアプリを開発していく中、現在の主力事業でもあるライブ配信サービス「ふわっち」を2015年にリリースしました。

「ふわっち」が市場にマッチし成長していく中、上場を目指していたこともあって、内部統制や管理体制を整える必要がありました。

そこで、私は2021年に経営企画を主導していくため、当社に入社しました。

そして、2022年12月に東証グロースに上場し、認知度と採用力を強化することができました。

上場後はこれまで以上に優秀な人材を採用することができ、時代の流れを見ながら新たな技術開発にも取り組み、更なる成長を目指しています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

jig.jpの事業概要と特徴

概要

主力サービスの「ふわっち」は、誰でも気軽に動画・ラジオの生配信ができるライブ配信サービスです。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

当社は、「ふわっち」の中で視聴者に課金アイテムを販売することで収益を得ています。

ライブ配信では、視聴者は配信を盛り上げるために、アニメーション付きのアイテムを購入して配信者を応援します。

そして、配信者は視聴者からの課金アイテムの使用や視聴、コメントなどの盛り上がりに応じてポイントを獲得し、そのポイントを収益として受け取ることができます。

当社は配信者と視聴者の双方にとって魅力的な体験を提供しつつ、配信者に適切な収益を分配することで、継続的なビジネスモデルを構築しています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

サービス開発力を支える独自の環境

当社の競争力の源泉は、当社のエンジニアの持つ時代の変化に合わせたスピーディなサービス開発力です。

創業者の福野は福井高専出身で、鯖江に開発センターを設置していることもあり、多くの後輩が入社しています。

また、高専生向けのインターンを開催しており、北海道から沖縄まで全国の高専から優秀な人材が集まっています。

そして事業の成長に合わせ、毎年10名を目標に若いエンジニアを採用しています。

柔軟な視点を持つエンジニアが入社してくるため、ビジネスの発想は柔軟で、開発のリサーチ力も高いため、非常に心強い存在となっています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

独自ポジションを確立させた「ふわっち」

配信サービスにおいて大切なのは、配信者と視聴者の定着です。

「ふわっち」の配信者の多くはアマチュアで、特に30代から40代の年齢層に人気があります。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

「ふわっち」のスタート時には、国内ではニコニコ生放送、ツイキャス、SHOWROOMという3つのライブ配信サービスがありました。

ニコニコ生放送とツイキャスには当時、配信者が現在の配信の盛り上がりに応じて収益を得る手段はなく、SHOWROOMのみが視聴者からの課金アイテムなどの盛り上がりを通じて収益を得られる仕組みを提供していました。

しかし、SHOWROOMはアイドルを主体としたプラットフォームであり、芸能人ではない一般の方が収益を得ることができるプラットフォームはありませんでした。

そこで、ニコニコ生放送やツイキャスの中心的な配信者であった30〜40代の年齢層のユーザーをターゲットとして捉え、積極的に勧誘し当社サービスを利用していただいた結果、30〜40代の方々が集まりやすいプラットフォームになりました。

この特徴的なターゲット戦略が競争力の源泉となっています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

「ふわっち」が選ばれる理由

配信者からも視聴者からも選ばれている理由の一つに、「気軽に楽しめる」というポイントがあります。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

まず、配信者はふとした時に気軽に配信を始められ、「月に何時間の配信をしなければならない」というような配信時間の縛りがなく、競合の配信サービスに比べて心理的なハードルが低いことが特徴です。

また、競合他社に比べて配信者への還元率は高く、継続的に利用いただける理由の一つとなっています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

一方で、視聴者は気分転換や癒しを求めて配信を見ています。

配信されるコンテンツは日常を映し出すものが多いため、雑談を聞いたり、日常のドキュメンタリーを見るような感覚で楽しんでいます。

さらに、ターゲットの30〜40代の方々は仕事をしている方が多く、帰宅した後の19時以降に配信・視聴しています。

配信サービスはコロナ禍に一過的に激増したと思われがちですが、コロナ禍以降も利用者動向に変化は無く、継続して着実に成長しています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

コミュニティ化による求心力

実のところ、他社が提供しているライブ配信サービスと機能面で大きな差はありません。

そのため、配信者と視聴者が織りなすコミュニティが重要になってきます。

特に30〜40代のユーザーは、成熟した方々が多く、新しいサービスに乗り換えることを面倒に感じるため一度始めていただくと長く利用していただけます。

また、経済的にも余裕のある方が若年層に比べて多いため、一人当たりの利用金額を増やす余地もあります。

そして、サービス内の滞在時間が長く、配信が好きなコアな視聴者が利用しています。

配信者と視聴者、さらには視聴者同士の間でもコミュニティが築かれており、「ふわっち」は彼らのプラットフォームとして活用されています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

jig.jpの成長戦略

今後の収益及び利益拡大ポテンシャル

「ふわっち」の売上高は、視聴者でもある課金ユニークユーザー数(課金UU数)とユーザー1人あたりの平均課金額(ARPPU)で構成されています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

そのため、当社は主要KPIを月次課金UU数と月次ARPPUを設定し、進捗を管理しています。

足元ではどちらも堅調に推移しており、今後も更なる成長が見込めます。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

そして、配信者と課金者は連動する傾向があるため、配信者の獲得も非常に重要な指標です。

ライブ配信が初めての方だけでなく、競合他社のプラットフォームから多くのユーザーが足元でも移ってきており、彼らを定着させることで課金UU数を今後も増やしていけると考えています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

ライブ配信事業の基本戦略

課金UU数を増やすための施策として、広告を活用した新規ユーザーの獲得を行っています。

さらに、無料視聴者に対してサービスの楽しみ方や課金アイテムの使用体験を知ってもらうため、無料アイテムの付与やモチベーションを高める施策を講じています。

また、イベントの開催は課金アイテムの利用を増やすための施策として有効ではありますが、無理なく楽しめる範囲に止めることが必要です。

ARPPUを適切にコントロールし、あくまでも持続的な成長を目指した運営を行っていきます。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

隣接新規領域における多様化戦略

サービス開発力を原動力とし、3つの隣接新規領域への事業展開によって収益源の多角化及び更なる成長を目指しています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

まず、新たな配信者を獲得するための施策として、AIバーチャル配信機能を導入しています。

これまでラジオ配信を行ってきたユーザーが動きのある配信を行うことでより面白い配信を実現したり、顔出しをしたくないユーザーの需要を取り込んでいきます。

このように、新しい配信スタイルを提供することで、需要の異なる新たな課金UU数を増やせると考えています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

また、配信者のグッズ販売を容易にできる場をブラウザ上で提供することで決済手数料を大幅に下げ、利益率の向上に努めるとともに、配信者を含むクリエイターの収益経路の提供を行います。

先ほどもお話ししました通り、当社のエンジニアは情報感度が高く、スピーディな開発が可能なので、この強みを活かしながら新たな仕組みを開発していきます。

そして、新規事業としてVTuber事業を開始しており、「ふわっち」とは独立した形で展開しています。

VTuber事業は、YouTubeやTikTokのようなグローバルなプラットフォームでの収益機会を狙っており、将来的には「ふわっち」とのシナジーも期待できます。

大規模なプラットフォームで活躍する配信者を育成し、企業としての成長をさらに加速させていきたいと考えています。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

ライブ配信事業においては、「中長期的な成長をどこまで信頼できるか」が重要なポイントです。

投資家の皆様には、「ふわっち」が30代〜40代という強いユーザー層を対象にしており、コミュニティで培われているカルチャーがユニークであるが故に、成長できていると知っていただきたいです。

彼らも将来的に40〜50代となり経済的にも時間的にも余裕が出てくるため、中長期的にわたってサービスを利用していただける可能性が大いにあります。

また、アマチュア配信者が多いため、配信者になるハードルは低く、配信者の数はロングテールに増えていくと考えています。

そして「ふわっち」は、一時的なブームに依存しているわけではなく、長期にわたってインフラとしての役割を果たしていくサービスへと成長しています。

今後の安定した成長を実現する基盤があることにご注目いただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

まず、ライブ配信事業の長期的な成長に期待していただきたいと思います。

ライブ配信が社会のインフラとして重要な役割を果たすために、マス層に対しても積極的にアプローチし、さらなる成長を図っていきます。

また、近年では新規事業にも注力しており、新たな事業の柱を二本、三本と立ち上げています。

最近ではApple Vision Proデバイス向けのアプリ提供を開始しました。

株式会社jig.jp 2024年3月期決算説明資料及び 事業計画並びに成長可能性に関する事項 より引用

当社は、単なるインターネットサービス企業ではなく、テクノロジーの最先端で勝負するIT企業として、数十年、数百年と続く企業を目指しています。

今後とも、皆様からの温かいご支援をお願いいたします。

株式会社jig.jp

本社所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-23-5代々木イースト4階

設立:2003年5月28日

資本金:877百万円(2024年6月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2022年12月22日上場)

証券コード:5244

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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