【7774】株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングは「再生医療をあたりまえの医療に」をビジョンに掲げ、「自家細胞を用いた再生医療のプラットフォーマー」として新しいビジネスモデルの構築と普及に取り組んでいます。

代表取締役社長執行役員の畠 賢一郎氏に事業の変遷や今後の成長戦略を伺いました。

目次

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリングを一言で言うと

「自家細胞を用いた再生医療のプラットフォーマー」です。 

ジャパン・ティッシュエンジニアリングの沿革

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング代表取締役社長執行役員 畠 賢一郎氏

創業経緯

私は広島大学歯学部出身で、1995年に名古屋大学大学院の博士課程を修了し、口腔外科医として臨床に携わっていました。
大学院時代の研究テーマは、患者の細胞を培養し臓器や組織を作製して移植するという、今でいえばまさに「再生医療」に取り組んでいました。

なかでも、口腔粘膜細胞を培養して、完成した細胞シートを移植するといった研究を行っていましたが、将来はこうした細胞培養による移植組織を企業が作製する時代が来るだろうとも思っていました。

そのような状況下、1999年に愛知県の関係者のご指導の下、株式会社ニデックを中心に、INAX(現 株式会社LIXIL)、富山化学工業(現 富士フイルム富山化学株式会社)、セントラル・キャピタル(現 三菱UFJキャピタル株式会社)が共同出資する形で当社が設立されました。

私は、設立当初から名古屋大学の者としてお手伝いをしていましたが、2004年に研究開発部長として正式に入社、その後、2017年に代表取締役社長執行役員に就任しました。

再生医療をあたりまえの医療にする

創業時は再生医療という言葉もなく、細胞を用いたビジネスの前例はありませんでした。

当初は、培養の受託サービスという医薬品や医療機器とは異なるビジネスモデルを想定していましたが、結果として医薬品、医療機器と同じく製品を創り上げ治験を実施し、国からの承認を得て製造販売する許認可事業となりました。

創業から8年程経った2007年に日本初の再生医療等製品である自家培養表皮「ジェイス」の製造販売承認を取得、これが当社の再生医療製品事業の始まりでした。

2012年には山中伸弥教授がiPS細胞研究でノーベル賞を受賞され、再生医療に注目が集まりました。

そして、2014年には医薬品医療機器等法、再生医療等安全性確保法が施行され、従来の医薬品と医療機器に加え、「再生医療等製品」という新しいカテゴリーが作られました。

「再生医療をあたりまえの医療に」する第一歩が踏み出されたのです。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング より提供

これにより、日本での再生医療の製品化が加速し、2024年5月現在、日本国内で承認されている再生医療等製品は20品目となりました。

うち5品目は当社製品です。

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ジャパン・ティッシュエンジニアリングの事業概要と特徴

概要

再生医療製品事業をコアビジネスとして、再生医療受託事業、研究開発支援事業の3事業を展開しています。

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再生医療製品事業において製造販売している製品には、重症熱傷治療などに使われている自家培養表皮「ジェイス」という国内第1号の再生医療等製品をはじめ、自家培養軟骨「ジャック」、自家培養角膜上皮「ネピック」、自家培養口腔粘膜上皮「オキュラル」、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」があります。

これらの製品はすべて患者さんご本人の細胞を少量いただき、当社で培養し、患者さんご本人へ移植する製品です。

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また、再生医療受託事業では、自社製品の開発、製造販売で培った知識やノウハウを活かし、大学や医療機関の先生方が持つ開発シーズを迅速に社会実装するための支援を行っています。

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研究開発支援事業では、研究用ヒト培養組織「ラボサイトシリーズ」を販売しています。

この製品はヒト細胞を体外で培養して作製した組織モデルであり、日用品、医薬品、化粧品などの開発における動物実験の代替として使用されています。

現在欧州をはじめとする世界中で動物実験廃止の動きが加速しており、研究用ヒト培養組織への需要が高まっています。

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このように、当社は高度な細胞培養技術を活用することで、再生医療等製品の開発、製造販売を行い再生医療の社会実装に取り組んでいます。

事業における優位性

再生医療等製品の承認取得

当社が製造販売する自家の再生医療等製品は、医薬品や医療機器とは異なり、患者さんご自身の細胞を用いるため原材料の品質が一定ではありません。

それを一定の品質を満たす「製品」として作り上げるためにはノウハウが必要です。

当社はこれまで5つの再生医療等製品を作り上げ、製造販売承認を取得しました。

今後も新たな製品を生み出し続けていきます。

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自家細胞のプラットフォーマー

当社は研究開発、薬事開発、製造、販売、製造販売後対応まですべての機能を保有しており、25年以上にわたって医療現場の先生方と連携することで、有望な再生医療の「種」を製品化するノウハウを培ってきました。

これまで3,000症例を超える患者さんに、患者さんご自身の細胞を用いた製品を安定供給してきた実績があります。

この経験とノウハウを生かし、自社で開発するだけではなく、受託開発ができることも大きな強みです。

その実績を、開発シーズを持つ大学や医療機関の先生方から高く評価いただいています。

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ジャパン・ティッシュエンジニアリングの成長戦略

再生医療製等品事業の成長戦略

当社のこれまでの製品は既存の治療法がない希少疾病の患者さんを対象とした製品でした。

これからはより多くの患者さんが悩む疾患に対する製品を提供することで市場を拡大していきます。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング より提供

白斑向け自家培養表皮の上市

2025年3月期を上市目標としているメラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」は、これまで治療法が確立されていなかった難治性の白斑患者さんを対象としています。

白斑の中で多くを占める尋常性白斑の患者数は、約15万人といわれています。

これまでの製品と比べると白斑は大きな市場であり、より多くの患者さんを救える可能性があると考えています。

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乾燥他家(同種)培養表皮の上市

2026年3月期を上市目標としている乾燥他家(同種)培養表皮「Allo-JaCE03」は、II度熱傷を対象とした治験が終了し、製造販売承認申請に向けて準備中です。

これは当社初となる他人の細胞を用いた製品であり、乾燥して長期保存しておくことができるため、事前に大量に製造しておき、必要な時に使えるという特徴があります。

そのメリットを活かし創傷治癒に貢献できる製品です。

自家細胞製品とは異なり、海外展開も可能な製品であると期待しています。

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自家培養軟骨の変形性膝関節症への適応拡大

2026年3月期を上市目標としている自家培養軟骨「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大は、治験が終了しており、2024年6月に一部変更承認申請を行いました。

ジャックは2012年に承認を取得しましたが、適応対象は膝の外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎で4㎝²以上の欠損に限られており、高齢の方々がお悩みの変形性膝関節症には使用できません。

適応拡大を申請している変形性膝関節症は患者数が約1,000万人と言われています。

また、ジャックは販売後の全例使用成績調査でも、承認時の有効性と安全性が確認された整形外科領域で唯一の再生医療等製品です。

適応拡大により更なる成長が期待できる製品です。

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再生医療受託事業の成長戦略

当社は自家細胞を用いた再生医療のプラットフォーマーとして、新たな治療のシーズを持つ大学や医療機関と協力し、多くの技術の社会実装を後押しすることで産業化を促進していきます。

また、帝人グループとして千葉県 柏の葉に構築した再生医療プラットフォームを活用しながら、がんをはじめとする未解決な疾患への革新的治療法の創出を目指します。

そして、医療現場の声をふまえた新たな価値創造をし続けることで、再生医療等製品の開発による好循環を生み出していきます。

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研究開発支援事業の成長戦略

欧州をはじめ世界中で動物実験代替の動きが加速しています。

当社製品を用いた皮膚刺激性試験及び皮膚腐食性試験、ならびに眼刺激性試験は標準法のひとつとして経済協力開発機構(OECD)の試験法ガイドラインに収載されており、日本国内においてはトップシェアを占めています。

今後より市場が大きいとされる「皮膚感作性試験」(EpiSensA:花王株式会社が開発)のガイドライン収載を足掛かりに、日本国内だけでなく海外での拡販を目指します。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング より提供

帝人との協創

2021年に親会社が富士フイルムから帝人に変わり、帝人グループとして再生医療CDMO事業に注力しています。

マテリアルやエンジニアリングに強みをもつ帝人と連携することで、当社の生産機械化・自動化、新製品の共同探索・研究を加速していきます。

また、帝人は海外に多くの拠点を持っているため、今後の海外展開を強化することができます。

今後も帝人の事業基盤を活用しながら国内外で事業を拡大し、成長していきます。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング より提供

注目していただきたいポイント

当社の強みは、研究開発、薬事開発、製造、販売、製造販売後対応まですべての機能を保有し、再生医療のシーズを製品化するノウハウを持っていることです。

日本の再生医療は世界に先駆けて進化しています。

世界に誇れる医療として、まずは日本国内で再生医療の事業モデルを確立し、医療機関をはじめ様々なステークホルダーと連携しながら海外から羨ましがられる医療を創りあげることが当社の使命だと考えています。

ぜひ、再生医療という革新的な治療法に期待していただき、当社の今後の成長と社会への貢献に注目していただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

再生医療は道なき道を切り拓く事業です。

当社は25年にわたって大学や医療機関と協力しながら地道に取り組み、再生医療業界のリーディングカンパニーとして挑戦を続けてきました。

そして、2024年3月期には黒字化を達成しました。

今後も「再生医療をあたりまえの医療に」の実現に向けて、革新的で魅力的な再生医療の発展に貢献していきます。

投資家の皆様には、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(リンク)

本社所在地:〒443-0022 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1

設立:1999年2月1日

資本金:​​49億5,876万円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2007年12月21日上場)

証券コード:7774

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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