【151A】株式会社ダイブ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月31日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ダイブは、リゾートバイトダイブで観光施設特化型の人材サービスを展開するとともに、非観光地の観光産業創出のために観光施設の運営を行なっています。

代表取締役社長の庄子 潔氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ダイブを一言で言うと

観光業を支えるインフラ企業です。 

ダイブの沿革

株式会社ダイブ代表取締役社長 庄子 潔氏

創業の経緯

株式会社ダイブの前身となる会社は2002年に設立され、今年で創業22年目を迎えます。

私は宮城県仙台市の高校を卒業後、音楽を学ぶために2年間アメリカへ留学しました。

帰国後、その経験を活かして就職活動を行いましたが、なかなか成果が出ませんでした。

就職活動に苦戦し、やがて仙台のパイプ製造工場で派遣社員として働き始めました。

派遣社員として働く中で、フォークリフトの資格を取ったり、成果を上げたりした時に、派遣元の社員から褒められた時、社会の一員になれたような、そんな実感を得ることができました。

そして自分を応援してくれた派遣元の社員のように「誰かの人生を応援する存在になりたい」と考え、派遣会社の正社員へ転職しました。

その後、派遣会社に正社員として雇われた私は、「もっと自分たちがやりたい派遣会社を作ろう」と4人の仲間とともに当社の創業に携わりました。

そして、2012年5月に創業者から社長職を引き継ぎました。

派遣スタッフとしての現場経験、人材派遣会社での正社員経験、人材派遣会社の創業に携わった社長は業界を見ても珍しい存在だと自負しています。

コロナ禍での選択と集中

創業時より、観光施設に特化した人材サービスを基幹事業として進めてきましたが、同時に旅行代理業や留学支援、海外事業など、複数の事業も展開していました。

しかし、2020年3月頃からコロナウイルスが蔓延し始め、旅行業界は大打撃を受け、月の売上は前年比の3割程度にまで落ち込み、事業環境が急激に悪化しました。

私たちはこの状況が緊急事態であると悟り、社員全員に経営状況を正直に伝え、役職を問わず希望退職者を募りました。

さらに、幅広く展開していた事業をリゾートバイト支援(観光施設に特化した人材サービス)のみに集約し、固定費の圧縮、役員報酬の削減、オフィスの縮小移転などを迅速に行い、半年後には月の固定費を半減させることに成功しました。

業界全体が動き出す前に選択と集中を実行に移すことができたため、当社はコロナ禍においても事業を存続させることができました。

2024年3月に上場し観光業のインフラ企業へ

今回の上場は、2回目の挑戦でした。

2018年から2020年の上場を目指して準備を進めていましたが、コロナ禍による経済的混乱や旅行業界の先行き不安が重なり、一度仕切り直しを決断しました。

その後、事業再建を行い、社内整備も完了したことで、再度上場を目指すことにしました。

政府は観光立国の実現に向けた政策を推進しており、観光業は2030年に向けて市場規模(旅行消費額)が2023年度比で+10兆円の37兆円にまで拡大する見通しです。

日本が成長していくためにも、観光業は非常に重要な産業であり、この業界における人材不足の解消は、成長に不可欠な条件です。

当社は、観光業における人材支援を「ど真ん中」でリードしていくため、社会的信頼を獲得し、成長資金を調達する目的で上場しました。

株式会社ダイブ より提供

ダイブの事業概要と特徴

概要

当社は、観光HR事業と地方創生事業の2つの事業を展開しています。

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観光HR事業では、「リゾートバイトダイブ」というブランドで、観光施設に特化した人材サービスを運営しており、売上の9割以上を占めています。

観光業界が抱える人手不足の課題を解消するために、人材派遣ビジネスを提供し、2024年6月期には年間9,320人の観光従事者を創出しました。

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一般的な派遣会社が自宅から都内のオフィスに派遣するのに対し、当社は全国各地のリゾートホテルや旅館、冬季にはスキー場などの観光地に特化しています。

冬季は北海道のニセコで勤務し、夏季は沖縄の宮古島で働くといったように、短期間で勤務地が変わるため、一般的な派遣会社とは異なるオペレーションが求められます。

また、リゾート地での住み込み勤務も大きな特徴です。

そのため、家賃や食事を当社が負担することにメリットを感じている方が多く、短期間で貯金をしたい方や、リモートワークの傍らで仕事をする方など、さまざまなバックボーンを持つ人々が利用しています。

株式会社ダイブ より提供

地方創生事業では、D2C観光事業を展開しています。

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ターゲットエリアは有名観光地ではなく、まだ知られていない非観光地が中心です。

各地方自治体と協力し、新たな観光地を創出するための企画開発や、当社のマーケティング力を活かした集客、施設運営など、幅広くサポートしています。

現在、北は北海道芦別市から南は佐賀県佐賀市の三瀬高原まで、全国6カ所でグランピング施設などを運営しています。

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事業における優位性

データベース活用と高いマッチング精度

人材派遣事業は新規参入が多く、横展開されやすいビジネスですが、当社の強みはマッチング精度にあります。

たとえば、リゾートバイトでは住み込みが基本となるため、契約期間中の住居が個室なのか、相部屋なのかといった詳細な情報が必要です。

「個室」と表現されていても、トイレや浴室が共同である場合もあり、各施設によって情報は異なります。

これまで当社は、20年以上にわたり現場を訪問し、施設の詳細なアナログ情報をデータベース化して蓄積してきました。

さらに、実際に働いた方々の口コミも重要な情報源となっており、働きやすさや稼ぎやすさなど、応募時に気になる情報を多数保有しています。

新規参入者がこのような情報をすぐに手に入れることは難しく、これが当社の高い参入障壁となっています。

そして、このデータベースを基に、応募者を適切な観光施設に送り出すことで、ミスマッチによる早期退職を回避し、観光施設からも高い信頼を得ています。

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高品質なCSを実現

当社はLINEと社内データベースを連携させ、新規ユーザーや既存ユーザーとの個別コミュニケーションを通じて、就業に繋げています。

また、新規就業後に不安や悩みが生じるケースもあるため、LINEを介した1対1のサポートを行い、安心して働ける環境を提供しています。

さらに、当社は札幌、仙台、東京、大阪、福岡、沖縄に支店を設けており、派遣スタッフとのコミュニケーションを円滑に行う体制を整え、フォローアップを徹底しています。

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ITによる高頻度事務の効率化

一般的な派遣会社は、一つの場所で一つの職種を扱うため、一度登録や契約を行えば、その後の手続きがスムーズなことが特徴です。

一方、当社が取引している観光施設は、北海道から沖縄まで全国に4,600施設以上あります。

そのため、各施設との契約期間がシーズンごとに異なるため、その都度で雇用契約手続きを始めとする煩雑な事務手続きが高頻度で発生します。

この事務手続きを効率化するために、当社のエンジニアチームが独自のシステムを構築し、長年のノウハウを活用して、オペレーションを仕組み化することに成功しました。

この仕組み化により、高頻度で発生する煩雑な事務作業を効率化したことで、他社にとっての高い参入障壁となっています。

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ダイブの成長戦略

市場環境と成長余地

観光業界はコロナ禍からV字回復を果たし、インバウンド需要の高まりとともに、宿泊業人材市場は今後も拡大すると考えています。

現在、国内人口の減少に伴い人手不足が加速しており、観光業における人材派遣サービスの需要はさらに増加すると予想されています。

当社の観光HR事業への需要も継続すると見込まれるため、業界におけるシェア拡大と安定した成長を目指します。

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また、観光業全体では中小企業庁の事業再構築補助金により、観光業への事業参入が後押しされており、グランピング市場は1,000億円規模に拡大すると見込まれています。

今後も地方創生事業において、「非観光地 × 観光HR」を強みに、観光施設の複数ブランドを創出していきたいと考えています。

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観光HR事業:人材の獲得

1つ目の成長戦略として、就業者数の拡大とサービスの拡充に取り組みます。

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まず、若手人材に関しては、大規模なプロモーションを実施し、リゾートバイトの認知度を広げるとともに、積極的にWEBマーケティングを展開していきます。

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次に、シニア人材の拡大です。

すでにシニア人材から多くのオーガニックな問い合わせを受けており、潜在的なニーズが高いと考えています。

現在、マーケティング部がシニア人材に特化したアプローチを試行錯誤しています。

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さらに、外国人人材の拡大にも力を入れています。

外国人人材には、ワーキングホリデー制度を利用する外国人と特定技能ビザを取得する外国人の2つのタイプがあります。

特に、ワーキングホリデーを利用する外国人にとって、食事や住居が提供されるリゾートバイトは非常に適しています。

たとえば、北海道のニセコは台湾人や韓国人に人気があり、働きながら好きな土地を楽しめる魅力的な観光施設です。

また、特定技能ビザについては、2019年に新設された制度で、宿泊業もその対象に含まれているため、今後大きく成長することが期待されます。

宿泊業においてはまだ外国人労働者が少ないですが、この分野でニッチトップの地位を確立することを目指しています。

株式会社ダイブ より提供

地方創生事業:新業態への進出

2つ目の成長戦略として、今後も広く認知されていない非観光地をターゲットにアプローチしていきます。

自治体にとっては遊休地の活用と地元のPRに繋がる一方、当社は観光地とは異なり、低コストで土地や施設を利用できるため、Win-Winの関係を築いています。

全国にはまだ多くのポテンシャルを秘めた場所があり、地元の方々にとっては日常的な場所であっても、域外の人々にとっては魅力的な観光地となり得ると考えています。

現在、新たにホテル業態へ進出しており、自社でホテル運営のノウハウを蓄積し、今後のビジネスに活かすことを目指しています。

グランピングに加え、宿泊業という大きな市場(SAM)への拡大を目指すためにも、この投資は必要だと考えています。

株式会社ダイブ より提供

新規事業・サービス開発とクロスセル

具体的な詳細はまだお伝えできませんが、宿泊業には多くの課題が存在します。

成長産業である一方で、人手不足が深刻な問題です。

当社は、人材派遣による支援にとどまらず、アナログに依存している集客や施設管理に対して、省人化を図るサービスの提供を検討しています。

今後、観光業を支えるインフラ企業として、既存事業や新規事業を活かし、さらなる支援を行っていきたいと考えています。

株式会社ダイブ より提供

注目していただきたいポイント

日本の観光業は、数少ない成長産業の一つです。

政府は2030年までに外国人観光客を6,000万人に増加させ、旅行消費額を37兆円に拡大するという目標を掲げています。

この成長目標を達成するためには、観光業界全体での人手不足の解消が不可欠です。

当社は、この観光業界において、特に重要な人材派遣分野で中心的な役割を果たしています。

観光産業全体の発展は、当社の成長にも直結します。

今後は「リゾートバイトダイブ」を通じて観光業の人手不足を支えつつ、非観光地の活性化を目指してグランピング施設や観光施設の開発を進めていきます。

観光業全体の成長を見据えた新事業も検討しておりますので、今後の当社の取り組みにぜひご注目ください。

投資家の皆様へメッセージ

先ほども申し上げましたが、観光業は成長産業である一方で、多くの課題が残るレガシー産業でもあります。

当社は、人手不足などの課題を解消するサービスを展開し、地方の観光産業の活性化にも貢献しています。

今後、当社は観光業界で重要な役割を果たす企業へと成長してまいります。

そのような中、投資家の皆様からの支援は、当社の成長にとって必要不可欠です。

引き続き、投資家の皆様からの温かいご支援とご協力をお願い申し上げます。

株式会社ダイブ

本社所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿2-8-1新宿セブンビル10F

設立:2002年3月29日

資本金:1,000万円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年3月27日上場)

証券コード:151A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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