【155A】株式会社情報戦略テクノロジー 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年8月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社情報戦略テクノロジーは私たちの生活を豊かにするシステム業界における多重下請け構造をはじめとする悪しき慣習をなくしていきます。

代表取締役社長の高井 淳氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社情報戦略テクノロジーを一言で言うと

ソフトウェア開発業界における多重下請け構造をなくし、変革をもたらす会社です。 

情報戦略テクノロジーの沿革

株式会社情報戦略テクノロジー代表取締役社長 高井 淳氏

創業の経緯

当社を立ち上げた理由は、システム開発業界における多重下請け構造の問題に疑念を抱き、変えていきたいと考えたことから始まります。

私は大学で理系の学科を専攻し、当時のゼミの同級生たちはSIerなどのIT業界に進んでいきました。

しかし、私には起業をしたいという夢があったため、彼らとは異なる道を選び、2000年に金融業界へ就職しました。

その後、1年で金融業界を離れ、起業したものの、ネットバブル崩壊の影響もあり、わずか2年で失敗に終わりました。

就職氷河期と言われていたこともあり、再就職先を探している中で拾われたのが、あるソフトウェア開発会社でした。

現在はベイカレント・コンサルティングとして大企業に成長していますが、当時は3次請けや4次請けを担うIT受託会社でした。

3次請けや4次請けのシステム会社は、エンジニアが過酷な労働条件のもとで働き、十分な報酬が得られないまま、アッパー層でも年収は600万円ほどで将来性も感じられない環境でした。

大手の元請けのSIerは1次請けとして、顧客から案件を受注しても、その後下請けに委託し、そのまま3次請けや4次請けの会社が実際のシステム開発を行うという多重下請け構造になっていました。

生活の豊かさを支えるIT業界の由々しき状況を肌で感じた私は、優秀な人材がIT業界に定着せず、いずれ大きな問題に発展していくだろうと考えました。

その後、零細企業のソフトウェア開発会社に転職し、業界構造を変えようとしましたが、個の力では大きな影響を与えることはできませんでした。

そして業界の根幹を変えていくためには自分で会社をやるしかないと考え、2009年に当社を創業しました。

「0次システム開発」を推進

創業当初は実績も無く厳しい状況が続いていました。

前職で人脈も使い切ってしまったため、0からのスタートでした。

そのような中、野村證券との取引が実現し、設立2年目で金融工学に基づく複雑なシステム開発に成功しました。

その後、大手企業を中心に当社の特徴でもある「0次システム開発」を武器に、数多くの実績を作り上げてきました。

例えば、セブン銀行のスマートフォンアプリ「Myセブン銀行アプリ」の開発では外部委託されていたプロジェクトが遅延する中、私たちは1年でアプリをフルスクラッチで開発し直しました。

これにより、2020年のリリース後、アプリのダウンロード数は250万件を超え、現在もサービス改善のために2週間のサイクルでサービス改善、機能追加し続けています。

このように、顧客のニーズに対して迅速かつ柔軟に対応できる「0次システム開発」を創業より進めてきました。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

情報戦略テクノロジーの事業概要と特徴

概要

私たちが提供する「0次システム開発」は、企画段階から顧客と密にコミュニケーションを取り、システム開発のプロセスを表しています。

アジャイル型の開発手法で、営業企画部門などのシステムエンジニアを持たない部署が取引先です。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

主に顧客のビジネスサイドのシステム開発を内製化するための手法として用いられています。

例えば、楽天市場やメルカリなどのシステム開発は自社のエンジニアが行い、独自の特徴や個性を持ったシステムに仕上がっています。

従来の開発手法では、SIerが顧客の要望を要件定義した後、下請け企業に開発を任せて完成したものを納品するため、顧客のアイデアを反映させることは困難です。

一方、「0次システム開発」では都度、顧客の要望を確認しながらシステムを開発するため、アイデアをしっかりと反映させたシステムが完成します。

この「0次システム開発」を軸に、自社エンジニアやパートナーから調達したエンジニアを活用して顧客のDXニーズに対応しています。

また、システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」でのエンジニアを調達し、円滑に案件を進めています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

優秀なエンジニアの厳選採用と高い技術力

技術力とコミュニケーション能力の両方を兼ね備えた優秀なエンジニアを厳選して採用しています。

「0次システム開発」において、顧客との密接なやり取りが重要になるため、エンジニア自身が高いコミュニケーションスキルを持っていることが必要です。

また、地頭の良さも重要視しており、CAB試験というエンジニアの力量を測るテストの結果に基づき、上位25%の成績優秀者を採用しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

そして、最新の技術を積極的に取り入れ、Java、Python、SQLなどの主要なプログラミング言語に加え、クラウド技術(AWS、Azureなど)にも精通したエンジニアを揃えています。

これによりクライアントの多様なニーズに応じたシステム開発が可能となり、「0次システム開発」を実現しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

「WhiteBox」によるパートナー調達

「WhiteBox」はエンジニアのスキルシートを一元管理し、プロジェクトとエンジニアをマッチングする仕組みを提供しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

「WhiteBox」を導入する企業には大きく分けて2つのタイプがあります。

1つ目は、エンジニアが不足しているため、すぐにプロジェクトに参画できる人材を探している企業です。

こうした企業は月額費用を払い、案件を登録してエンジニアを探すために利用しています。

2つ目は、エンジニアを自社で雇用しているものの、稼働状況によって余剰人材が発生してしまう企業です。

こうした企業は、自社のエンジニアをフル活用するために「WhiteBox」を導入し、当社のパートナー企業となっています。

「WhiteBox」と他社のプラットフォームとの大きな違いは、稼働中のエンジニアにもアプローチできる「未来マッチング」という機能を有していることです。

従来のプラットフォームでは、未稼働のエンジニアのみを対象としたマッチングが一般的です。

一方、「WhiteBox」ではパートナー企業に対し、エンジニアのスキルシートを稼働中かどうかにかかわらず登録していただきます。

稼働中のエンジニアの方が、優秀なエンジニアの可能性が高いため、稼働中に将来の時間を確保できるため、質の高い人材の調達が容易になり、プロジェクトの進行を容易にしています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

現在、「WhiteBox」に登録されているエンジニアは3万人を超え、パートナー企業との協力体制も着実に強化しています。

3次請け、4次請けのパートナー企業が直接1次請け企業から案件を受けられるため、業界慣習化していた多重下請け構造を排除するとともに、プロジェクト進行の効率化と品質向上を実現しています。

強固な顧客基盤と独自のポジショニング

売上の約80%は大手企業や大手グループ会社からが大半で、これまでの取引実績が新規顧客や良質な案件、優秀なエンジニアの獲得に繋がっています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

売上1,000億円以上のエンタープライズ企業はDX推進をするためにIT投資額が安定しているため、安定的な事業基盤を生み出しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

そして、私たちが提供する柔軟で迅速な「0次システム開発」は顧客から高い評価を受けており、2020年12月期より顧客継続率は93%以上を維持しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

また、顧客と協働してシステム開発を進めているため、課題を早急にキャッチアップし、新たな価値提供を行うことで、アップセルも期待できます。

その結果、新規案件が入るたびに売上がミルフィーユ状に重なっていく事業モデルを実現し、安定的に収益が成長しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

そして、当社のように大手企業からの1次請けに特化している企業はほとんどなく、ソフトウェア開発専業でビジネスを行う企業はありません。

当社はITコンサルと1次請けのソフトウェア開発案件を獲得するとともに、自社で開発を実行できる、業界内でも珍しいポジションを築いています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

情報戦略テクノロジーの成長戦略

市場環境と業界が抱える課題

今後も情報サービス市場は拡大し、DX化への取り組みが加速しています。

特に大企業においてはIT投資に対して積極的で、既存顧客に大企業を持つ当社のポジションは良好です。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

また、IT人材は年々不足し続け、2030年には59万人が不足すると言われています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

一方で、業界構造は多重下請け構造が常態化しています。

DXを推進しようとしても、SIerやコンサルティング会社頼りだと費用が膨らみます。

さらに、社内にDXを推進できる人材が生まれず、システム会社頼みの不健全な状態に陥ります。

当社は、このような業界の発展、ひいては日本経済の発展を阻害している要因を排除し、既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進めてまいりたいと考えています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

市場価値の高いエンジニアの確保

当社は「0次システム開発」を行うため、所属エンジニアの年収は業界平均より高い水準を実現しています。

そして、上流からプログランミングまで幅広い工程に関わり、様々なシステムや技術を用いることができるため、成長機会を多く提供することができます。

今後、この優位性を活かして、新卒・中途共に採用人数を増やしていく方針です。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

また、入社後も優秀なエンジニアとしての市場価値を高めるために、各種育成制度や施策を整備しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

「WhiteBox」を活用したパートナーの持続的拡大

「WhiteBox」を活用してパートナー企業の拡大に努めます。

現在、「WhiteBox」は3万人以上のエンジニアと2,000社以上のパートナー企業の登録がありますが、広告宣伝投資を効果的に行うことで会員数を拡大できると考えています。

また、案件を登録いただいているユーザーは月額課金制で利用いただいていますが、今後は無償化することで、更なる案件獲得を目指します。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

取扱いシステム・サービスの拡大

1つ目は「0次システム開発」のサービス領域を拡大していきます。

これからはAWS以外のクラウドインフラや生成AI等の取扱い、顧客ニーズへの対応分野を広げていきます。

2つ目は「WhiteBox」でのノウハウを活用した人材紹介業へサービス領域を拡大していきます。

自社採用する際には高い基準を設けているため、母集団が大きくなればなるほど、人件費はかさみます。

一方、「WhiteBox」に登録いただいているパートナー企業は、当社の採用基準には満たなくても、ある程度のスキルを有していれば採用したいというニーズがあります。

そこで、当社が人材紹介業を行うことで、母集団を減らすことなく、自社採用とパートナー企業の人材支援の両方を行うことができ、経営の効率化ができると期待しています。

これにより、自社のエンジニアを安定的に確保しながら、パートナー企業へ新たな価値を提供していきます。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

注目していただきたいポイントは、私たちが単なるソフトウェア開発会社ではなく、「0次システム開発」を軸に、業界内で独自のポジションを築いていることです。

よく、大手のSIerと比較されることが多いですがビジネスモデルから全く異なります。

SIerは要件定義を行い、それを基にシステムを持ち帰って開発し、納入するという「フローモデル」が一般的です。

一度開発が終われば契約も終了し、その後は保守や運用といったフェーズに移行します。

一方で、私たちはITコンサルティングファームに近いビジネスモデルを採用し、顧客のシステムがビジネスに最適な形で機能するような伴走支援を行います。

そして、高い顧客継続率を実現しているため「ストックモデル」を通じて安定した収益基盤を築いています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

また、新規開拓についても積極的です。

営業チームがフロントラインで開拓を行い、深堀する際にはエンジニアも立ち会った上でプロジェクトを提案しています。

これにより、顧客のニーズに合ったソリューションをスピーディに提供し、より深い信頼関係の構築に繋がり、売上は右肩上がりに成長しています。

株式会社情報戦略テクノロジー 2024年3月28日 事業計画及び成⾧可能性に関する事項 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社はシステム開発業界において唯一、大企業と直接取引し、エンジニアの正当な報酬と働きやすい環境を提供しています。

私たちの目標は、10年から15年後には売上数兆円規模の企業へと成長し、業界のリーダーとして多重下請け構造を根本から変えていくことです。

また、システム開発における無駄なカスタマイズやそれにかかるシステム構築費を削減し、エンジニアが本来の技術力を発揮し、あらゆる業界を支えているIT業界を良い方向に変えていきます。

皆様のご期待にお応えできるよう、事業拡大と価値提供を進めていくので、今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社情報戦略テクノロジー

本社所在地:〒150-0011 東京都渋谷区東3-9-19 VORT恵比寿maxim8F

設立:2009年1月23日

資本金:361,052,000円(2024年4月1日時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年3月28日上場)

証券コード:155A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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