【241A】株式会社ROXX 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ROXXは製造・建設・運輸・サービス業等のいわゆるノンデスク領域における正社員転職を中心に、低所得層の所得向上を目指す転職プラットフォームとして「Zキャリア」を展開しています。

代表取締役の中嶋 汰朗氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ROXXを一言で言うと

「年収200万円を300万円にする転職プラットフォーム」です。 

ROXXの沿革

株式会社ROXX代表取締役 中嶋 汰朗氏

創業の経緯

大学在学中に、同級生たちと一緒に会社を立ち上げたのが当社の始まりです。

それ以前はミュージシャンを目指して活動していましたが、周囲の仲間が次々と売れていく中、思うようには成功せず、苦しい思いをしていました。

そのような中、大学3年生の頃、大学の講義で起業家の方々のお話を聞く機会があり、それが大きな転機となり、自分も人生をかけて取り組めそうな何か新しいことに挑戦してみようと思い立ち、2013年に当社を立ち上げたのが創業のきっかけです。

当初は人材紹介業として学生向けの就職支援ビジネスを軸にしていました。

その後、2016年から資金調達などを通して投資家の方々にも参画いただき、新しいプロダクトの開発にも取り組みましたが、なかなか成果は出ず、創業からの約5年間は試行錯誤の連続でした。

Zキャリアのリリース

現在の「Zキャリア」というビジネスモデルが生まれたのは2018年です。

このサービスを展開するにあたって、特に重要だったのは、どのターゲット層にフォーカスするかということです。

私たちがターゲットとしたのは、年収200万円台かつ正社員を目指している方々です。

私自身も、かつてミュージシャンを目指している中、苦しい時期を経験し、その後起業家として再スタートを切ったという背景があるため、ユーザーの方々の「現状から抜け出したい」という気持ちや状況をよく理解しています。

だからこそ「Zキャリア」では、世間一般で知られているような転職サービスとは全く異なるアプローチで独自サービスを提供し、新たな市場を開拓しています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

2024年9月に上場

上場に至った背景として、まず企業側の深刻な人手不足の問題があります。

特に工場や物流、販売、建設現場といった、いわゆる「ノンデスクワーカー」と呼ばれる職種において、その傾向が強まっています。

今後も人手不足はさらに深刻化していくことが予想され、私たちの「Zキャリア」が果たす役割もますます重要になると考えています。

人材業界においてサービスを伸ばしていくためには、求職者からの認知度をいかに高めるかが重要です。

「正社員を目指すならZキャリア」と世間で認知されることが、中長期的な成長を実現する上で大切です。

上場を通じて、「Zキャリア」の認知度をさらに高めることで求職者を増やし、マッチング数を増やしていくことで、大きな課題となっている企業側の人手不足の解消に貢献していきたいと考えています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ROXXの事業概要と特徴

概要

当社が展開している人材事業は、基本的には一般的な人材紹介サービスと同様、求職者を集めて企業に紹介し、採用が決まれば手数料をいただくビジネスモデルです。

求職者のターゲットは年収200万円〜300万円の非大卒や非正規雇用の人材が中心で、「Zキャリア」を通じて集められています。

求人は学歴・経歴不問という条件がありますが、求人企業は弊社独自の審査基準を経た上で無料で求人を掲載することが可能です。

実際に求人企業に求職者を紹介する際には、当社が直接人材を紹介する場合とパートナー紹介会社に属する社外エージェントを通して紹介する2パターンがあります。

自社での紹介を始めたのは2023年9月期からですが、前年同期比で大きく2倍成長を遂げています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

また、オンライン完結型のコンプライアンス/リファレンスチェックサービスとして「back check」の提供も行っています。

大手企業を含めて、さまざまな業界/領域から人材を採用する機会が増加していますが、これに伴い、ミスマッチのリスクも高まっているのが現状です。

このミスマッチには大きく2つのパターンがあります。

1つ目が犯罪歴や経歴詐称が入社後に発覚するものです。

2つ目は法的な問題はないものの、企業のカルチャーに合わない、期待されていたパフォーマンスを発揮できないといった、定性的なミスマッチです。

そこで、「back check」はコンプライアンス/リファレンスチェックの大半をAI化で補い、人による調査よりもコストを抑えるサービスを提供しています。

このサービスは特に大手企業での導入が進んでおり、2024年9月期の売上は約5億円まで増加している成長事業です。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

事業における優位性

求職者・求人企業・パートナー紹介会社について

一般的な転職サービスは、正社員雇用である程度キャリアを積んだ方が次のステップに進むために利用することがほとんどです。

一方、私たちのターゲットは、非大卒や非正規雇用で、これまでの職歴が少なく、将来に対して明確なビジョンをまだ持っていない方々です。

そのため、「現状から抜け出したい」という想いを持っているケースが多く、そのための第一歩として「Zキャリア」が利用されています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

また、求人は未経験から転職可能な職種を多く揃えており、施工管理や販売・サービス、事務と多岐にわたります。

そして、年間で数百〜数千名と大規模採用の求人がほとんどであるため、一般的なホワイトカラーの求人と異なり、求人企業数を増やすための労力がかかりません。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

さらに、約400社のパートナー紹介会社を持っていることも強みです。

通常、従業員が1〜2人ほどの小規模な人材紹介会社では、大手企業から求人票を仕入れることが困難で、特に未経験層を採用する大手企業の案件は限られています。

そうした際に「Zキャリア」を通じてなら、大手企業の案件にもアクセスすることが可能となります。

このように、当社のターゲットとする求職者、求人企業がユニークかつ、多くの外部パートナーの存在が当社のビジネスを支えています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

独自の転職プラットフォーム「Zキャリア」

ハイクラス転職では、求人の数が限られているため、数名の内定が決まると採用活動は終了してしまいます。

また、職種が異なると選考データの再利用が難しく、データを活用した再現性のあるマッチングは実現しづらいというのが実状です。

キャリアのある方々を対象とした転職支援では、業界や企業について詳しく知る必要があり、それぞれに個別対応が求められるため、効率化が難しい部分があります。

一方で、Zキャリアに掲載されている求人は数百〜数千名規模の大量採用が基本です。

当社は大規模に採用している企業に対して継続的に人材紹介を行っているため、大量の選考データが年々蓄積されています。

そして、当社のユーザーの約半数は、特にやりたいことが明確になっていない方々です。

こうした求職者には、正社員になることで得られるメリットや、職種ごとの仕事内容、キャリアパス、年収が上がる仕組みなどを説明することが必要です。

このような説明はある程度パターン化することができるため、オペレーションをどんどん磨き込むことができます。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

また、直近で特に注力しているのは、ダイレクトリクルーティングの拡大です。

今後はZキャリア内のエージェントの増加に加え、AIスカウト機能の強化により、収益性も改善する見込みです。

これは、「Zキャリア」を通じて採用企業が直接求職者にスカウトを送るもので、AIによるスカウトの文面作成や自動送信といった機能も含まれています。

このプロセスでは人件費を最小限に抑えることができるため、収益性がさらに向上する見込みです。

このようにこれまで蓄積してきたノンデスク領域における選考データや保有する求人案件などのビッグデータを活かすことにより、高精度のマッチングに加えて、採用プロセスの業務効率化を実現できるのが「Zキャリア」の特徴であり強みです。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ノンデスクワーカー市場の成長性と参入障壁

当社がターゲットとするノンデスクワーカー市場はホワイトカラー市場の約4倍と、大規模なマーケットです。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

現在、日本の給与所得者のおよそ半分が年収400万円未満です。

また、労働人口の約3分の2が非大卒、約4割が非正規雇用であり、生活がギリギリの状態にある方も少なくありません。

こうした市場に特化した人材サービスを提供している大手企業はほとんど存在せず、他社の参入も限定的であるため、当社のポジションは非常に強固なものとなっています。

パーソルキャリアやマイナビとは資本業務提携を締結しており、将来、新たな競合が参入してきたとしても、当社には大きなアドバンテージがあると考えています。

また、ウィルグループやオープンアップグループといった上場企業とも資本業務提携しており、毎年数千人規模の未経験者向け求人を提供いただいています。

この独自の市場における当社の強みを活かし、提携先との関係性も強化しながら、ノンデスク領域における採用課題を根本から解決していくことを目指しています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ROXXの成長戦略

成長性 = 集客

当社の成長戦略には大きく3つのポイントがあります。

まず1つ目は、売上の成長ですが、そのためには求職者の数をいかに増やせるかがカギとなります。

2025年1月頃からCMの放送を開始するなど、認知度向上を目指したマス広告を活用する予定です。

この広告投資は大きな成果に繋がると考えていますが、仮に広告効果が思うように出なかったとしても、既存の予算だけで十分に黒字化できるような計画を立てています。

また、プロダクトとして新たに提供を始めているのが、転職前後のプロセスをカバーする失業保険のサービスです。

退職に伴い失業保険の書類を作成する際に、当社のプロダクトを利用することで「Zキャリア」への登録を自然な流れで促すことで、新たな転職支援に繋げようというものです。

そして、アイフルさんなど、シナジーの高いアライアンス先との協業も図りながら新規の求職者の獲得を実現したいと考えています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

収益性 = AIスカウト

成長戦略の2つ目のポイントは収益性の向上です。

今後、より多くのマッチングを自動化していくためにも、キャリアアドバイザーを介さない「ダイレクトリクルーティング」に注力していきます。

企業側は、AIによる自動スカウト機能を通じて応募者にアプローチすることが可能であるため、手間をかけずに求職者を選定することが可能です。

これにより、従来の転職サービスよりも効率的に人材を獲得できるため、手数料のコストや人件費を削減することが可能となり、当社の利益率向上にも繋がります。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

もちろん、全てがAIや自動化で解決できるわけではなく、特にやりたいことが定まっていない方、パソコンを持っていない方、履歴書作成に不安を抱える方が多くいるのも実状です。

そのような方々には、相談相手として背中を押すキャリアアドバイザーの役割が重要です。

当社では、昨年100名以上の社員を採用し、従業員数は現在300名を超えています。

来期は新卒採用も拡大していく予定です。

このように、AIスカウトによるデジタル化とキャリアアドバイザーによる支援のハイブリットモデルで、成約率と収益性の向上を目指します。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

優位性 = AI面接

3つ目は、面接のプロセス自体をAI化することです。

当社のターゲット層の転職活動では、面接の回数は基本的に1〜2回であり、最初の面接は基本的なコミュニケーション能力があるかどうかを見極めるための面接であることがほとんどです。

そのため、対面での面接を行わなくても、求職者が自分の考えを伝えられるかどうかが分かれば十分です。

そこで、「Zキャリア」では、AIによるオンライン面接を導入しています。

求職者はスマホを使ってURLにアクセスし、AIによる面接官からの質問に答えるだけで面接が完了するという仕組みを開発しています。

これにより、企業側は面接の負担を大幅に軽減でき、日程調整の手間も省けるため、選考スピードが飛躍的に向上しており、すでに選考期間が1/3ほどに短縮されるという効果が出ています。

また、AI面接であるため24時間対応が可能で、求職者にとっても、仕事を休むことなく面接を受けられるというメリットがあります。

現在は「Zキャリア」経由の求職者にのみAI面接を実施していますが、今後は外部サービスやハローワークなどからの応募者にもAI面接を適用することで、選考フローの効率化がさらに進むと考えています。

株式会社ROXX 2024年9月 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

当社の成長を語る上で注目していただきたいポイントが3つあります。

まず1つ目は、日本の労働市場の現状です。

あまり知られていませんが、年収400万円未満の非大卒や非正規の方々が日本における労働者の大半を占めています。

彼らは学歴やキャリアに自信がないため、転職活動の仕方が分からないだけでなく、そもそも正社員になるためにはまず何をすればいいのか分からないという方がほとんどです。

この大規模であるものの、人材紹介市場においてあまりターゲットとされてこなかった層を対象に当社はアプローチしています。

2つ目は、当社の成長率です。

70%成長を2年連続で達成しておりますが、これには日本企業における人手不足が深刻化しているという背景があります。

数百人〜数千人規模の採用にも対応でき、大量の求職者を集めることができるのは「Zキャリア」です。

今後も当社の成長ドライバーとなるサービスです。

3つ目は、今後の展望です。

「Zキャリア」の集客とマッチング効率を上げることで、事業成長が見込めます。

また、私自身が高卒バンドマンとしての経験があるため、ユーザー層への深い理解があります。

「Zキャリア」を通じて、年収が約260万円から約310万円まで上がるというデータがありますが、これは平均すると月に4〜5万円の収入が増えるため、生活の質が向上し、彼らがキャリアに対して前向きに考えるきっかけへと繋がっています。

若者が少しでも希望を持って働ける環境を提供することは、日本社会全体にとっても重要なことだと考えています。

当社はそのような社会貢献的な意味も踏まえて、「正社員になりたい」と転職活動に取り組む方々に寄り添い、その人生を変えるきっかけを作る存在として成長していきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

年収が200万円から300万円に上がると、人生が変わります。

これからの5〜10年という長期的なスパンで、非大卒や非正規雇用の方々の人生を大きく変えるきっかけを作っていきたいと考えています。

現状は赤字ですが、ノンデスクワーカー市場は巨大なマーケットで、これからも成長できる領域です。

中長期的な成長を目指し、投資家の皆様からのご支援をいただけますと嬉しいです。

株式会社ROXX

本社所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿 6-27-30 新宿イーストサイドスクエア 8階

設立:2013年11月1日

資本金:644,443,130円(2024年9月25日時点)

上場市場:東証グロース市場(2024年9月25日上場)

証券コード:241A

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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