【4392】FIG株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年10月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。

FIG株式会社はSmart Societyの実現に向け、これまで培ってきたバーチャルのIoTとリアルのマシーンの技術を融合して社会と人の役に立つサービスを展開しています。

代表取締役社長の村井 雄司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

FIG株式会社を一言で言うと

「ちょっと先の未来を創る」IT企業です。 

FIGの沿革

FIG株式会社代表取締役社長 村井 雄司氏

創業の経緯

高校生の頃、テレビゲームの組み立てのアルバイトを通じてマイコンやコンピューターに触れ、そのシンプルさや面白さに強く魅了されたのがこの業界を知ったきっかけです。

高校卒業後、私は様々なソフト開発やゲームソフトの自作など、独学で技術を習得していました。

しかし、当時所属していたゲーム会社が知的財産権の規制強化などにより、今まで進めていた事業展開ができずに経営が厳しくなり、叔父が経営する会社に転職することとなりました。

叔父は漁師でありながら船舶無線の会社も運営しており、私は地元である大分に戻り、無線機販売の代理店営業を任されました。

代理店営業を学ぶ中で、日本無線の防災無線を扱う機会もあり、アンテナ設置などを通じて、様々な経験を積みました。

その際、私のコンピューター技術が高く評価され、防災システムやタクシーの配車システムの開発にも携わるようになりました。

そして、当社の事業を「ベンチャー企業として分社化してはどうか」と大分銀行の関連会社である大分ベンチャーキャピタルから提案され、2002年に出資を受けて、起業しました。

サブスクリプションモデルへの転換と上場

当初は、従業員10名程度のスタートアップ企業で、インターネット上で車両や人など、移動体の位置情報を管理するシステム「モバロケ」をリリースしたのを皮切りに、動態・運行管理システム、タクシー配車システムなどを次々にリリースしていきました。

事業が拡大する中、福証Qボードでの上場を目指していましたが、ライブドア事件などの影響で遡及監査ができず、上場を断念しました。

その後、東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)への上場を目指すことに切り替えましたが、2008年のリーマンショックの影響で市況が悪くなったため、上場を再度見送りました。

上場がゴールではないのであれば、景気変動にも耐えられるビジネスモデルを確立してから上場した方が良いと考え、それまで温めていたモバイルインフラを活用した無線システム事業を始めることにしました。

さらに、取引のほとんどを売り切り型の販売から、サブスクリプションモデルの契約へと刷新し、フローとストックを組み合わせたビジネスモデルに転換しました。

このビジネスモデルの転換により、事業への透明性が確保され、設立10年目の2012年に東証マザーズ市場に上場させることができました。

また、翌年には東証一部市場(現 東証プライム市場)に市場変更しました。

持株体制への変更

2018年には、完全親会社となる持株会社のFIGを設立しました。

当社は、すべてのサービスがインターネットにつながるIoTを軸に事業展開を進め、タクシー業界、物流業界と事業領域を広げていきました。

その中で、現在のマシーン事業の中核となるREALIZE社をグループ化しました。

ただし、IoT事業とマシーン事業では、開発体制や内部の管理体制が異なるため、安定的に成長していく上で、効率的な経営ができる体制にしようと考え、持株体制に切り替えました。

現在は、FIGの下、十数社規模のグループ体制でコングロマリット的な事業展開をしています。

FIG株式会社 2024年12月期第2四半期 決算説明資料 より引用

FIGの事業概要と特徴

概要

当社はSmart Societyの実現に向け、IoT事業、マシーン事業の2セグメントで事業展開を進めています。

まず、IoT事業では業務用IP通信システムの開発・販売を行い、物流、タクシー、バスなどの分野でソリューションを提供しています。

そして、マシーン事業では自動車部品や半導体向けの各種装置の製造・販売を行い、成長分野であるIoTやAI、ロボットの技術開発に取り組んでいます。

収益基盤としては、SaaS型のサブスクリプションモデルを採用しており、顧客との長期的な関係性を実現し、継続的な収益を確保しています。

FIG株式会社 2024年12月期第3四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

サブスクリプションによる安定的な収益基盤

当社は、IoT事業を中核に、物流、タクシー、バス、ホテルなど様々な顧客のインフラを担うサービス群を提供しています。

月額サービス契約数は約21万件を突破し、安定的な事業基盤を築き上げました。

FIG株式会社 2024年12月期第3四半期 決算説明資料 より引用

当社のIoTと周辺機器を活用したソリューションは、顧客の事業に直結するため、解約率も低く抑えることができています。

例えば、タクシー業界で導入されている配車サービスでは、通信機器とセットで提供しているため、一度契約を結ぶと通常5〜7年の長期契約となります。

また、コロナ禍が始まった際には、解約が30%近くに達するのではないかと懸念していましたが、実際には業務上必要なサービスであり、解約はほとんどありませんでした。

このように、業務に深く組み込まれるサービスを扱っているため、特別な事情がない限り解約はほとんどなく、安定した収益基盤を確保しています。

FIG株式会社 より提供

技術力の融合と先行投資

当社にはネットワーク技術の高さと、それを活かすためのハードウェアの開発力があります。

例えば、動態・運行管理システムや配車システムで活用されているIP無線システムは、公衆インターネット、自社サーバー、無線機器の3つの要素が連携することでサービス品質を維持することが可能です。

無線通信では高周波を使用するため、通常は音声やデータの途切れが発生する可能性がありますが、当社は独自技術によりこの問題を解決しています。

また、自社で決済センターを運営していることも当社の強みです。

決済センターのインフラ構築には先行投資として大きな負担がありましたが、自社サービスを提供する上で、決済周りを固めることは非常に効果的であり、安定収益の確保にも貢献しています。

さらに、2018年から本格的に開始したマシーン事業を有していることも当社の強みです。

AGV(無人搬送車)やAMR(自律搬送ロボット)の販売、運用、そしてソフトウェアの提供までワンストップでサポート可能です。

この技術力・サービス力、そして柔軟なカスタマイズ対応やアフターフォローが可能な純国産ロボットが認められ、ラピダスからの受注を実現しました。

これらは、当社の長年の先行投資によって培われたものです。

このように将来到来するIoT社会の需要を見据えながら、ビジネスとして成り立つかを入念に検討し、事業投資を続けていることが、当社の競争優位性だと自負しています。

FIGの成長戦略

IoT事業の戦略

IoT基盤およびSaaSサービスに新たな機能を追加し、提供可能なサービス範囲を拡大していきたいと考えています。

現在、当社の安定収益基盤となっているサブスク売上高は約50億円ですが、2030年にはこのサブスク売上高だけで150億円規模に成長させる計画です。

また、ペイメント(決済)サービスを新たな収益の柱として確立することも進めています。

これにより、既存の運行管理や配車システムなど他のサブスクリプションモデルとの連携がより容易になり、利用者にとっての利便性がさらに高まると期待しています。

FIG株式会社 2024年12月期第3四半期 決算説明資料 より引用

マシーン事業の戦略

マシーン事業の戦略としては、AGV・AMR(搬送ロボット)と装置の連携による自動化ソリューションを進め、早期にロボット関連売上で50億円達成を目指しています。

AGVは工場内の固定ルートを走行し、工場のオートメーション化を支えるものですが、AMRは自律的にマップを作成し、レーザーセンサーを使って人や障害物を避けながら移動できるため、工場のみならず、半導体製造など精密な動作が求められる環境でも活用が期待されています。

すでにラピダスの工場での運用が決まっていますが、今後、新たに工場が増えればさらに需要が拡大し、業界内での浸透も遠くはないと期待しています。

FIG株式会社 2024年12月期第3四半期 決算説明資料 より引用

中長期的な成長目標

現在130億円規模の売上を1,000億円規模に伸ばすことを、長期的な成長目標としています。

ただし、中期的な目標としては300億円の売上と30〜50億円の営業利益確保を目指し、投資と成長のバランスを取りつつ事業拡大を進める方針です。

現在、マシーン事業やペイメント分野への大規模な投資を継続して行っていますが、この投資が将来の成長の基盤となると確信しています。

注目していただきたいポイント

当社の成長戦略にご注目いただきたいです。

すでに取り組んでいるIoT事業のさらなる深掘り、ペイメントサービスの整備、マシーン事業の拡大が主な成長戦略です。

現在、ペイメント領域とマシーン領域は投資段階なので、短期的な利益にはつながりにくいものの、長期的には大きな収益源となると見込んでいます。

そして、当社では人的資本を含む積極的な投資を行い、事業基盤を強化しつつ将来的な収益に結びつけていきます。

それぞれのサービスで競合はいるものの、ソフト・ハード・通信・マシーン・決済というように幅広い技術力を当社でカバーできることは他社にはない強みだと思います。

このようにコングロマリット的な事業展開を行っているからこそ、新たな技術への投資、新たなサービスの創出につながっており、それが今後の成長ドライバーになると確信しています。

投資家の皆様へメッセージ

今後、世界的な変革期に突入するパラダイムシフトを私たちはチャンスと捉え、投資家の皆様にも当社のビジネスへの理解を深めていただけるよう努めてまいります。

私たちのビジョンは、社員、お客様、そして投資家の皆様を含むすべてのステークホルダーが笑顔になれる未来を築くことです。

Smart Societyの実現に向けて全力で取り組んでまいりますので、引き続きご支援いただければ幸いです。

FIG株式会社

本社所在地:〒870-0823 大分県大分市東大道二丁目5番60号

設立:2018年7月2日

資本金:20億円(2024年10月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2018年7月2日上場)、福証本則市場(2018年7月2日上場)

証券コード:4392

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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