【4833】株式会社Def consulting 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年12月9日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社Def consultingはミッドキャップマーケットを代表するコンサルティングファームを目指し、新しい取り組みに果敢に挑戦し続けています。

代表取締役の下村 優太氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社Def consultingを一言で言うと

ミッドキャップマーケットのリーダーを目指すコンサルティングファームです。 

Def consultingの沿革

株式会社Def consulting代表取締役 下村 優太氏

創業の経緯

当社はもともとフリーペーパー事業を手掛けていた「株式会社ぱど」として1987年に設立されました。

当時、日本ではまだフリーペーパーという業態が一般的ではなく、いわば草分け的な存在としてスタートしました。

創業者がアメリカでフリーペーパーの原型となるビジネスモデルを見て、日本でも実現したいという想いから始めたと聞いています。

その後、発行部数でギネス記録を樹立するなど、業界のリーディングカンパニーとして成長してきました。

構造改革と祖業の売却

1987年の創業以来、当社はフリーペーパー事業一筋で事業を展開してきましたが、2000年代以降、デジタル化が進展する中で紙媒体に依存したビジネスモデルは次第に厳しい状況が続きました。

こうした状況を打開するため、2017年にライザップグループの資本参画を受け、人員や資金面での支援を活用した事業改革に着手しました。

その後、2019年には現在のオーナーがTOB(株式公開買付け)を実施し、ライザップグループから事業を引き継ぐ形で構造改革をさらに加速させました。

2019年の買収時点におけるフリーペーパー事業は、地域の中小企業や個人事業主、さらには一部の大企業を広告主とするビジネスモデルが主軸でした。

地域に根ざしたネットワークを活用したフリーペーパーはクライアント様から「地域の採用媒体として強い」という評価を受けており、全国展開のフランチャイズネットワークも展開していました。

しかし、2020年3月ごろから流行したコロナの影響により、広告主であるクライアント様の売上が激減し、結果として広告費を削減されてしまうという事態に陥りました。

そして、この影響で当社はフランチャイズ事業の縮小や人員整理を余儀なくされ、事業構造の大幅な見直しを迫られることとなりました。

見直しの結果、2021年頃から新たな柱としてエンジニア派遣(SES)を中心としたビジネステクノロジーソリューション事業(現 テクノロジーコンサルティング)を開始し、徐々に成長を遂げ、従業員数も50〜70名規模にまで拡大しました。

これを受けて、既存のフリーペーパー事業を売却し、テクノロジーソリューション事業(現 テクノロジーコンサルティング)へ経営資源を集中させることを決断しました。

このような転換期において、よりビジネスを推進していくために、私は経営企画部長として当社に参画しました。

さらに、2023年にはコンサルティング事業に本格的に参入し、戦略系案件を皮切りに、エンジニアリングを活用したトータルコンサルティングサービスの提供を開始しました。

こうして当社は大規模な事業転換を果たし、現在の事業体制に至ります。

2023年3月より私は代表取締役に就任し、2024年8月からは「株式会社Def consulting」として新たな成長に向けた事業戦略を進めています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

Def consultingの事業概要と特徴

概要

当社は経営に関する全ての分野において、提案から実行までハンズオンで支援する顧客伴走型のコンサルティングサービスを展開しています。

2025年3月期以降は、サービスラインアップとして経営戦略を支援する「ストラテジーコンサルティング」、業務効率化などの業務領域の支援を行う「オペレーションコンサルティング」、そしてIT領域においてDX支援などを行う「テクノロジーコンサルティング」を展開しています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

事業における優位性

ミッドキャップマーケットへの参入余地

戦略コンサルティングを手掛けるファームはMcKinsey & CompanyやBCGといった超大手企業ばかりで、いわば企業の「頭脳」となる経営戦略を担っているため、月1,000万円超のコンサルティングフィーも珍しくありません。

そして、そのような高額なコンサルティングフィーを支払うことができるのは、財務体力のあるほんの一握りの大企業のみです。

私は前職で金融機関に勤めていましたが、戦略コンサルティングの価値については十分に理解しています。

しかし、中堅・中小企業が同じような費用を投じてコンサルティングを依頼するのは現実的には難しく、グローバルな知見や最先端の事例が過剰な支援となってしまうこともあります。

中堅・中小企業には未だクラウドシステムが導入されておらず、DX化の初期の段階で躓いているということがあります。

クライアント様との商談の現場にも同行しますが、特に歴史のある企業ほど、デジタル化が進んでいない印象です。

そのような背景から、私たちは適正な価格で、適切なサービスを提供できるスキルを持ったプロフェッショナルを揃え、各種コンサルティングサービスを提供しています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

伴走支援型のコンサルティングサービス

中堅・中小企業の成長を支援し、彼らに寄り添った形でサービスを提供する「伴走支援型のコンサルティングサービス」が当社の強みです。

依頼内容の多くは、IT・DX戦略策定といった案件ですが、当社は経営戦略、事業開発、オペレーション、組織・人事などビジネスの戦略策定から、構造改革や基盤確立まで一貫してサービスの提供が可能です。

一度、私たちの価値を理解していただければ、短期的な課題・長期的な課題問わず対応できるため、結果として長いお付き合いになります。

競合がいるとすれば、SaaS(Software as a Service)を提供している企業です。

以前、人事制度の改革案をご提案する際に、クライアント様が人事系のSaaSシステム導入を検討しているというケースがありました。

そのクライアント様は、そのシステムを導入すべきか迷っており、「カスタマイズがどこまで可能なのか」「本当に自社にフィットするのか」という不安もあり、最終的に私たちを選んでいただきました。

スクラッチで制度を設計し、一緒に考えながら取り組むほうが自社のためになるという判断をされたのです。

また、SaaSを導入した場合にはその後も運用していくためには継続してコストがかかりますが、当社の場合は基本的にはクライアント様が自立できるような支援を行っています。

たとえば、作成したシステムなどはすべて納品し、自分たちで使えるようにサポートし、「コンサルがいなくなったら何もできなくなった」という状況にはならないよう、ナレッジトランスファー(知識移転)を徹底しています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

幅広い業界への支援実績

当社のクライアント様の業界は多岐にわたり、重工業、金融、大学、EC、食品といった幅広い分野に広がっています。

将来的に案件数が増えれば、特定の業界に偏ることもあるかもしれませんが、現時点では特定の分野に集中する予定はありません。

当社は業界よりも企業規模に注目しており、売上規模が100億円から数千億円規模の中堅・中小企業を中心にサポートしています。

この支援を実現できるのは、先ほどもお話しした当社の支援領域の広さにあります。

中堅・中小企業は成長段階に応じてニーズが異なるため、私たちはトータルで支援できる組織を目指し、幅広いスキルを持ったコンサルタントを揃えています。

領域に特化しすぎると、特定の分野には強くなれますが、それ以外のニーズに対応できなくなる恐れがあるため、どのような案件にも柔軟に対応できる体制を整えています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

コンサルタントとの向き合い方

当社のビジネスでは「人」が資本であり、コンサルタントが価値の源泉です。

クライアントファーストであることは当然ですが、同時にコンサルタントファーストの会社でもありたいと考えています。

転職を希望する方々から「希望の案件に携われない」「キャリアを描けない」といった声を聞くことがあり、この両立ができていないファームが非常に多いのではないかと感じています。

当社もまだ新興のコンサルティングファームなので、すべての希望を叶えることは難しい部分もありますが、コンサルタント一人ひとりの趣向性やバックグラウンド、スキルをしっかり把握し、それに基づいて適切な案件にアサインするよう努めています。

私自身、全てのコンサルタントと入社後に1on1の面談を行い、営業担当と連携しながら案件をマッチングさせています。

案件に入った後も定期的に1on1を実施し、状況を確認しつつ、個々の成長やクライアント様への貢献をサポートしています。

コンサルタントと同じ方向を向き、彼ら/彼女らのケアを怠らないことが、当社が最も大切にしていることです。

Def consultingの成長戦略

当社を取り巻く環境とターゲット

私たちが取り組む市場をピラミッド型に例えると、最上層にはビッグファームが位置し、全国規模で展開する超大手企業を主要クライアントとしています。

一方、その下層である中堅・中小企業は規模やニーズは非常に多様で、一括りにすることはできません。

その中でもピラミッドの下層、売上規模の比較的小さい企業に対しては、株式会社船井総研様や株式会社タナベコンサルティング様といった比較的知名度のあるコンサルティングファームが一定のシェアを持っています。

そのため、すでに成熟しているこれらの市場に参入することは、当社のビジネスモデルには適していないと考えています。

そこで私たちが注目しているのは、「ミッドキャップマーケット」と呼んでいる領域です。

この市場は売上規模が100億円から数千億円の中堅・中小企業を対象としており、多くのプレイヤーが存在しているものの、圧倒的なリーダーシップを持つファームはまだ見当たりません。

私たちはこのミッドキャップマーケットでリーダーシップを確立し、ビジネスチャンスを最大限に活かしたいと考えています。

さらに、この市場は日本経済の99%を占める中堅・中小企業の一部を構成しており、これらの企業の活性化を支援することが、日本経済全体への貢献につながると信じています。

コンサルティングビジネスは昨今、「なんちゃってコンサル」や「高級文房具」と揶揄されることもあります。

しかし、私たちは真のパートナーとしてクライアント様と真摯に向き合うことで、最大の価値を提供し、日本の社会にも貢献できると確信しています。

こうした理念のもと、当社は今後の成長を見据え、「案件獲得」と「人材獲得」の2点に注力した成長戦略を描いています。

営業と採用、この両輪が揃って初めて当社の強みを最大限に発揮できると考えているため、営業力の強化と優秀な人材の採用が中長期的な成長を実現するための重要な課題です。

これら2つの課題に対する具体的な戦略については、これから詳しくお話しさせていただきます。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

成長を支えるキードライバー(営業)

まず「案件獲得」に関しては、既存のクライアント様へのさらなるサービス提供や新規案件の獲得を積極的に進めていきたいと考えています。

営業力については、自力で案件を獲得することも可能ですが、パートナーとの協業も重要だと理解しています。

2024年8月からデロイト トーマツ グループ様と案件や人材の相互共有など、営業協力を含めた業務提携を進めています。

たとえば、デロイトのプロジェクトで人手が不足している際に当社のコンサルタントが参加するケース、当社の案件で特定の知見が必要な場合にデロイトのコンサルタントにご協力いただくというケースなどが想定されます。

大手の案件にもアンダーで参加しながら、実績を積むことで「この案件、実はデフコンさんがやっていたんですね」といった形で認知いただければ、新たな案件獲得にもつながると期待しています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

成長を支えるキードライバー(採用)

コンサルティングビジネスは労働集約型のビジネスであり、継続して成果を上げていくためにはコンサルタントの採用が最も重要です。

コンサルティング業界では採用競争が激化しており、採用コストも高騰しています。

そのような中、上場企業としての強みを活かし、各種採用活動の充実やM&Aを通じて規模や人員を拡大することも検討しています。

また、この採用への投資を加速させていくためには資本政策を推進していくことも視野に入れています。

将来を見据えた投資として資金をしっかりと確保し、規模の拡大を図っていきたいと考えています。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

既存の投資家の皆様には、コロナ禍を経ての事業転換やその後の試行錯誤において、ご心配をおかけした部分があったかと思います。

祖業の売却や新たな挑戦を繰り返す中で、「この会社はどこに向かうのか」と不安に思われた方もいらっしゃったはずです。

しかし、その過程で当社は多くの経験を積み重ねてきました。

テクノロジーソリューション事業からコンサルティング事業に至るまで、クライアント様や業務提携先を増やしながら、事業基盤を着実に固めてきたと自負しています。

そして現在、これまで1年半かけて構築してきた基盤をさらに拡大させ、新たな成長フェーズに突入したと認識しています。

当社が目指しているのは、単なるITコンサルティング会社ではなく、ミッドキャップマーケットのリーダーとして独自のポジショニングを確立することです。

テクノロジーとコンサルティングを融合させた「デフコン」というブランドで、その立ち位置を確立していきたいと考えています。

ここで改めて強調したいのは、当社にとって「戦略コンサルティングが事業の基盤であること」と「人材を大切にすること」の2点です。

当社はクライアント様だけでなく、コンサルタントや関係者全員を大切にするコンサルタントファーストな会社でありたいと考えています。

この姿勢こそが当社の競争力の源泉であり、他社との差別化を生み出す要因になると確信しています。

特に、コンサルタントが自らの価値を最大限発揮できる環境を整備し、彼ら/彼女らの成長を促進することは、クライアント様により良い価値を提供するという好循環につながります。

この「好循環」を実現し、持続可能な成長を目指すことが、当社の目指している姿です。

株式会社Def consulting 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

コロナ禍や事業転換を経て、時間を要しましたが、事業を大きく成長させるための基盤がようやく整備されたと考えています。

これからは、当社のパーパスである「世界中のどんな企業でも気軽にコンサルティングを活用できる新しい世界を創出すること」の実現を目指し、さらなるスピード感を持って成長を進めてまいります。

また、早期に投資家の皆さまにも成果を還元できるよう、着実に実績を積み上げていきたいと考えています。

今後の展開にぜひご期待いただければ幸いです。

株式会社Def consulting

本社所在地:〒105-6321 東京都港区虎ノ門1丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー21階

設立:1987年8月20日

資本金:100百万円(2024年3月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2001年3月22日上場)

証券コード:4833

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「資産運用ナビ」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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