【3328】BEENOS株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。

BEENOS株式会社は、人・モノ・体験を「日本から海外へ」、「海外から日本へ」と双方向に繋ぐ架け橋となる、”グローバルプラットフォーム”を企業や個人に提供することで、国境を越えたビジネス展開を支援しています。

代表取締役執行役員社長 兼 グループCEOの直井 聖太氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

BEENOS株式会社を一言で言うと

グローバルの変化に常に挑戦し、その課題を解決できる唯一の企業です。

BEENOSの沿革

BEENOS株式会社代表取締役執行役員社長 兼 グループCEO 直井 聖太氏

創業経緯

弊社の創業は1999年に遡ります。

創業者の佐藤輝英がネットプライスという名称で、株式会社サイバーエージェントの関連会社としてスタートしました。

インターネット企業としては比較的古い部類に入り、インターネットの黎明期においてEC(Electronic Commerce)事業を主軸に展開していました。

その後、国内市場におけるBtoCのEC事業を拡大し、2004年7月に東証マザーズ市場(現在は東証プライム市場に上場)に上場しました。

クロスボーダーへの注力

上場後の新たな成長戦略として、グローバル事業に注力する方針が打ち出され、その立ち上げを私が担当しました。

そして2008年7月に、tenso 株式会社(旧 株式会社転送コム)を設立し、海外転送事業を始めました。

海外転送事業を始める前は、BtoCのEC市場の競争が厳しく、Amazonや楽天などの競合がいる中、祖業であるネットプライス事業が伸び悩んでいました。

そのタイミングで中国の大手EC企業の名前を業界内で聞くことが増えており、アジアに目を向ければ縮小する国内マーケットから脱却できると考えました。

当時、日本国内のECサイトのほとんどが海外対応は行っていませんでした。

そこで、日本国内のECサイトの商品を、世界中の消費者へ転送するサービス「転送コム」を開始し、国内から海外へマーケットを拡大させることに成功しました。

当初は外部資本も受け入れながら独立させることも考えていましたが、現在は当社が100%出資する連結子会社となっています。

その他にも、eBayの商品を日本の方が買えるサービス「セカイモン」や、日本語が読めない海外ユーザー向けに日本国内ECの購入をサポートする事業「Buyee」など、グローバルコマース事業を拡大させてきました。

特に現在の主力事業であるBuyeeは、転送コムでは実現できなかった決済のサポートやサイトの翻訳などを提供することで多くのECサイトとの連携を実現し、流通を拡大させてきました。

そして、国内外で人気のあるジャパンコンテンツの支援を行い、グローバルコマースをさらに加速させていくため、エンターテイメント事業にも注力しています。

BEENOSの事業概要と特徴

概要

グローバルコマース事業がメインで、グループ連結売上の約8割から9割を占めています。

日本のEC事業者がグローバルに販売する際のお困りごとに対して、包括的なソリューションを提供しています。

例えば、転送コムは海外ユーザーに日本国内ECサイトでのお買い物専用の国内住所を提供しており、日本のECサイトで商品を購入し、荷物をその住所に送ってもらい、そこから海外ユーザーの住所へ転送するサービスです。

また、主力事業であるBuyeeでは、海外の方がCtoC取引を含む日本・韓国のECサイトで商品を購入する際のサポートを行い、世界中に商品をお届けしています。

この際、EC事業者はサイトを海外対応させる必要がなく、特別なシステムの変更も不要で、海外への販売が可能となります。

Buyeeで購入された商品は一度、国内ECサイトから当社が運営する国内倉庫に届き、検品や梱包がされた後、海外発送の手続きを行うことでユーザーのもとに届きます。

このようなサービスを通じて、グループとして5,000以上のECサイトと提携しています。

また、エンターテイメント事業では新規事業である「Groobee」を中心に、アーティストやアニメ・漫画コンテンツのブランド事業者に対して、商品企画や生産、EC構築や運営受託、イベントサポートなど幅広いソリューションを提供しています。

その他にも投資事業を行っているインキュベーション事業や訪日客の旅行支援を行うトラベル事業、越境EC支援事業といった新規事業があります。

BEENOS株式会社 2024年9月期第3四半期 決算説明会資料 より引用

事業における優位性

難易度の高い越境ECを包括的にサポート

Buyeeサービスを開始した当初は、インターネットを通じて情報やデータは国境を越え拡散されていきましたが、実際のモノが流通するには依然として様々な障壁がありました。

そのため、日本企業は手続きの煩雑さもあり、海外での販売に消極的でした。

一方で、海外の消費者には「日本の商品を購入したい」という強いニーズがありました。

そこで、当社は物流、決済、マーケティングなどに様々なソリューションを提供し、越境ECを行う上で難しいと感じる工程をサポートしています。

例えば、海外ユーザーが日本のサイトで購入する際、ペイパルや海外発行のクレジットカードが使えないという状況があります。

この課題に対応するためBuyeeでは、海外発行カードでの決済はもちろん、サイトの翻訳、海外ユーザーとのやり取りも多言語でサポートしています。

また、越境ECには欠かせないグローバル対応の不正対策も自前で行い、マネジメントしています。

これは一例ですが、言語の壁、物流の壁、決済の壁など、多岐にわたる問題を一挙に解決できることがBuyeeの非常に大きな強みです。

物流のグローバルなオペレーション

まず、ECで購入した消費者にモノをお届けするためには物流を円滑に機能させることが大切です。

例えばCtoCの取引の場合、オールジャンルの商品が取引されるため、法規制の問題などから海外に送れない商品が含まれていることもあります。

また、よく購入される商品のフィギュアは箱も商品の一部であり特殊な梱包が必要です。

特に、アメリカでは荷物が庭に投げ込まれることが多いため、箱が壊れないような梱包を求められます。

また、海外ユーザーが複数のECサイトで購入した場合、少しでも国際配送料を抑えるために、倉庫で同梱し、1つの荷物として発送してほしいという需要もあります。

このような特殊な条件や業界独自のルールを理解していなければ、サービス提供はできません。

その点、当社は物流において必要なノウハウを蓄積し続け、特殊な条件に対してもオペレーションを確立させていることが大きな強みです。

現状、流通額が1,000億円を超えているEC事業者でこのようにグローバルに対応できる物流オペレーションを構築している企業は数少なく、他社にはない優位性だと考えています。

倉庫を分散しクラウド化

当社グループの提携サイトは現在5,000を超え、大手マーケットプレイスも含まれているため、在庫は事実上無限です。

通常のECサイトであれば、委託在庫や在庫量に基づいて売上の最大値を予測し、オペレーションを計画できます。

しかし我々の場合は、どのタイミングでどのような商品が倉庫に到着するのかが読めないため、そのような運用方法は適用できません。

例えば過去には、ある日本の商品が爆発的な人気となり中国ユーザーからの注文が突然殺到し、オペレーションコストやサーバー負荷が一気に倍増するという事態も経験しています。

このような状況に対応するため、当社は倉庫を分散しています。

もちろん、一箇所の大規模センターで集中管理する方がコスト効率は高いかもしれません。

しかし、私たちのビジネスの特性上、どの種類の商品がどれだけの量で倉庫に到着するかは、その日にならないとわかりません。

そのため、複数の倉庫に分散させ、柔軟に人員調整を行える体制の方がメリットがあります。

希少なデータ蓄積とマーケティング支援

当社は国内提携ECサイトの裏方に回り、国際物流・海外決済などをサポートしています。

海外ユーザーはBuyeeに会員登録してから各ECサイトで購入するため、我々はどの国の方がどの商品を購入しているのかといった情報が手に入り、結果的にユーザーの購買データが蓄積されます。

この情報を活用した海外マーケティング支援を行えることも当社の強みです。

また、日本の商品を購入する海外の方々は「ネットサーフィンをしてたまたま見つけて購入した方」というよりかは、「どうしても欲しいから探して購入した方」の割合が多いことが特徴です。

そのため、熱量のあるファンの方など、非常に濃いデータを得ることができるため、他社の一般的なマーケティングで得られる情報とは異なります。

また、当社グループではエンターテインメント事業も扱っており、Buyeeで得た情報をもとに国内エンターテインメントを支援することで、コンテンツの海外進出の後押しにも繋がります。

BEENOSの成長戦略

市場環境と現状

越境ECという言葉を聞いた時、多くの方が中国の爆買いをイメージされると思います。

確かに、我々が転送サービスを開始した当初は、中国からの注文が全体の50%近くを占めていました。

しかし、現在では中国の比率はわずか2%ほどで、出荷先で最も多いのはアメリカとなり、全体の約30%を占めています。

一方で、現在の世界的な潮流としては、中国系プラットフォームが急成長し、中国製品をアメリカに輸出する越境ECが台頭しています。

BEENOS株式会社 2024年9月期第3四半期 決算説明会資料 より引用

しかし、そうしたECサイトでは主にコモディティ化した商品(ガジェット商品や流行のファッションアイテムなど)を扱っているのに対し、Buyeeで主に購入されているのは、現地ではなかなか手に入らない流通が限られている商品で、明確な違いがあります。

Buyeeで購入されている最も大きなカテゴリーはホビー・エンタメ商品で、アニメグッズ・エンタメグッズ・スポーツ関連の商品が多いのが特徴です。

BEENOS株式会社 2024年9月期第2四半期 決算説明会資料 より引用

今後の越境ECの広がり

Buyeeの強みは、ホビー・エンタメ商品を中心に日本のC2Cマーケットプレイスでしか流通していないようなロングテールな商品まで網羅していることです。

しかし、まだまだ「日本国内だけで販売すればよい」と考える企業が多く、それは海外ニーズに対応するための在庫管理や決済対応などがネックとなっているようです。

当社のソリューションを提供することで、これまで隠されていた日本企業のプレゼンスを高めていくことができると考えています。

また、フロムジャパン以外の市場にも進出を図っており、足元で特に力を入れているのがフロムコリアです。

現在、BuyeeではK-pop関連商品が多くの支持を集めています。

また、韓国コスメ商品も圧倒的なポテンシャルを秘めています。

そこで、2023年8月には韓国越境EC支援サービスDelivered KOREAと連携しました。

このような連携を積極的に行いながら、「日本から世界へ」だけでなく、世界中のプラットフォームを繋ぐ「世界から世界へ」のサービスへと伸ばしていきます。

BEENOS株式会社 2024年9月期第3四半期 決算説明会資料 より引用

注目していただきたいポイント

我々は、越境ECの分野において、中国の爆買いとは異なるドメインでビジネスを展開しています。

また、世界中をターゲットにしているため、日本国内のEコマース市場とは比較にならないほどの広がりがあります。

そして、安定的に越境ECのサービスを運営するためには、変化し続ける各国の規制を常に把握し、それに合わせた柔軟なリーガル対応を行い、各種オペレーションを整備していくことが必要です。

物流面でも、独自のメニューを含めた様々な配送手段を提供しており、確実にユーザーに商品を届ける体制を整えております。

もちろん、より効率的なオペレーションを実現していくためには、AIを含めたテクノロジーの活用が不可欠です。

今後もオペレーションを強みに、これまでの蓄積してきたデータを活用し、他社にはできないソリューションを提供し続けていきます。

ぜひ、当社の事業基盤と今後の成長性に注目していただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、日本発のインターネット企業として世界に挑み、成功を収めている数少ない企業です。

ECを取り巻く市場では、ルールや環境が日々変わり続けていますが、これまでもあらゆる変化に柔軟に対応しながら成長を遂げてきました。

足元では年間800億円の外貨を稼いでおり、日本にとって希少価値の高い企業だと自負しています。

投資家の皆様におきましては、我々の世界への挑戦に期待していただき、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

BEENOS株式会社

本社所在地:〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー7F

設立:1999年11月25日

資本金:27億75百万円(2023年9月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2004年7月8日上場)

証券コード:3328

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

目次