【3480】株式会社ジェイ・エス・ビー 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年6月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ジェイ・エス・ビーは学生マンションの先駆者として、今後も新しい企業価値の創造を目指します。

代表取締役社長の近藤 雅彦氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ジェイ・エス・ビーを一言で言うと

健全な若者の育成と魅力溢れる社会の実現を目指す、学生マンション総合プロデュース企業です。

ジェイ・エス・ビーの沿革

株式会社ジェイ・エス・ビー代表取締役社長 近藤 雅彦氏

創業経緯

1976年に京都市で創業しました。

当初は学生向けのアパートやマンションの賃貸仲介業からスタートし、学生が部屋探しをする2月、3月、12月に下宿やアパートの賃貸仲介を行っていました。

しかし、単なる仲介業ではビジネスの成長は見込めないと考え、日常清掃や家賃回収、トラブル時の駆けつけ対応などの管理業務を始めました。

それまでの業績は季節性がありましたが、管理業務に取り組んだことで売上の波を平準化し、安定したビジネスモデルを実現しました。

学生マンションのトータルサービスを展開

1986年の同志社大学の京田辺キャンパスへの大規模移転を契機に新規エリアでの開発を積極的に行うようになり、1992年の立命館大学の「びわこくさつキャンパス」への移転の際には、大学生協と提携し、学生マンションの共同開発を開始しました。

その後、全国の主要都市(大阪、東京、名古屋、福岡、仙台、北海道など)へと展開し、事業を拡大していきました。

2004年にはマンションと不動産仲介を「UniLife(ユニライフ)」とブランド化し、約20年間にわたって成長させてきました。

そして、2017年に東証二部に上場し、翌年には東証一部へ、2022年に東証プライム市場に移行しました。

大学生協や大学との連携強化

近年では、大学が民間企業と連携して学内で学生寮を運営するケースが増えています。

当社も大学から土地を借上げ、学生マンションを建設し、学生からの家賃収入で投資を回収するスキームを展開しています。

例えば、拓殖大学や国立の京都工芸繊維大学、山口大学でこのスキームを導入しています。

また、2024年の春には山口大学で二棟目の学生マンションと長崎大学で大規模な学生マンションを完成させました。

ジェイ・エス・ビーの事業概要と特徴

概要

学⽣マンションの企画・開発・提案、⼊居者募集、⼊居者・建物管理を⼀括サポートする不動産賃貸管理事業を展開しています。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

現在、全国で約1,200校の大学、専門学校と提携し、学生マンションや学生会館と呼ばれる物件を数多く手がけています。

これが当社の主な収益源です。

そして、当社の一気通貫したサポート体制により、物件開発数の増加や高入居率を実現しています。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

事業における優位性

企画・開発・提案力

長年にわたって、大学近くの地主に学生マンションの建設を提案し、相続対策や賃貸マンション経営のサポートを行ってきました。

当初は一般管理業務を中心でしたが、現在は一括借り上げ型のサブリース契約が中心です。

当社全体の管理戸数は約9万4千戸ですが、その半数以上がサブリース契約です。

空室があっても決まった保証賃料を毎月、オーナー様にお支払いします。

これまで入居率99.9%と長年の実績があるので、オーナーには安心感と⻑期安定的なリターンを提供しています。

また、近年では個人の地主だけでなくデベロッパーなどの不動産開発業者からの依頼も増えています。

大学との協業案件も増え、長崎大学や山口大学など国立大学の敷地内の大学寮の開発を積極的に進めています。

さらに、環境配慮型や食事付き学生マンションなど、多様な学生マンションの提案を行っています。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

募集力

募集に関しては、当社のネットワークを活用して、学生をターゲットとした施策を行っています。

まず、入居者が学生であるため、入退室の時期を正確に把握できます。

そのため、他の不動産会社に比べて早い段階で募集活動ができ、決まったサイクルで運営することができます。

当社は、4月1日の入学に合わせて契約を開始し、4年後の3月25日を退去期限に設定するというサイクルを基本としています。

退去後の3月26日から1週間で部屋の掃除や壁紙の張り替えを行い、新たな入居者に引き渡しを行います。

また、入居者に対しては、次期の契約更新について事前に聞き取りを実施し、解約する意向を確認できた場合には早期に募集活動を開始します。

このような良サイクルを実現し、入居率99.9%を実現しています。

足元ではIT重要事項説明を拡充させ、入居申込から契約締結までのフローを効率化させています。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

サービス・管理力

当社は入居者に何かあった場合にすぐにサポートするため、夜間や休日は警備会社と連携しながら、24時間365日の駆けつけ体制を整えています。

親御さんからの安否確認にも対応し、オートロックのエントランスや部屋から管理会社に直接連絡できるホットライン機能を備えている物件もあります。

また、外観や仕様は一般のマンションと変わりませんが、30年以上前からオリジナルのセキュリティシステムを導入するなど、防犯面を充実させています。

さらに、近年は入居者向けのアプリを導入し、注意事項や連絡事項をプッシュ通知で迅速に伝える仕組みを整えています。

スマホから直接管理会社に連絡できる機能も提供しており、今後もブラッシュアップを図っていきます。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

ジェイ・エス・ビーの成長戦略

安定した市場環境

現在、日本には大学、短大、専門学校を含め約360万人の学生がいます。

そのうち約半数が一人暮らしをしており、約180万人の市場が存在します。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

少子化の影響で学生マンション事業に対してネガティブな印象を持つ方も一部いらっしゃいますが、実際には進学率の上昇により学生数は横ばいです。

また、政府は2033年までに留学生を40万人迎え入れる計画を発表しており、学生数の増加を後押ししています。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

そのような中、当社の管理戸数は約9万4千戸で、学生マンション業界では最大規模ですが、市場シェアでは5%とまだまだ成長が見込める状況です。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

新価値創造 学⽣マンション

学生マンションを単なる住居ではなく、「学び・成長・繋がり」の場として捉え、若者の人間力・社会人基礎力の向上に繋げたいと考えています。

従来から、イベント開催や就活支援、新入生向けのウェルカムパーティーなどを実施していましたが、それらを進化させ、「学びのマンション」をコンセプトとした多様なコンテンツ提供を一部のマンションで開始しました。

最近では、大学主催のビジネスコンテストへの参画など、学校と連携する形での取り組みも増えています。

今後、より広範囲に学生を支援できるよう企業M&Aや業務提携を活用し、提供価値を高めていきます。

株式会社ジェイ・エス・ビー 2024年10⽉期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

注目していただきたいポイント

少子高齢化により市場が縮小すると考える方は多いかと思いますが、実際には進学率の上昇により学生数は増加傾向にあります。

また、当社はこれまでも圧倒的にシェアを伸ばし続け、長年の実績も積み上げてきました。

さらにコロナなど外部環境に左右されることなく、安定した業績を維持してきました。

今後も学生マンションは安定的な需要を確保しつつ、当社の強みを活かして多様な物件を開発していきます。

ぜひ学生マンションの市場環境が良好であることと、当社の一気通貫したサポート体制による着実な成長に注目していただきたいです。

投資家の皆様へメッセージ

当社の管理戸数は年々増加し、安定した収益を生み出すストックビジネスを実現しています。

これまで40年以上にわたり蓄積してきた学生マンションの企画、開発、募集、運営のノウハウは他社にはない強みです。

また、2023年11月から始まった新中期経営計画では、2030年の長期ビジョンの第二フェーズとして、既存事業と新規事業を結びつける両利きの経営の実行体制を強化していきます。

社員全員が経営に参画し、生産性の向上を図るための組織づくりを進めています。

さらに、海外市場には日本以上の成長ポテンシャルがあると見込んでおり、ゆくゆくはグローバル展開も考えています。

投資家の皆様には、当社の挑戦をぜひ応援していただきたいと考えています。

株式会社ジェイ・エス・ビー

本社所在地:〒600-8415 京都府京都市下京区因幡堂町655番地

設立:1990年7月27日(創業:1976年12月14日)

資本金:42億6,493万4,500円(2024年4月末時点)

上場市場:東証プライム市場(2017年7⽉20⽇上場)

証券コード:3480

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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