【3826】株式会社システムインテグレータ 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月3日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社システムインテグレータは「時間を与えるソフトウエアを創り続ける」をミッションに掲げ、自社開発した業務系ソフトウェアで企業課題の解決に取り組んでいます。

代表取締役社長CEOの引屋敷 智氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社システムインテグレータを一言で言うと

ソフトウェアの力で時間を与える会社です。 

システムインテグレータの沿革

株式会社システムインテグレータ代表取締役社長CEO 引屋敷 智氏

創業経緯

当社は1995年3月に創業しました。

創業時は、現会長の梅田が製品企画を担当し、専務の碓井がシステムの開発をしていました。

その1年後の1996年3月に、最初の自社製品である「SI Web Shopping」をリリースしました。

これはAmazonの日本進出より早く、日本初のECサイト構築パッケージになりました。

そして、1997年8月にはデータベース開発支援ツール「SI Object Browser」をリリースし、事業拡大の第一歩となりました。

その後、2002年3月に取締役として私が入社し、同年6月にはデータベース設計ツール「SI Object Browser ER」をリリースし、IT企業向けのSaaSとして主力ビジネスとなりました。

ERPへの注力と上場

当社はもともとERP事業を手掛けていたにもかかわらず、私が入社した当時は売上が思うように伸びていませんでした。

その理由は、基幹業務システムが社内に閉じた環境でサーバーが運用されていたからでした。

今のようなクラウド化は一般的ではなく、あまりERPの市場ができていませんでした。

しかし、将来的には社内の基幹業務システムはクラウド化していくだろうと考え、革新的なERP「GRANDIT」を開発しました。

そして、GRANDITのリリースにより売上は急成長を果たし、2006年12月に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。

その後も、Object BrowserシリーズやGRANDITを中心に開発を行い、安定的に事業を成長させています。

システムインテグレータの事業概要と特徴

概要

現在、ソリューション事業、クラウド・SaaS事業、新規事業の3つのセグメントで事業を展開しています。

ソリューション事業の中でもERP事業の売上が大きく、主力製品のGRANDITは一度導入されると2億から10億円の売上を見込む大型プロジェクトとなっています。

主要顧客は製造業が中心で、企業の基幹業務を一元管理し、業務効率を大幅に向上させることができるため、多くの企業で採用されています。

さらに「SI Web Shopping」とAdobe社製「Adobe Commerce」をベースに、お客様ニーズに合わせたカスタマイズを行い導入の支援をしています。

また、AIの活用も行っており、画像認識技術を用いて製造工程の最終段階で製品を検査し、不良品を自動的に検出・排除するシステムを開発しています。

そして、クラウド・SaaS事業ではObject Browserシリーズやプロジェクト管理ツール「OBPM Neo」などIT企業向けの製品を展開しています。

さらに、新規事業ではプログラマーのスキルを評価するサービスを提供しており、社員や中途入社のエンジニア人材がどれだけ技術力を持っているのかを客観的に測定するために活用されています。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

強固な顧客基盤とストックビジネスによる安定収入

次世代ERPコンソーシアムであるGRANDITは、主に製造業をターゲットにしています。

基幹業務システムの構築を行っているため、一度導入されると長期間使用されるケースが多く、各社と保守運用の契約を結ぶことでストックビジネスとしても展開していきます。

国内の製造業は製造工程全体での生産性向上を重視しています。

また、製造工程は企業によって異なるため、カスタマイズすることが多く、当社社員の業務理解も大切です。

製造業は、長年のERP開発で培ったノウハウを必要とする業界のため、高い参入障壁があると考えています。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

トータルソリューション

当社の売上規模は約50億円程度と小さな企業ではありますが、自社製品を開発しプライムベンダーとして顧客と直取引ができることが大きな強みです。

一般的なIT企業のように派遣型ビジネス(SES)や、受託開発は行っていません。

そして、250人弱の社員の中には、上流から下流に至るまでプロジェクト管理ができる人材がおり、この規模でトータルソリューションを提供できる企業は少ないはずです。

このトータルソリューション力は、当社の競争力の源泉となり事業成長を支えています。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

システムインテグレータの成長戦略

選択と集中

これまで、ERPを中心に様々な新規ビジネスを立ち上げてきましたが、多角化しすぎたことで非生産的なポートフォリオとなっていました。

そこで私が代表に就任してからは取捨選択を行い、3つの事業を撤退させました。

今後は、業務系のERP、プロジェクト管理、AIの3つの事業分野に集中し、「企業向け業務システム」の商品開発を行っていきます。

また、AI事業については、既にAI技術を活用した画像検査システムを提供していますが、生成AIを使って身近なビジネスシーン向けの製品も開発中です。

製造業を中心に各業界のニーズに応じたサービスや製品を提供し、基幹業務の中にAIを取り込んでいきたいとも考えています。

また、当社のシステム開発工程自体にもAIを導入し、生産性をさらに高めていく方針です。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

真のシステムインテグレーション

現在、日本の製造業はグローバルでの競争力が低下しています。

しかし、日本はものづくりの国です。

今後、製造業がグローバルで活躍できるように生産性を高めるシステム開発を行っていきたいと考えています。

特に、製造業の現場ではAIの導入がなかなか進んでいないのが現状です。

そこで、当社が現場で使える製品・サービスにカスタマイズし、新たな価値提供を行っていきます。

また、IT業界に対しても生産性向上に貢献するために新サービスの開発を進めていきます。

実はIT現場もデジタル化が進んでいないケースが多く、今後も成長余地のある分野だと考えています。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

若手IT人材の採用と育成状況

当社はプライムベンダーとして、営業からコンサルティングや開発、導入、運用に至るまで自社の人材で行っています。

そのような中で、IT人材の確保は重要なポイントです。

2018年2月期頃から事業拡大に向けて新規採用を積極化しており、新入社員の教育に力を入れています。

当社の提供しているERPシステムの導入にはお客様ごとに異なる業務を理解し対応する必要があるため、人材育成には3〜4年かかります。

幸いにも中途採用や新卒採用は概ね計画通りですが、早期戦力化を目指して社内教育の体制を整備し、人材のパフォーマンス向上を進めてまいります。

株式会社システムインテグレータ 2024年2月期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社のビジネスはERP事業などを中心に、非常に高い参入障壁があります。

もちろん人材の戦力化には時間がかかりますが、多くの顧客の生産性を向上させ、満足度を向上させるために開発やサポートに注力して行っています。

顧客が当社に期待しているのは、システムを開発し、長期にわたって保守・運用を安定的に提供することです。

今後も安定的な顧客基盤を維持しながら、新しいサービスを世の中に提供し、社会の生産性を向上させていきます。

そして、これまでは技術など全て内製化して対応してきましたが、これからは外部との業務提携を活用しながら、顧客ニーズに対して迅速に対応していきたいと考えています。

例えば、2025年2月期から新たに立ち上げたSAP事業において、SAPに知見のある企業の業務提携や協業を視野に入れた事業展開を考えています。

今後もシステム開発から運用・サポートまで一貫して提供することで、顧客の期待に応えていきたいと考えています。

ぜひ、当社の安定した顧客基盤と新しいサービスの開発の行く末に、ご注目いただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

2018年の秋に、AIビジネスに本格的に取り組むことを発表した際は株価が高騰しましたが、足元では停滞気味です。

当社は2025年2月期からの2年計画において、改めてAI事業にリソースを集中させることを発表しました。

そして、既存事業・新規事業を伸ばし、トップラインの回復を一日も早く達成することが目標です。

これからも新しいことや変化に対して恐れることなく、スピード感を持って事業を推進していきます。

投資家の皆様の温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社システムインテグレータ

本社所在地:〒330-6032 埼玉県さいたま市中央区新都心11番地2 ランド・アクシス・タワー(明治安田生命さいたま新都心ビル)32階

設立:1995年3月14日

資本金:367,712千円※資本準備金357,712千円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2006年12月4日上場)

証券コード:3826

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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