【6564】株式会社 ミダックホールディングス 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年7月5日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社 ミダックホールディングスは特定の廃棄物に限定せず、総合的な廃棄物処理を提供する環境創造集団です。

代表取締役社長の加藤 恵子氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社 ミダックホールディングスを一言で言うと

持続可能な未来に続く廃棄物処理を実現する環境創造集団です。

ミダックホールディングスの沿革

株式会社 ミダックホールディングス代表取締役社長 加藤 恵子氏

創業経緯

ミダックホールディングスの前身は1952年に静岡県浜松市で設立された小島清掃社です。

当初は、し尿の汲み取りとゴミの回収を浜松市から依頼され、約18年間行っていました。

その後、一般廃棄物の許可を浜松市が買い取り、産業廃棄物の処理を始め、事業を拡大していきました。

三種の神器を完備

産業廃棄物処理業界では水処理施設、焼却施設、最終処分場を三種の神器と呼んでいます。

この三種の神器を揃えたことが当社の成長に繋がっています。

まず、1986年に水処理施設を新設し、1988年に処理能力を50t/日に増強しました。

同年、管理型の最終処分場および中間処理業の許可を取得しました。

さらに、2000年には株式会社タクマとの共同出資でミダックふじの宮を設立し、大型焼却処理施設を富士宮市に設置しました。

こうして三種の神器が揃い、産業廃棄物処理業界における強力な事業基盤が構築されました。

名証上場と東証上場

また、2015年には株式会社三生開発の全株式を取得し、子会社化しました。

この子会社化により、浜松市内で唯一、アスベストなどの特定有害廃棄物を取り扱う最終処分場を持つ企業となり、独占的な地位を築きました。

このM&Aが事業の成長を促し、2017年12月に名証第二部(現 名証メイン)に上場することができました。

また、「奥山の杜クリーンセンター」の設置計画が進展したことで、成長のビジョンを描くことができ、翌年の2018年12月には東証第二部(現 東証スタンダード)に上場を果たしました。

代表就任と市場ステップアップ

2019年4月、私は代表に就任しました。

もともとは税理士として当社のIPO準備を支援しており、その際に当社から参画の打診を受けたことが入社のきっかけです。

その後、取締役兼経理統括部長として内部管理体制の整備を進め、上場を実現しました。

上場後、前社長からの指名もあり代表に就任しました。

産業廃棄物処理業界では女性の比率が高いことが特徴ですが、国内の上場企業では女性社長は珍しく、2023年1月末時点でプライム市場に女性社長は15人しかいません。

高度な経営の舵取りを任されたことで、重責に身の引き締まる思いでした。

その後、事業成長や安定性を評価していただき、2019年12月に東証一部(現 東証プライム)、名証一部(現 名証プレミア)に上場を果たしました。

奥山の杜クリーンセンターの稼働とHD化

2022年2月より、2018年に設置許可証の交付を受けた奥山の杜クリーンセンターを稼働させることができました。

この施設は東京ドーム約2.5杯分の規模を持つ大型の管理型最終処分場で、約30年間の埋立期間を計画しています。

また、柔軟な事業拡大を目指し、2022年4月よりミダックホールディングスを持株会社とするホールディングス体制に移行しました。

現在は関東エリアへの進出を加速させ、更なる事業成長を目指しています。

ミダックホールディングスの事業概要と特徴

概要

当社は廃棄物の収集運搬から、水処理・焼却処理・破砕処理などの中間処理、そして最終処分に至るまでの一貫処理体制を築いています。

また、当グループ以外の処理業者の仲介やリサイクルにも取り組んでいます。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

一貫処理体制

産業廃棄物処理業界では、過去に不法投棄が横行した時代があります。

排出事業者は信頼できる業者に依頼しなければ、自分たちの名前が入った廃棄物が不適切に処理されるリスクが高まるため、非常にセンシティブです。

しかし、当社に依頼することで、収集運搬から中間処理、最終処分まで全ての工程をグループ内で完結できるため、不法投棄をされる心配がなく安心して廃棄物を委託することができます。

さらに、グループ内で全ての処理を行うため、コストを抑えることができます。

例えば、2017年末に中国が廃プラスチックの輸入禁止措置を行った際、日本国内で廃棄物が溢れ返り、業界全体で廃棄物の処理コストが増大しました。

しかし、当社は各施設の効率化を図り、コストを削減することで高い競争力を維持しました。

これは、一貫処理体制を構築しているからこそ実現できたものであり、特に立場が強い最終処分場を保有していることが大きく関わっています。

実際に、中間処理施設は最終処分場への排出量が限られています。

また、最終処分場の許可を得るのは非常に難しいため、許可を持つ業者は少ないです。

このため、最終処分場の需要が高まる一方で供給が追いついていないため、収益性を高く保つことができています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

多数の処理施設・許可を保有

私たちの商圏は太平洋ベルト地帯であり、多くの処理施設を保有しています。

産業廃棄物の収集運搬に関しては、12自治体で38の許可証を、一般廃棄物については7自治体で9つの許可証を保有しています。

また、中間処理においては、5自治体で10の許可証を取得しています。

さらに、最も重要な最終処分については、浜松市の許可証を持ち、約30年間の埋立を計画しているものを含め3つの施設を保有しています。

このように、多数の処理施設や許可を保有することで、特定の廃棄物に依存せず、総合廃棄物処理企業としてのポジションを確立しています。

コロナ禍において製造業が停滞している中でも、医薬品製造業や食品業界からのニーズが高まり、自治体からの受託量も増加しました。

この戦略が功を奏し、過去最高益を更新し続けています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

ミダックホールディングスの成長戦略

ミダックグループ10年ビジョン 『Challenge 80th』

10年ビジョン『Challenge 80th』の実現に向け、二段階にわたる中期経営計画を推進しています。

まず、第一次中期経営計画では、2027年3月期までにM&Aを除くオーガニックな成長で売上高100億円、経常利益50億円を達成することを目標としています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

実際の進捗を見ていただければご理解いただけると思いますが、第一次中期経営計画の最終年度に向けて、計画通り順調に推移しています。

奥山の杜クリーンセンターがオーガニックな成長を牽引していくため、残り3年間での達成は決して不可能ではないと考えています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

そして、最終目標として、2032年3月期までにM&Aを含む成長を計画しており、売上400億円、経常利益120億円を目指します。

最終目標の利益率が若干下がるのは、M&Aによる成長を含んでいるからです。

どのような施設を購入するかによって、売上高に占める各施設の割合も都度変わります。

そのため、保守的に見て経常利益率30%を最終目標としています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

中長期的な成長戦略

当社は同業他社に比べて、営業利益率が約37%と圧倒的に高いことが特徴です。

これは収益性の高い管理型最終処分場、安定型最終処分場、中間処理の焼却処理施設のシェアが高いことに起因しています。

このポジションと利益率を維持しながら、規模を拡大していきます。

すでに水処理施設の処理能力の強化を進めており、既存の施設と比べて処理能力が約5倍となる計画の新規水処理施設を2026年4月以降に稼働する予定です。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

また、国内には約5.3兆円の産業廃棄物処理業界の市場規模があり、そのうち約2.1兆円は関東に集中しています。

そのため、今後も需要が見込まれる関東方面への進出を計画しています。

実際、浜松市に位置する当社の最終処分場は関東に近く、立地のアドバンテージがあります。

排出業者は運送費込みで処理費用の予算を組むため、高速道路からも近く、好立地な当社の最終処分場が選ばれると考えています。

関東方面で中間処理施設と最終処分場を展開し、更なる事業拡大を目指します。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

さらに、東日本においても管理型最終処分場を計画しており、既に調査を進めています。

最終処分場の許可取得は容易ではないため、候補地を東日本全域に広げて開発を推進しています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

サステナビリティへの取り組み

当社は廃棄物処理業者として、カーボンニュートラルの実現に向けて様々な取り組みを行っています。

まず、焼却後のばいじんにCO2を吸着させ、機能性覆土として最終処分場に埋めることで、最大983年分のCO2を貯留できる取り組みを始めています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

また、焼却由来のCO2を利用して微細藻類を培養し、高付加価値物質「フコキサンチン」を生産しています。

この物質は医薬品や化粧品に使われる希少成分であり、経済性を確保しながらCO2削減を目指しています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

さらに、当社グループの子会社である岩原果樹園(山梨県)では、やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度に基づき、土壌表層の炭素量を年間0.4%増加させる取り組みを行っています。

株式会社 ミダックホールディングス 2024年3月期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

特に注目していただきたいポイントは、収益性を維持しながら規模を拡大していくミダックグループの成長戦略です。

現在、同業他社と比較するとまだ規模は小さいですが、収益性の確保を優先しつつ、着実な規模の拡大を目指しています。

具体的には、需要の高い関東方面への進出を通じて市場シェアを拡大していく計画です。

ぜひ、当社の安定した事業基盤と戦略的な成長にご注目いただき、今後の成長に期待していただければと思います。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、水と大地と空気そして人、すべてが共に栄えるかけがえのない地球を次の世代に美しく渡すために、地球にやさしい廃棄物処理を追求することを大切にしています。

今後は、事業基盤の強化を図り、廃棄物処理業界においてトップクラスのシェアを獲得していきます。

持続可能な成長を実現するために、サステナブルな取り組みの研究も進めています。

ぜひ、当社の取り組みに興味を持っていただき、投資家の皆様からのご支援をお待ちしております。

株式会社 ミダックホールディングス

本社所在地:〒431-3122 静岡県浜松市中央区有玉南町2163番地

設立:1964年7月13日(創業:1952年4月1日)

資本金:90,000,000円(2024年7月アクセス時点)

上場市場:東証プライム市場(2018年12月21日上場)、名証プレミア市場(2017年12月22日上場)

証券コード:6564

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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