【9331】株式会社キャスター 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年4月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社キャスターは新しい時代に向けて新しい当たり前を作る会社です。

リモートワークを当たり前にするために、当社で働いている専門的なスキルを持ったリモートワーカーに業務委託できるCASTER BIZシリーズなどを提供しています。

代表取締役の中川 祥太氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社キャスターを一言で言うと

「リモートワークを当たり前にする」会社です。 

キャスターの沿革

株式会社キャスター代表取締役 中川 祥太氏

創業経緯

まだ前職に在籍していた2013年頃、私はクラウドソーシングというインターネットを活用して企業や個人が業務委託をするという業態について知りました。

クラウドソーシングの業界では、リモートで働く方との業務委託契約が基本のため、最低賃金の適用外かつ労働基準法も適用されないというように、労働環境は良くありませんでした。

私自身もBPO業界を経験し、制度や環境に課題を感じていたため、適切な就業環境をリモートワークの人々に提供したいと考え、2014年に創業しました。

また今後、日本における労働人口が減少していくことは明らかで、リモートワークで働く方の環境を整えることが人手不足の解消につながるのではないかと考えました。

リモートワークを当たり前に

当社は創業時より、フルリモートで経営を行っており、従業員やクライアントとのやり取りは全てオンラインで行われています。

創業した2014年にはCASTER BIZ assistantを、2015年には在宅派遣®のサービスを開始しました。

その後もCASTER BIZシリーズ(以下「BIZシリーズ」)を中心にWaaS(Workforce as a Service)事業の領域を経理・労務・採用などまで拡大し、その他事業として人材紹介事業や海外事業も加わり事業成長を加速してきました。

そのような中で2020年のコロナ禍をきっかけにリモートワークの認知度は急上昇しました。

ただ、緊急事態宣言などによって人の行動が制限されるとともに経済活動も停滞していたため、採用活動や事業規模を縮小せざるを得ない企業もあったことから、その余波を受けコロナ流行当初の売上は不安定になっておりました。

しかしコロナ禍が長期化したことでリモートワークのノウハウを求める声が多くなり、リモートワークの導入コンサルティングサービスなど新たな取り組みをする中で新規案件の確保に繋がり、コロナ禍が落ち着くに従って企業からの引き合いも急速に戻り始めたため、売上は安定を取り戻しました。

現在はコロナ禍を経て、人材不足のニーズが高まっており、当社事業は着実に伸びています。

上場経緯

当社は2023年10月にリモートワークの認知度と信頼度を高めていくために上場しました。

私たちのミッションは「リモートワークを当たり前にする」であり、上場は、リモートワークの社会的信用力の向上と事業拡大のための資金調達手段の確保を目的としたものです。

今後、ミッションの実現を目指し、あらゆる仕事のリモートワーク化を実行していく過程において、労働人口が減少していく日本や世界における社会課題を解決していくことにより事業を拡大していきたいと考えています。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

キャスターの事業の概要と特徴

概要

当社の事業は大きく2つに分かれています。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

1つ目は、BIZシリーズを中心としたWaaS事業で、これは日常業務から採用・経理・労務などの専門業務を世界から参画するリモートワーカーが代行するサービスです。

取引先企業は当初、スタートアップを含む300名以下の中小企業がメインでしたが、最近は人材不足がほとんどの企業の課題で、従業員数の多い大企業からも依頼が入るようになりました。

また、エリアとしては首都圏のお客様が非常に多いですが、当社に依頼が来る業務はリモートワーク前提で受託しているため、コミュニケーションや成果物にクラウドサービスを活用することで場所を選ばないサービスとなっております。

2つ目は、主に在宅派遣やReworkerを含む人材派遣および紹介事業です。

在宅勤務を前提としたリモート派遣サービスと、リモートワークに限定した求人・転職メディアであるReworkerを運営しています。

直近では2024年4月からの障害者雇用促進法の改正により企業が雇用すべき法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられ、今後も段階的に引き上げられていくことを見越し、Reworkerでは障がい者雇用の支援を開始しています。

在宅派遣®においても定着率促進のため紹介予定派遣をスタートするなど、多様な働き方を提供することで、リモートワークとのシナジーを生み出していきたいと考えています。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

高い採用力

フルリモートワークを展開しているため、採用力は非常に高いことが特徴であり強みです。

コロナ禍を経てリモートワークに価値を感じる方々が非常に増えており、2019年から2023年にかけて従業員数は2倍以上にまで増加しました。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

この人手不足が加速している時代に、ここまで高い採用力を実現できているのは、当社が提供しているフルリモートワークの環境と働き方としてのリモートワークの需要が高まっていることにあると考えております。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

適時・適切なメンバーの登⽤

当社のBIZシリーズは日常業務から経理・採用・労務・営業・マーケティング・ITなどの専門領域まで幅広い業務内容に対応しています。

また、様々なサービスを組み合わせて利用することが可能で、必要な専門性に合わせてプロジェクトチームの組成を行うことができます。

そしてお客様からの申し込みがあった場合は、当社がお客様のプロジェクトに適切なキャストと呼んでいるメンバーを選定しております。

フリーランス人材のマッチング事業とは違い、チームで対応するため、タスクごとに専門性やスキルをしっかりと担保した形でサービスを提供できます。このような強みによって、「明日から急遽人手が不足する」「リソースは足りないけれど、早急に新規事業を発足させてプロジェクトを組成したい」と考えるお客様などが幅広く当社のサービスを活用されています。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

さらに2024年3月より、CASTER BIZ assistantが24時間365日の業務対応を開始しました。

国内だけでなく海外在住の従業員を加えたサポート体制を構築し、夜間・早朝問わず、地域やタイムゾーンを超えて業務の依頼が可能です。

これによりさらに人材不足に悩む企業の課題を解決することができるようになりました。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

独⾃のインフラ・運⽤を構築

当社はフルリモートワーク環境を創業時から開発し続け、この業界におけるパイオニアだと自負しております。

クライアント企業から寄せられる様々な業務依頼に対しても独自のタスク管理システムを開発して運用しています。

創業当初よりフルリモートワークを前提として開発しており、全キャストの活動内容・クライアント別の時間の使用状況・生産性・最終アウトプットに至るまで、全ての状況がタイムスタンプ付きで管理されています。

過去の対応タスクのデータを蓄積していることから、依頼されるタスク内容によっておおよその作業時間や最適なスキルをもったキャストを自動でレコメンドすることで、キャスト選定に係る工数の効率化・品質基準の確保を可能としています。

このような体系的な管理システムは国内ではおそらく当社が初めて導入し、他社サービスは後追いで開発を行っている状況です。

このように当社はリモートワークに特化したシステム投資を続けていくため、今後も独自のシステムインフラを整備していきます。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

⼩ロットサービスの実現

フルリモートワークを駆使し、分単位〜時間単位で自由にタスクを依頼できるサービスを定額価格で提供しております。

例えば、当社のCASTER BIZ assistantは6ヶ月契約の場合、月額約13万円から利用可能です。

また、1案件の中に多種多様なタスクを含むことができるため、サービス開始前に発生する要件定義のフェーズが必要なく、タスク単位で柔軟にサービスを提供することができます。

これにより一般的なBPOサービスと差別化を図り、小ロットでもサービスを提供することができ、BPOによる金額負担に課題を感じている中小企業にとっても、定額の中で自由に組み換えて業務依頼が可能な利用しやすいサービスモデルとなっております。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

キャスターの成長戦略

市場性

中小企業は慢性的な人手不足である一方で、BPOなどの人材サービスの活用が進んでいません。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

先ほどもお話ししましたが、当社サービスは小ロットで提供できるため、中小企業は手軽かつ柔軟に人手不足を解消することができます。

退職リスクやマネジメントコストなどの定性的な面も加味すると、当社のサービスは非常に受け入れられやすいサービスだと考えております。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

特に国内における事業環境においては、中小企業の多くが人手不足に悩まされており、今後も生産年齢人口の減少により、慢性的な人手不足により採用難は深刻化していきます。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

このような環境下において、中小企業へのWaaSを活用したアウトソーシングの需要はTAMで2.7兆円だと試算しました。

2.7兆円のTAMはあくまでも既存領域における試算であり、リモートワークを活用し対応セグメントを拡大していくことで、TAMも格段に広がっていくものと考えております。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

この成長性の高い市場で当社は既存事業の拡大とセグメント拡大の2軸で売り上げ成長を加速させていきます。

既存事業の拡大

直近期のユニットエコノミクスを見ても、⼗分な投資余⼒があるのがお分かりいただけると思います。

ユニットエコノミクスとは、1顧客あたりの採算性を表し、顧客獲得コストと獲得した顧客からの利益のバランスを見る指標です。

一般的にSaaS事業においては300%〜500%が適切だと言われておりますが、2024年8月期2Qにおいては640%であり投資余力が残されている状況です。

今後も継続的な広告投下および営業体制の確立により、更なる事業拡大を目指していきます。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

セグメント拡大

現在、我々は特に経理や総務の領域に注目しています。

この部分では2024年5月よりマネーフォワードと資本業務提携を行うことを決定し、両社の事業基盤拡大によるシナジー創出を見込んでおります。

マネーフォワードはバックオフィスに関する様々なクラウドサービスを展開してDXを推進しており、当社のもつ世界中から集まるリモートスキル人材を掛け合わせてより多くの顧客企業に対してDX支援サービスを展開していこうと考えています。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

さらに2024年3月よりコクヨとも業務提携を開始し、オンライン型ビジネスコンシェルジュサービス「オンラインコンシェルジュ」の提供を開始しました。

これはフルリモートでリモートワークを支える当社の技術と、コクヨが長年培ってきた空間や働き方のノウハウを活かして、オンライン・オフラインを融合した新たなBPOサービスを提供していきます。

株式会社キャスター 2024年8月期第2四半期 決算説明資料 より引用

また部門としては総務や人事部門に留まらず、情報システム部門にもリモートワークを活用したアウトソーシングが拡大していく可能性があります。

リモートワークに特化した独自のシステムを提供しながら、今後も他社との協業を含め積極的に展開していく予定です。

注目していただきたいポイント

先ほどもお話ししましたが当社の最大の強みは、圧倒的な採用力にあります。

実際、全上場企業の中で、特にグロース市場においてはトップクラスの応募者数があると自負しています。

今後、日本の人口が減少する中で多様な働き方を提供し、様々な人が質の高い環境で就業できる機会を構築していきます。

このような強みを活かしながら、領域を拡大し、それぞれの業界でどのようなイニシアチブを取るかご注目いただきたいです。

株式会社キャスター 2023年10⽉ 事業計画及び成⻑可能性に関する事項 より引用

投資家の皆様へメッセージ

私たちは2023年10月に上場した会社で、まだまだ新参者ですが、リモートワークという新しい働き方を推進しながら成長を続けています。

当社の従業員は”自然体で合理的な大人”であることをモットーに新しい時代に向けて新しい当たり前を作るために邁進していきます。

今後の当社の成長に期待していただき、ご支援いただきたいです。

株式会社キャスター

本社所在地:〒881-0104 宮崎県西都市鹿野田11365-1 神楽酒造内 アグリ館2階

設立:2014年9月

資本金:1億9,061万円(2023年11月7日時点)

上場市場:東証グロース市場 (2023年10月4日上場)

証券コード:9331

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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