※本コラムは2024年8月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社オークネットは1985年に世界初のリアルタイム中古車オンラインオークションを開始以来、多岐多様な領域へと拡張し、二次流通の専門ノウハウや流通ネットワークを構築しながら、流通に関するサービスを幅広く提供してきました。
循環型マーケットを創造していくことで「持続可能な社会」を目指しています。
代表取締役社長CEOの藤崎 慎一郎氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社オークネットを一言で言うと
「価値あるモノ」を「必要な人のもと」へと循環させるマーケットデザインのパートナーです。
オークネットの沿革
創業の経緯
オークネットは1984年に私の父が設立した会社で、当初はロードサイドで中古車販売店を営んでいました。
中古車業界では、オークションで車両を仕入れることが一般的です。
父は、自社での買取が難しい車両をオークションで仕入れ、逆に取扱いが難しい車両はオークションで売却することで、効率的に活用していました。
オークション開催には車を停めておく広い場所が必要なため、山奥や海辺という辺鄙な場所が選ばれていました。
そのため、オークション会場は都心から離れた遠隔地にあり、移動に長時間を要しました。
さらに、出品される中古車の台数も多く、オークションは朝から晩まで続くことが一般的で、欲しい車がいつ競売にかけられるか分からず、1日中オークション会場に常駐する必要がありました。
この非効率的なオークションの仕組みを改善できないかと考え、1985年に電話回線を活用してオンラインでの中古車オークションを開始しました。
当時、このビジネスは革新的で、リユース品をオンラインでオークションする仕組みを作ったのは世界初であると自負しています。
オンラインオークションの始まり
当初はレーザーディスクに中古車のデータを焼き付け、それを宅急便で顧客に送り、デバイスで再生して電話回線を用いてオークションを行う方法でした。
その後、1989年に顧客数が100社を超えたタイミングで衛星通信を導入し、情報をリアルタイムで提供するシステムを構築しました。
衛星通信を活用したシステムは参入障壁が高く、競合他社の参入はありませんでした。
しかし、インターネットの台頭により、オンラインオークションの参入ハードルが下がり競争は激化しました。
この状況を受けて、中古バイク、花き(かき)、中古PC、ブランド品と、さまざまな事業へ横展開を図りました。
特に、ブランド品の取扱いは、自動車と同じように真贋判定が重要であり、当社が培った技術やノウハウが活かされる分野でした。
事業再編と成長
当社の経営陣は、中古車事業のみでの成長には限界があると判断し、2008年に事業再編を目的にMBOを行いました。
事業再編には多額の投資が必要だったため、経営の自由度を高めるための戦略がMBOによる株式非公開化でした。
このMBOを契機に、衛星通信で行なっていた中古車のオンラインオークションをインターネットに切り替え、その他にも中古デジタル機器やブランド品など、新たな事業分野への投資を行いました。
特に、スマートフォンの台頭により、海外市場への販路を確保することができ、中古デジタル機器分野では大きな成功を収めました。
そして、2017年に東証一部(現 東証プライム)に再上場を果たしました。
その後、コロナが流行し始めた2020年からは、オフラインでのオークションが一般的だったブランド品の流通がオンラインへ移行し、コロナ禍でも売上を維持しながら事業成長することができました。
現在は、中古自動車、中古デジタル機器、ブランド品の3本柱を中心に、リユース市場におけるオークションビジネスを多角的に展開しています。
オークネットの事業概要と特徴
概要
リユース市場におけるBtoBの会員制オンラインオークションを中心に事業を展開しています。
事業は大きく2つのセグメントに分かれています。
まず、中古スマホや中古PCなどのデジタル機器とブランド品を取り扱うライフスタイルプロダクツセグメントです。
売上・利益ともに最も高く、事業成長を牽引するセグメントとして位置付けています。
次に、中古自動車や中古バイクを取り扱う、モビリティ&エネルギーセグメントです。
中古車については30年以上培った長年のノウハウを活かし、仕入れから販売までをトータルサポートしています。
その他として、花きやサーキュラーコマース事業を展開しています。
既存の事業形態にとらわれることなく、循環型マーケットに特化したビジネスを展開しています。
事業における優位性
「本物主義」を体現する高品質のプラットフォーム
オークネットの強みは、何よりもその徹底した品質管理と信頼性の高い流通プラットフォームにあります。
中古車オークションにおいては、車両の細部に至るまで厳密な検査を行い、オンラインでもバイヤーが安心して購入できる環境を提供しています。
例えば、車両の傷や事故歴の有無、エンジンの状態を正確に評価し、当社が第三者機関としてチェックする体制を整えることで、取引の透明性を確保しています。
また、デジタル機器では、スマートフォンやパソコンのデータ消去や動作確認、ブランド品では真贋判定や状態の評価を徹底しています。
例えばブランド品の商品化センターではオークション運営業務をワンストップでできる体制を整えています。
出品された商品の入荷受付から、落札後の仕分や発送に至るまで当社が責任を持って行っています。
そのため、オークネットを利用するバイヤーは、購入する商品の品質を信頼しており、プラットフォームのリピーターとしての定着率は高まっています。
多様な商品の流通を実現
中古車に限らず、多岐にわたる商品を取り扱うことができることが強みです。
ブランド品、中古デジタル機器、さらには花きや中古医療機器など異なる業界の商品に対して、オンラインで二次流通させる仕組みを作ってきました。
CtoCの市場では、極端な話では購入者と出品物のマッチングが成功すれば取引が成立してしまいます。
一方でBtoB市場で扱う商品は高額なものが多く、「第三者からの信頼性が担保されているか」が重要な指標です。
多様な商品を扱うことで、異なる業界のバイヤーを幅広く取り込み、取引の多様性や規模を拡大しています。
例えば、中古車販売業者ではブランド品も取り扱っているケースや、中古の高級時計を販売する業者は中古デジタル機器も取り扱っているケースがあり、多様な商品を取り扱えることが取引拡大の鍵となっています。
オークネットの成長戦略
グローバル展開
オークネットは現在、60カ国以上のバイヤーと取引を行い、グローバル展開を積極的に進めています。
日本国内のリユース品の品質は非常に高く、海外市場においても評価されています。
例えば、日本の中古スマホはカバーを取り付けて丁寧に扱っているため、傷が少なく高品質だと認知されています。
このように日本国内のリユース品はその品質の高さから海外市場で高く評価されており、今後もさらに多くの国々へのリーチを拡大していく方針です。
また、現在は中古スマホやブランド品においては、日本から海外のバイヤーへの流通「Japan to Global」が基本ですが、海外から海外への取引「Global to Global」の流れを促進していくことで取引を拡大させたいと考えています。
次世代バッテリー分野への進出
オークネットは、次世代バッテリーやEV(Electric Vehicle)分野への進出を、次なる成長の柱の一つと位置づけています。
EV市場の急速な拡大に伴い、自動車メーカーをはじめとする自動車業界では、バッテリーのリユースやリサイクルの需要が高まっています。
例えば、エンジン車では走行距離10万kmまでは走ることができるという指標があるのに対して、EV車に関しては近年台頭してきたため、そのような指標が定かではありません。
そのため、EV車が廃棄される際に、内蔵されていた中古バッテリーの出口がなく、メーカーがその処理に困っているという現状があります。
このバッテリーの処理問題に対応するため、当社はバッテリー状態を検査する技術の開発に力を入れています。
そして、中古バッテリーに新たなバッテリーマネジメントシステムを統合し、蓄電池として再利用することで、付加価値を高めた流通を実現したいと考えています。
この取り組みは単なるリユースの枠を超え、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となっています。
M&Aや業務提携の方針
オークネットは、単なる規模拡大を目的とせず、シナジー効果を最大限に追求したM&Aを積極的に進めています。
これまではブランド品の事業において、取り扱いブランドや買取力の強化をするためのM&Aを行ってきました。
まず、2020年9月にギャラリーレア社を買収し、エルメスやルイヴィトンなど高価格帯ブランドの買取量と流通量を増加させることができました。
また、2024年4月にBEENOS社からデファクトスタンダード社とJOYLAB社を獲得しました。
デファクトスタンダード社の「ブランディア」は中価格帯のブランド品の取扱量が多く、消費者から高い認知を獲得しています。
既存事業と合わせることで高価格帯から中価格帯までの幅広いブランド品の取扱いを実現し、競争力が高まると期待しています。
今後はシナジー効果を最大限発揮できる企業や事業をより重視し、検査技術の高度化や、流通プロセスの効率化に資する企業のM&Aや連携を検討しています。
注目していただきたいポイント
オークネットのビジネスモデルは、非常に高い収益性を誇ります。
基本的なビジネス構造は、顧客が出品した商品を販売する際に、その仲介役として手数料を頂戴する仕組みです。
在庫リスクはほとんどなく、安定したキャッシュフローを確保しています。
さらに、当社は得られた利益を再投資に回し、M&Aや新規事業への成長投資に積極的に活用しています。
今後の目標としては、GCV(Gross Circulation Value:総循環型流通価値)1兆円、EBITDA100億円、ROE(自己資本利益率)20%、配当性向30%を2025年までに達成することを掲げています。
また、当社はSDGsに関連するインパクト企業であるという側面にもご注目いただければと思います。
インパクト企業は、経済的な利益と社会的な価値の両立を目指している会社です。
社会的な価値を創出する中で、持続可能な社会を実現していきたいと考えています。
その持続可能な社会を作る上で大切なのはリユース(再使用)・リデュース(廃棄物の削減)・リサイクル(再資源化・再利用)と呼ばれる3Rの取り組みです。
中でも、当社が貢献しているリユースは今後、大きな役割を果たしていくと考えています。
リユース市場が広がることで、生産・製造する絶対量の削減にも繋がり、廃棄物の削減にも繋がります。
当社はリユース市場において、循環型のマーケットデザインパートナーとしてのポジションを確立させています。
今後は社会に新たな価値を生み出しながら、そこで得た利益を株主様に還元していきます。
ぜひ、当社の事業展開にご注目いただければ幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
オークネットは、「本物主義」を理念として掲げ、業界全体の発展と持続可能な社会の実現に向けて努力を続けています。
これまではオンラインオークション事業で成長してきましたが、これからは循環型マーケットデザインカンパニーとして成長していくことが目標です。
世界中のリユース品を適切に流通させ、リユース市場の発展に貢献することが、オークネットの使命であると考えています。
今後も、オークネットは持続可能な成長を続け、社会に貢献していきます。
長期的な視点での投資先としてご支援いただければ大変嬉しく思います。
株式会社オークネット
本社所在地:〒107-8349 東京都港区北青山二丁目5番8号 青山OMスクエア
設立:1984年3月9日(創業:1985年6月29日)
資本金:1,807百万円(2023年12月末時点)
上場市場:東証プライム市場(2017年3月29日上場)
証券コード:3964