【4391】ロジザード株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年9月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。

ロジザード株式会社は物流業界における様々な課題に対して、クラウド型システムによるDX化で変革を推進します。

代表取締役社長の金澤 茂則氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました

目次

ロジザード株式会社を一言で言うと

豊かな国民生活実現のために、DXで物流に安全と安心を提供する企業です。

ロジザードの沿革

ロジザード株式会社代表取締役社長 金澤 茂則氏

創業経緯

私がロジザードを立ち上げたきっかけは、前職で経験したアパレル業界における在庫管理への課題でした。

1990年にアダストリアに新卒入社し、主に経理や情報システム、業務オペレーションの構築など、バックオフィス業務に携わっていました。

アパレル業界は流行のボラティリティが高く、外してしまうと大量の在庫を抱えてしまいます。

そこで、当時少しずつ認知され始めていたアウトレットへの出店を通じて過剰となった在庫の処分を行う部門責任者に任じられたのです。

ときは1990年代の末でインターネットですら黎明期だったため、POSシステムは普及していましたが、画像データを取り扱うほどの能力もなかった時代です。

実際の商品の状態や在庫状況などは自身の目で確認するしかありませんでした。

結果として、毎日のように倉庫へ通うこととなったことが、物流倉庫との出会いです。

そして売れ残った商品の現金化を進めたことが事業のキャッシュフローの大きな改善につながった経験から物流のIT化や在庫管理の最適化は他のアパレル業界でも同様のニーズがあると考え、2001年に当社を創業しました。

ECへの進出と拡大

当社が大きく成長するきっかけとなったのは、楽天市場に出店していた家電ECショップとの出会いです。

創業当初は開発した在庫管理システムをアパレル業(BtoB)向けSaaSとして提供しました。

しかし当時のアパレル業界にはなかなか浸透せず、スタートアップである当社は信用も知名度も無かったため、鳴かず飛ばずの状況でした。

また、当時のシステム開発はオンプレミス型が主流だったため、月額利用制のSaaSモデルはIT業界からも”業界荒らし”としていびられ、ビジネスを拡大することが難しく、厳しい状況が続きました。

そのような中、2000年代初頭に急成長を始めたEC業界では、発送管理や在庫管理に大きな課題を抱えていました。

ある家電ショップでは急速な売上拡大が続く中で、出荷作業が追いつかず、お届けに大幅な遅延が生じていました。

当時のEC事業者は、一度商品が売れ出すと、月に2倍成長することも珍しくなく、そのスピードに対応できるようなシステムが求められました。

一般的なITベンダーでは納品までに1年程度かかりますが、それではとても間に合いません。

当社はクラウドベースで提供しているため短納期で導入することができることが評価され、EC出荷機能をカスタマイズする条件で採用されました。

この家電ECショップは私たちのシステムを導入した結果、出荷業務が大幅に改善され、順調な売上成長を実現しました。

この成功例がEC事業者間で瞬く間に広まることで、導入社数が大幅に増え事業が安定、その後はEC業界(BtoC)向け物流SaaSとしてリニューアルし、業界の拡大とともに当社も右肩上がりに成長していきます。

物流業界への拡大

EC業界へのサービス拡大に伴い、物流業界からも注目されるようになったことも当社の幸運でした。

EC事業者の事務所ビルの軒先から1日に何百件もの発送依頼という事例が相次いだことから、EC物流という新たな市場に気づいた物流事業者の新規参入が始まり、更にお声がけが増えることとなりました。

よって物流会社にもシステムニーズが高いと分かったため、物流を担う企業向け機能を拡充することで販売を進めてきました。

現在では、アパレル業界やEC界のみならず、様々な業界における物流の効率化に資するシステムを開発し、提供を進めていきたいと考えています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

ロジザードの事業概要と特徴

概要

クラウドサービスとして主に3つのSaaS製品を提供しています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

1つ目がクラウド倉庫在庫管理システム「ロジザードZERO」です。

このシステムはWMS(Warehouse Management System)と呼ばれ、倉庫の入荷から出荷、在庫管理の一連の業務を支援しています。

2つ目はクラウド店舗在庫管理システム「ロジザードZERO STORE」です。

このシステムによって複数店舗の在庫一元管理が可能です。

3つ目がクラウドオムニチャネル支援ツール「ロジザードOCE」です。

リアルタイムな在庫一元管理を可能とし、購入チャネルと受け渡し方法に応じた最適な物流を支援しています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

事業における優位性

短納期・リーズナブル・高サービス

ロジザードのサービスは、「短納期」「リーズナブル」「高サービス」の3つの要素を兼ね備えていることが強みです。

クラウドで提供しているため、従来のオンプレミス型のシステムに比べて非常に短い期間で導入することができます。

例えば、新たな物流拠点を開設したり、業務の効率化を図る際に、通常半年以上かかるような導入作業も、短期間で稼働させることが可能です。

また、導入コストを抑え、リーズナブルな価格で高機能なサービスを提供しています。

特に、初期投資が大きくなりがちな物流システムにおいて、少ない資金力ながらも成長しているような企業にとって物流システムに投資することは困難です。

当社の製品はそのような初期コストを最小限に抑えつつ、迅速に導入できるため、企業の成長を支えることが可能です。

そして、単なるシステム提供に留まらず、導入後の運用サポートにも力を入れています。

お客様の業務プロセスに合わせたカスタマイズや、納品書のレイアウト変更など、細かなニーズにも対応しています。

導入の際には、確実な稼働優先という側面からコンサルティングを行うことも特徴です。

そして、365日稼働できる体制を整え、システムが止まることのないよう万全のサポートを提供することで、お客様満足度を高めています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

人手不足の課題への対応

物流業界では「2024年問題」をはじめとする人手不足が顕著になっています。

そのため働き方改革が進み、運送業者や倉庫内での作業効率化が求められています。

この問題に対処するために、倉庫業務のデジタル化や効率化を積極的に推進しています。

具体的には、物流現場での作業負担を軽減するため、複数のシステムやツールを自動連携させ、業務の効率化を図っています。

例えば、従来の物流現場では始業時間に合わせて様々な作業をする必要があり、早朝から準備する必要がありましたが、当社のシステムを導入することで、自動的にデータが処理され、作業を開始する前に全ての準備が整うようになっています。

さらに、当社は物流を効率化できるロボットと連携し活用できるようにするなど、人手不足の課題に対応できるように万全の体制を整えています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

安定的な収益モデル

当社のサービスはサブスクリプションモデルで提供しているため、一度契約した企業が継続的にシステムを利用し続けることが多く、安定したストック収益モデルです。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

また、在庫管理や物流に直結しているため、顧客企業がビジネスを継続する限り、システムを使い続ける必要があります。

物流業務は一旦システムに依存すると、稼働を止めることができないため、解約率が非常に低いことが特徴です。

このように継続的な利用が見込まれるため、導入企業が増えるたびに売上を積み上げ、強固な収益基盤を築いています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

ロジザードの成長戦略

市場環境

物流業界は「2024年問題」を抱え、大きな変革期を迎えています。

労働力不足や働き方改革により、従来の物流の運用方法が見直され、企業はこれまで以上に効率的で持続可能な物流システムを求めています。

そして、昨今は「2025年の崖」と言われる、長年にわたりレガシーなシステムに依存していた企業のリプレイスニーズが高まっており、DX領域により親和性が高いクラウド型WMSが求められています。

この流れはクラウドWMSを提供する当社にとって追い風です。

そのため当社は上記ニーズを捉えるため、BtoB業界への進出を強化しています。

BtoBの領域は日本のGDPに匹敵する規模を持つ巨大なマーケットで、多くの企業がサプライチェーン全体の最適化を求めているため、成長領域だと考えています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

時流対応製品施策

ECとリアル店舗、さらには倉庫の在庫を一元管理できるシステムを提供し、OMO(Online Merges with Offline)と呼ばれるオンラインとオフラインの混ざり合ったマーケティング戦略を支援します。

例えば、ECで注文された商品を配送するだけでなく、店舗でも受け取れるようなシステムを提供しています。

大手アパレル会社ではすでにOMOを担うシステムが開発されていますが、業界全体には広がっていません。

そこで、手頃な価格で利用できるクラウドサービスを提供することで、業界全体の効率化を図ります。

また、自動化を推進するRFIDやロボットなど最新技術を取り扱えるようにシステムをアップデートしながら、あらゆるDX化ニーズに対応していきたいと考えています。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

ハイタッチサービスの実現策

サービスを導入していただいた上で、お客様の物流が滞りなく行われ、効率化を実現できた時にこそ、当社の価値が発揮されます。

そのためにはサポートできる人材や外部リソースをしっかりと確保していくことが大切です。

当社のサービスでは、単にデジタルデータを処理するだけではなく、実際の物流現場ではリアルな「モノ」が動いています。

データ上で処理が完了していても、物品が確実に顧客に届けられなければ意味がありません。

例えば、雪の影響で特定の地域の物流が止まるといったケースでは、その地域の配送がどの程度まで可能なのか、またどのくらいで回復するのかを確認して利用者の業務をフォローするなど、システムが正常に動いているかどうかだけではなく、リアルの物流状況も含めてサポートを行うことが、当社への評価につながっているのです。

こうしたサポート体制を強化するため、私たちは内部のDX化やサポート人材の採用を進めています。

今後もより一層お客様に寄り添ったサポートができる体制を確立していきます。

ロジザード株式会社 2024年8月14日 事業計画及び成長可能性に関する資料 より引用

注目していただきたいポイント

私たちが注目してほしいのは、ロジザードのサービスが単なる「テックタッチ」ではなく、人的サポートとシステムの両方を兼ね備えた「ハイタッチ」であることです。

物流業界では、システムの自動化が進んでいますが、実際には人の手によるノウハウや現場での対応が欠かせません。

私たちは、システムの導入後も運用やサポートを通じてお客様と深い関係を築き、共に課題を解決していくことに価値があると考えています。

また、当社の成長には”人”の成長が不可欠です。

システムの改善や新しい機能の追加以上に、社員のスキル向上や成長に力を入れています。

物流業界のニーズは多様で、テクノロジーだけでは解決できない問題も多く、現場での対応力や専門知識が大きな付加価値を生み出しています。

特に当社のカスタマーサポートや運用サポートは、お客様に寄り添い、きめ細かな対応を提供するため、高く評価していただいています。

さらに、クラウドサービスの黎明期から蓄積してきたノウハウも私たちの強みです。

業界の特性や変化を受け止め、柔軟に対応し、顧客のニーズに応じたサービスに進化させてきた結果、業界問わず多くの企業からの信頼をいただいています。

投資家の皆様へメッセージ

今後の物流業界は、3つの大きな課題に対処していくことが求められます。

それは、サステナビリティ、人口減少、そしてデータドリブンな意思決定の加速です。

私たちは、これらの課題に対応するためのソリューションを提供し、物流業界の持続可能な成長を支えていきます。

まずはサプライチェーン全体の効率化を実現することで、環境負荷を軽減する取り組みに貢献します。

次に、人口減少に伴う労働力不足の深刻化に対しては、自動化技術を活用した物流改革を進めていきます。

そして、クラウドに蓄積されたデータを活用し、物流の最適化を支援していきたいと考えています。

このように将来的な課題を解決しながら、グロース企業として成長を続けていきます。

また、グロース企業としては珍しく配当も分配しているように、安定性も兼ね備えている企業として、投資家の皆様には長期的な視点でご評価いただけると嬉しいです。

ロジザード株式会社

本社所在地:〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町三丁目3番6号

設立:2001年7月16日

資本金:303,404,800円(2024年6月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2018年7月4日上場)

証券コード:4391

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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